演出 岡本寛子が語る「Living Room MUSICAL~スターのいるレストラン~」~新たなるシアター・レストランの試み
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岡本寛子
実力派ミュージカルスター達のパフォーマンスが間近で堪能出来る「Living Room MUSICAL~スターのいるレストラン~」が、渋谷道玄坂のeplus LIVING ROOM CAFE & DININGで開催される。主に舞台で活躍する実力派ミュージカルスター達がいつもの劇場を飛び出し、まるでリビングルームのようなアットホームな空間の中で、ホットなミュージカルナンバーの数々をパフォーマンスする、というこの企画はシリーズ化が予定されており、2018年2月26日に行われる記念すべき第一回目には、夢咲ねね、川口竜也、青野紗穂ら豪華メンバー達が出演する。
この公演を企画したのは演出家/脚本家の岡本寛子。テレビの放送作家を経て、2008年から宝塚歌劇団演出部に所属、『エリザベート』『ロミオとジュリエット』『愛と青春の旅立ち』などの演出助手を務め、『ロミオとジュリエット』『モンテ・クリスト伯』などの新人公演も手掛けた。2013年退団後はフリーで活動中だ。今回の公演では、ショーの構成・演出も担当する彼女から話を聞いた。
--改めて「Living Room MUSICAL~スターのいるレストラン~」のコンセプトをご説明いただけますか。
ステージと客席との境目を感じさせないようなアットホームな空間の中で、お客様が飲食をしながら、演じ手と一緒に楽しめるミュージカル・ショーを考えています。海外で言うところの“シアターレストラン”です。
お客様にとっては、憧れのミュージカル・スターのパフォーマンスを間近で楽しめる機会となり、もしかすると、実際ショーに直接的に参加をしていただく場合があるかもしれません。また、パフォーマーにとっては通常の劇場公演では発揮しきれない実力やスキルを披露できる場にもなります。
お客様には、リクエストや意見をどんどん投じていただければありがたいですね。演者の側もお客様の声や提案に耳を傾けることで確実にスキルアップしていけると思います。そのようにして新しいスタイルのエンターテインメントを皆さんと一緒に創っていくことが理想です。
将来的には、有望な新人たちを紹介できる場にもしていけたらいいなと。それによってお客様は、ここに来れば明日のスターを発見できる、という楽しみも加味されますからね。出演者もシンガーばかりではなく、ダンサーやマジシャンなど色んなジャンルのパフォーマーを集めたいですね。
--この企画の生まれたいきさつを教えてください。
エンターテインメントというのは、人の心を豊かにする、元気づけることができる、という意味では物やお金に代えがたい大事なものだと考えています。しかし日本において上質のエンターテインメントは少し敷居が高いのではないかとも思っています。海外ですと、わざわざ劇場に行かなくても街中に色んなパフォーマーたちがいて、非常に身近な存在なんです。ただ、日本には日本の国民性や文化があります。ならば、海外と比較してお行儀がいいと言われている日本のお客様に、より身近なところでエンターテインメントを楽しんでいただくにはどうしたらいいのだろうかと、ずっと考えていました。
数年前に、ニューヨークで「クイーン・オブ・ザ・ナイト」という観客参加型の舞台を観ました。廃墟となった古いホテルの中のナイトクラブを改装した会場で、夜の女王が宴を催すという趣向のディナーショーでした。女王を喜ばすために、ドレスアップしてパーティーに参加しなければいけない。当初はまだ観光客が少なかったこともあり、絵に描いたようなセレブパーティーの様相を呈していました。ディナーショー形式で、演者がご馳走を運んでくるんです。また、観客もステージに上げられたり、どこかに連れていかれたりと、ハプニング満載です。全体的に退廃的というか、アダルトでブラックなムードの中で、ダンスやアクロバットが繰り広げられます。調べてみると、これはトニー賞受賞経験者やシルク・ドゥ・ソレイユ出身者など一流スタッフたちによってガッツリ固められたチームが作ったショーだったんです。衣裳もトム・ブラウンという超大物デザイナーが手掛けていました。このような飲食とアートとエンターテイメントの垣根のないスタイルで、日本人向けにもっと明るい感じのものができないだろうか、と思ったんです。
日本にもブルーノートやコットンクラブのような飲食を伴うライブ空間は幾つかありますが、そういうのとも違う、新しいシアターレストランを求めるようになりました。それで、そういう施設を都内で一から作るとどのくらいの費用がかかるのかを知り合いに見積もってもらいました。すると「最低でも必要だ」と出てきた額が6億円!(笑)。4年前のことです。
2015年にLIVING ROOM CAFE & DINING(以下、リビングルームカフェ)が渋谷に誕生したと聞きました。ただ当初は
--それにしても「Living Room MUSICAL~スターのいるレストラン~」の記念すべき第一回は出演者が華やかですね。
初回の2月26日は、皆さまに認知して頂きたいという思いもあり、華々しい出演者に勢揃い頂きました。ミュージカルスターは、歌やダンスの技術はもちろん重要ですが、ルックスも大事だと思っています。夢咲ねねさんは、宝塚歌劇団の演出部で仕事をご一緒していた頃から類稀なるスタイルと可愛らしさを兼ね備えている方だなあと思っていました。ただ、ご存知の通り今も大変な人気なので出演は難しいだろうと思っていましたが参加していただけることになりました。あの立ち姿を間近で堪能できる機会というのは、そうそうないと思います。
一方、今回のようなショーでは、アドリブの利いたトークで場を楽しく盛り上げることのできる才能もなくてはならないものです。そういうことのできる俳優さんが川口竜也さんです。もちろん川口さんは『レ・ミゼラブル』のジャベールでおなじみですよね。あの声をすぐそばで聴いた途端、客席に電気が走るのではないでしょうか。ローラースケートやジャグリング、タップダンスなどの特技もお持ちで、ご本人はそれらも披露したいと仰っているのですが、その中の幾つかは今回何らかの形でまのあたりにできるのではないかと思います。
青野紗穂さんは『RENT』のミミを観て、なんという歌のうまい若手だろうと衝撃が走りました。ミミに求められる純粋さをこのうえなく体現しつつ、歌もダンスも本当に素晴らしかった。今回は『RENT』の楽曲はもちろんですが、通常の劇場公演だけでは叶わない色々なミュージカル・ナンバーを彼女の歌声で聴いていただき、その実力の凄さを改めて認識していただきたいですね。
今伸び盛りの岡本悠紀には、様々なジャンルの歌唱とともにその高い身体能力を今回の場で存分に発揮させます。また、宝塚歌劇団時代からスーパーダンサーでならしていた月央和沙さんは、退団後も映像で卓抜なダンスを披露したり、振付家としても活躍されていますが、今回のショーでも全ての場面の振付を担当頂き、ショー全体を盛り上げてくれています。さらなる才能に驚いていますし、歌手同様、彼女の切れ味あるダンスも必見です。
--最後に読者の皆様にメッセージを。
一流ミュージカル俳優たちが魅惑のミュージカル・ナンバーの数々を至近距離で歌い演じ、それを飲食しながら楽しめるという機会はとても貴重だと思います。日本のミュージカル・シーンの底上げにもつなげられる企画だと確信しています。この新しいスタイルのミュージカル・ショーを一緒に創造して根付かせていきましょう! ぜひともご参加をお待ちしております。
東京生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業。在学中からテレビの放送作家として活動。担当番組に『いつみても波瀾万丈』『チューボーですよ!』『出没!アド街ック天国』『TBS皇室特番』『余命一ヶ月の花嫁』ほか多数。2008年〜宝塚歌劇団演出部に所属。演出助手として、植田紳爾演出『外伝ベルサイユのばら』小池修一郎演出『エリザベート(月組)』『ロミオとジュリエット(月組新人公演演出)』石田昌也演出『愛と青春の旅立ち』『美しき生涯(新人公演演出)』『おかしな2人』『第2章』(ニール・サイモン原作)『モンテ・クリスト伯(新人公演演出)』など26作品を担当。2013年宝塚歌劇団を退団。現在、フリーで脚本演出、作詞、演出助手、餅つき、ミュージカル俳優の弟・岡本悠紀のプロデュースなど活動中。(株)ムジカモモジカ代表。
取材・文・撮影=安藤光夫
公演情報
2018年2月26日(月)13:00開場 14:00開演
2018年2月26日(月)18:30開場 19:30開演
■会場:
eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■出演:夢咲ねね 川口竜也、青野紗穂、岡本悠紀、月央和沙
■構成・演出:岡本寛子
■予定曲目(一部)
RENTより「Out Tonight」、レミゼラブルより「On My Own」「Stars」、スカーレット・ピンパーネルより「あなたを見つめると」ほか、ロミオとジュリエット、エリザベート、ラ・ラ・ランドより
■主催:イープラス/ムジカモモジカ
■共催:イープラス・ライブ・ワークス
■公式サイト:http://eplus.jp/lrm/