アン・シネ日本凱旋の初試合! 『バンテリンレディスオープン』に今年もドラマが?
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昨年は大きなドラマを演出した『KKT杯バンテリンレディスオープン』
昨年、ほぼ手中にしていた上田桃子の手から、スルリとこぼれ落ちた3年ぶりの優勝。そして、西山ゆかりの戴冠という大きなドラマを演出した『KKT杯 バンテリンレディスオープン』が、今年も4月13日(金)から熊本空港カントリークラブで開催される。
最終の18番ホール、上田のパーパットが外れる。会場から大きなため息と驚きの声が上がる。西山が上田に追いついた瞬間だった。続いて行われたプレーオフ。第1、第2ラウンドでバーディーを奪っているホールなだけに、プレーオフでも果敢に2オンを狙った。しかし、届くか届かないかという、恐らく本人にとっても長い時間だっただろう弧を描いたボールは、上田の「届いて!」という願いを打ち砕くかのように、残酷にも池に吸い込まれて行った。上田の勝利が完全に断ち切られた瞬間だった。
「熊本の人たちに勇気と元気を」。もともと強いハートを持っている上田だからこそ、その強い思いが仇になった。“熊本出身のプロが、3年ぶりに傷ついた熊本で勝利のプレゼントをする”というシナリオを、神様は無情にも断ち切った。そんな無情ともいえるこのドラマも、逆に遅咲きの努力家に対して、神様はしっかりとその気持ちに応えていたのだ。こんなドラマを演出するのが、この熊本空港カントリークラブ、そして女子プロゴルファー量産地である熊本なのかもしれない。
熊本は不動裕理、有村智恵、笠りつこ、一ノ瀬優希など、多くの女子プロを輩出している、いわば“女子プロ特産地”の一つ。今年もどんなドラマが待ち受けているのか―。注目の大会が始まる。
さて、今年もすでに6試合を消化し、賞金レースで先行するのはともに2勝を挙げているアン・ソンジュ(韓国)と昨年の賞金女王の鈴木愛だ。鈴木は先週、全米女子プロツアーで最初のメジャー大会『ANAインスピレーション』に出場。予選は突破したものの、ムービングデーの3日目に80と大叩きし、結果13オーバーの最下位と自信を打ち砕かれる結果に終わった。
しかし、そのアメリカツアー挑戦も、自らの向上心から。落ち込む暇はないとばかり、先週の『スタジオアリス女子オープン』で2位に4打差のぶっちぎり優勝を飾り、“日本に鈴木あり”を示した。昨年、賞金女王を獲得し、精神的にも成長しており、LPGAツアーでも強力な外国勢に一人立ちはだかっているのが鈴木愛なのだ。
その女子プロ界も、じわじわと地殻変動が起こっている。引退した宮里藍をはじめ、横峯さくら、上原彩子、そしてすい星のごとく現れた新星・畑岡奈紗など、海外で活躍しているプロを間近で見ているトップアマや若い世代の女子プロが、どんどん実力を上げてきているのだ。
勝みなみや小祝さくら、新垣比菜、三浦桃香らの“華の1998年生まれ(1999年早生まれ)組”に加え、その上の永井花奈(97年生まれ)や2歳上の森田遥、岡山絵里、柏原明日架、堀琴音など、まさに群雄割拠なヤングジェネレーション世代が“次代の宮里藍”を目指し、しのぎを削っている。
今年初戦の『ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント』でも畑岡奈紗が3位タイ、永井が12位タイ、昨年大ブレークした川岸史果(94年生まれ)が14位タイ、そして岡山も17位タイと上位入賞。第2戦の『ヨコハマタイヤゴルフトーナメント PRGRレディスカップ』も勝と岡山、川岸が9位タイ、森田遥は17位タイと結果を出した。
先週の『スタジオアリス女子オープン』まで、コンスタントに上位に顔を出しているのは勝みなみ、森田遥、永井花奈、岡山絵里で、賞金ランキングは9日現在、20位以内に位置している。アン・ソンジュや全美貞(韓国)、鈴木愛などの賞金女王経験者を凌駕する日はいつかと、待ち焦がれている人も少なくないだろう。
先週、鈴木愛と優勝争いした葭葉ルミ(93年生まれ)も大爆発を予感させるプロの一人だ。AKB(HKT)48の指原莉乃似のルックスで人気急上昇だが、それよりも圧倒的な飛距離が何よりも魅力で、アプローチやパットが決まりだせば、いつでもトッププロの仲間入りする実力を持っている。本人もそれを意識してか、鈴木愛に負けずの練習の虫となっており、その練習量に裏付けされた自信が加われば、大化けする可能性は非常に大だ。
98年や99年生まれに比べ、この93年生まれというと若くない印象を持ちそうだが、大卒のOLの世界で見れば入社2~3年目の新人。まだまだ若い世代と言え、優勝や上位入賞、海外などの経験を積めば、より一段上に上がることが出来るだろう。
そんなプロの中で注目したいのが95年生まれ(96年早生まれ)組。いつ優勝してもおかしくない、スケールの大きいゴルフをする柏原明日架と堀琴音がいる世代だ。故障などにより、ともに今季はあまり調子が上がってはいないが、元々高い実力の持ち主で、(98年組よりも先に)ともかく1勝したいと、気持ちを内に秘めていることだろう。
同年生まれには、ここ数年、上位に顔を出す濱田茉優、新海美優、安田彩乃、永峰咲希らもおり、20歳代の層の厚さが年々上がってきているのは、ゴルフファンにとっても嬉しい傾向だ。プロは誰でも好不調の波があり、コースの得手不得手もあるが、この年代のプロはその落差が激しい傾向にある。同じコース(大会)でも昨年上位だった選手が、今年は予選落ちになったり、決勝ラウンドで大叩きしたりと、安定感のないゴルフとなってしまうことが多い。安定感さえ身に付ければ上位進出も出来るだけあって、(ゴルフの)実力だけでなく、精神力を含めた総合力でベテランや実力者に挑んで欲しい。
そのほか、ようやく復調の兆しが見えてきた2015年、16年の賞金女王イ・ボミ(韓国)や第5戦『ヤマハレディースオープン葛城』で12位タイ、第6戦『スタジオアリス女子オープン』で3位入賞を果たし、調子を上げてきた比嘉真美子、そしてスイングをドローに変えて好調を維持する酒井美紀など、“復活組”の活躍も見てみたい。
上田桃子は昨年の忘れ物を取りに来るだろうし、昨年人気が爆発したアン・シネも今年初参戦。ジャンボ軍団の秘蔵っ子・原江里菜や横峯さくら、諸見里しのぶのようにリランキング制度導入で1円でも賞金を上積みしたいと思っている注目の推薦組も含め、豪華な顔ぶれがそろった『KKT杯 バンテリンレディスオープン』。若手の台頭、復活劇、大逆転など、今年はどんなドラマを見せてくれるのだろうか。