ハンブルク・バレエ団来日公演記者会見~“レジェンド”ノイマイヤーの代表作『椿姫』『ニジンスキー』を上演
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(左から)ジョン・ノイマイヤー、アレクサンドル・リアブコ、アレクサンドル・トルーシュ (photo:Yuji Namba)
2018年2月2日からハンブルク・バレエ団2018年来日公演が始まる。1986年以来8度目の公演となる今回の演目は、芸術監督ジョン・ノイマイヤー自身が「バレエ団にとって、重要な作品」と位置付ける『椿姫』『ニジンスキー』、そしてガラ公演『ジョン・ノイマイヤーの世界』だ。
このほど行われた記者会見ではノイマイヤーをはじめ、プリンシパルのアレクサンドル・リアブコ、アレクサンドル・トルーシュ、そしてバレエ団広報部長のヨルン・リークホーフが登壇。本公演の概要と、演目の見どころについて語った。
ジョン・ノイマイヤー (撮影:西原朋未)
■バレエ団を代表する『椿姫』『ニジンスキー』
最初に登壇したリークホーフ広報部長によると、ハンブルク・バレエ団にノイマイヤーが1976年に芸術監督として就任してからの45年間で、海外ツアーは5大陸、延べ1000回以上に及ぶという。そうしたなか2015年にノイマイヤーが京都賞を受賞したことにも触れ、「日本は非常に重要。作品も日本の伝統文化から多くのインスピレーションを受けている」と述べ、ノイマイヤーを「この場で紹介するには時間がいくらあっても足りない、バレエ界のレジェンド」としてマイクを渡した。
「初来日前から日本の歌舞伎や能などに非常に興味を持っていた」というノイマイヤーは、今回上演する『椿姫』『ニジンスキー』について、「今回新しい作品はないが、ハンブルク・バレエ団として非常に人気の高いものを持ってきている。長い年月やリハーサルでの再発見を通し、さらに進化した内容となっているので、ぜひご覧いただきたい」と話した。
■コジョカル&トルーシュの新しいキャストによる『椿姫』
ハンブルク・バレエ団『椿姫』はアレクサンドル・デュマ・フィスの小説を原作に、小説と同時代の作曲家ショパンのピアノ曲を使用してつくられた作品。初演は1978年シュツットガルト・バレエ団によるが、1981年にハンブルク・バレエ団が上演して以後は同バレエ団、そしてノイマイヤーの代表的な作品の一つとなっているほか、パリ・オペラ座バレエ団やボリショイ・バレエ団など、世界の有力カンパニーがレパートリーとして取り入れるなど、バレエ史に君臨する作品と言えよう。
今回マルグリットとアルマンを踊るのはアリーナ・コジョカル&アレクサンドル・トルーシュ(2日、4日)とアンナ・ラウデール&エドウィン・レヴァツォフ(3日)。とくにコジョカル&トルーシュは今回初めて組むペアであり、トルーシュは初めてアルマン役を踊る。ノイマイヤーはこの2人のリハーサルを通して、「新たに気付いた点などの修正も行い、新しいトーンや味付けにした点もいくつかある」と語った。
アレクサンドル・トルーシュ (撮影:西原朋未)
トルーシュは「『椿姫』を初めて観たのは12、3歳くらい。いつかアルマン役を踊るのが夢だった。今回素晴らしいパートナーやダンサー達に囲まれ、みなさんに見ていただける日が来たのを光栄に思う」と期待を述べた。またダンサーとしてこの作品について「非常に美しいバレエ。振り付けが音楽の中で流れ、自分の気持ちがどんどん高揚していく。踊っていても楽しいし、他のダンサーが踊るのを見ていても楽しめる」とも。
■初演時からより進化している『ニジンスキー』
一方『ニジンスキー』は2000年にハンブルク・バレエ団で初演、日本では2005年に初めて上演され、今回は13年振りとなる。過日テレビでも放映され、ご覧になった方々も多いのではないだろうか。今回はその舞台を目の前で観る絶好の機会だ。
作品についてノイマイヤーは「ニジンスキーという人物や、彼の生涯がわかるというものではない。彼の波乱万丈な人生の一部を取り上げたもので、ニジンスキーの深い精神性などを表現している」と話す。今回の上演は発表以来18年を経て、カナダ国立バレエ団など「創作のバックグラウンドを持たないカンパニーでの上演」といった新鮮な目を通して、ブラッシュアップが重ねられてきた。そのため2005年の日本上演から少し変わっている点もあるという。主演ニジンスキーにはリアブコ、トルーシュの2人が配されており、「この2人の解釈の違いが見どころのひとつ」という。
アレクサンドル・リアブコ ⒸYuji Namba
特にリアブコは2000年の初演に至る創作の段階から、この作品に関わってきた。「創作時に3人がニジンスキーを踊ったが、それぞれが同じ振りを踊っているのに、まったく違う表現ができているということが素晴らしいと思った。またジョン(・ノイマイヤー)は自分の解釈で踊る自由を与えてくれた。そういう意味でも思い出がたくさんある作品だ」と振り返る。
またノイマイヤーが「テクニックはもちろん重要だが、その技術に光を当てる感情、ダンサーの内面から出てくる光が非常に大事」と話す通り、このニジンスキー役はとくにダンサーの感情表現の部分により多くのものが求められ、またそれが見どころの一つとなっている。
実際に踊るダンサーにとっては「ほとんどの男性ダンサーにとって非常に難しい演目で、一度として満足したことはない。壁を叩いて『自分にはもうできない』と泣きながら思い詰めてしまうこともあるが、それを乗り越えることでまたステップアップできると思わせてくれる、また他では体験できないチャレンジングな作品だ」とリアブコ。トルーシュも「ニジンスキー自身がチャーミングでアグレッシブで、あるいはマニアックだったり、クレイジーなところがあったりと、いろいろな側面を持っている。それを表現できるのはダンサーとして素晴らしい体験。ノイマイヤーの作品では主役はほぼずっと舞台に出っ放しになり休む間もないので、体力的にもチャレンジング。精神面・体力面共々これを踊り続けたら本当に自分が正気を失ってしまうのではないかというところまで追い詰められるが、終わると心身ともに疲労するけれど、自分が違う人間になっていたかのような不思議な体験ができる。自分の仲間や男性ダンサーには体験してもらいたい作品でもある」と話す。
■ガラ公演はすべてのプリンシパル、ソリストが登場
ジョン・ノイマイヤー (撮影:西原朋未)
今回の来日公演ではガラ公演『ジョン・ノイマイヤーの世界』も上演される。これは「テーマを持った一つのシリーズ」(ノイマイヤー)で、間に短いナレーションを挟みながら今回上演される『椿姫』『ニジンスキー』をはじめ『ペール・ギュント』『クリスマス・オラトリオ』など、ノイマイヤーの様々な作品の一部分が踊られる。「私のドキュメンタリーではなく、私の人生がわかるというものではない(笑)。バレエがいかにアイデアやインスピレーションとともに、表現する芸術であるかを伝えたい」と語るノイマイヤーの世界を知ることができるに違いない。
(撮影:西原朋未)
ハンブルク・バレエ団2018年来日公演は、2月2日東京の『椿姫』を皮切りに、都内で7公演、京都で1公演が上演される。「公演というものは複製の効かない、1度きりのもの。この1作品だけ、というおすすめはしない。皆様には全作品を見ていただきたい」(ノイマイヤー)。現代を代表する振付家が選び抜いたダンサー達によって踊られる、バレエ団が誇りとする舞台の公演がいよいよ始まる。
(文章中敬称略)
取材・文=西原朋未
■会場:東京文化会館 大ホール(東京都)
■日程:2/2(金)~2/4(日)
■振付・演出:ジョン・ノイマイヤー
■美術・装置:ユルゲン・ローゼ
■演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
■出演予定
2月2日(金)18:30/アリーナ・コジョカル(マルグリット)、アレクサンドル・トルーシュ(アルマン)
2月3日(土)14:00/アンナ・ラウデール(マルグリット)、エドウィン・レヴァツォフ(アルマン)
2月4日(日)14:00/アリーナ・コジョカル(マルグリット)、アレクサンドル・トルーシュ(アルマン)
■日程:2/7(水)19:00
■振付・演出・語り:ジョン・ノイマイヤー
■演奏:特別録音による音源を使用
■会場::東京文化会館 大ホール(東京都)
■日程:2/10(土)~2/12(月・祝)
■振付・舞台装置・衣裳:ジョン・ノイマイヤー
■演奏:特別録音による音源を使用
■出演予定:
2月10日(土)14:00/アレクサンドル・リアブコ(ニジンスキー)
2月11日(日)14:00/アレクサンドル・トルーシュ(ニジンスキー)
2月12日(月・祝)14:00/アレクサンドル・リアブコ(ニジンスキー)
■料金:S席:¥23,000 A席:¥20,000 B席:¥17,000 C席:¥14,000 D席:¥11,000 E席:¥8,000
※出演者はダンサーの怪我、カンパニーの都合や芸術的判断等で変更になる場合があります。出演者変更にともなう
※未就学児童入場不可
■後援:ドイツ連邦共和国大使館
■問い合わせ:NBS
■公式サイト:http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/-2018.html
ガラ公演<ジョン・ノイマイヤーの世界>
■会場:ロームシアター京都 メインホール
■
※ユース
※未就学児童入場不可
■出演:ハンブルク・バレエ団
■予定演目:『キャンディード序曲』、『アイ・ガット・リズム』、『くるみ割り人形』、『ヴェニスに死す』、『ペール・ギュント』、『マタイ受難曲』、『クリスマス・オラトリオⅠ-Ⅵ』、『ニジンスキー』、『ハムレット』、『椿姫』、『作品100―モーリスのために』、『マーラー交響曲第3番』
※特別録音による音源を使用
■問合せ先:ロームシアター京都
TEL.075-746-3201(10:00~19:00、年中無休)
■公式サイト:http://rohmtheatrekyoto.jp/program/6776/