MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』第二回ゲストは山田将司(THE BACK HORN)) 純粋さよ、立ち止まるな
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MOROHAの新曲「遠郷タワー」にこんな一節がある。《あったけぇ耳当て兼ヘッドホン 爆音で冬のミルクを聞かせてバックホーン》。高校を卒業してすぐに上京したアフロは、周りの楽しそうな奴らを横目で見ながらTHE BACK HORNの「冬のミルク」を聴いて、孤独を紛らわせたのだという。二回目となるMOROHAアフロの『逢いたい、相対。』のゲストはアフロの青春時代を支えた、THE BACK HORNのボーカル山田将司。二人だからこそ実現する、あまりにディープな対談が繰り広げられた。
●初めて会った日のことを振り返る●
山田:アフロはお酒好きなの?
アフロ:酒はほとんど知らないんですけど、昔は鏡月ばっかり飲んでました。(※2012年、「鏡月」のCMソングに山田将司の「きょう、きみと」が起用された)
山田:ハハハハ、ありがとうございます。
アフロ:(スタッフに向かって)一発目のジャブはこれだった、って書いといて。
山田:あんまり飲めない人?
アフロ:いや、酒の神様の息子ですから。
山田:…………(沈黙)。
アフロ:(スタッフに向かって)これはキレイに空ぶった、って書いといて(笑)。
山田:今の返答によっては、1杯目から日本酒いこうかなって思ったけど。
アフロ:あぁ、いきましょう!
山田:いや、とりあえずビールにしようかな。ビールは飲める?
アフロ:いけます!
――1杯目のお酒が届く――
アフロ&山田:では乾杯! よろしくお願いします!
アフロ:いやぁ、来てくださって嬉しいです。初めて会った日のことは覚えてますか?
山田:覚えてるよ。2014年にクラブチッタでLOFTの15周年イベントをやった時、アフロが俺らの楽屋に入ってきて。「MOROHAと申します」って。その後、去年の5月に埼玉(HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3)で対バンして。どういう空気感でステージを作っていくのか、ちゃんと生で観たくて声をかけたんだよね。そのライヴがヤバかった。なんといっても、アコギと声だけであんなに人を魅了できるってすごいよ。
●アフロの孤独を支えた「冬のミルク」●
アフロ:あぁ、昔からTHE BACK HORNを聴いてきた人間なので嬉しいっす。山田さんって、おいくつなんですか?
山田:今年で39。
アフロ:勝手にもっと上だと思ってました。
山田:アフロはいくつだっけ?
アフロ:30です。
山田:地元はどこ?
アフロ:長野県の上田市です。
山田:UKも?
アフロ:UKもそうです。高校の同級生なんで。
山田:それで上京した時に「冬のミルク」を聴いてくれてたんだね。歌詞に使っていただいて、ありがとうございます。
アフロ:いやっ、とんでもないです。もうね、あの部分をライヴで歌う瞬間が一番グッとくるんですよ。千葉の専門学校に通ってたんですけど、周りは実家暮らしのヤツが多い中で、俺は一人暮らしだから家賃を払うためにバイトをして。みんなもバイトしてたんだけど、それは遊ぶ金を稼ぐためで。
山田:生活費じゃないわけだ。
アフロ:そうなんです。だからお金に対する真剣さが周りとちょっと違って。ある日、みんながサーフィンに行くので一回だけついて行ったんですけど、俺だけ金がなくてサーフボードを持ってないからずっと砂遊びをしてて。
山田:アハハハハ。
アフロ:それで「もう1人でいい」と思って、閉じこもったんです。そんな時に周りの楽しそうな声を塞いでくれたのが「冬のミルク」で。
山田:あれは(菅波)栄純が作ったんだけど、バンドで一番最初にできた曲なんだよ。
アフロ:初めて聴いた時のことって覚えてます?
山田:うん。俺はその時、茨城から2時間かけて専門学校へ通ってて、その行きと帰りにずっと「冬のミルク」ばっかり聴いてた。俺は栄純が作る曲の最初のファンだったから、最初は「うわぁ、これを俺が歌うのかぁ」みたいな感じで。なんかね、電車から見えた田んぼとか畑の風景とマッチして。誰にサヨナラをしてるのか分からないけど、グッときたんだよね。
アフロ:もう観れないと思うんですけど、YouTubeに「冬のミルク」を路上で歌ってる動画が出てたんですよ。
山田:北海道かな。『路上弾き叫びの旅』っていう全国ツアーをやってて、それだ。
アフロ:専門学生時代、一緒に上京したUKの家へ遊びに行ったら「この曲がスゲー良いんだよ」って言われて。その動画で「冬のミルク」を知ったんです。観たら本当にカッコよくて、こういうことだよなって話をして。あの演奏ってアコースティックギターと歌だけじゃないですか。アコギ一本で感情がバコって出てくる感じは、かなり影響を受けました。
山田:路上でやったことはあるの?
アフロ:俺らは一回だけっすね。しかも『SUMMER SONIC』の会場内で路上ライヴをやったのが、最初で最後。その時はサマソニのオーディション(『でれんの!?サマソニ!?』)があって、そこに俺らも出てたんですけど落選してしまって。で、悔しいから「じゃあ、自分たちでやってやるよ」って。
山田:ゲリラで?
アフロ:そうっす。
山田:サマソニ側は許してくれたの?
アフロ:当時、曽我部恵一さんが俺たちの面倒を見てくれてて。すごく怒られていた、って人伝に聞きました。
山田:曽我部さんが怒られたの?
アフロ:そうです。
山田:ビビってやらない奴なんていっぱいいるじゃん。ルール的にはダメだけど、それをやってくれたのは曽我部さん的に誇らしかったんじゃないかな。
アフロ:だと良いですね。あの時、初めて東京と戦ってるような感じがしたのを痛烈に覚えてます。
山田:うんうん、そっか。
アフロ:それこそこの前、向井(秀徳)さんと吉野(寿)さんが高円寺のガード下でライヴしたみたいですね。
山田:あの先輩方はよくやってるよね。
アフロ:誰も自分のことを知らなくて、歌だけで勝負していた頃に帰りたくなったんですかね?
山田:それはあるだろうね。上京したばかりの頃に抱いてた孤独感とか、誰もわかってくれる人がいないところに身を置いて、あの頃に戻りたいってことはあると思う。まぁ、あの人たちが歌ったらすぐに人が集まってくるだろうけど。
アフロ:そうですよね。
山田:俺らも昔は酒を飲んだあとに、ドンキホーテでアコギ買って、そのまま新宿のコマ劇前で弾き語りやってた。
アフロ:ええ! それはいつぐらいですか?
山田:12年前とか。
アフロ:路上はどのくらいやってないんですか?
山田:栄純と10年前にやって以来かな。ステージでやるのも良いけど、路上は自分が裸になれる感じが良いよね。
アフロ:また弾き叫び(『路上弾き叫びの旅』)やってほしいなぁ。
山田:やりたいけどね……あっ、お酒が空いたから、次は日本酒のスパークリングいってみる?
アフロ:いっちゃいましょう!
――2杯目に突入する――