THE ORAL CIGARETTES ツアーファイナルレポ スターダムを駆け上がる一方でより深化を遂げるアイデンティティ
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THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
唇ワンマン2017 AUTUMN「Diver In the BLACK Tour」 2017.12.6 新木場STUDIO COAST
今年6月にキャリア初の武道館ワンマンを終え、夏フェスシーズンでは全国各地を大いに沸かせたTHE ORAL CIGARETTES。さて、武道館以降はどう闘う?と、各方面から“次なる一手”を期待されていたであろう彼らが繰り出したのが、9月にリリースされた8枚目のシングル『BLACK MEMORY』と秋から始まった全国ツアーである。だからこそ、歩むべき道はずっと地続きのものであることを印象づけるかのように、半年前の武道館でラストに演奏された曲「ONE'S AGAIN」がこの日の1曲目に選ばれた。
<期待をしないように進みたまへ/それでもまた愛を探し続け/僕らは何万回も裏切られて/立ち上がり続けると>。
見える景色が広がっても、傲らず、逸らず、一つずつ。キャパオーバーを起こすことなく着実にステップアップを果たすため、彼らは今冷静にバンド自身を見つめているようだ。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
『唇ワンマン2017 AUTUMN「Diver In the BLACK Tour」』。山中拓也(Vo/Gt)曰く、今回のツアータイトルには「人生は苦しいことが8割、楽しいことが2割、その8割の方をライブハウスで共有し、音楽で会話できる人間になりたい」「“つらい”、“苦しい”っていう思いも悪いもんじゃないよって伝えたい」という意図が込められているとのこと。そのため初っ端から、巻き舌交じりのシャウトがバンドサウンドに火をつける「カンタンナコト」、彼らが持つ不屈の精神の象徴であるデビュー曲「起死回生STORY」、「やれるもんならやってみろよ!」と不敵に笑った山中がドスを効かせた声で唄った「接触」、ライブで演奏されるごとに激しさを増していく「嫌い」――と、メンバー曰く“暗くてドロドロとした” 楽曲群が新旧入り乱れたような構成で連投されていく。そんななか、「DIP-BAP」が電子音を組み合わせブレイクを多用したアレンジに変貌していたり、「トナリアウ」がアコースティック編成で披露されたりと、新たな形に生まれ変わっていた曲が多かったのも興味深かった。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
中低音域を太く響かせながら、身振り手振りを交えてのステージングで魅せる山中。聴き手を翻弄しては昂らせる、鈴木重伸(Gt)のエキゾチックなフレーズ。わんぱくに五線譜上を動き回りつつ、一歩引いてバンドを見る冷静さも兼ね備えているあきらかにあきら(Ba/Cho)の佇まい。4人のサウンドを束ねてはキリッと引き締めてみせる中西雅哉(Dr)の頼もしさ。こうして改めて聴くとそれぞれが強い個性を持ったプレイヤーだと実感させられるし、それによってオーラル特有のダーク・ファンタジー的な世界観が形成されていることはまず間違いないが、誰か一人のサウンドが過度に主張するような場面は一度もなく、バンドとしての塊具合がどんどん増していっている感じがあるのがここのところの彼らである。また、このバンドの場合、バンドがオーディエンスを煽るのはもちろん、逆にオーディエンスがバンドを煽るようなことも結構あったりするのだが、熱量の高い演奏でそれらのリアクションに応えつつ、全体的にステージ上には落ち着いた空気が流れていたのが印象的だった。情熱的に燃え盛る真っ赤な炎というよりかは、一見クールに見えるが、実はその温度が遥かに高い青い炎――。黒を基調とした山中のステージ衣装からチラリと覗く青色を見て、脳裏にそんなイメージが浮かぶ。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
「人生は苦しいことが8割、楽しいことが2割、その8割の方をライブハウスで共有し、音楽で会話できる人間になりたい」。ツアーのテーマに込められたこの意図は、実はオーラルにとって真新しいものではない。振り返れば、自身の音楽性が“ダンスロック”で括られることに対する疑問について語っていた2014年の東京初ワンマンをはじめ、“楽しい”以外の価値観をライブの中に見出したいんだという話を彼らはステージ上でよくしていたし、この日のMCでも言っていたように、そもそもこのバンドの曲は負の感情を基点にして作られたものが多かったりもする。言うなればこのツアーは、原点のさらなる追究といったところ。シリアスな温度感になってしまいがちなテーマではあるが、どこか吹っ切れたように「“あ、オーラルってこんなにドロドロした面倒くせえバンドなんや”って思ってくれたら嬉しいです」とオーディエンスに語りかけていた山中をはじめ、4人とも自然体でステージに臨んでいる様子だった。その辺りに関しては、武道館のステージでバンド自身と真正面から向き合い、肯定できたことが大きい。何周も彷徨い、再び戻ってきた原点から踏み出すはじめの一歩。それが今回のツアーだったというわけだ。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
セットリストの中盤、「真っ暗になるほど光が明確に見え始める」「その光を掴めるかどうかによって人間の成長具合は違ってくる」という持論を展開したあと、「その光が俺にとってはバンドだった」(山中)という流れで、バンドへの思いを綴った「Flower」が演奏された。この曲で唄われているのは、拭えない苦しみの闇も、その先に待つ救いの光も、どちらも飾らず肯定し、それを真っ向から鳴らしていくのだという覚悟。そしてそれは15曲目に演奏された「See the lights」(2014年リリースの1stシングル『起死回生STORY』収録)でも共通して唄われていることだった。ここまでの歩みが間違っていなかったのならば、あとはそこを邁進するのみ、という自信のようなものが滲み出ていたからこそ、この日のステージは素晴らしいものになったのだろう。メジャーデビュー当時紡がれた<あなたの選んだ道にはさ たくさんの仲間がついている>という一節は、これから数十年先も同じようにオーラル自身のことを支えてくれるに違いない。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
前向きになれたらあとは駆け出すのみ。その後はアグレッシブな楽曲群を連投、「BLACK MEMORY」で本編を終え、“光”の最たるもののような新曲「ReI」でこのツアーは締め括られたのだった。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES 撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
1.ONE'S AGAIN
2.カンタンナコト
3.DIP-BAP
4.Uh...Man
5.起死回生STORY
6.接触
7.嫌い
8.マナーモード
9.Flower
10.エンドロール
11.気づけよBaby
12.トナリアウ
13.Shala La
14.mist...
15.See the lights
16.5150
17.CATCH ME
18.狂乱 Hey Kids!!
19.BLACK MEMORY
[ENCORE]
20.ReI(新曲)
2018年2月15日(木)大阪城ホール
開場 17:30 開演 18:30 アリーナスタンディング(ブロック指定)/ スタンド指定席 5500円(税込)