プロフィギュアスケーター・鈴木明子が惚れ込んだ「梅棒」とは? その魅力と稽古の様子を鈴木明子と共に見た
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鈴木明子、梅棒・伊藤今人 (C)赤坂久美
梅棒8th『Shuttered Guy』が2018年3月28日より約1か月間、東京、愛知、大阪、福岡の4都市で上演される。今回は公演を間近に控えた稽古場の模様と、この日見学に訪れた「梅棒ファン」を公言するプロフィギュアスケーター・鈴木明子のインタビューをお届けする。
梅棒は「踊りは気持ちだ!」をコンセプトに、2001年日本大学藝術学部ダンスサークル内で結成された男性のみのダンスエンターテインメント集団。これまでストーリー性のある演劇的な世界観をジャズダンスとJ-POPで作り上げ、「多くのお客様が感情移入し、共感、感動できるパフォーマンス」すなわち“劇場型ダンスエンタテインメント”を提供してきた。
梅棒 稽古風景 (C)飯野高拓
その梅棒が今回舞台に選んだのは、人情味あふれる商店街。古き良き商店街の家族や街の人との絆を描いた「笑いと感動のコメディドラマ」をダンスアクトで演じ切る。キャストは梅棒メンバー10名に加え、大久保祥太郎、佃井皆美、エグスプロージョンのまちゃあきなど、日ごろさまざまなフィールドで活躍する個性あふれる11名の実力派ゲスト。
梅棒 稽古風景 (C)飯野高拓
梅棒 稽古風景 (C)飯野高拓
梅棒 稽古風景 (C)飯野高拓
この日、稽古場では劇中の曲が何曲か披露。梅棒の舞台は、それぞれの曲ごとに振り付け・演出の担当を行う梅棒メンバーがいる。そのため総合演出を務める伊藤今人が「次、このシーンやろう!」と声をかけると、曲ごとのリーダーが前に出てきて振り付けや演出の指導を行っていた。
梅棒 稽古風景 (C)飯野高拓
演出指導は実に細かなところまで行きわたっていた。ターンのタイミング、カウントの取り方、アクションシーンにおける魅せ方、セリフが一切ないノンバーバルなエンタテインメントだからこそ、キャラクターらしさやストーリーをアクションで表現しなければならず、妥協は許されないのだ。
梅棒 稽古風景 (C)飯野高拓
梅棒 稽古風景 (C)飯野高拓
梅棒 稽古風景 (C)飯野高拓
梅棒 稽古風景 (C)飯野高拓
また全体で曲で合わせた後で、各パートごとにメンバー同士が対話を重ねていた。例えば緩急がはっきりとした振り付けを終えた後に「ここのカウントの取り方ってどうしてる?」と話す様子や曲担当を務める梅棒メンバーに「さっきのと今のどっちが良い?」と意見を求める様子だ。シンクロした振り付けの中で、キャラクターの個性が出せるよう綿密に計算しつくされているという印象を受けた。
また、この日、稽古場にはプロフィギュアスケーターの鈴木明子が見学に訪れていた。予てより梅棒の大ファンであったことから今回の現場見学となったのだそうだ。そんな鈴木に稽古見学の感想や梅棒の魅力についてお伺いした。
鈴木明子 (C)赤坂久美
鈴木明子インタビュー
――稽古をご覧になっていかがでしたか?
もともと梅棒の大ファンだったので、まさか稽古を見れるなんてと来る前から、どきどきしておりました(笑)。自分自身ショーを作る側の人間ではあるものの、他の方が公演を作り上げる様子を見ることってなかなかないので、梅棒ってこうやってできているのか!というのがよくわかりましたね。本当に細かいなって。
――“細かい”とは具体的にどのあたりに感じましたか?
出演者の方がたくさんいる中で、1曲の中にそれぞれの役柄のストーリーが散りばめられているんです。だから、それを表すために綿密な計算がされていて。いつもどこを見ればいいのか迷ってしまって、目が足りないんです(笑)。今回稽古を見ていて、どこを切り取ってもキャラクターらしさが出ていて、全編通してみるのが楽しみになりました。
鈴木明子 (C)赤坂久美
――鈴木さんが気になった場面や振りつけはありましたか?
どこまで言っていいのかわかりませんが、オープニングから瞬きをせずに見てほしいなって思いました! その後のストーリーにつながるキーポイントがちりばめられているので。
――“梅棒の大ファン”ということで、稽古見学の前から今作で気になっていた部分もあるのでしょうか?
日ごろから梅棒さんのツイッターをチェックしていまして、「今回は通し稽古の時点でおもしろい」って拝見したんです……。私、今までの作品も過呼吸になるくらい笑ってるんですよ(笑)。だから今回それ(前作)を越すってどうなっちゃうんだろうって。呼吸を鍛えてから行かなきゃなって思います!(笑)
――そんなにツボなんですね!
そうなんです! それに、おもしろいだけではなく、皆さんしっかり自分の持ち味を持っているからこそ、キャラクターを活かせるものだなという風に思っていて。例えば、同じ振りだけど「キャラクターの個性を出しつつ、合わせろ」みたいなところがすごく緻密な計算がされているんだなって。あのおもしろさは、アドリブだけでなくて、計算されているからこそなんだなって稽古をみて思いました。でも、もちろん、ここからさらにお客さんという最後のピースが加わって、完成されるものだと思います。フィギュアでもそうですが、それこそ舞台の醍醐味だと思うので!
鈴木明子 (C)赤坂久美
――演者だからこその視線ですね。そもそも梅棒に興味を持ったきっかけは?
もともとミュージカルが好きで、『エリザベート』を見に行ったときに、楢木さんの動きに目が留まって梅棒を知りました。その時に共通の知り合いを通して、「ぜひ梅棒を見に来てください」とお声がけいただき見に行ったんです。それで初めて見た時に「なんで私、知らなかったんだろう」っていうくらい衝撃を受けて、そこからファンになりました!
――『エリザベート』とのギャップもあったの思うのですが……
ギャップはすごかったです!(笑)「ダンスを見て爆笑できるんだ」ってことがすごく新鮮でした! それにダンスで大笑いするって、実はダンスを魅せる中でも、一番ハードルが高いのかなと感じましたね。笑わせながらも緩急をつけてストーリーとして魅せられるというのが梅棒の魅力の1つだと思います。
――他に梅棒の魅力だと感じる部分はありますか?
毎回いろんなゲストが出て来るところですかね。例えば6thの『GLOVER』で、全く違うジャンルの大貫勇輔さん(バレエ)が足を上げている感じはツボでした。だから今回もゲストの方と梅棒の化学反応が起こって、さらにおもしろくなっていくのかなって期待しています! 演者としては本当に尊敬する部分でもありますね。これまでも「最高におもしろかった!」を常に更新し続けてくれていて、良い意味で裏切られているのですが、演者側の目線から見ると“良いものを常に超えていく”ということが如何に難しいことであるかわかるので。
――尊敬しているというのは「おもしろいを更新し続けている」という部分なのですね。
はい。見ている人のハードルも上がって、普通のものなら絶対満足してもらえないだろう……というプレッシャーって相当なんですよね。だから、お客さんが何を求めているか考えながら、それを常に常に更新していくこととなると、新しいマインドも入ってこないと難しいだろうし、一方で梅棒のぶれない芯の部分もあるだろうし。だから純粋に表現者として尊敬していますし、本当に伊藤(今人)さんの頭の中はどうなってるんだろうって気になります!
あと、みんなで作り上げてるっていうのが稽古を見ていてすごく伝わってきました。伊藤さんが指示を出すというよりも、それぞれが自分のキャラクターを理解した上で個性の出し方を任せていて、もしそれが違ったら「違う」って言う、合っていたら「いいよ」っていう。そういうところが、一つの作品を作るにあたってすごく重要なんだなって思いました。
鈴木明子 (C)赤坂久美
――アスリートと通ずるところもありそうですね。
そうですね。アイスショーをやっていても「常に更新しよう」という思いはあり、そこに限りはないんです。だから、まだ見てないですけど、もう更新しているんだろうなって思います(笑)。
――振付師の目線で、振り付けの魅力というのはありますか?
タイミングにすごくこだわっていて、このシーンでは何に集中させたいか、何を伝えたいのかという点を、そろえるところはそろえるようにして意識を散らさないようにしているという点で工夫を感じました。
「ぐっと集まるときは集まって、そのあとばっとひらく」という緩急の付け方は、好き勝手に感覚的にやるのではなくて、キャストの皆さんのジャンルがそれぞれで、しかも人数がいるからこそ全員が意識を合わせていないといけないんだなって勉強になりました。ダンスからストーリーを感じさせやすくなるんだなって。
振り付けの1つ、表情1つと細部にこだわってこそ、ストーリーが成立し、そこにはそれぞれの役割がある。だから同じシーンでも、全員笑顔とかはないんです。それで、その時の表情がその後のストーリーにつながっていくと。そういうところも楽しめるなって思います。実際に細かい仕草であっても、修正後も見ると全然違って。すっとはいってくるんです。
――今までの公演で好きだったシーンはありますか?
前回の公演の花子さんのところですかね、あとベートーヴェンとか。ちゃんと最後にお手洗いのマークが花子さんになるところとかも細かくて、そういう小ネタがすごく好きです。
鈴木明子 (C)赤坂久美
――すごく細かいですね! 気づいていない方も多そう!
結構注目しちゃうんです。気づいていない方も多いといえば、実は前回大阪公演で大縄跳びに参加したんです。急だったので、教えられた振り付けをやるのが精一杯だったんですが、本当はもっと個性を出したかったですね(笑)。
ただ参加してみて、観劇しててもそうなんですが、本当にキャストの皆さんが舞台を好きなんだなって伝わってきました。好きだからこそ細部まで見てほしいという気持ちが伝わってきますし、そういう気持ちが梅棒の公演を作り上げているんだなって。
――鈴木さん自身の梅棒を好きという気持ちも伝わりました。最後に、稽古を見学した鈴木さんから今回の作品の見どころを読者の皆様にお伝えいただけますか。
最初から集中してみてもらいたいです。あとは、とにかく笑える公演なので周りの人とかを気にせず思いっきり笑う!純粋に目の前にあるものを楽しめば絶対に自分の中に入ってくるので。あと懐かしの曲も楽しめるので、公演に身を任せて感じたまま楽しんでほしいです。
取材・文=於ありさ
公演情報
■日程・会場
〈東京プレビュー公演〉
シアター1010(センジュ)
〈愛知公演〉
2018年3月31日(土)・4月1日(日)
日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
〈大阪公演〉
2018年4月6日(金)~8日(日)
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈福岡公演〉
2018年4月12日(木)・13日(金)
福岡国際会議場メインホール
〈東京凱旋公演〉
2018年4月18日(水)~26日(木)
世田谷パブリックシアター
■キャスト:
大久保祥太郎、佃井皆美、まちゃあき(エグスプロージョン)、YOU、RYO (Beat Buddy Boi)、泰智 (KoRocK/ENcounter Engravers)、古川小夏(アップアップガールズ(仮))、一色洋平、田中穂先(柿喰う客)、東理紗(ピヨピヨレボリューション/東東東東東)、ひこひこ
■主催:ぴあ、ニッポン放送、梅棒