クリスティーナ・シャプラン(マリインスキー・バレエ ファースト・ソリスト) 美貌と卓抜した才能
-
ポスト -
シェア - 送る
クリスティーナ・シャプラン ©Natasha Razina
美貌と卓抜した才能を併せ持つ、新しきスター
美しいバレリーナが多く在籍するマリインスキー・バレエに、目の覚めるような新しいスターが登場した。
現在24歳のクリスティーナ・シャプランは、長身で女優のようなルックスの持ち主で、人目を惹く華やかなオーラを放ち、卓抜した才能を感じさせる大物だ。この7月には、サンクトペテルブルグのマリインスキー劇場(新館)で上演されたラヴロフスキー版『ロミオとジュリエット』でジュリエットのロール・デビューを飾り、新たな伝説を生み出した。来日公演でもジュリエットと『愛の伝説』のシリン役、バランシン振付『ジュエルズ』を踊る。ジュリエット・デビューを果たした翌日に、興奮冷めやらぬシャプランに現地取材した。
「『ロミオとジュリエット』はテクニック的にも難しい作品ですが、一番重要なのはドラマティックなストーリーラインです。今、私に教えてくださっているエルヴィラ・タラソワ先生からも、この役を踊るに当たって重要なのは演技力だと言われました。
表現力が求められる第3幕は特に難しい。14歳の少女ジュリエットが、ほんの短い間に大人の女性になり、世界観が変わり、両親を見る目も変わっていく。もちろん、私にとっては第1幕も難しいのですよ。おどけていて、天真爛漫で、どこか浅はかなところもあって…その後に瞬間の変化を見せるわけですからね」
サンクトペテルブルグに生まれ、バレエに出会ってからは一筋に打ち込んできた。2011年にワガノワ・バレエ学校を卒業、モスクワ音楽劇場バレエに入団し、14年にミハイロフスキー・バレエに移籍。マリインスキーは昨期が初シーズンだったが、既に『ラ・バヤデール』などで主役デビューを飾っている。
「仕事が多ければ多いほど嬉しい。私はマゾヒストなんです(笑)。バレエ学校を卒業したあと、どの劇場に入るかは迷いましたよ。マリインスキーに直接入ることもできましたし、ボリショイからもオファーがありました。また、モスクワ音楽劇場バレエ、ミハイロフスキーからも。でも、イーゴリ・ゼレンスキーさんを信じてモスクワ音楽劇場バレエに行きました。その時点で一番の選択だと思えたのです。マリインスキーに入って初めて、友達を舞台に招待するときに『私の劇場に観にきて!』と言えるようになりました。多分、ワガノワを卒業してすぐここに来るべきだったのでしょうが、これが私の人生。過去のことは後悔していません」
正直でシンプルな人柄。『ロミオとジュリエット』のリハーサルでは、他のダンサーが舞台をはけても、指導の先生と長い時間残って練習を続けていた。大成功の初日の公演後、舞台裏で見たのもストイックで意志の強いシャプランの姿だった。舞踊監督のユーリー・ファテーエフが細部にダメ出しをしているのを真剣な表情で、何度も何度も頷きながら聞いていた。
「フェテーエフ監督からアドバイスされたことは、見た目から演技についてまで“全部”です。これが初めてのジュリエット役でしたから、直さなくてはいけないところがたくさんあるのは当たり前です。一生かけて自分のものにしていく、それがバレエだと思います。この作品だけでなく、どの作品もそうだと思います」
一途で熱心で、彼女自身も自分のことをバレエ・マニアと認めるほどだが、舞台でのシャプランを知らない人から、女優にスカウトされてしまうこともあったという。
「女優の仕事は、私もやってみたいと思います。でも、残念ながら両立は無理。バレエも女優も中途半端ではできない…オファーがあったときは、お断りせざるを得ませんでした」
今、彼女が一番大切にしていることを訊ねてみた。
「私は、成長していくそれぞれの過程で、優先しているものがありました。バレエ学校で学んでいるときは、他には何も目に入りませんでした。少し大人になった今は、人生はバレエだけではない、と思うようにもなりました。私はバレリーナですが、いい奥さんにも、母親にもなりたい。充実した人生を送りたいと思っています。きっとそれが私の人生を輝かせ、私のバレエをも輝かせると思います」
取材・文:小田島久恵
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)
マリインスキー・バレエ 2015
クリスティーナ・シャプラン出演公演
●『ロミオとジュリエット』
11/20(金)18:30 三重県文化会館
問合せ:三重県文化会館
●『ジュエルズ』
11/26(木)18:30 文京シビックホール
●『愛の伝説』
11/27(金)18:30 東京文化会館
●『ロミオとジュリエット』
12/2(水)13:00 東京文化会館
問合せ:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
※その他公演の詳細は、下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.japanarts.co.jp/mb2015