ぺ・ヒギョン優勝で目の色が変わるNEXTシンデレラ！ 『リゾートトラスト レディス』で競争激化

何勝もするプロがいる一方、一勝も挙げられないプロもいる女子プロゴルフの世界。実力の世界だから当然ではあるが、遠かったその1勝がきっかけとなり、大きな飛躍を遂げるプロもいる。‟1勝の重み“は大きく、今季『フジサンケイレディスクラシック』で優勝した永峰咲希しかり、『サイバーエージェント レディスゴルフトーナメント』の新垣比菜しかりで、しっかりと勝利という結果を残した選手が、上位で活躍するようになってきた。

先週の『中京テレビ・ブリヂストンレディスオープン』でのぺ・ヒギョンの1勝も、ツアー活性の起爆剤になる気がする。彼女は過去に2位（タイ含む）が5度と最も優勝に近いプロの一人だったが、何度も最終組で回りながら、なぜか最終日で大叩きして失速するケースが多かった。

その“シルバー・コレクター”の汚名を返上し、ウィーナーサークル入りした彼女は、“呪縛”から解き放たれたことで、今季は複数回の優勝も見込めそうだ。もともと歯切れのいい豪快なスイングで、飛距離も出る選手。この勝利によって彼女の自信は確信に変わったことだろうし、さらに未勝利組のライバルたちの目の色が変わり、ツアー全体が活性化するに違いない。

新垣比菜や勝みなみ、そして『中京テレビ・ブリヂストンレディスオープン』で2日目まで主役で、2位でフィニッシュした小祝さくらなど……。1998年（1999年早）生まれの黄金世代とともに、10～20代の選手の台頭、そしてベテラン勢の反撃・復活劇など、各選手のレベルアップが女子プロツアーの活性化を生んでいるのだ。

この状況の中で5月25日（金）から開催される『リゾートトラスト レディス』（関西ゴルフ倶楽部／兵庫県）にも注目しないわけにはいかない。「次は私の番」と、まさに心に闘志を秘めて臨む“若武者”が出てくる予感さえ漂っている。

その“NEXT”をピックアップしたい。まずは黄金世代4人目の優勝は誰か？　先週、最終日の前半で失速した小祝さくらは、15番ホールから4連続バーディーで2位タイに食い込んだ。淡々と回るその姿勢とは裏腹に、「応援してくれるファンに応えたい」と闘志を湧き立たせ、この挽回劇を生んだ。この“秘めたる闘志”こそが、好循環を生んでいるのだろう。若干20歳ほどの女性たちは、すでに自分との戦い、ファンへの思いを胸に、優勝の2文字を描いて試合に臨んでいる。

今季メジャー1戦目『ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ』で左手首を負傷した三浦桃香も、多くファンを持つ黄金世代だ。最終日も棄権も余儀なくされる中、その気持ちの強さで“完走”。169センチという高身長から繰り出す圧倒的な飛距離も、自信の一つになっている。尾崎将司の愛弟子と言われる原英莉花も三浦同様、大きな飛距離が魅力の大型プレーヤーだ。こちらは173センチと、さらに背が高く、スケールの大きいゴルフを身上としている。

黄金世代の3つ上（1996年早生まれ）となる柏原明日架もいつ勝利してもおかしくない。新垣が初優勝した『サイバーエージェント レディスゴルフトーナメント』でも1打差の2位、2戦前の『ほけんの窓口レディース』でも5位タイと好調を維持している。とにかく難しいセッティングになると上位に顔を出す実力派で、こちらも身長171センチと身体能力は折り紙付き。優勝を待ち望んでいるファンも多い選手の一人だ。

今季絶好調の比嘉真美子も2013年に、この『リゾートトラスト レディス』を制している。しかも、開催コースが今年と同じ関西ゴルフ倶楽部というから、本人も今回は勝つ気で臨んでくるに違いない。もうドライバーの不安は完全に払しょくした。アイアンもきっちりダウンブローに打てるのも、現在トップをひた走る鈴木愛と共通するところ。キレのあるアイアンはピンをデッドに狙えるだけに、優勝争いに絡んでくる可能性は高いだろう。

過去の優勝者で、しかも複数回に渡って大会を制しているのは、テレサ・ルー（台湾）と全美貞（韓国）だ。テレサ・ルーは先週も優勝争いを演じ、調子を上げてきている選手の一人。2013年から優勝していない年はない実力者で、しかも今季は出場試合で1回も予選落ちしていないのが強みだ。ドライバーやアイアンは一級品のテレサゆえ、パットさえ決まればいつでも優勝争いができるだろう。

3月に行われた『Ｔポイントレディス ゴルフトーナメント』で鈴木愛に1打差で敗れた全美貞も、虎視眈々と今季の初勝利を狙っているだろう。2012年に賞金女王に輝いた全美貞だが、生涯獲得賞金も10億円を超えて3位になっている実力者だ。2014～15年は苦しんだが、2016年の『サマンサタバサ ガールズコレクション・レディーストーナメント』で涙の復活を果たした。昨年は3月の『ヨコハマタイヤゴルフトーナメント PRGRレディスカップ』で1勝しており、今季も早めの1勝を目論んでいるに違いない。

一ノ瀬優希の復調も嬉しい知らせだ。2013年に鎖骨を痛めてからなかなか満足のいくスイングができなくなった彼女だが、それでも2014年の『サイバーエージェント レディスゴルフトーナメント』までに3勝を挙げた実力の持ち主で、その後一桁順位を外したことはない。4年ぶりの優勝を予感させるアイアンのキレが戻ってきたのは他の選手にとっても脅威のはずで、若手が台頭してきている中、20代最後の年となる今年に復活の狼煙をあげたいはずだ。

とにかく、挙げればキリがないくらい選手層が厚くなっている今の女子プロゴルフ界。初優勝者が続々と誕生することで、その争いはヒートアップしてきた。ネスクトシンデレラは誰なのか？　今年の『リゾートトラスト レディス』は、そんなスケールアップした女子プロたちの “秘めたる闘志”を直に見るにはいい機会のはずだ。