佃典彦、天野天街、火田詮子、小熊ヒデジら出演、はせひろいちの作・演出で『科学する探偵』

2018.2.21
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演劇アカデミー生と、講師で作・演出のはせひろいち、役者ゲスト4名の面々


受講生と稀有な顔ぶれのゲスト、総勢37名で描く【小酒井不木】の生涯

「名古屋市芸術創造センター」が主宰する、平成29年度《演劇アカデミー》の修了公演『科学する探偵 ~名古屋から乱歩を支えた小酒井不木の生涯〜が、まもなく2月24日(土)・25日(日)に同劇場で上演される。

《名古屋市芸術創造センター 演劇アカデミー》は、次世代を担うアーティストの育成を目的として、名古屋を中心に第一線で活躍する俳優や演出家を講師に迎え、約半年に渡ってワークショップを行うものだ。平成24年度から《バレエ》と《演劇》を隔年で開講し、3回目となる今回の《演劇アカデミー》は、劇作家・演出家のはせひろいち(劇団ジャブジャブサーキット主宰)が講師を務め、公募によるオーディションを通過した33名の受講生が参加している。

名古屋市芸術創造センター演劇アカデミー修了公演『科学する探偵 〜名古屋から乱歩を支えた小酒井不木の生涯』チラシ表

講師のはせが今回題材に選んだのは、大正から昭和初期に医学者・作家として活躍した、愛知県蟹江町出身の【小酒井不木(こさかいふぼく)】である。血清学の世界的権威として名をあげる一方で豊富な知識を活かして執筆活動にも勤しみ、晩年のわずかな期間には犯罪心理を盛り込んだ多数の探偵小説を発表した。名古屋市内に構えた住居で江戸川乱歩や横溝正史らとも交流していたが、持病の肺病には勝てず、1929(昭和4)年に38歳の若さで他界している。

昨年11月には、名古屋市主催の〈やっとかめ文化祭〉参加作品として、同じくこの【小酒井不木】を題材に天野天街が作・演出を手掛け、少年王者舘 番外公演『人工恋愛双曲線』も行われた。はせと天野は古くからの盟友で、偶然にも近い時期に同じ題材で公演を行うという、ある種奇跡のような創作体験を共有したのだ。昨秋、創作に至る経緯や【小酒井不木】その人について二人が語った対談を当サイトで掲載しているので、こちらも観劇のご参考に。

劇作の主題でありながら、不木については「随筆と題名は抜群だけど、探偵小説は今ひとつ」という共通見解を持つ両者は、これまた揃って台本執筆に大苦戦。本当に仲が良い。

稽古風景より

ともあれ、無事完成したはせの『科学する探偵…』は、大正十四年に小酒井不木(35歳)と江戸川乱歩(31歳)が名古屋の地で初対面したという史実を軸に、二人の間で交わされた書簡や不木の死、横溝正史や森下雨村とのエピソード、さらには不木と乱歩の作中人物(怪盗・紅蜘蛛や怪人二十面相)なども交えながら、はせお得意のミステリー仕立てで不木の生涯を描いた作品だ。

劇中には、不木にまつわる公演を行おうとする現代の劇団や学生、謎の脅迫状を捜査する刑事なども登場。時空を超え、不木の周辺を旅して物語の展開を牽引する〈劇作家〉の存在や、自虐ネタを含めつつ確信犯的に盛り込んだ演劇の常套手段を駆使することによって、アカデミー33名を余すところなく生き生きと活躍させているあたりも見どころのひとつである。

不木の探偵小説のエッセンスを凝縮し散りばめた天野作品と、史実をベースに大人数を巧みに配置しオリジナルミステリーに仕立てたはせ作品。前者をご覧になった方は、その違いも楽しみながら【小酒井不木】という作家を見つめてみるのも。

稽古風景より

今回の修了公演にあたっては、はせが演劇仲間である佃典彦天野天街火田詮子小熊ヒデジに声を掛け、ゲストとして招聘。近年は役者として舞台に立つこと自体珍しい天野をはじめ、この先二度と見ることが叶わないかもしれない顔ぶれによる、夢の競演が実現したのだ。これについては当人が一番喜んでいるようで、

「アカデミー生の33人とゲスト4人に書き下ろさなければいけないプレッシャーはキツかったけど、とても楽しい。本当に夢のようですよ」と。

また、昨年の10月末から始まった講座の前期には、ゲスト4名もそれぞれ1日ずつワークショップを実施。はせはこれにも刺激を受けたそうで、例えば、自身が数十年前に出演した芝居の記録映像を流しながら座学を行った火田詮子のワークショップを見て、「このアングラさをもっと皆に伝えたい」と思い、火田演じる〈怪盗・紅蜘蛛〉のキャラクターを発想。しかも終盤で紅蜘蛛が歌うシーンは、数年前にある街の公園で偶然見かけた、ボロボロの黒いコートをまとって高らかに歌う女性と紅蜘蛛のイメージが重なり、元ネタにしたという不思議な巡り合わせも。上演では若干アレンジしているものの、内容はほぼそのままという歌詞にもご注目を。

稽古風景より


【本作出演に向けてのゲストコメント】
佃典彦(劇作家・演出家・俳優/劇団B級遊撃隊主宰)
どーも、名古屋のミラーマン佃です。今回は役者として参加してます。はせさんの台本はドンドンと演劇の範疇から逸脱して毒ガスが拡散していくかの様に世界が広がって行きます。僕は不勉強で小酒井不木の小説を読んだ事がありませんが実在の人物を扱いながらも時代の束縛から逃走し続けるはせさんに憧憬しております。アカデミー生の皆さんも個性豊かで面白い方ばかりです。僕も負けずに張り切って遊べたら良いなぁ・・・と思ってます。
天野天街(劇作家・演出家/少年王者舘主宰)
熱心に皆の呼吸を受け取り、100年くらい前の病原菌を全20行のセリフの中で一生懸命はせって不木ってアカデミります。

稽古風景より。左から・佃典彦、演出をつけるはせひろいち、小熊ヒデジ、天野天街

火田詮子(俳優)
(スケジュールの都合で)今日初めて稽古に参加しましたが、〈紅蜘蛛〉の役を楽しく演じさせてもらっています。ジグソーパズルがだんだん完成していくように、これから本番までにいろいろなピースがどんな風にはまっていくのか、とても楽しみです。

稽古風景より。中央が火田詮子

小熊ヒデジ(俳優・演出家・演劇プロデューサー/てんぷくプロ・KUDAN Project・名古屋演劇教室主宰)
楽しいお祭りみたいです。天野君と共演できるのも珍しく、見ていてとても面白いです。佃君とのやりとりも新鮮で、それをはせ君のホンで体験できるということが嬉しい。大事な役をもらって幸せですし、はせ君の演出を肌感覚で感じることできるこの公演に、俳優として楽しみながら参加させてもらっています。

稽古風景より。左から・佃典彦、小熊ヒデジ

取材・文=望月勝美

公演情報

名古屋市芸術創造センター演劇アカデミー修了公演
『科学する探偵 〜名古屋から乱歩を支えた作家・小酒井不木の生涯〜』

■作・演出:はせひろいち
■出演:石川朋未、石原美雪、岡峰洋、小木曽琴江、尾國裕子、小関道代、柏木麻理子、片岡舞、北原麦酒、日下健人、清水暁美、庄司俊介、神野愛巳、すがとも、図師久美子、髙木京美、高田園子、髙橋翔子、髙橋麻世、田中千晴、塚原知世、成田千祥、長谷部恵美、花畑里桜菜、土方雅仁、古部未悠、堀金芳枝、前田眼子、牧野遼子、宮下玲子、宮本奈央子、山月リコ、脇田幸雄(以上、演劇アカデミー受講生) ゲスト/佃典彦、天野天街、火田詮子、小熊ヒデジ

■日時:2018年2月24日(土)19:00、25日(日)15:00
■会場:名古屋市芸術創造センター(名古屋市東区葵1-3-27)
■料金:一般2,000円 学生(高校生以下)1,500円
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「新栄町」駅下車、1番出口から北へ徒歩3分
■問い合わせ:名古屋市芸術創造センター 052-931-1811(9:00~20:00、月曜休館)
■公式サイト:名古屋市芸術創造センター https://www.bunka758.or.jp/scd02_top.html
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