秋元康「彼らのエネルギーがさらにパワーを増していく」劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』公演レポート
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劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』
2月8日(木)から東京・紀伊國屋ホールにて上演されていた劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』が2月12日(月)に千秋楽を迎えた。今回はその千秋楽公演の模様をレポートする。
本作はavexの新プロジェクト発足として、秋元康が「自分が今までやってこなかったことをやりたい」と企画した劇団プロジェクト。トータルプロデュースに秋元、脚本・演出を丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)、音楽を和田俊輔、振付をCRE8BOYが務める。
劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』
1960年代を代表するシンガー、ジャニス・ジョプリンの死の傍らにはマールボロと、手には4ドル50セントが握られていたという。そのエピソードから「ジャニスが手にしたかったのは釣り銭なんかじゃない。ジャニスの代わりに夢を掴む」という思いを込めて秋元が劇団名を命名。応募総数約5000人の中からオーディションで選ばれた16歳~27歳の全30名からなる劇団員。劇団員の9割が演技経験ほぼゼロの状態からスタートし、「泥臭さと熱い気持ちをモットーに汗と涙で感動を!!」という演劇的エンタテインメント集団として半年間の期間を費やし、2017年11月に上演されたプレ公演を経て本公演に臨んだ。
寂れた地方都市、夢沢町にある「夢沢銀座」はシャッター商店街になっている。昼は堅くシャッターを閉ざしているが、夜になると賑わう。お金は価値を持たない。夢を売り買いする不思議な商店街であった。ある日、夢に破れたミュージカル女優が死に場所を求めてやって来る……。
劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』
舞台はまず、ストーリーテラーとして町役場の職員(蕪祐典)が「夢沢銀座」について語ると、シャッターに見立てた幕が上がり「シャッターを上げろ!」の曲から始まる。幕開けにふさわしい力強いダンスと歌が繰り広げられ、「足を鳴らせ!声を上げろ!」の詞のごとく、出演者たちの熱い想いが込められたパフォーマンスに圧倒させられる。
夢に破れたミュージカル女優(糸原美波)、東京に憧れる女子高生(福島雪菜)、商店街を守る組合長(岡田帆乃佳)ら、「夢沢銀座」に集まる複雑な思いを持つ人々。その人々の思いにオーバーラップする秋元の作詞による楽曲の数々。ロック、タンゴ、アイドルポップといったバラエティー豊かな曲とダンスが舞台を盛り上げる。
劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』
旗揚げ公演ということもあり、それぞれの役者に見せ場がある本作。その中でも主演の糸原は、東京で挫折を味わうことで絶望に打ちひしがれながらも、「夢沢銀座」で希望を見いだす役を好演。さらに、福島は友人との悲しい過去を胸に秘めて生きながら、透き通るような魅力を放つ。そして、個性豊かな商店街の人々をまとめる岡田の迫力ある演技にも目を引かれた。
劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』
劇中では、劇団員総出で大縄による連続跳びを実施。失敗する度に観客からの応援が大きくなり、成功した最後には大きな拍手と歓声が起こり、舞台と観客との一体感を生んでいた。フィナーレには、劇団の熱量を表現するために本水を使用した大雨演出も見せた。1トンの水を使用した雨の中で、全員による熱唱と激しく熱いダンスにより、観客を虜にする。
ずぶ濡れの出演者たちによるカーテンコールでは、主演の糸原が感謝を述べながら、「劇団員一同、自分に限界を決めずに芝居に精進していきます!」と宣言。千秋楽を乗り切った糸原は感極まって泣きながらも、最後には笑顔を見せていた。
劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』
さらに、丸尾と秋元もカーテンコールに登壇。丸尾は「秋元さんの熱い想いの中で本を書き、秋元さんの歌を最大限に活かして、ここにいる素晴らしい才能を持った役者たちの魅力を引き出すことは自分にとってもプレッシャーでした」と振り返った。最後に秋元は「まだ駆け出しですが、彼らのエネルギーがさらにパワーを増していくと思います」とスタンディングオベーションで沸く観客たちに呼びかけた。
劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』
旗揚げ公演で、泥臭くも熱い気持ちを前面に打ち出し、汗と涙で感動を客席にもたらした劇団4ドル50セント。今夏には本編でパフォーマンスした劇中歌で音楽ツアーも予定しているという。これからどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、今後の活躍に期待したい劇団だ。
劇団4ドル50セント旗揚げ本公演『新しき国』
取材・文=櫻井宏充、写真=オフィシャル提供
2月8日(木)18:30開演
2月9日(金)18:30開演
2月10日(土)12:30/17:30開演
2月11日(日)12:30開演
2月12日(月)12:30開演
■劇場:紀伊國屋ホール
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■トータルプロデューサー:秋元康
■脚本・演出:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
■音楽:和田俊輔
■振付:CRE8BOY
■クリエイティブディレクター:近山知史
■出演:糸原美波、本西彩希帆、前田悠雅、福島雪菜、岡田帆乃香、蕪祐典、中村碧十 ほか