奥深き黄金の世界を旅する『黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝』
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国立西洋美術館「黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝」
古代文明の傑作がみせる繊細な世界
突然だが、みなさんは“黄金”にどんな印象をお持ちだろうか。日本人では親しみを持っている人は少ないかもしれない。西欧では太古の昔から、黄金がさまざまな物語を生んできた。2015年10月16日(金)~2016年1月11日(月・祝)開催の『黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝』では、6,000年以上の時を経て人々の想いを伝えるまばゆい黄金の品々が、これまでにない規模で集められている。
ヴァルチトラン遺宝(一部)
ギリシャ、イタリア、オランダ、ドイツ、ブルガリアの5つの国からはるばる集められた、世界最古の金細工、驚きの技術を用いた装飾品、神話を描いた絵画や器。その圧巻のボリュームに驚くだろう。しかし、ぜひひとつひとつを丁寧に見て欲しい。その繊細な表現と、決して色褪せない黄金の輝きは、どれも目が離せなくなるものばかりだ。
民族ごとの黄金へ込められた想い
この展覧会では、時代の移り変わりとともに、黄金を司る民族の移り変わりを丁寧に追っている。古代ギリシャ人は黄金を人々の富の象徴、神々の全能性と神聖さをあらわすものとして、たびたびギリシャ神話の重要な場面で登場させた。その様子は、「ダナエ」をはじめとする数々の絵画や、美しい装飾が施された器などにも描かれている。
マルカントニオ・バッセッティ/ダナエ
ブルガリアの民族であったトルキア人は、豊富な金の資源と発達した技術で、金文化を築いた。そのことを、スケールと華やかさでひときわ際立つ「ヴァルチトランの遺宝」「パナギュリシュテ遺宝」が物語る。力強いボリューム感と、洗練された装飾表現が印象的だ。
パナギュリシュテ遺宝(一部)
イタリア半島で勢力をふるったエトルリア人は、死後の世界を深く信じ、故人を豪勢な金細工で見送った。そこに用いられる精緻を極めた超絶技巧「粒金技法」は本展のみどころのひとつ。もっとも細かいもので0.15ミリという極小の金の粒を、ベースとなる金の上に一粒ずつ貼り付けていく。その細かさは目で追いきれないほどだ。この技術はいつしか失われ、長い間その製造方法が謎に包まれていた。だがうれしいことに、本展では丁寧な解説とともにその秘宝の数々を堪能できる。
腕輪
古代人が見た輝きをわかちあう
展示室にずらりと並ぶまばゆい品々。そのどれもが、生み出された瞬間からおなじ輝きを今も放っている。国立西洋美術館館長・馬渕朋子さんは、本展開会式にて「黄金を前に、時空や民族を超えて感動を分かちあうこと」こそが開催の意義であると、列席した5カ国の大使に見守られるなか語った。
不変の輝きに触れたあとには、黄金が今までとはすこし違ったものに見えるかもしれない。
開会式にて挨拶をする国立西洋美術館館長・馬渕朋子さん
【会期】2015年10月16日(金)-2016年1月11日(月・祝)
【会場】国立西洋美術館(東京・上野)
【開館時間】午前9時30分~午後5 時30分(金曜日は午後8時まで)*入館は閉館の30分前まで
【休館日】月曜日(ただし、11月2日、11月23日、1月4日、1月11日は開館)、 11月24日、12月28日-1月1日
【主催】国立西洋美術館、東京新聞、TBS
【後援】外務省、文化庁、イタリア大使館、オランダ王国大使館、ギリシャ大使館、ドイツ連邦共和国大使館、ブルガリア共和国大使館、BS-TBS、TBSラジオ
【特別協賛】住友金属鉱山
【協力】アリタリア-イタリア航空、エールフランス航空、KLMオランダ航空、西洋美術振興財団
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