脳汁を噴出させる人間弾丸盾!王を讃えずにはいられない『バーフバリ 王の凱旋』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第四十二回

2017.12.27
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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

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アメリカやイギリスなど、様々な国で製作されている映画には、それぞれ地域ごとの毛色や特徴があると思う。中でもインド映画には、『ムトゥ踊るマハラジャ』(95)のような、突然歌って踊り出すコミカルなイメージを持つ方も多いのではないだろうか。インド映画にはあまり馴染みのない私も、例に漏れずそう思っていたのだが、今回紹介する作品は歌と踊りだけでは終わらない。魂が震え、脳汁が溢れ出し、知らぬ間に「バーフバリ!」と叫んでしまうアドレナリン映画……それが『バーフバリ 王の凱旋』なのだ!

その昔、マヒシュマティ王国が栄華を極めていた時代のインド。伝説の英雄にして国王アマレンドラ・バーフバリの息子シヴドゥは、家臣のカッタッパから、父がとある裏切りによって殺害されていたことを聞かされる。それは王位継承争いに敗れた従兄弟・バラーラデーヴァが、バーフバリを王座から引きずり下ろすために巡らせた策略だった。父の復讐のため、そしていまだ幽閉されたままの母のため、シヴドゥはマヘンドラ・バーフバリと名乗り、暴君バラーラデーヴァに戦いを挑むのであった。
 

脳汁が止まらない!さらなる激アツバトル

絵にかいたような裏切り (C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

まず最初に本作が、『バーフバリ』シリーズの二作目であることを断っておく。いつもなら「前作を観ていなくても楽しめるぞ」というものを紹介するのだが、あえて今回は、「前作を観ておけ!」と言おう。前作『バーフバリ 伝説誕生』(15)では、赤ん坊だったシヴドゥが育ての親に拾われ、自分の本当の出自を知るまでの経緯や、父バーフバリとバラーラデーヴァとの確執が描かれている。あらかじめ前作を復習しておけば、「あの時のあれはこういうことだったか!」と、本作を観た時の感動も大きくなるはずなので、おススメしたい。。前作からすでにテンションが高く、バトルシーンもファンタスティックすぎるほどに壮大。普通ならば気になる大雑把なCGや、「強すぎるだろ!」とツッコみたくなったりするシーンも、自然に思えてしまう“勢い”が『バーフバリ』シリーズにはある。

しかし、本作『王の凱旋』のバトルシーンは、その勢いすら軽々と超えてきたから驚きだ。前作には、特大鉄球や回転刃付き戦車など印象的な武器が登場したが、本作で特に私に刺さったのは新戦法“人間弾丸盾”(私が命名)だ。いやーこれには笑った!笑いながら「すげぇ!」と声が漏れた。こんな戦い方、ほかの映画では観たことがない。また、シヴドゥとバラーラデーヴァの戦いでは、タイマンの肉弾戦も見られるのだが、これがまた激アツ。手を刺され、首を絞められ、それでも負けじと腕に鎖を巻いて殴り返すシヴドゥ。くぅー!たまんねぇっす!こういう「地べたを這いつくばってでも諦めねぇぜ」的展開! 私の中で本作は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)、『HiGH&LOW』シリーズと並んでの脳汁映画に認定された。

 

讃えずにはいられないバーフバリ親子のカッコよさ

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この物語では、シヴドゥを中心に親子三代に渡る愛と因縁が描かれる。本作でもどっぷりと語られる父バーフバリには、やはり王の風格が漂っている。彼のシーンで私が気に入っているのは、象の鼻にでかい弓を持たせ、自ら矢を引くシーンだ。あまりに美しかったので、その英雄っぷりに思わず「バーフバリ……」とつぶやき、しまいには民とともに「バーフバリ!バーフバリ!」と讃賞してしまったのだから恐ろしい。

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前作と比べ、成長がうかがえるシヴドゥの姿も頼もしい。ヒロインをデレデレと口説いていた時とは異なり、戦う覚悟を決めた本作では、彼の顔つきがどんどん凛々しくなってゆくのだ。にやけ顔の青年が、父親の面影を宿す二代目バーフバリへと進化していく過程を見せてくれた(正確には父バーフバリとシヴドゥを見事に演じ分けた)プラバースに盛大な拍手を送りたい。

このコラムを「へー」くらいの気持ちで読んでいるであろうあなた。騙されたと思って、人生の二時間半ほどの時間を、本作を観るために使ってほしい。観終る頃にはバーフバリというカッコ良すぎる王を讃えているに違いない。さぁ、ともに叫ぼう。「バーフバリ!バーフバリ!!」。

『バーフバリ 王の凱旋』は、12月29日(金)より新宿ピカデリー、丸の内TOEIほか、全国順次ロードショー。

作品情報

映画『バーフバリ 王の凱旋』

 
(2017年/インド/テルグ語)
監督・脚本:S.S.ラージャマウリ(『バーフバリ 伝説誕生』『マッキー』)
撮影監督:K.K.センディル・クマール 
音楽:M.M.キーラヴァー二
出演:プラバース/ラーナー・ダッグバーティ/アヌシュカ・シェッティ/サティヤラージ/ラムヤ・クリシュナ/タマンナー/ナーサル
原題:Baahubali2-The Conclusion
公式サイト:http://baahubali-movie.com/   
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