TRICERATOPS、21年目のツアー追加公演が浮き彫りにしたファンとの信頼関係とさらなる探求心

レポート
音楽
2018.5.15
TRICERATOPS 撮影=山本倫子

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

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『MIRACLE GLITTER TOUR』追加公演 2018.4.29 Zepp DiverCity Tokyo

デビューから20周年となる大きな節目のツアーを終え、迎えた2018年もTRICERATOPSは止まらない。新曲「MIRACLE」と「GLITTER」をツアータイトルに冠しながら、その2曲をインターネットで公開することも、レコード店に流通させることもせず、まずはライブで演奏して会場での先行発売をすることを発表。北は北海道・札幌から南は九州・福岡まで全国10箇所をまわった『MIRACLE GLITTER TOUR』の追加公演が、4月29日にZepp DiverCity TOKYOで開催された。

1曲目は彼らの代表曲の一つである「FEVER」でスタート。オールスタンディングではなく全席指定でが発売されていたこともあって、どこか落ち着いた空気が漂っていた場内を、そのディスコ・ビートとキャッチーなメロディーが一変させる。巻き起こるダンスの波、間奏での和田唱(Vo/Gt)のギターソロには割れんばかりの歓声が上がり、曲が終わっての大きな拍手には、吉田佳史(Dr)も椅子から立ち上がり体全体で応えた。

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

そこから、ファンキーでダンサブルなグルーヴに乗ってロックの歴史を体現するかのように、サイケなアレンジの効いた「あのね Baby」、70年代ライクなミドル・テンポが腰にくる「オレンジライダー」、90年代オルタナティヴ・ロックを思わせる「Future Folder」、ハード・ロッキンなリフが光る「ロケットに乗って」と、5曲を展開。後のMCで和田が「座席があるということは、踊れるスペースが確保されているということでもある」と言っていたように、大型ライブハウスを贅沢に使った、まさにファンのための粋な計らいが、一気に花開いた序盤だった。

続いてはエキゾッチックな「シラフの月」からフォーキーな「NEW LOVER」へと、その歌心にスポットを当てる。そして、吉田と林幸治(Ba)がステージから捌け、和田がアコースティック・ギターの弾き語りで「if」「Walk in the Park」「GOOD ENOUGH」の3曲を披露。ときに熱く歌い上げ、ときに軽やかな笑顔を見せながら、観客にコール&レスポンスを求め、さらにはハモリまでも促し――というのは決して珍しい光景ではないが、それによって生まれた合唱のクオリティがとにかく高い。筆者もペンを止め参加してみたのだが、和田のわかりやすい導きにポテンシャルが引き出され、ハーモニーの一部になれたことで覚えた感情の高まりは、数日経ってこうして原稿に手を付けている今思い出しても、鮮明に蘇りドキドキするほど。和田が引き続き爪弾くアルペジオに合わせて、そっとステージに戻った吉田と林が軽やかにリズムを刻む「ベル」でほっこり、そのまま少しブレイク。トークへと移る。

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

「Zeppがまだまだ増えるらしい」という和田の情報から、吉田が「Zepp新小岩!  総武線!」とジョークを。それを受けた和田が「新小岩から来た人いる?」と観客に問いかけるも少し間が空き、吉田が「Zepp箱根!」と被せたところで、和田が手を挙げていた一人に気が付く。「え? それは新小岩? 箱根?」と訊きなおすと、「新小岩!」と強めに答えが返ってくる。すると吉田が冗談交じりに「そんなに怒んなよ~」、林が「俺、高校の時に友達が新小岩に住んでてよく遊びに行ったよ」と拾い、「つまんない話かもしれないけど、新小岩駅が葛飾区で小岩駅が江戸川区」と続けて、場内は和やかな笑いに包まれた。

和田が「実は俺らここじゃなくて、(近くにある)Zepp Tokyoの方のこけら落としなの」と話を締めると、「次は2ndアルバムから」と、シングルではあるが渋いセレクト「Guatemala」へ。アットホームな空気になったからこそ響くレイドバックした1曲から、テンポを上げつつメロディアスな「2020」、新曲の一つであるスムースで洒落た色気の漂う旋律が印象的な「GLITTER」、タイトル通りの爽快なサウンドスケープを描くアップテンポな「FLY AWAY」へと、なだらかに、確実に、終盤に向けてボルテージを高めていく。

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

ライブはいよいよクライマックスへ。和田がステージから離れ、林と吉田のリズム隊二人だけで、互いにソロを交えながらの、ストイックでスリリングな掛け合いを繰り広げれば、目に見えるフィジカルな盛り上がりという意味では、ここまでで最高潮に達する。そこから、ザ・ポップ・グループ「She's Beoynd Good And Evil」よろしくなリフが光る「MADE IN LOVE」を間に挟んで、ヒット・シングル「GOING TO THE MOON」「Rasberry」と、さらにアッパーなムードに塗り替えて本編は終了した。

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

アンコールは、もう一つの新曲「MIRACLE」から始まった。シンセベースを効かせたファンクに、ラテンのエッセンスも大胆に取り入れた、これからの夏にぴったりの手放しに楽しい曲ではあるが、ジャンルレスなミクスチャー感覚に溢れた現代のポップに対する、3ピース・ロックバンドからの回答とも取れる。続いては、2000年代に巻き起こったガレージ/インディー・ロックのビッグ・ウェーブをTRICERATOPS流に料理したかのような「トランスフォーマー」、ダブルアンコールで披露した「Groove Walk」と、時代の移り変わりを感じさせるセットでライブを締めくくった。

和田は観客に向け「お互い成長してまた会おう」と言っていた。深読みかもしれないが、20年間で出会ったファンとの信頼関係を大切にするからこそ、トライセラは音楽を掘り続けオリジナルを追求し、その音楽性をアップデートしていくのだということを、演奏そのものでも誓っているかのようだった。


取材・文=TAISHI IWAMI  撮影=山本倫子

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

TRICERATOPS 撮影=山本倫子

セットリスト

『MIRACLE GLITTER TOUR』追加公演  2018.4.29  Zepp DiverCity Tokyo
1. FEVER
2. あのねBABY
3. オレンジライター
4. FUTURE FOLDER
5. ロケットに乗って
6. シラフの月
7. NEW LOVER
8. IF~WALK IN THE PARK~GOOD ENOUGH(SHO'S SOLO)
9. ベル
10. GUATEMALA
11. 2020
12. GLITTER
13. FLY AWAY
14. HAYASHI YOSHIFUMI GROOVE!!
15. MADE IN LOVE
16. GOING TO THE MOON
17. RASPBERRY
[ENCORE]
18. MIRACLE
19. トランスフォーマー
[ENCORE 2]
20. GROOVE WALK
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