市村正親、鹿賀丈史、市原隼人らが黒澤明作品のミュージカル化に思いを巡らせる!ミュージカル『生きる』製作発表
ミュージカル『生きる』
2018年10月8日(月・祝)から東京・TBS赤坂ACTシアターにて、新作ミュージカル『生きる』が上演される。日本を代表する映画監督・黒澤明が1952年に発表した代表作をミュージカル化した本作の製作発表会見が、4月3日(火)都内にて行われ、W主演を務める市村正親、鹿賀丈史と、市原隼人、新納慎也、小西遼生、May'n、唯月ふうか、山西惇、作曲&編曲のジェイソン・ホーランドと演出の宮本亜門が、一般オーディエンスが見守るなか登壇した。
役所の市民課に30年勤める課長の渡辺勘治(市村・鹿賀/Wキャスト)は、まもなく定年を迎えようとする矢先に、当時は不治の病とされていた胃がんになり、余命わずかと知る。時間が残されていないことを知った渡辺は、これまでの人生を考えて苦悩し、一時はやけ気味で夜の街を歩き、知り合った小説家(新納・小西/Wキャスト)と遊びまわるが、心はむなしいばかり。そんな折に偶然街で出会った同僚女性(May'n、唯月/Wキャスト)から刺激を受け、自分の本来の仕事を見つめなおし、「生きる」ことの真の意味を考え、新しい人生を始める―。
製作発表冒頭では、劇中で歌われるオリジナルの3曲を、作曲を手掛けたジェイソン・ホーランドが弾くピアノのメロディに合わせ、新納、May's・唯月、小西の順で披露。最後に市村と鹿賀が映画版で渡辺勘治役の志村喬が歌った「ゴンドラの唄」を二人で情感たっぷりに歌い上げる。二人の背後にはブランコが設置されており、そこに雪が舞い落ちるという映画版を彷彿とさせる趣向もあり、心にやさしく染み込むような歌声に会場中から大きな拍手が沸き起こった。
ジェイソン・ホーランド
歌唱披露の後行われた会見では、ホーランドから順に挨拶がなされる。「私の父が黒澤作品の大ファンで、父がまだ学生だったとき、授業を抜け出して映画館で黒澤映画を観ていたそうです」と笑顔のホーランド。「本作には父と息子の関係性が描かれていますが、この関係性は世界共通であり、ときに複雑な問題を生み出すこともあります。と共に、自分自身の人生を振り返ったとき、どのような人生だったのか、と考える内容もすばらしいと感じました」と作品の魅力にも触れていた。
宮本亜門
演出を手掛ける宮本は「私は黒澤作品のファンなので、最初この話を聞いたときは驚きました。『黒澤作品をミュージカルにしていいんですか!?』と思ったくらいです。この『生きる』という作品は普遍的な話であり、今の時代でも人々の心に訴える力を持っています…今、舞台を作りながらそう実感しています」と顔を上気させる。また、先日宮本の父親ががんを患い手術することになった際「父が頑張るぞ!という姿を見せたとき、これこそが『生きる』なんだ、と実感しました」と力を込めた。
市村正親
市村は開口一番「皆さん知ってますか?私が胃がんだったということを。胃がんになってスポーツ新聞の一面記事となってから数年が経ちましたが、早期発見のおかげでこんなにピンピンしています」と明るく語る。「そんな俳優にこの役が来たのは、役者の神様の采配なのかなと思っています。こんな俳優がやる舞台なので絶対当たると思いますよ」と笑いを誘いつつ意気込みを見せた。
鹿賀丈史
一方の鹿賀は「この映画が日本でミュージカル化されるということに驚きました。人が生きるということを真正面からとらえているドラマは、他にはないんじゃないかと。ジェイソンの曲が入り、役者たちが動きだしたらきっとすばらしい舞台になるんじゃないかな。本番まで真摯に作り上げていきたいと思います」と静かに力を込めた。また、作品作りについて「映画で志村喬さんがどアップになったときのあの迫力を、舞台でどう体現するか、そこにはかなりのエネルギーが必要だと思っています。また『生きる』ための熱い思いを、他の舞台より何倍も熱くしていかないと表現しきれないかも」と今後じっくり作り上げていく必要について示唆していた。
市原隼人
「イッチー」「タケシ」と呼び合う二人。阿吽の呼吸が素敵です!
市村・鹿賀の息子役を演じる市原は「人生初めてのミュージカルに参戦します」と気合い十分。「これまでミュージカルとのご縁を避けてきました(笑)。ミュージカルは僕には合わないんじゃないかなと思っていたので。でも30歳を越えて、もっといろいろなことに挑戦してみたいと思いました」と語った。その思いの背景には市原自身の父親の存在があったそうで、現在体調を崩し自力で車椅子を動かすことができなくなったことに触れた市原は「父が『若いうちにもっといろいろなことに挑戦したほうがいい、動けるうちにいろいろやったほうがいい』と言っていたんです」。その言葉を胸に、新たなジャンルに足を踏み出したいと決意したと語っていた。
息子・市原隼人をガシッとハグする市村正親
新納慎也
小説家役を演じる新納は「何年か後、海外で僕が『生きる』のオリジナルキャストだよ!と言って現地の人に「ワオ!」と言われる日を望んでいます」と笑顔。また新納は『ラ・カージュ・オ・フォール』で、市村とは20年、鹿賀とは10年共演してきた間柄でもある。「二人の背中をずっと見てきた僕が新しい作品でまたお二人とご一緒できることを幸せに感じています」そう語った新納は、隣に座る鹿賀と市村を見て感無量といった表情を見せていた。
小西遼生
新納とWキャストで小説家役を演じる小西は、本作のワークショップでの体験談を語る。「こんなにクリエイティブな現場は経験したことがなかったんです。宮本さんとジェイソンさん、(脚本・歌詞を手掛ける)高橋(知伽江)さんが3人で(脚本の)1行1行に手を入れて、持ち帰ることなくその場で新しいものを作り出そうとしていたんです。そうやって作られた台本を渡されることで、今まで以上に台本の『重み』を感じることができました。生半可な気持ちではできないですね」と振り返っていた。
市村「僕のいないときに皆でご飯食べに行ったって?」小西「ちょっと食べただけですよ!」
ミュージカル『生きる』
May'nと唯月は、渡辺勘治に影響を与える同僚・小田切とよ役と、小田切役で出演していないときは、渡辺一枝役として舞台に立つことになる。
May'n
アニメソング界の新たな歌姫である、May'nもミュージカル初挑戦。「もともとミュージカルを観ることは好きでしたが、ジェイソンさん、宮本さん、そしてキャストの方々を接することで今はどんどん緊張しています。普段のコンサートではファンの方に『今日は思いっきり楽しもうね!』と声をかけ、毎日を全力で生きていくパワーを共有させてもらっていました。今回演じる小田切とよという人は生きるパワーがさく裂している女の子だと思うので、演じる側としても全力でパワーを出していきたいです」と力強く述べた。
唯月ふうか
ミュージカル『ピーターパン』で9代目ピーターパン役を演じた唯月は「素敵な楽曲が本当にたくさんあって、今からお稽古が楽しみです。ワークショップで見えてきた課題などを本番までに乗り越えていきたいです。この作品が伝えたいメッセージを皆さんに伝えられるように頑張りたいです」とやる気をみなぎらせていた。
山西惇
ストレートプレイへの出演が多く、昨今はTVドラマ『相棒』シリーズの角田六郎役でも人気の山西は、隣に居並ぶキャストたちを意識しつつ「ミュージカル俳優の山西です」と名乗るとキャストたちが大笑い。「市村さんと鹿賀さんは僕が俳優を志した20代の頃にはすでにたくさんの舞台に出演され『生きる伝説』と化していた方々。その方々と一つの作品で関われるのは非常に身が引き締まる思いです」とリスペクトするが、「そんな先輩方を僕が演じる『助役』はいじめ抜く役。ここは心を鬼にしてめちゃめちゃ引くくらい嫌な役をやろうと思います」とニヤリ。さらに山西は本格的な稽古までにまだ時間があることに触れ、「今は役人の嫌らしさを身に着けるために佐川さんの証人喚問を1日に何回も観て役作りをしていこうと思います。この後質疑応答があると思いますが、刑事訴追の恐れがありますので、答えられることと答えられないことがございます」と旬の時事ネタを投下。キャスト、オーディエンス共々大笑いとなっていた。
ミュージカル『生きる』製作発表会見
取材・文・撮影=こむらさき
公演情報
■場所:TBS赤坂ACTシアター
■発売:2018年6月9日(土)
■作曲&編曲:ジェイソン・ホーランド
■脚本&歌詞:高橋知伽江
■演出:宮本亜門
■出演:
【市村正親出演回】
渡辺勘治:市村正親
渡辺光男:市原隼人
小説家:小西遼生
小田切とよ:May'n
渡辺一枝:唯月ふうか
助役:山西惇
渡辺勘治:鹿賀丈史
渡辺光男:市原隼人
小説家:新納慎也
小田切とよ:唯月ふうか
渡辺一枝:May'n
助役:山西惇