イケメンと行く妄想アートデート 谷中お散歩編
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今回のアートデートは、谷根千エリアのお散歩コースを紹介。昔ながらの趣ある路地に、こだわりのカフェやギャラリーが点在し、のんびりしたい大人の休日にぴったりです。
また、年末年始は自分を振り返ることも多い時期。恋愛に疲れたり、将来に不安を抱えたりしている方も多いのでは? 新年に前向きな気持ちになれるよう、今回のアートデートは、彼氏に振られそうで落ち込んでいるアラサー女性が幼なじみのお兄ちゃんに励ましてもらう、という癒されストーリーに仕立ててみました。
相手役は、フラワーデザイナーのHide TANAKA(田中秀行)さん。「花を通して心の豊かさを思い出してほしい」との思いから、ケニアのバラを輸入する専門店を経営されています。洗練された優しい雰囲気に、みなさんも癒やされてください!
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秀ちゃんがパリから帰ってきた。
秀ちゃんは実家がご近所同士で、私にとって小さい頃からお兄ちゃん的な存在。結婚してパリに引っ越してからなかなか会えなくなったけれど、帰国するたびご飯に連れ出してくれる。
家の前まで迎えにきてくれた秀ちゃんと、ちょっとお散歩。
秀ちゃん:「いい天気だね!」
私:「うん、お散歩日和だね」
そう言いながら、私の心はちっとも晴れない。久しぶりに会えたのは嬉しいけど、2週間も連絡がない恋人のことが気になってしょうがない……。イケメンと散歩して和んでる場合じゃない気がする。
秀ちゃん:「あれ、こんなところにギャラリーがあるんだ。ちょっと入ってみようよ」
秀ちゃんについて階段を上り、ギャラリー花影抄へ。
秀ちゃん:「現代根付を扱っているギャラリーだって。これ見て、面白い!」
私:「わあ、いろんなのがある!かわいい!」
天使、ゾウ、ひょうたん……。箱の中には様々なデザインの根付がずらり。
少年のようにはしゃぐ秀ちゃんにつられて、私のテンションも上がる。
根付は江戸時代に流行した装身具で、現代だと携帯電話のストラップに例えられるが、もともと巾着や印籠を提げる留め具として使われていた。今でも現役作家たちが「現代根付」を作り続けていて、素材やデザインの幅広さから国内外にコレクターがいる。
なんと、手にとってOK! 秀ちゃんのお気に入りは落花生。中に入っている豆を揺らしながら「どうなってるんだろう?」と興味津々の様子。
奥のギャラリーでは、若手作家による二人展が開催されていた。
秀ちゃん:「うわっ、死神がいるよ。子供の頃、こういうゲーム好きじゃなかった?」
私:「そうそう、今でもRPG大好きだよ。こんな作品もあるんだね」
ユニークかつ奇怪なモンスターだらけの展示は、ロールプレイングゲームのダンジョンをイメージしたそう。根付は伝統的なものだから、もっと堅苦しいかと思っていたら、自由な発想が生かされていてビックリ。
秀ちゃん:「こうじゃなきゃダメ! っていうのがないんだね。ひとつひとつまったく違う良さがあって、集めたくなるなぁ」
私:「この鎌カッコイイ! 取れるようになってるよ」
秀ちゃん:「昔から女の子っぽくないものが好きだよね(笑)。そういうとこ、個性的でいいよね」
私:「う〜ん。そうかなぁ……」
秀ちゃんは優しいからそう言ってくれるけど、彼氏には変だって言われちゃったんだよね。それ以来ゲームの話はしなくなって、女の子らしいかわいいものにだけ興味があるフリをしてきた。
ギャラリーを出て、しばらく言葉少なに歩く。
はっ、いけない! せっかく秀ちゃんが帰国してるんだから、楽しく過ごさなくちゃ。
私:「ねえねえ、ブランコ乗ろうよ! 昔、よく一緒に遊んだよね」
秀ちゃん:「懐かしいなぁ。何年ぶりだろうね」
通りかかった小さな公園で、並んでブランコを漕ぐ。
秀ちゃん:「ところで……。今日、なんか元気なくない?」
私:「あ……ごめん。バレてた?」
秀ちゃん:「そりゃわかるよ、長い付きあいだもん。俺で良かったら話、聞くよ」
じゃ、ちょっとお言葉に甘えて……。と話し出したら止まらない私。秀ちゃんは、頷きながら真剣に聞いてくれる。
私:「1年くらいつきあった彼氏に、振られちゃったみたいなんだ。仕事が好きだから子供いらないって話してから冷たくなって、もっと料理とか掃除とか上手じゃないと将来も考えられないって言われて」
秀ちゃん:「なるほど……。自分としてはどうしたいの?」
私:「う〜ん……。納得できないところも多いけど、もうすぐ30歳だし、これを逃したら一生独身な気がして怖い」
まだ彼氏のことが好きなのかな? それとも結婚したくて焦ってるだけ?
よくわからなくなってきたところで、立ち上がる秀ちゃん。
秀ちゃん:「よし、とりあえず気分転換しよう! いいところに連れてってあげる」
辿り着いた先には……なんと猫!
秀ちゃん:「ここ、癒やされたい時によく来てたんだ。元気だったか〜?」
入り口に佇む猫のオブジェを撫でる秀ちゃん。かわいい(笑)
ギャラリー猫町は、猫をテーマにしたアーティストの個展を開催している猫専門ギャラリー。閑静な住宅街に佇む一軒家が、丸ごとギャラリーになっていて、オリジナル一点ものの作品中心の展示が2週間毎に入れ替わりで開催されている。
※こちらの展示は終了し、現在は違う展示になっています
彫刻やイラストが展示されているほか、傘立てやスリッパなどいたるところに猫がたくさん!
私:「スリッパまで猫だよ! たしかに癒やされたい時にぴったりだね」
秀ちゃん:「よしよし、元気になってきたみたいだね」
そういえば、気づいたらすっかり夢中になっていた。さっきまで、彼氏からの連絡が来ないスマホが気になっていたのに。
気分が晴れてきたところで、近くのおしゃれなカフェでランチ。
「おいしいものを食べると元気が出るから、何でも好きなもの頼むんだよ! 落ち込んだら周りに頼っていいんだからね」と優しい秀ちゃん。
窓際のカウンター席にいる姿がサマになっていて、なんだか一緒にパリまで来たみたいな気分。気遣ってくれてすごく心強いけど、いつまでも心配かけないようにしっかりしたいな。
秀ちゃんは「野菜たっぷり玄米カレー」、私は「野菜ソースの玄米オムライス」をオーダー。豆乳のスープも付いていて、ヘルシーで嬉しい。
私:「パリで食べてるご飯も、こんな感じでおしゃれなの?」
秀ちゃん:「カレーは俺もよく作るよ。結婚したばかりの頃は、奥さんも俺もあんまり料理したことなかったから、一緒にいろいろ作って練習したんだ。今は忙しくて時々しかできないけど、そういうのも楽しいよ」
私:「へ〜。女性は料理できないと結婚してもらえないのかと思ってた……」
秀ちゃん:「そんなことないでしょ(笑)。人それぞれ苦手なことはあるし。それに、結婚してもらうっていう考え方はちょっと違うんじゃないかな? 無理して合わせなくても、一緒に生きていこうね、ってお互い思い合える関係が幸せだと思うよ」
そう言われてみると、相手に嫌われるのが怖くて、合わせようとしすぎていたかもしれない。だから彼氏も私が家庭に入りたいって勘違いしていて、将来の話をしてみたら違ったからショックを受けたのかも……。
秀ちゃん:「相手のために努力するのは素晴らしいことだけど、ありのままの自分を否定しちゃダメだよ」
昔から私のことをよく知っている秀ちゃんの話は説得力があって、素直に聞ける。
ひと休みしたあと、縁結びで有名な根津神社に向かうことに。
根津神社は海外からの観光客も多く訪れるパワースポット。春にはツツジ、秋には紅葉が見られる自然豊かな場所だ。千本鳥居をくぐって邪気を祓った先には、縁結びにご利益があるという乙女稲荷神社がある。
私:「うわ〜、すごい数の鳥居!」
秀ちゃん:「この真ん中にお稲荷様が祀られてるんだよ」
自分らしくいられる人と、幸せになれますように……。彼氏とは仲直りできるかわからないけど、どっちにしても一度飾らない本音で話し合ってみよう。
少し前なら「とにかく結婚できますように!」ってお祈りしていたけど、今は気持ちが変わってきた。
本気でお祈りする私を、温かく見守る秀ちゃん。
私:「ありがとう、秀ちゃん。だいぶ前向きになってきたよ」
秀ちゃん:「良かった。ちょっと飲み物でも買ってくるから、近くの公園で休んでから帰ろう」
そう言って秀ちゃんが走っていったので、一足先に公園に向かう。
ベンチに座って草花を眺めながら、秀ちゃんが話してくれたことを振り返る。もうアラサーだから! って焦って、自分とも彼氏ともきちんと向き合えてなかったな……。
私:「それにしても秀ちゃん、遅いな。どこまで行ったんだろう?」
そう思ってスマホを確認すると、彼氏からメッセージが。「一度会ってゆっくり話し合いたい」って。よかった。でも、どうしよう。まだ、彼が好きなのか好きじゃないのか、結婚したいのかしたくないのか、子供が欲しくないのか産んでもいいのか……。何も決められてない。
秀ちゃん:「お待たせ!」
私:「おかえり!遅かったね……って、えっ、それ何?!」
秀ちゃんが持っていたのは、なんと花束!
秀ちゃん:「元気出してねっていうプレゼント! 日本だとあんまりないけど、ヨーロッパだと結構、日常的に花を贈る習慣があるんだよ」
私:「うわ〜、すっごく綺麗! バラの花束なんて初めてもらったよ!」
秀ちゃん:「やっぱり女の子だからピンクをメインにしたんだけど、全部少しずつ違うんだよ。どれも素敵でしょ? 黄色のバラも、花言葉に“嫉妬”や“失恋”があるから敬遠する人もいるけど、明るい気持ちになる色だから入れたよ」
私:「うん。決めつけて避けちゃもったいないよね。あ、よく見たら、一つひとつが一色じゃなくてグラデーションになってる」
秀ちゃん:「そうそう。人の気持ちもこれと同じで、赤とか白とかはっきりひとつに決めなくてもいいと思うんだ。結婚だって、フランスじゃ事実婚も同性婚も普通だし、いろんな形があっていいんだよ」
そっか。なんだか心がほぐれたみたい。さりげなく導いてくれて、やっぱり秀ちゃんはいつまでも私のお兄ちゃんだな。そう思いながら、晴れ晴れとした気持ちで帰路に着いた。
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妄想アートデート第8弾、いかがでしたか? 設定は妄想ですが、Hideさんは本当にイケメンで優しいうえ、いろいろ考えて花束まで用意してくださったので、実際に癒やされました。
今回は谷中〜上野中心のコースでしたが、谷根千エリアにはまだまだ魅力的なスポットがいっぱい。取材中もつい寄りたくなるお店がたくさんありました。食べ歩きグルメも豊富なので、ふらりとお散歩に行ってみてくださいね。
出演=Hide TANAKA(田中 秀行) 写真=大野 要介 文=稲葉 詩音
Access:東京都文京区根津 1-1-14 らーいん根津202
営業時間:13:00~19:00
定休日:月・火・木曜日(水曜日は要事前予約)
Web:http://www.hanakagesho.com
②ギャラリー猫町
Access:東京都台東区谷中2-6-24
開廊時間:11:00~18:00
定休日:月・火・水曜日(祝日は不定休、要問い合わせ)
Web:http://gallery.necomachi.com/
③COUZT CAFE
Access:東京都台東区谷中2-1-11
営業時間:11:30~23:00(日曜日は朝9:00~)
定休日:木曜日
Web:http://www.couzt.com/
④根津神社
Access:東京都文京区根津1-28-9
Web:http://www.nedujinja.or.jp/index.html
⑤上野恩賜公園
Access:東京都台東区上野公園5-20
Web:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index038.html
AFRIKAROSE COO/FLOWR DESIGNER
クリスチャン・トルチュやエリックショヴァンを輩出したフランス政府公認フラワーデザインスクールで基礎を学び、フレンチスタイルを取り入れた独自のデザインを築く。ジョエル・ロブション、ヒルトンTOKYO などの装花をはじめ、LEXUS・BVLGARI にてアレンジメントレッスンを定期的に開催。東京・広尾にある薔薇専門店『AFRIKAROSE』を展開中。また店舗においては、月に数回スクールを開催している。
<INFORMATION>
★2017年12月20日発売
STER EDGE 005(徳間書店)
「Toshiya’s Creativity」対談
★2018年1月23日~2月26日
FLOWERS BY NAKED 出店&イベント会場装飾予定
https://flowers.naked.works
★2018年2月7日~13日
日本橋高島屋出店予定
★2018年2月上旬
NHK『ひるまえほっと』生放送出演予定
<AFRIKAROSE店舗詳細>
AFRIKAROSE 広尾本店
最高品質のバラをアフリカから世界へ届ける、『アフリカの花屋』。日本では珍しいケニアのバラを専門で扱っている。ケニアのバラは、生命力に溢れ、美しく、一般的な日本のバラよりも大きくてとっても華やか。全国配送可。
住所:東京都渋谷区広尾5-18-8 TEL:03-6450-3339
HP:afrikarose.com