【動画あり】傑作ミュージカル『エビータ』オリジナル演出版ついに開幕! メディアコールレポート
アルゼンチンの貧民街で私生児として生まれ、ファーストレディにまでのし上がった実在の女性エヴァ・ペロン、通称エビータ。本作はシンデレラストーリーを現実のものとしながら、わずか33歳でこの世を去ったエビータの人生の光と陰を描きだすミュージカルだ。
ミュージカル『エビータ』の初演は1978年。アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲、ティム・ライス作詞、ハロルド・プリンス演出という、現代ミュージカル界の大巨匠トリオにより生み出された歴史ミュージカルの傑作だ。本公演では1978年初演時のオリジナル演出版での上演となる。
初来日公演となる7月4日、東急シアターオーブにてプレスコールが開催され「A New Argentina」「High Flying, Adored」「Don’t Cry For Me Argentina」の3曲が披露された。
【動画】ミュージカル『エビータ』メディアコール 2018.7.4@東急シアターオーブ
ハロルド・プリンスの愛弟子であり、本公演のアソシエイトディレクターであるダニエル・カトナー(Daniel Kutner)による各曲のコメントと、キャストのコメントを紹介する。
ダニエル・カトナー Daniel Kutner
1曲目「A New Argentina」
大統領選に出馬するペロンに、エヴァが自信をもたせ、支援者の集会を組織し、選挙戦の邪魔となるものを処理する陰謀を練る。カトナーは「「Don’t Cry For Me Argentina」に並ぶ、『エビータ』を代表する曲です。エヴァとペロンがいかに野心と大志をもち、アルゼンチンという国のトップにのぼり詰めていったかを描いています。個人的な思いとして私自身がアメリカ人であることから、「自分たちの国のリーダーがどういう人なのかを、実は分っていないのではないか?」という思いもよぎる」とコメント。
エヴァ(エマ・キングストン)とペロン大佐(ロバート・フィンレイソン)がベッドで言葉を交わすところからはじまり、熱気に満ちた支援者たちの決起集会へダイナミックに展開する。合間には、チェ(ラミン・カリムルー)も登場。
「エキサイティングなナンバー。権力というものは失墜する。落ちるときには、最後まで堕ちていく。だからこそ、ここではエヴァの野望が高まっていくことを表現します」「エヴァは15歳の時から、都会・ブエノスアイレスへ行くという欲望のために、多くの男性と関わることもしながら、一心不乱に動き信念を貫きました」(カトナー)
2曲目「High Flying, Adored」
エヴァとチェのバラード・ナンバー。若くしてファーストレディとなったエヴァに、問いかけるようにチェが歌いかける。1曲目に比べ親密な雰囲気ではあるが、「二人がお互いに、権力とはどこで使うべきものか議論を仕掛けるような関係で描かれています」とカトナーは語る。「チェは、大きな力をもつエヴァに対し、尊敬の念を抱いていました。だからこそ、その力を良い方向に使ってほしい、もともと持っていた高い理想に向かって邁進してほしいと望んでいました」しかしエヴァには皮肉な運命が待っている。
ラミンが演じるチェは、このミュージカル作品におけるストーリーテラーのような立ち位置の役だ。チェ・ゲバラとイメージが重なるキャラクターだが、歴史上のゲバラ本人というわけではない。「チェ」という言葉も、もともと誰かを呼びかける時の「Guy!」のように使う言葉。
3曲目「Don’t Cry For Me Argentina」
「エヴァ・ペロンはもともと女優です。このシーンでは、作中で一番女優らしいエヴァ・ペロンをご覧いただくことができます。エビータの中で一番知られている曲ですが、“手玉にとり、掌握していく”という内容を歌っていることはあまり知られていないかもしれません。人々の平等、貧しい人への思いを並べ立てているけれども、実際に登場したエヴァは煌びやかな格好をした人だったということです」「作詞家ティム・ライスも、エビータ自身の中身は空っぽでありながら、それをエモーショナリーに見せかける曲を書いたと言っていました」
キャストより開幕に向けて
カトナーの挨拶と、メインプリンシパルのコメントを紹介する。
カトナーは、カンパニーの各メンバーに感謝と敬意を述べた。たとえば本作が長年風化せずに上演されつづけることができた理由のひとつには、舞台美術や衣装のデザインを手がけたティモシー・オブライアンがいたからだと、名前をあげた。本作の舞台セットは「なるべく作りこまず、できるだけシンプルに。たとえばドアも枠はなく扉だけがある」といった表現をしている。ぜひ劇場でその空間も楽しんでほしい。
そして「ハロルド・プリンスは常々「劇場は大変神聖な場所だ。息づかいの聞こえるような場所、それが舞台であり劇場。だからこそ来場いただけるお客様には想像力を働かせて楽しんでいただきたい」と言っている。その思いに共感し、そのような仕事ができるよう、私もハロルド・プリンスのもとで15年研さんを積んでいます」と挨拶。
エヴァ(エビータ)役 エマ・キングストン Emma KINGSTON
エマは「本日ここで皆さんと公演をシェアできることを大変嬉しく思います。日本は初めてですが、劇場も、お客様も、とても素晴らしいと友だちから聞いてきました。すべてにエキサイトしています。また、この役を演じることができ大変光栄に思っています。なぜなら母と祖父がアルゼンチン出身であり、実際に劇中に描かれるような時代を過ごしてきたからです。しかも世界的に高名な演出家であるハロルド・プリンスと、その愛弟子であるカトナーの演出を受けられることを光栄に思います」とコメント。上演中の舞台には字幕も出る。しかしエマの力強く美しい歌声は、言葉の壁を越え身体が震えるほどの感動を与える。
チェ役 ラミン・カリムルー Ramin KARIMLOO
日本でのフルプロダクション出演は初となるラミン・カリムルーは「コンニチワ〜、ハジメマシテ、ヒサシブリ?」と日本語のあいさつで場を和ませる。
「私にとって日本は第2の故郷です。いつか一緒に仕事をしたいと思っていたダニエル・カトナーの演出作品に参加することができ、大変うれしく思います。全幕ミュージカルでひとりの登場人物として日本の舞台に立つのは今回が初めてです。この素晴らしい作品に、日本で参加できることも光栄なことです」
ホワン・ペロン役 ロバート・フィンレイソン Robert FINLAYSON
アンドリュー・ロイド=ウェバーが作曲した数多くのミュージカルに出演し、国際的な舞台でもキャリアを重ねてきたロバート・フィンレイソンは来日を楽しみにしてきた様子。
「来日してまだ2日目ですが、すでにいかに素晴らしい国かを感じはじめています。ここで公演を重ねていけることが楽しみです」「『エビータ』はロックミュージカルとして、40年たった今も評価される作品ですが、もちろん技術的に進歩し、サウンドもアップデートされました。そのような部分も楽しんでいただきたいです。内容を知らないで観ても楽しい体験になるミュージカルだと思います」
ミストレス役 イザベラ・ジェーン Isabella JANE
ミストレス役のイザベラ・ジェーンは「私たちはこの作品を愛してやまないカンパニーですし、皆さまと同じように、私たちもこの作品を楽しんでおります。エビータではリアル感を出せるよう一生懸命演じますので、ぜひ皆さまお越しください」と意気込みを語った。
マガルディ役 アントン・レイティン Anton LUITINGH
マガルディ役のアントン・レイティンは、本作の上演が『エビータ』40周年を記念していることに触れ、「40年前に3人の天才が、時間とともに色褪せない永遠に残る作品を目指して創ったのだと思います。今なお、輝き続ける歴史的作品を皆さまの前にお見せできることを光栄に思います」
ミュージカル『エビータ』は、東急シアターオーブで7月4日(水)より29日(日)まで上演される。「悪女」の顔を持つ「聖女」エビータと、全キャストが生み出す熱狂を、ぜひ体感してほしい。
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取材・文・写真撮影=塚田史香 動画撮影・動画編集=大野要介