SuG/武瑠 劇団四季ミュージカル『コーラスライン』を観る
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SuGのボーカリストであり、また様々なクリエイター/アーティストたちとコラボレーションをするソロプロジェクト「浮気者」としても活動する武瑠(たける)。ファッションブランド「million$orchestra」を立ち上げ、小説家として、さらには自身が原作・監督をつとめる映画『WE CRY OUT HELL YEAH』を制作するなど、クリエイターとして活躍の場を広げている彼は、演劇、ミュージカル、歌舞伎、能、落語に至るまで、様々な舞台芸術を楽しんでいる。そんな武瑠が、劇団四季のミュージカルを初体験。独自のクリエイター視点で『コーラスライン』について語ってくれた。
――劇団四季のミュージカル『コーラスライン』はいかがでしたか?
「30年ぐらい前からやっている作品なんでしたっけ?」
――ええ。劇団四季での初演が1979年ですから。36年目の今年9月、2000回公演を迎えたそうですよ。
「あぁ~。それだけ時間が経過したいまも公演できるというのが納得できる、すごく普遍的なお話でしたね。時代とか関係なく、いま俳優を目指している人とか、音楽とかもそうだけど、“夢”を持っている人にすごく刺さる内容でしたね」
劇団四季『コーラスライン』/撮影:下坂敦俊
――武瑠さんが舞台を観るようになったきっかけは何だったんですか?
「元々、自分は劇団に所属していたんです、中学生の頃。その頃は映画監督になりたかったので、まずは演技をやってみようと思って。それで、自分も何回か舞台で演技をしたことがあったんです。その流れで、友達の舞台を観に行ったり。あとは、旅行に行ったときに観に行ったりしますね。シルク・ドゥ・ソレイユとかブロードウェイでは3回ぐらい観たことがあるかな」
――ブロードウェイミュージカルで、印象に残っているものは何かありますか?
「『アダムス・ファミリー』ですね。『アダムス・ファミリー』に影響された部分は、当時作っていたアルバム『Lollipop Kingdom』(2012年4月発売)に反映されています。ちょっとロックミュージカル調の作品で、それはすごく影響受けてますね。ミュージカルもいろんなものがあるので、作品の見方によって影響の受け方も違うんですよ。例えばファッション的な部分で刺激を受けるものもあれば、『アダムス・ファミリー』などは話の内容ではなくて、ギミック、見せ方が面白いなと思って、観てて刺激を受けたんです」
――では、そういう見方の部分でいうと、今作『コーラスライン』は?
「これはNOギミック。ストーリーに複雑な計算式はなくて、すっと入れる物語で。演出も過剰なものはなくて、歌とかダンス、台詞が裸のまま飛んでくる、ド直球にくる作品だなと思いました。かなりリアルな話が出てくるじゃないですか? “契約が終わったらどうなるんだ?”、“怪我したらどうなるんだ?”、“踊れなくなったらどうするんだ?”とか。それって、俳優だけじゃなくて音楽にも通じるところがあって。実際に現場で仕事している人たちはかなり現実的に考えさせられる題材だなと思いました」
――題材も見せ方もリアルでしたよね。
「そう。それから、何かを創るとき、舞台でも何でもそうですけど、主役とか裏方とかあるじゃないですか? でも、それらみんながいて一つのものが作られるということを、このミュージカルからはすごく感じました。舞台を観ていると、全員が(コーラスラインに)1列に並んでいるシーンがとても多いでしょ? あれは、それぞれの人生が並列であるという意味もあるんでしょうけど、舞台というものはここにいる全員が揃って初めてできるものなんだという感覚。それを視覚で分かりやすく伝えている気がしました。自分もいつかこのラインに並びたいと思う俳優さん。そして、そこに立っていない音響さんとか照明さんも、あのラインに一緒に立っているように感じさせる。そういうものを自分はこのミュージカルからは感じましたね」
劇団四季『コーラスライン』/撮影:下坂敦俊
「うーん……特定して誰か一人というのはないですけど、一番印象的だったのは“踊れなくなったらどうする?”と(演出家のザックに)問われたときの答えがみんなバラバラだったじゃないですか? そのなかで“踊ることしか考えられない”というようなことをいってた人の台詞。けっこう長い間を置いた後に言ったから、この人の答えが一番メッセージ的には(この物語を)象徴しているように俺には聞こえました。でもね、その前のみんなの答えがバラバラだったのって、すごく分かるんですよ。バンドもそうだけど、同じバンドをやっていたとしてもメンバーそれぞれの人生があって、バックボーンもバラバラ。俺も実際にいろいろやっているし。そういうバラバラなヤツらが同じラインに立っているんだということを、あそこのシーンはすごく表していたと思う」
――バラバラな回答こそ、リアルだったということですね。この“踊れなくなったら”という問い掛けは、武瑠さん自身も自分と置き換えることができたんじゃないですか?
「実際に今年、歌えなくなったときがありましたからね。喉の手術のために入院して。病院に入院するまでの間、とくに去年はずっとそういうことを自分に問い掛けて考えていたので、観ててその当時のことを思い出しました。歌えなくなったらコレならできるかな、アレならできるかなとか、具体的にずっと考えてましたから」
劇団四季『コーラスライン』/撮影:下坂敦俊
――武瑠さんは自分の限界までステージで歌い続けるのが理想ですか?
「それは分からないです(微笑)。自分の場合、“瞬間”が続いていけばいいなという考えなので。その瞬間を限界までやり続けたいです。でも、それが自分の限界を超えたら、辞めるべきだと思う。氷室(京介)さんとかそうじゃないですか? 本当に自分の限界を迎えるまでやって、(自分が)これ以上進化できないと分かったらきっぱり辞める」
――そうやって、自分のやりたいことを進化させて突き詰めると同時に、人は日々生活していかなければいけないという現実も。
「リアルに投げかけてくる物語でしたね。仕事をしていて、その仕事がなくなったらどうやって生きていくのかとか、絶対にみんなが考えることじゃないですか。そういうものがちょこちょこ出てきましたね。俺はそういうとき“じゃあもっと生み出さなきゃ”って考えるんですよ。そっちが好き。俺も不安になるけど、そこで“不安だ、不安だ”ってなるんじゃなくて、不安になりたくないから“じゃあ次の新しいものを創ろう”って気持ちになる。不安が原動力になるんです」
――そこから音楽、洋服……いろいろなものを創り出すことで自分をワクワクさせるというか。
「創っている過程が自分は一番好きなんですよ。“俺はいますべて絶好調だぜ! ”っていうときは、そんなに創ることが楽しいとは思わないですからね」
「どんなジャンルにせよ、夢や何かやりたいことがあって、葛藤してる人は絶対に共感ポイントがあると思う」
――『コーラスライン』は初めてミュージカルを観るという人でも楽しめそうですか?
「楽しめると思いますよ。自分に近いキャラクターを探し出すという見方をすると、面白いのかもしれないですね。それに、どんなジャンルにせよ、夢や何かやりたいことがあって、葛藤してる人は絶対に共感ポイントがあると思う。逆に“夢とか全然ないっス”とかいってるような人たちにはこれがどういう風に届くのかなって、そういう人たちの感想のほうが俺は気になりますけど」
――そういう人たちには、今作を観ると夢を追うのも大変なことなんだなというのは伝わるでしょうしね。
「そうですね。若い世代の人でも“夢を追ってて超楽しい”という人は少ないと思いますからね。例えば、ダンサーになる夢を抱いてるティーンエイジャーの子がいたとしたら、友達と遊びたくても練習しなきゃいけないっていうだけですごく辛い訳じゃないですか? 俺も子供の頃そうだったけど、辛いことが1つあると、それで心が埋め尽くされちゃうから、夢を追ってても辛いんですよ。夢叶えるために誰よりも勉強しなくちゃいけないとか、親のいうことを聞いてピアノのレッスンに行かなきゃいけないとか。人は夢を持った時点で、そういう何らかの辛いこと、障害を抱えることになる。夢を本気で追いだした人は、誰もがそういうことを感じてると思うから、この作品は共感できるんじゃないかな。ちょっとでも足を踏み出すと、夢には光と影があることはすぐに分かると思う」
劇団四季『コーラスライン』/撮影:下坂敦俊
――おぉー。夢には光と影がある、と。
「はい。今作のポスターがそうじゃないですか。光と影が思いっきり分かりやすく表現されている。しかも写っているキャストは後ろ姿。これは、舞台に立つところまで一歩を踏み出さないと見られない景色というのを、ここで表現しているんだと思いますよ」
――クリエイターならではの分析ですね。
「今作は最初にいったように、キャストみんなが同じラインに並んでいて、すげぇ“主役”っていう人がいない。しかも、それぞれにそれぞれの人生があって、独白シーンも多いので、これは見ている人が主役を決める作品なのかなと俺は思うんですよ」
――おぉー!! なるほど。では、今日の武瑠さんのファッションについても聞かせてもらっていいですか? 今日のコーディネートはミュージカル観覧用ですか?
「TPOを考えて、ちょっと芸術っぽいからアンニュイな格好でいこうと。それで、ベレー帽も被ろうっていう感じですね。あとは『コーラスライン』のHPを観たら茶色とかベージュっぽい感じだったので、茶色いブーツを選びました。それで、実際に来てみたら劇場も落ち着いた色合いだったので洋服と馴染みましたね。TPOってチャンスだと思うんです。例えばミュージカルに行きます、ライブに行きますというのは“お題”だと思うので、そのお題を利用して楽しもうと思ってます」
――ライブとは違う、ちょっとフォーマルなオシャレを楽しみたくなる劇場でしたね。
「そうですね。TPOに合わせてファッションを楽しむ文化ってすごくいいと思うんです。こういうファッションにしても舞台にしても、俺は単純に知識欲がある人のほうが美しいしカッコいいなと思うので、“別にそんなこと知らなくていいや”っていう人よりも、“あれ知りたいこれ知りたい”っていう人のほうが魅力的だと思うんですね。だから、ミュージカルだからとか、あんまりガチガチに構えたりせず、知りたいことを知る、そのなかの一つみたいな感じで気軽に行った方が楽しめると思います」
文=東條祥恵 武瑠撮影=西槇太一 / 『コーラスライン』舞台撮影=下坂敦俊
SuG/武瑠◇撮影:西槇太一
SuG/武瑠◇撮影:西槇太一
SuG/武瑠◇撮影:西槇太一
SuG/武瑠◇撮影:西槇太一
SuG/武瑠◇撮影:西槇太一
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2015年11月23日(月・祝)23:59
【東京公演】
絶賛上演中 [2015年11月23日(月・祝)まで]
※e+半館貸切公演あり=11月7日(土)17:30公演
会場:自由劇場(浜松町)
席種・料金:
S1席:¥9,800
S2席:¥9,800
A1席:¥6,000
A2席:¥6,000
A2席(学生):¥3,000
【全国ツアー公演】
2015年
12月19日(土)【埼玉】所沢市民文化センターミューズマーキー(完売)
12月22日(火)【神奈川】よこすか芸術劇場
12月24日(木)【茨城】神栖市文化センター
12月25日(金)【千葉】浦安市文化会館 大ホール
12月29日(火)【福岡】キャナルシティ劇場
12月30日(水)【福岡】キャナルシティ劇場
12月31日(木)【福岡】キャナルシティ劇場
2016年
01月01日(金)【福岡】キャナルシティ劇場
01月02日(土)【福岡】キャナルシティ劇場
01月03日(日)【福岡】キャナルシティ劇場
01月04日(月)【福岡】キャナルシティ劇場
01月06日(水)【福岡】鹿児島市民文化ホール第1
01月09日(土)【東京】府中の森芸術劇場 どりーむホール
01月11日(月)【神奈川】テアトロ・ジーリオ・ショウワ
01月13日(水)【東京】オリンパスホール八王子
01月14日(木)【神奈川】茅ヶ崎市民文化会館 大ホール
01月15日(金)【埼玉】ウェスタ川越 大ホール
01月17日(日)【岡山】岡山市民会館
01月19日(火)【広島】JMSアステールプラザ 大ホール
01月20日(水)【広島】JMSアステールプラザ 大ホール
01月21日(木)【広島】JMSアステールプラザ 大ホール
01月22日(金)【広島】JMSアステールプラザ 大ホール
01月24日(日)【鳥取】倉吉未来中心 大ホール
01月26日(火)【三重】四日市市文化会館 第1ホール
01月27日(水)【愛知】アイプラザ豊橋
01月29日(金)【愛知】日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
01月30日(土)【愛知】東海市芸術劇場 大ホール
02月21日(日)【兵庫】たつの市総合文化会館 赤とんぼ文化ホール
2015年10月21日(水)発売
PCBP.52541/¥3,900+税
※クリアケース仕様
<収録曲>
01. BLACK/02. HELLYEAH/03. MISSING/04. overflow/05. B.A.B.Y./06. Luv it!!/07. DEAD or DEAD/08. STAY TUNED/09. 神様の悪戯/10. Time after time/11. hey 俗 funk you/12. sweeToxic/13. FRIDAY!!/14. CRY OUT/15. SOS/16. 一蓮托生/17. heavy+electro+dance+punk/18. 不完全Beautyfool Days/19. 影炎/EN01. teenAge dream/EN02. gr8 story/EN03. 上海ハニー/EN04. LOVE SCREAM PARTY/EN05. ときどきすてきなこのせかい
『SuGフェス 2015』
11月13日(金)新宿ReNY
開場/開演 18:00/18:30
<出演>A9/INKT/SuG
<
前売 ¥4,500(税込/ドリンク代別)
スタンディング
※未就学児入場不可
<
2015年10月31日(土)
<問い合わせ>
ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00~19:00)
『SuG VersuS 2015@東京・ディファ有明【極悪SuG】』
12月24日(木)ディファ有明
開場/開演 18:00/18:30
『SuG VersuS 2015@東京・ディファ有明【極彩SuG】』
12月25日(金)ディファ有明
開場/開演 18:00/18:30
『SuG VersuS 2015@大阪・松下IMPホール【極悪SuG】』
12月28日(月)松下IMPホール
開場/開演 18:00/18:30
『SuG VersuS 2015@大阪・松下IMPホール【極彩SuG】』
12月29日(火)松下IMPホール
開場/開演 16:30/17:00
『SuG VersuS 2015』について/武瑠コメント
「アポロシアター行なわれている『アマチュアナイト』というお客さんの声の大きさで優勝者を決める歌のイベントを観たとき、これをライブでやったら面白いなと思って考え出したものです。『VersuS2015』は【極彩SuG】、【極悪SuG】と内容が違うライブを2daysやって、実際にお客さんの歓声を測定し、どっちの音量が大きいかという勝負をさせるお客さん参加型のショーです。今年は大阪も追加したので、大阪、東京両方来て欲しいです」