『MINAMI WHEEL 2015』ライブレポ WANIMA / LAMP IN TERREN
LAMP IN TERREN
大阪・ミナミ地区のライブハウス21箇所で一斉にライブが行われ、それを好きに観て回れるというサーキット・イベントが『MINAMI WHEEL 2015』だ。SPICEではこのイベントに注目、総編集長と音楽担当がそれぞれ注目するイチ押しアーティストのライブをレポートする。本稿では音楽担当・風間が何としても観たかった、そして同じ気持ちを抱いた多くのファンたちによって入場規制がかかるまでの大盛況となった、2組のレポートを掲載する。
WANIMA
WANIMA
『MINAMI WHEEL 2015』で最大のキャパシティとなる会場のBIGCATで、それもまだ陽の高い午後15:00に、入場規制がかかっていた。しかも入りきらないオーディエンスが会場の2フロア下まで長蛇の列を作っている。そのことからも如何にWANIMAが快進撃を続けてきたか、彼らの音楽が多くの人々の心を揺さぶってきたのかがよく分かる。
「いいから」でスタートしたステージは、いきなりフルスロットル。もっとも藤原弘樹(Dr/Cho)が影ナレでかしこまって注意事項を読み上げたり、リハ中にポケ◯ンの歌を歌ったり下ネタを投下したりと存分に客席を温めてあり、何より当の本人たちも全力で楽しんでいるからだろう。
その後も「夜空ノムコウ」をいきなりカバーしてそのままモノマネに移行したりと、奔放なステージを展開していくWANIMAだったが、もちろんそれだけではない。松本健太(Vo/Ba)はベースを弾きながら、ときにはそれさえ放棄しながら、拳を突き上げたりタオルを振り回したりと縦横無尽にステージ上を駆けまわる。そんな松本の歌声にあわせた西田光真(Gu/Cho)のコーラスによって歌メロのキャッチーさは倍増していき、どの曲も即効性十分だ。
「TRACE」では歌詞を<また逢えたらここ大阪で>と変えて歌唱して大歓声を巻き起こし、「BIG UP」では会場全体にコールが響き渡り、「1106」は冒頭から大合唱。ボルテージは常に最高潮で、ファンも思い思いにダイブしたりサークルモッシュしたりと、ライブの持つフィジカルな魅力も会場全体で共有していく。
「日本で一番ミナミホイールが好き!WANIMAでした!」と叫んで繰り出されたラストナンバーは「Hey Day」。激しくも最後まで笑顔に包まれたステージを終えた彼らは、パンク、もっといえばロックのライブに参加するという根本的な楽しさを再確認させてくれた。
全力で楽しみ、楽しませる。悪ノリもする。演奏はバッチリやる。簡単なようでこれを出来ているバンドはそう多くない。そしてWANIMAが一際輝いている理由はそれらを全うしているからなのだと実感させてくれる、エネルギッシュで痛快な30分間であった。
LAMP IN TERREN
LAMP IN TERREN
トリ前のOSAKA MUSEに集まった多くのファンたちにとって、人気曲「メイ」を直前リハ(もちろん公開)で披露されたら、テンションが上がらないわけもなく、開演を待つ会場は期待感に満ちている。そこに向けて飄々と、優しく語りかけたり、ちょっと笑わせにかかったりする松本 大(Vo, & G)が作り出す雰囲気はどこかあたたかく、それもLAMP IN TERRENの魅力だ。
本編は1st ミニアルバム『POTAL HEART』からの「portrait」からスタートした。以前にもLAMP IN TERRENのライブは観ているが、そのときと今日とで決定的に違ったことがある。サポートギターが編成に入り、4人でステージに立ったのだ。もちろん松本もギターは弾くのだが、3人編成でのライブと比べると、格段に歌唱中のアクションや表現の部分で幅が広がり、より楽曲のメッセージを視覚的に伝わって来る。
続けて「ランデヴー」「Sleep Heroism」と、原点ともいえる『POTAL HEART』の曲順をなぞるように楽曲を披露。彼らの繊細さと迫力を併せ持ったサウンドと歌声は、やはりライブでより際立つ。そんな彼らの魅力を凝縮したような楽曲「ボイド」、自らの歩みを肯定するという思いが込められていると明かした「multiverse」を経て、ラストナンバーは果てない未来を掻き鳴らすアッパーな「ワンダーランド」で締めくくったLAMP IN TERRENからは、ここまでの歩みを振り返り、確信に満ちて先へと進もうとしているーーそんな決意がありありと感じられるセットリストであり、編成であり、パフォーマンスだった。
MCで中原 健仁(Ba)が少し冗談めかしながら語った、「来年はBIGCATかな」の言葉。
それは決して大言壮語でも夢物語でもなく、今月末にスタートする初のワンマンツアーはすでに、大阪公演も含めSOLD OUTが続出している。2000年代以降のロックシーンのド真ん中をいくようなメロディアスでエモーショナル、そして真っ直ぐな彼らの音は、確実に多くの耳に届き始めているのだ。
この日のように4人編成でライブを行うことで、出来るようになったこと。今後出来ると感じたこと。それらが彼らをまた一つ、次のステージへと押し進めるであろうことが確信できたライブだった。本当に楽しみでならない。
撮影・文=風間大洋