三重・四日市にて“演劇化計画”が始動!
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「Yonbun Drama Collection」チラシ中面
天野天街の脚本・演出作品を軸とした、濃密な演劇プロジェクト
三重県下最大の人口30万人を擁する四日市市。県北部の中心都市として発展し、名古屋からも電車で約35分というご近所エリアながら、これまで小劇場演劇の公演が行われることは少なく、“観劇の場”としては正直なじみの薄い土地であった。そんな中、「四日市にもっと演劇を!」という市民の要望に応えるべく「四日市市文化会館」が今夏から立ち上げたプロジェクトが『Yonbun Drama Collection』(通称よんドラ)なのだ。
<四日市演劇化計画>と気合たっぷりのサブタイトルを掲げ、約8ヶ月間に渡って行われる今年度のメイン企画は、名古屋が誇る奇才・天野天街が脚本・演出を務める3本の演劇公演。10月に流山児★事務所の『西遊記』、来年1月に一糸座の人形音楽劇『泣いた赤鬼』、そして2月には天野が主宰する少年王者舘の『思い出し未来』の上演が予定されている。さらに演劇セミナーやワークショップなど計9つの関連企画も用意され、バラエティに富んだ内容で進行中だ。
このプロジェクトを手がける「四日市市文化会館」の田中峻さんは、「これまで市民ミュージカルなども行ってきましたが、単発モノの公演が多くて。演劇公演をきちんと開催したい、何かシリーズで展開することで四日市の演劇を盛り上げていきたい、と思っていました。かといって、いきなり小劇場演劇を展開しても四日市では受け入れてもらうのが難しいかもしれない。そこで大人から子どもまで楽しめ、演劇の面白さを伝えられる内容にしたいと思ったんです」と企画意図を語ってくれた。
天野天街を起用した理由については、「まず最初に、四日市で活動している宮璃アリさん(少年王者舘の女優・制作)に相談したんですが、天野さんが演出した人形劇がとても面白いと。内容を聞くとインパクトがあって、まさに子どもから大人まで楽しんでもらえると思いました。天野さんが創る3つの公演を通して幅広い層に楽しんでもらうことで、四日市の演劇文化が発展してくれるのではないかと思います。また、小熊ヒデジさん(役者・演出家・劇作家・演劇プロデューサー・演劇教室主宰など名古屋を拠点に幅広く活動)にも企画アドバイザーとして関わっていただくことで、一般の方に参加して楽しんでもらえる関連企画も組み立てていきました」とのこと。
6月から順次開催された関連企画では、まず演劇の魅力を知ってもらうべく『現代演劇のススメ』と題した演劇セミナーを実施。9月にはセミナー第2弾として『地域における劇場のありかた』も行われ、その間の夏休み期間中には、子どもを対象としたもの、スタッフワークに着目したもの、そして“演劇のエッセンスで遊ぶ”ことを目的としたもの、の3つのワークショップを開催。幅広い年代が演劇に親しむことができるラインナップで展開された。
なかでも予想以上の成果を見せた、『美術ワークショップ・イメージをカタチにする!』を少しご紹介。講師は、少年王者舘やKUDAN Projectをはじめ主に天野演出の舞台美術を手がける田岡一遠(舞台美術家・イラストレーター)が担当。<舞台美術づくり>をちょっと体験…というレベルに留まらず、なんと前出の小熊が主宰するNAGOYAダイアモンズ(名古屋演劇教室「初心者のための演劇ワークショップ」の参加者で構成)の公演『海辺の足跡』で実際に使われる舞台美術をプランニング&製作するというものなのだ。
プランニング&製作は、9月末に本公演が行われた名古屋「ナビロフト」の劇場サイズで進められたが、実質の完成・お披露目は「四日市市文化会館」で行われた9月22日の公開リハーサルとなった。ワークショップに参加した6名は田岡指導のもと、脚本からイメージした舞台美術をイラストに起こして図面を引き、模型を作成して実際のセットを作る…という過程を、7月末から全7回の講座で完成を目指すというタイトな課題に挑戦。舞台美術製作は皆ほぼ初体験という状況で一見無謀とも思える試みだったが、チーム一丸となって作品の世界観を見事に表現した。演劇のワークショップといえば俳優向けのものが主流だが、作品を裏側から支えるスタッフワークの面白さや苦労を認識できるとても有意義な講座として、来年度以降の開催にも期待を寄せたい。
WS参加者が製作した模型の一部。初心者とは思えない出来栄えのものばかりで、中には明かりを仕込んだ凝ったものも
講座というより現場作業(!?)の様子。中央が講師の田岡一遠
WS参加者の思いと努力が結実した、「ナビロフト」に組まれた実際のセット
さて、今週にはいよいよ公演第一弾、流山児★事務所の『西遊記』が上演される。天野の脚本・演出と鈴木慶一(ムーンライダーズ)の音楽により“歌謡冒険活劇”として創出される本作は、このあと東京公演や来年3月にはインドネシアとタイ(全5都市)の巡回公演が予定されており、四日市はその一大ツアーのスタートを切ることに。「「西遊記」の基本にのっとりながら、<アタシは誰か?>をテーマに曖昧で安心できない者たちを登場させます」と天野。
三蔵法師に孫悟空、猪八戒、沙悟浄といったおなじみの顔ぶれが、どう変容し舞台上に現れるのかはもちろん、天野演出には珍しい殺陣のシーンが盛り込まれているというのも見ものだ。
『西遊記〜JOURNEY to the WEST〜』チラシ
左から、天野天街(脚本・演出)、鈴木慶一(音楽)、流山児祥(企画・芸術監督)
引き続き11月には天野が講師を務めるワークショップ、そして来年には人形劇ならではのより大胆な天野演出が楽しめる『泣いた赤鬼』や、約2年半ぶりとなる少年王者舘の本公演『思い出し未来』などまだまだ続く今年度の企画はもちろん、「観る人、上演する人、そこに関わる人みんなが楽しめるよういろいろな方法を探りながら、今後も多くの人に関わってもらえる企画として継続していければと考えています」と田中さんが語る、来年度以降の展開にも注目だ。
開催期間:2015年6月27日(土)~2016年2月19日(金)
会場:四日市市文化会館(三重県四日市市安島2-5-3)
アクセス:「近鉄四日市」駅から西へ徒歩約10分
問い合わせ:四日市市文化会館 059-354-4501
公式サイト:http//yonbundra2015.wix.com/yon-dra-collection
※会場はいずれも四日市市文化会館 第1ホール舞台上特設ステージ
脚本・演出/天野天街 音楽/鈴木慶一(ムーンライダーズ)
上演日時/2015年10月15日(土)19:00、16日(日)19:00
原作/浜田廣介 脚本・演出/天野天街
上演日時/2016年1月16日(土)14:00、17日(日)18:00
作・演出/天野天街
上演日時/2016年2月18日(木)19:00、19日(金)19:00
【これから開催のワークショップ予定】 ※詳細はHPで確認を
開催日/2015年11月14日(土)・15日(日)
●すわ公園交流館、中央児童館こどもの家コラボ企画『泣いた赤鬼を読んでみよう!』
開催日/2015年12月6日(日)
開催日/2015年12月12日(土)