ストレイテナー『Future Dance TOUR』初日にみた、最新にして最高なロックバンドの姿

2018.6.15
レポート
音楽

ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

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Future Dance TOUR  2018.6.12  Zepp DiverCity TOKYO

キャリアを重ねるごとにトップフォームを更新し続けたいとか、最新作が最高傑作でありたいというのは、ほとんどのロックミュージシャン(に限った話でもないが)が掲げるテーマだと思うけれど、本当の意味でそれを達成できている存在は決して多くない。が、最新アルバムを聴いて、この日のライブを観る限り、ストレイテナーは間違いなくその中の一組だ。

ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

結成20周年、デビュー15周年、4人体制になって10周年となる今年、通算10作目のフルアルバム『Future Soundtrack』を世に送り出し、満を持して迎えたツアー初日。Zepp DiverCity TOKYOを埋め尽くした観客たちは、キャリアに裏打ちされた凄みとスキルフルな演奏に加え、未だ尽きることのない衝動と創意工夫に満ちたステージングに、2時間以上もの間興奮し続けることとなった。ツアーはまだまだ続くのでライブの流れや詳細には触れられないし、やった曲もほとんど書けないが、ありったけ喰らわされた驚きと感動のうち、いくつかを記しておきたい。今回はレポというより所感、雑感です。

ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

まず、セットリストが素晴らしかった。ネタバレできないのに何を言ってるんだ?という話だが、見たい方はまぁ、ネットを探せば多分出てくると思うし、ツアーに参加予定の方は当日その目で確かめてほしい。いつものように他バンド比で曲数は多めで、リリースツアーなのでニューアルバムの楽曲を網羅しながら、定番曲や意外な曲を織り込んでいたのだが、ツアータイトルが『Future Dance TOUR』だけあって、ダンスミュージック的要素を含んだ曲が数多く盛り込まれていた。一言でダンスと言っても、単に4つ打ちのリズムだったりするだけではなく、8ビートだろうが16ビートだろうが、アンサンブルの妙と各楽器のせめぎ合いが生むグルーヴで容赦なく揺らしていく。テナーのレパートリーには元々そういう曲が多いが、この日は特に際立って感じた。加えて、これも彼らのライブでは日常茶飯事である既存曲のリアレンジに関しても、今回のツアー仕様に新たに構築し直したらしき曲がかなりの数あり、これまで何度となく進化を遂げてきた「KILLER TUNE」でさえ、長めのギターソロとベースソロの応酬が組み込まれたりと刷新されていた。これには当然フロア中が跳びはねて応え、Zeppが激震。

ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

そして何より驚かされたのは、今回のツアーで初めて披露されるニューアルバムの収録曲たちだ。ライブで化ける、と言ったら語弊があるかもしれないが、音源の段階ではバンド感よりも、サウンド面の洗練ぶりとポピュラーミュージックとしての完成度、メロディの強さの方が前面に出ていたことで、『Future Soundtrack』の真のポテンシャルに、僕は気づいていなかったらしい。先にリリースされたシングルの2曲=「The Future Is Now」と「タイムリープ」も例外ではなく、とりわけ「タイムリープ」は、クールなグルーヴ感を醸し出す音源での演奏を正確になぞりながらも、アタックの強靭さとメリハリで以ってダイナミックに変貌を遂げていて、本気でかっこよかった。

ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

まとめると、“Future Dance TOUR”であることを踏まえながら定番曲と意外な曲と新曲たちをセンスよく組み合わせ、アレンジもたっぷり施して演奏しているのが今回のツアー、ということになるが、個人的にはもう一つポイントがあって、それは回数的な意味でのMCの少なさだ。曲間に感謝を告げたり、ホリエが気の利いた言い回しで曲フリするシーンは随所に挟んでいたが、本篇に長めのMCは一回だけ。まるでダンスミュージックのDJが曲を繋いでいくかのように、次々に楽曲を展開させていくことで、昂揚感を高いアベレージでキープしていた。とはいえ、近年のテナーのライブは自由すぎるMCも醍醐味の一つだから……という少なくないファンの方もご安心を。一回のロングMCで存分にグダグダしてくれました。多分、他会場では同じ話をしないと思うのでトピックを羅列しておくが、これだけできっと取り止めのなさとフリーダムな空気が伝わるはず。

・リハが上手くいくと案外本番は上手くいかないことがある
・ホリエは本番前リラックスしてステージで緊張するタイプ
・猫は追い込まれると臭い匂いを出す
・厄年について
・普段からよく喋るひなっちと、ほとんど喋らずに生活できるOJ
・スペアザいじり
・4人で一番のナイスガイは誰か、今度打ち上げで店員に聞いてみよう
・20年のキャリアの中で、いつ大人になったか

ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

4人とも大いに笑い、笑わせてくれたMCに限らず、そういえば、演奏中の表情もとても柔らかだった気がする。普段から笑顔で弾く男・日向を筆頭に、ホリエやナカヤマも、さらにはクールなOJも、時折顔をほころばせたり、テンションの赴くまま頭を振ったり拳を握ったりするシーンがたくさんあって、僕はそこにもグッときた。ホリエが自らライブの手応えを口にして喝采を浴びる一幕もあったように、本人たちにとっても『Future Soundtrack』を掲げたツアーはこの時点で予想を超える熱量と完成度を見せているようだ。

ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

この日発表された幕張イベントホールでのワンマンライブ、タイトルは『21st ANNIVERSARY ROCK BAND』。20周年は確かに節目で祝祭感もあるが、そこは区切りでも、ましてやゴールでもないぞ、という意気込みが伝わってくるようでとても良い。
「20年前に描いていた夢は、そんなに大きなものじゃなかったけど、その未来が今」
「The Future Is Now」を演奏するときのホリエの言葉通り、バンドも人生も、過去があるから今があり、今は一瞬で過去になる。今この瞬間だってさっきまでの未来だ。その繰り返しの中で常に更新を続け、想像を超えてきた“20th ANNIVERSARY ROCK BAND”・ストレイテナーは、未来にまた新たな夢を描きながら、最高の今を表現するために、ツアーも残りのアニバーサリーイヤーも、その先もずっと、自らを突き動かしていくのだろう。


取材・文=風間大洋  撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)