不定期コラム・第1回『少年よ、モテたきゃロックせよ』
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「女の子にモテるためにバンドを始めたっていうのは、ロックバンドにおいてエリートだと思う」
最近[Alexandros]の川上洋平(Vo)がそんな趣旨の発言をしていたのを見かけた。
「鬱屈した感情のぶつける先はロックしかなかった」みたいなパターンも確かにあって、それはそれですごく憧れたりもするけど、多くのバンドキッズはカッコいいから、モテたいからという分かりやすい欲望のもとに音楽に触れていく。それは出会いとして至極健全なあり方だと思う。当然、僕もそんな中学生だった。
「コラムとか好きに書いて良いよ」と言われて、書きたいことはたくさんあるはずなのに何から始めたら良いかわからないという袋小路に入り込んだ結果、何でも書いてみるコラムを書いてみようという安易な逃げ道を選択し、ふと前述の発言が思い浮かんだだけの話なのだけれど、モテたくてバンドを始めただけだった男がここでコラムを書くような仕事に行き着いたのだから思春期の過ごし方って大事である。きっとここを観ている中にもいるであろう、そんな大事な時期を過ごしている世代にとって何か面白いことを書けたら良いなぁ。そんな思いでこれを書いている。ちなみに、バンドをやったからといってモテる人ばかりではないのは実証済みなので注意。
今回はは自己紹介を兼ねて、あるバンドのことを書こうと思う。
ここで書くようになる直前こそ某音楽雑誌で編集をしていたが、僕はもともと営業や販売をするサラリーマンだった。高校を出てダラダラしたりチャラチャラしている間にバンドはやめ、適当に就職し、音楽は聴くだけになってしまった。それでも何歳になっても、周りがレゲェがどうとか言ってても、僕の中でロックは一番カッコ良いものであり続け、脱サラして飛び込んだ先は結局音楽業界。「モテたい」だけだったはずのバンド少年が、何故そのまま音楽の沼にハマってしまったのか。思い返すとそれは多分、思春期に多大な衝撃を与えてくれたあるバンドによるところが大きい。
それはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。
細身のスーツ姿でビシっと決め、タイトでブルージーな演奏。TVで観る機会も少なく、あまり喋らない。僕にとって彼らは“ロックンロールってコレ”を体現してくれる存在そのもの。高校でコピーしたバンドも、そして初めて観に行ったライブも彼らだった。
もう15年近く前。「TMGE YOYOGI RIOT!」と題され、代々木競技場の敷地内で行われたフリーライブで、当日に会場が発表されるまでは「YOYOGI」の部分が「XXXXXX」と伏せられ、何やらキケンな香りがしたものである。当時、中途半端な田舎として名高い埼玉県に住んでいた僕は、間違えて代々木駅で降りたりしながら(最寄は原宿)、会場へと足を踏み入れた。
降りしきる雨の中始まったライブは壮絶で、熱気で蒸発した雨粒がスモークとなり、頭上では絶えずずぶ濡れの人間が転がっていく。そしてそんな最悪のコンディションは最高のステージを生んだ。
とにかく夢中だったせいか、モッシュの凄まじさのせいか、何の曲をやって、どんな演奏だったかは正直よく覚えていない。でもそんなことは関係ないくらい彼らが絶対的にカッコ良かったことだけは鮮明で、それで十分だった。
おおよそ一時間くらいだったはずだ。いつものようにスーツ姿でロックンロールを叩きつけ、文字通り“RIOT=暴動”を巻き起こした彼ら。その最後に、大雨と人波渦巻く中行われたライブを締めくくったのは「JENNY」。あの時ほど<嵐で見えやしねえ>という歌詞が似合った瞬間はない。
後で知ったのだが25,000人が参戦していたという、この暴動。日常的に色々なライブに足を運ぶようになった今思い返してみても最高で、間違いなく僕がロックのドツボにはまるきっかけに間違いはない。ミッシェルが本気でカッコ良かったせいも多分にあるが、やはり人生初ライブというのは特別なものだったんだなぁと実感する。
これからこのコラムを含め、僕はたくさんの記事を書いていくことになる。思うまま好き勝手なことを言うと思う。でも、それらがもしかしたら誰かにとって初ライブのキッカケになるかもしれない。そのことの重要性、大切さは決して忘れずに書いていきたいと思う。
以上、思い出話と決意表明にお付き合いいただいた皆様、これからも何卒。
KEEP ON ROCKIN'!!