浅草の小劇場で満天の星空を体験! C.C.C第5回公演『ココロドロップス』稽古場レポート
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(左から)阿川祐未、マリコ、寺崎まどか、足立雄大郎
まもなく開場1周年を迎える小劇場、浅草九劇。そのファーストイヤーを締めくくるのが、Creative Company Colors(以下、C.C.C)第5回公演『ココロドロップス』だ。物語の舞台は、浅草。前科アリのシングルマザー、31歳のサワコとサワコを取り巻く浅草の人々を描くヒューマンドラマだが、来場者を驚かせるような仕掛けも予定されている。2月22日(木)からの4日間・全7公演を前に、主演の阿川祐未、脚本の藤田秀明、演出の矢部亮、そしてC.C.C主宰の秤谷建一郎にインタビュー。稽古場の写真とともに、『ココロドロップス』の見どころをお届けする。
観たらきっと、浅草を歩きたくなる
酒屋さんの店頭にビールケースを置き、そこでお酒をのむことを角打ち(かくうち)というのだそう。本作の脚本を手掛ける矢部は、「浅草九劇での上演ということで、舞台は浅草の路地裏です。サワコが住む家の隣に酒屋があり、角打ちで飲む人や通りすがる人たちが、おせっかいを焼いてくる」物語だと説明する。
(左から)佐藤こてつ、マリコ、秤谷建一郎
『ココロドロップス』はC.C.Cにとって5回目の舞台作品となるが、浅草での公演は今回が初めて。阿川によれば「私たち自身が浅草に馴染めるように」と、この公演が決まってからは、折に触れ浅草に足を運んだという。
「せっかく浅草に来るのだから、お芝居だけでなく、浅草も楽しんで帰ってほしい。それが結果的に、この公演でお世話になる、浅草の方々への恩返しになればと思う」
本公演の物販コーナーでは、C.C.Cのメンバーが実際に浅草を巡ってチョイスしたお菓子の詰め合わせも並ぶ予定だ。さらに劇中で人力車の車夫さんが着る衣装は、実際に浅草で人力車ひく「えびす屋」さんからお借りしたもの。さらに25日昼公演限定で、浅草花月堂の「ジャンボめろんぱん」のプレゼントもある。これから観劇の予定を立てる方は、ぜひ劇団HPもチェックしてほしい。
人力車の車夫役:朝日信晴(手前)
浅草で“信じられないくらい”の星空体験
役者、バンドマン、作曲家、ダンサー、スーツアクター、坊主、声優、アイドル、脚本家や演出家といった、さまざまな才能をもつメンバーが集まり、新たな表現方法を模索してきたC.C.C。過去の公演では、立ち廻りや歌、ダンスなど、エンタメ要素をふんだんに盛り込んできたが、『ココロドロップス』は直球のストレートプレイになるという。
(左から)新八、中山ヤスカ、秤谷建一郎、村上貴弘
しかしC.C.C主宰の秤谷は、自他ともに認める「ストレートなだけでは気がすまない」性質。今回もお芝居の中にサプライズがある。
「脚本に、星を映すという描写があったんです。今ならプロジェクションマッピングなどがまず思い浮かぶと思いますが、『これをガチのプラネタリウムにしちゃったらヤバいんじゃね?』って」
秤谷は事もなげに説明するが、これは小劇場で初の試みではないだろうか。しかも投影機は、世界的なプラネタリウムクリエイターの大平貴之氏が代表を務める、大平技研の協力によるもの。秤谷と矢部が相談にあがったところ、快諾してくれたのだそう。
「劇場の中に信じられないくらいの星空が広がって、お客さんに忘れられないような体験をしてほしいんです」
(左から)足立雄大郎、寺崎まどか、渡久山孝洋、小菅博之、秤谷建一郎
だれもがサワコと近い感覚を
賑やかで和やかなC.C.Cの稽古場も、通し稽古がはじまり空気が変わった。冒頭に、お骨の入った白い箱をもつ少女。祖父が他界し身寄りがなくなった様子。そこに登場したサワコが、冷たい口調で次のように言い放つ。
――自分のこれからの人生に、絶望した?
――いいことなんか、なぁんにもないよ、生きてても。
少女が感情を抑えた反応しかみせないせいか、その言葉はサワコが自分自身に言ったようにも聞こえた。
主人公のサワコは、結婚歴、出産歴、離婚歴に逮捕歴もある31歳。サワコ役を演じる阿川は、「結婚、出産、離婚、逮捕。私はどれも経験がありませんが(笑)」と前おきをした上で、次のように語る。
「サワコが、自分とかけ離れた人だとは思えません。演じていくうちに『誰もがサワコと近い感覚をもったことがあるのでは?』と感じるようになったんです。人に期待したばっかりに、裏切られて絶望したり、欲しがったばっかりに、手に入らないことにがっかりしたり……。『だったら、はじめから何も思わなければ良かった』と思うような経験が、誰にでも一度はあると思うんです。サワコは、その思いが増幅した人。特に女の子には、サワコの中に自分と近いものを感じていただけるんじゃなかなと思います」
すごく大変。だけれど、すごく楽しい。
(左から)ゲッツ、江本和広
この日の取材では、舞台美術やプラネタリウム、照明などの演出を観ることはできなかったが、お芝居だけでも大きく心を揺さぶられた。シリアスなシーンとコミカルなシーンが絶妙なバランスで訪れ、さらに、並行して2つの物語が進むので飽きることなくどんどん引き込まれる。
役者陣は、サワコをはじめ皆、自然体でありながらも緩急のある演技。たとえば、澤田より子役を演じる加藤智彩。烈火のごとく怒った時と穏やかな時のギャップが面白く、その夫役を演じた村上貴弘の怒られっぷりにも安定感があった。
村上貴弘(下)
一度しか登場しないのに強烈な印象を残すキャラクターや、登場のたびに場をさらう劇中劇のキャラクターなど、すべての登場人物が個性と存在感を発揮していた。
(左から)ゲッツ、田中琢磨
(左から)渡久山孝洋、江本和広
演出を手掛ける矢部亮は、現代社会における人間関係の希薄化に触れ、「『ココロドロップス』が、人と関わることって、すごく大変。だけれど、すごく楽しい。そんなメッセージを伝えられる作品にしたいです。ご覧いただいた後には、『自分の家族や大切な人に、連絡をしてみよう』という気持ちになっていただければ幸いです」とコメント。
その言葉の通り、サワコが困っているときは、(本人が望もうと望まざると)だれかが声をかけてくれる。隣の酒屋のおばちゃんや、見た目は怖い棟梁、その弟分。近所の浪人生や、ビジネスマンなど、誰かが手をさしのべる。娘のいつこ(寺崎まどか)にしたら、サワコだって、充分おせっかいな人に違いない。
(左から)矢部亮、ゲッツ ※矢部は演出の他、監督役で舞台にも登場
阿川は「『ココロドロップス』を観てくださった方の心に、ちょっとでいいから生きる力が沸くといいなと思います。ほんのちょっとでいいんです。『生きていくのが、しんどくなっちゃった』という人が、『1週間くらいならがんばれそう』みたいな。そんなパワーをお届けしたいなと思います」と締めくくった。
(左から)阿川祐未、小菅博之
親子の物語、夫婦の物語、キレッキレの喜劇的要素に、プラネタリウム。盛りだくさんではあるが、とってつけたような要素は一つもなく、上演時間の2時間はあっという間に過ぎるだろう。まだ寒い日が続くこの季節だからこそ、浅草に足をのばし、『ココロドロップス』の忘れられない温かさを感じてほしい。
Creative Company Colors(以下、C.C.C)第5回公演『ココロドロップス』は、2月22日(木)に開幕。25日(日)までの上演だ。
公演情報
Creative Company Colors 第5回公演『ココロドロップス』
■日程:2018年2月22日(木) ~ 25日(日) ※全7ステージ
22日(木) 19:30~
23日(金) 14:30~/19:30~
24日(土) 13:00~/18:00~
25日(日) ★13:00~/18:00~
★=スペシャル公演(特典付き)
■会場:浅草九劇 (東京)
■料金
・プレミアム
・スタンダード:3,800円
・当日券:4,000円
■出演
阿川祐未(アートプロモーション)
加藤智彩(流星揚羽)
村上貴弘
寺崎まどか
マリコ(演劇ユニットEva)
足立雄大郎(HIGHcolors)
秤谷建一郎(TOTAL OBJECTION、音影)
小菅博之(ディジャール、Teamかわのじ)
江本和広(ヨコスカトイポップ)
佐藤こてつ
田中琢磨
新八
渡久山孝洋(V8japan絶叫上映企画チーム)
矢部亮(BQMAP)
藤田秀明(らちゃかん)
以上C.C.C
ゲッツ
傷彦(ザ・キャプテンズ)
中山ヤスカ
朝日信晴
スペシャル公演ゲスト:YANAKIKU
■
・プレミアム
※優先入場券、プレゼント、お好きな役者とお持ちのカメラで2ショット撮影付
※e+(イープラス)のみの取り扱いになります。
※先着順のため、予定枚数終了次第受付終了となります。
・スタンダード:3,800円
・当日券:4,000円
≫プレミアム
http://eplus.jp/kokodoro/
※イープラスでのみ取扱い
≫その他の公演のお申し込み
http://ticket.corich.jp/apply/87650/