柚希礼音が女スパイを熱演、ミュージカル『マタ・ハリ』東京公演が開幕へ
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マタ・ハリを演じる柚希礼音
第一次世界大戦下、ドイツとフランスの二重スパイとして疑われ、波乱の人生を送った実在のダンサー、マタ・ハリの愛と葛藤を描いたミュージカル『マタ・ハリ』。本作は、『ジキル&ハイド』や『スカーレット・ピンパーネル』などの作曲家として知られるフランク・ワイルドホーンが音楽を手掛け、『ボニー&クライド』や『デスノート』でワイルドホーンとタッグを組んだアイヴァン・メンチェルが脚本を担当。総制作費250億ウォン、約4年の準備期間を経て、韓国で2016年に世界初演された。今回の日本初演では、ストレートプレイ、ミュージカル問わず幅広い演出経験を持つ石丸さち子のもと、柚希礼音がマタ・ハリを演じ、加藤和樹が“相手役”のラドゥー大佐とアルマンの1人二役キャストに挑む。
2018年1月の大阪公演を終え、2月3日から東京国際フォーラムホールCで東京公演が開幕する。開幕を前に行われた舞台総通し稽古(ゲネプロ)の様子を写真とともにお伝えしたい。なお、この日は、戦闘パイロットでマタ・ハリと恋に落ちるアルマン役を加藤和樹が、マタ・ハリを利用するフランス諜報局のラドゥー大佐役を佐藤隆紀(LE VELVETS)が、戦闘パイロットのピエール役を西川大貴が、それぞれ演じた(ラドゥー、アルマン、ピエールはそれぞれWキャスト)。
マタ・ハリを演じる柚希礼音
マタ・ハリを演じる柚希礼音(左)とアルマンを演じる加藤和樹
まず、柚希が魅せた。本作品の見どころの一つであるしなやかで妖艶なダンスシーンはもちろん、強さを持ちながらも脆さも危うさも兼ね備えたマタ・ハリ像を非常に繊細な芝居で演じきった。大阪公演開幕前、柚希は「全てが挑戦ですが、マタ・ハリになりきっていきたいと思います。マタ・ハリの半生を思いっきり壮絶に勇敢に生きたいと思います」と公演への意気込みを語っていたが、その言葉通り、舞台上にはマタ・ハリがいた。退団後も宝塚歌劇団のトップスターのイメージが強かった柚希だが、この作品が彼女の女優人生にとって最大のターニングポイントになるのではないかと思った。こんなにもリアリティのある芝居で観客を惹きつける女優だったかと。確かな踊りの実力も相まって、本当に感嘆する。
マタ・ハリを演じる柚希礼音(左)とアルマンを演じる加藤和樹
マタ・ハリを演じる柚希礼音とアルマンを演じる加藤和樹
この日はアルマンを演じた加藤。ラドゥー大佐とアルマンというある意味両極端の役を演じることについて「自分でも思ったより混乱はなく、それぞれの役の芯、心情の部分は全く迷いはありません」と語っているが、純粋にすごい。『二人の男(MAN TO MAN)』や『あなたなしでは(WHAT AM I TO DO)』は、同じ曲の別パートをラドゥーとアルマンが歌い合わせるのだが、それを混乱せずに役の気持ちを保ったまま歌うなんて……!! 加藤は優しさと勇敢さを兼ね備えたアルマンを表現したが、一方でどんなラドゥー大佐を演じるのか。そちらもぜひ観てみたいと思った。
アルマンを演じる加藤和樹(左)とラドゥーを演じる佐藤隆紀
マタ・ハリを演じる柚希礼音(右)とラドゥーを演じる佐藤隆紀
ラドゥー大佐を演じた佐藤。歌唱力に定評がある佐藤は、低くて芯のある声で非常に耳心地がいい。ワイルドホーンの壮大な楽曲とよくマッチする声で、作品の完成度を上げた。芝居に関しても、マタ・ハリを利用しつつも、どこか惹かれていくというラドゥー大佐の葛藤やもがきをうまく表現していたと思う。
マタ・ハリの衣装係であるアンナ(和音美桜)とマタ・ハリの関係性や、戦争で死ぬことを恐るパイロットのピエール(西川大貴)の思いなどもいいスパイスになって、物語にさらなる深みを与えていた。
マタ・ハリを演じる柚希礼音(中央)ら
マタ・ハリを演じる柚希礼音(左)とアンナを演じる和音美桜
演出の石丸さち子は韓国版の違いと日本版の見どころについて次のように語っている。
「韓国で観劇した際、ドラマチックで、強いパッションの芝居に感動しました。強いパッションはそのままに、日本人ならではの繊細さとゆらぎのようなもの、両極を取り込もうと思っています。またフランク・ワイルドホーンさんの音楽はとてもダイナミックで、歌っている間に次の世界、また次の世界へと連れていかれるような大きなジャンプがあり、一方でロマンティックでもあるため、この2つを最大限に生かせるようにしたいです」
「そして美しい男と女がヨーロッパ中が疲弊した第一次世界大戦の中で、ボロボロになりながらもどのように生き抜こうとしたか、という強さをしっかりと描きたいと思います。美しさと醜さ、そして優しさと残酷さのような両極面を世界は常に持っていると思いますが、舞台の中ではその両極を見られると思います。戦争の残酷さの中で、いかにして優しさが生きる希望として生まれるか、そして彼らの中にどのような愛と裏切りが生じるか、それでも人はどう生き抜こうとするか、ということを描きたいと思います」
上演時間は1幕・2幕合わせて約3時間(休憩含む)。数奇なマタ・ハリの半生を、劇場でご覧いただきたい。
マタ・ハリを演じる柚希礼音
取材・文・撮影=五月女菜穂
■作曲:フランク・ワイルドホーン
■歌詞:ジャック・マーフィー
■オリジナル編曲・オーケストレーション:ジェイソン・ホーランド
■訳詞・翻訳・演出:石丸さち子
柚希礼音(マタ・ハリ)、加藤和樹(ラドゥー/アルマン)、
佐藤隆紀(ラドゥーWキャスト)、東啓介(アルマンWキャスト)、
西川大貴(ピエールWキャスト)、百名ヒロキ(ピエールWキャスト)
栗原英雄(パンルヴェ)、和音美桜(アンナ)、福井晶一(ヴォン・ビッシング)ほか
■会場:梅田芸術劇場メインホール
■日程:2018/1/21(日) ~ 2018/1/28(日)
■料金:S席 13,000円 A席 9,000円 B席 5,000円 (全席指定・税込)
■問い合わせ:梅田芸術劇場メインホール 06-6377-3800(10:00~18:00)
■会場:東京国際フォーラムホールC
■日程:2018/2/3(土) ~ 2018/2/18(日)
■料金:S席 13,000円 A席 9,000円 B席 5,000円 (全席指定・税込)
■問い合わせ:梅田芸術劇場 0570-077-039(10:00~18:00)