『ハングマン』で舞台初出演の富田望生がSPICE編集部にやってきた!「ずっと舞台をやりたかったんです」

2018.5.15
インタビュー
舞台

富田望生

画像を全て表示(5件)


2018年5月12日(土)よりマーティン・マクドナーの舞台『ハングマン-HANGMEN-』 が、彩の国さいたま芸術劇場にて日本初演を迎える。映画『スリー・ビルボード』の脚本・監督を務めたマクドナーが手掛けた本作は、2016年ローレンス・オリヴィエ賞「BEST PLAY(最優秀作品賞)」に輝いた話題作。翻訳は小川絵梨子、演出は長塚圭史が務める。ブラックユーモア満載の本作において、主人公ハリー(田中哲司)とその妻アリス(秋山菜津子)の娘シャーリー役を演じるのは舞台初挑戦の18歳、富田望生。映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』『あさひなぐ』などで一気に注目されてきた若手女優だ。

そんな富田が先日(5月8日)、舞台『ハングマン』のPRのためSPICE編集部を訪問してくれた。この模様をお伝えする。

富田望生

――富田さんは映像のお仕事のイメージが強かったので、舞台に出演するという話に驚いたんです。元々舞台志望だったんですか?

ずっと、舞台をやりたいと思って普段から舞台を観に行ったり、オーディションを受けたりしてきましたが、役の設定や年齢的な点などもあって話が進まず……その時はまだ舞台をやる時期じゃないんだろうな、と思っていました。今回シャーリーという女の子に惹かれて挑戦し、出演が決まったときは「この役に出会えた!やっと舞台に立てる!」と感じました。

――演劇に興味を持ったきっかけは何だったのですか?

最初の映像のお仕事、映画『ソロモンの偽証 前篇・事件 / 後篇・裁判』(2015年)で、私のお母さん役をやってくださったのが、池谷のぶえさんでした。池谷さんは舞台でも活躍されていて、出演されたKERA・MAP#006『グッドバイ』を拝見した時、「なんてかっこいいんだろう」と思いました。こんなにも大勢のお客さんを前にして、こんなにおもしろい話を生でやっていて……その姿にものすごく感動したんです。私もかねてから舞台に立ちたいという気持ちはあったのですが、池谷さんの舞台を観たことで、どんな劇場でもいいからまずは生の舞台に立ってお芝居をしたい、その緊張感を私も味わいたい、できれば池谷さんのお芝居を観たその劇場に立ちたいと願っていたんです……そうしたら、たまたま今回の『ハングマン』の公演会場がまさに『グッドバイ』と同じ場所(世田谷パブリックシアター)で! 初めての舞台で夢の夢だった舞台に私、立つんだ……って興奮しました。

富田望生

――自ら運を引き寄せているかもしれないですね! ところで今回共演する方々は、富田さんとはかなり年齢が離れている大人の役者さんたちです。しかもかなり個性的な顔ぶれで。もっと自分と同世代の方々と初舞台を……などとは思いませんでしたか?

共演キャストの方々についてお話を聞いたとき、年齢差の抵抗感はありませんでした。映像では同世代の子たちと一緒に仕事をする機会が多かったので、舞台でこんなに大先輩に囲まれてやれることをものすごくラッキーだと思いました。ですから、「やらない」という選択肢はもちろんありませんでした。

――今回富田さんが演じるのはシャーリーという女の子。演じる手ごたえをどのように感じていますか?

この大人な皆さんの中に、一人15歳の女の子がいるというぎこちない空気が、むしろおもしろいと思ったんです。私が普段どおりに大人たちと接することで芝居を観ている人たちにもそれが自然な様子として「大人たちの中にいる15歳の存在」にほっこりしてもらえるんじゃないかなあって思っています。

私も数年前に思春期がちゃんとありました(笑)。親に反発したり、また突然子どもっぽくなったりもしていました。シャーリーもものすごく真っ直ぐ思春期に突入していると感じたので、大人たちには分からない感情を私がいちばん分かってあげないといけないなと思っています。

シャーリーは、パパに対しては反発して背を向けるんですが、ママには背を向ける部分と、ある時ちょっとママの方を向いて「私は子どもなんだよ」っていう部分を見せたりするんです。ママ役の秋山さんと二人で芝居をする場面があるのですが、秋山さんが母と娘の関係をうまく導いてくださっています。

稽古では、立つ場所、座る場所、座った場所からの目線の位置で、伝わる感情が変わって見えたり……いつの間にか自然とできるようになっていきました。演出の長塚さんが「今すごく伝わったよ」って言ってくださることもあって……そういう上手くできた事例を一つずつ積み重ねて作ってきました。すごく幸せな稽古期間でした。

富田望生

――長塚さんの演出を受けてみての感想はいかがですか? 一見厳しそうなイメージなんですが。

実は、舞台の稽古というものは演出家の方にものすごく役や芝居について突っ込まれて「もうわからないー! 頭がパンクするー! でも頑張らなきゃ!」というものなのだろうって勝手に想像していたんです(笑)。でも長塚さんは「ここをこう言うとこの台詞の意味がもっと伝わると思うんだ」ってすごく分かりやすく言ってくださるんです。で、そのとおりにやってみると私自身にもその台詞の意味がすうっと入ってくるんです。「シャーリーのこの台詞、おもしろいよね!」って言ってくださることもあって、そういう会話の中からシャーリーの人物像を一緒に見つけていこうとしてくださいました。すごくありがたかったです。そんな演出の仕方は、なにも舞台初心者の私だけでなく、他の大人の役者さんに対しても同じでした。他の方が「ここはこう思う」「こうやってみたいんだけど」と提案してくるのを、長塚さんはニヤニヤしながら「おもしろいですねー」って聴いているんです。一つの役に対して、その役とは無関係の人でも皆が真剣に考えて作っていける現場でした。

――順調に稽古が進んでいたようですね。とはいえ、今振り返ってみると、実はこの頃に壁にぶちあがっていた……なんて事はありませんでしたか?

私は立ち稽古の頃よりも、その前の本読みの時がいちばん危なかったです。緊張が止まらなくて息をするのも苦しくて、手汗が止まらなくて。それまでたくさんお芝居を観に行って、実際自分がやる際のイメージトレーニングをしてきたつもりでした。なのに、まったく効果がなく、最初は皆さんが話している内容を追いかけるのが精いっぱいでした。でも徐々に皆さんが笑いながら話している事に対して私も笑えるようになり……その積み重ねで克服できたと思います。

――そして5月12日から、ついに本番を迎えるわけですが、今の心境はいかがですか?

先輩方に「すがる」というのではなく、信頼してついていきたいと思っています。そうすればもっといろいろな顔のシャーリーに見せることもできるでしょうし、そのシャーリーを見て皆さんももっといろいろな対応を芝居中にしてくださるのではないかという気がするんです。

……それにしても、ああ、目の前にお客様がいるんですよね! お客様が目の前にいる状態で芝居をすること自体、本当に初めてだからドキドキしています。緊張のドキドキだけでなく、ワクワクするほうのドキドキもあって。共演の皆さんの愛にもドキドキしていて、今とてもいい気分です。

イープラスのロゴと同じ顔をしていただきました(笑)

――『ハングマン』を経験した後も、富田さんには演劇を続けていただきたい、と思っていますか。最初に池谷さんの名前が出てきましたが、いつか舞台で池谷さんと共演してみたいですか?

したいです! 本当に! 池谷さんは、舞台上で5役くらいやっていたんです。占いのおじちゃんとか5歳児とか……その舞台を観た後、楽屋にご挨拶に伺ったら「望生ちゃん、今度一緒に兄弟役をやりたいねー」って! 演劇の世界だとそういう考え方もできるんだ!と。すごく世界が広がりました。前回は映画で親子の関係でしたが、次はどんな設定で池谷さんとお芝居ができるんだろう。それを目指して頑張っていきたいと思います。

――では最後に。舞台を楽しみにされているお客様へメッセージをお願いします。

大好きな方々と大好きなシャーリーとして舞台に立つのが楽しみです。シャーリーの役はけっして他の人に渡したくありませんが、その一方で、お客さんの一人としてこの舞台を観れないことが悔しいです(笑)。翻訳劇の難しい部分もあるかとは思いますが、日本語で分かりやすくおもしろいギリギリのラインをみんなでいっぱい話し合って作った作品です。この公演にはU25のユースもありますので、是非私と同じくらいの世代の人にも観に来ていただき、できればシャーリーと私を応援してほしいです。

取材・文・撮影=こむらさき

公演情報

PARCOプロデュース2018『ハングマン-HANGMEN-』 

■作:マーティン・マクドナー

■翻訳:小川絵梨子
■演出:長塚圭史
■出演:田中哲司 秋山菜津子 大東駿介 宮崎吐夢 大森博史 長塚圭史 市川しんぺー 谷川昭一朗 村上 航 富田望生 三上市朗 羽場裕一
 
【埼玉公演】
■公演日程:2018年5月12日 (土) ~2018年5月13日 (日)
■会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

【東京公演】
■公演日程:2018年5月16日 (水) ~2018年5月27日 (日) 
■会場:世田谷パブリックシアター

【豊橋公演】
■公演日程:2018年6月9日(土)〜6月10日(日)
■会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

【京都公演】
■公演日程:018年6月15日(金)〜6月17日(日)
■会場:ロームシアター京都 サウスホール

【北九州公演】
■公演日程:2018年6月21日(木)〜6月22日(金)
■会場:北九州芸術劇場 中劇場

 
■あらすじ:
1963年。イングランドの刑務所。ハングマン=絞首刑執行人のハリー(田中哲司)は、連続婦女殺人犯ヘネシー(村上航)の刑を執行しようとしていた。しかし、ヘネシーは冤罪を訴えベッドにしがみつき叫ぶ。「せめてピアポイント(三上市朗)を呼べ!」。ピアポイントに次いで「二番目に有名」なハングマンであることを刺激され、乱暴に刑を執行するのだった。
2年後。1965年。イングランド北西部の町・オールダムにある小さなパブ。死刑制度が廃止になった日、ハングマン・ハリーと妻アリス(秋山菜津子)が切り盛りする店では、常連客(羽場裕一・大森博史・市川しんぺー・谷川昭一朗)がいつもと変わらずビールを飲んでいた。新聞記者のクレッグ(長塚圭史)は最後のハングマンであるハリーからコメントを引き出そうと躍起になっている。そこに、見慣れない若いロンドン訛りの男、ムーニー(大東駿介)が入ってくる。不穏な空気を纏い、不思議な存在感を放ちながら。
翌朝、ムーニーは再び店に現れる。ハリーの娘シャーリー(富田望生)に近づいて一緒に出かける約束をとりつけるが、その後姿を消すムーニーと、夜になっても帰って来ないシャーリー。そんな中、ハリーのかつての助手シド(宮崎吐夢)が店を訪れ、「ロンドン訛りのあやしい男が『ヘネシー事件』の真犯人であることを匂わせて、オールダムに向かった」と告げる。娘と男が 接触していたことを知ったハリーは…!
謎の男ムーニーと消えたシャーリーを巡り、事態はスリリングに加速する。