MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』第六回ゲストは竹原ピストル “ピストルさんは、俺の心の中にずっといるんです”

2018.7.20
特集
音楽

●『極東最前線』に呼ばれて、自分のやり方が間違ってなかったと思えた●

アフロ:やっぱり紅白から変わったっすか?

竹原:ワンマンライブに来る、お客さんの数は増えた。それが一番わかりやすいんじゃないかな。

アフロ:出場が決まった夜はどうでした?

竹原:自分で自分がおかしかったよね。言ったらデビュー曲の『自殺志願者が線路に飛び込むスピード』がいきなり放送自粛曲でさ、「そんなゲテモノが紅白かよ」みたいな。だけどシンプルに、父ちゃん母ちゃんが喜ぶだろうなって。それが一番強かったかもしれない。

アフロ:『極東最前線』に出た喜びとは違いますか?

竹原:それとはちょっと違ったな。『極東最前線』に呼んでもらえた時は、100%自分自身の全細胞がグワーって喜ぶ感じ。紅白が決まった時は取り巻きが喜ぶぞっていう、そっち側だったかな。

アフロ:全細胞が喜んだ感覚は、それ以降ないですか?

竹原:いや、あるよ。しばしばあるけど、でも『極東最前線』が一番だったと思う。

アフロ:原体験みたいなことなんですね。

竹原:そうそう、そういうこと。一時期、俺のやり方は間違ってるんじゃねえの? と思う時があったけど『極東最前線』に呼ばれて間違ってなかったと思えた。

アフロ:超・客観的で恐縮ですけど、ピストルさんはずっとカッコよかったっすよ。初めて会った時からカッコよくて……だからこそ俺は、それが切なくて。こんなにめちゃくちゃカッコイイ人が俺たちと2マンしてるって、どうなっちゃてるのよ、と思ってました。

竹原:そうなの?

アフロ:当時、駆け出しのクソ・ぺーぺーな俺たちが、竹原ピストルと2マンできる状況を異常だと思ってました。だから、はっきり言って絶望でしかなかった。カッコイイだけじゃダメなんだ、って。そんな中でピストルさんは、ガンガンライブをやってたじゃないですか。それで俺「ピストルさんはやり方が違うんじゃないか?」って思ってました。だけど、今考えたら間違ってなかったですからね。ピストルさんは結果で「間違ってなかっただろ」って言ってくれてる感じです。

竹原:ブレブレではあったけどね。

アフロ:そうですか? 一貫してやってたじゃないですか。

竹原:ヤバイと思ってたよ。このままじゃヤベえなって。誰か拾ってくれ、と思ってた。

アフロ:個人でやることに限界を感じてたんですか?

竹原:どこにも所属せず、あのまま一人でずっと続けると思ったら、途方にくれたというか。ライブが唯一の生き甲斐ではあるけど「これをずっと続けるの?」って、1人ぼっちの時にズシンとなったりしたんだよね。

アフロ:俺も、その半分くらいはズシンとなってました。というのは、竹原ピストルという、あれだけ現場で客をうならせる、パワーのある人がああいう規模で活動しているのを見て、どうすれば良いんだろうなって。例えば、漫画喫茶で働くと音楽雑誌がガンガン入荷されるわけですよ。ペラペラめくると、自分が全然共感できない人たちがガンガン取り上げられて。方や現場へ行くと、ピストルさんや俺たちがいて。そんな状況に「このままで大丈夫なのかな」というのはずっとありましたね。

竹原:こう言っちゃなんだけど、「旅芸人としての、音楽活動で生活していくということはどうやら出来そうだ」。そこまでは行ったんだよ。だけども……ライブを続ければ、続けたで恩返ししなければ気が済まねえって人達がどんどん増えていっちゃってたんだよね。“どうしても売れたい、この人たちを驚かせたいし喜ばせたい”という気持ちが消えなくて。そことのジレンマだったと思う。多分、ライブを100本くらいまで減らしたとしても食っていけたと思うんだよ。だけど、ずっと引っかかってたのは“売れたい”だったんだよね。今のうちに動かないとダメだ、と思って焦ってた。客が一桁なんてザラだったしさ、こいつらに俺を応援してて良かったと思わせるくらい売れたかったし、今も売れたいんだけど。アフロはどんなモチベーションなの?

アフロ:俺は今のところ自分っすね。自分で自分のことを褒めれるようになりたくて。まだ、誰かの気持ちに応えたい、というのは弱いかもしれないです。なんか無性に「そんなの知るか」って言いたくなっちゃう……なんででしょう。

竹原:そっかそっか。そっちの方が純度高いよな。

アフロ:いや、どうなんでしょう。ピストルさんを前にして、自分が小さく感じちゃいますけど。

竹原:とんでもない。それは、それぞれの考えがあるから。俺は「もう一回、拾ってくれ」と思った立場だから、余計どうにか事務所に金を入れたい。

アフロ:俺の場合は、そういうファイティングポーズを持ってないといられないのはあるかもしれないです。

●竹原ピストルは、俺たちの心の中にずっといるんです●

竹原:もし、紅白のオファーが来たら出る?

アフロ:(キッパリと)もちろん。

竹原:うんうん。

アフロ:新曲の歌い出しが、<2017年大晦日>なんですよ。<食らいつくNHK紅白 土手っ腹にピストル>。

竹原:それはそういうことなの?

アフロ:はい。それが「五文銭」の歌詞。メジャーへ行ってから「なんでUKとMOROHAを組んだんですか」とインタビューでよく聞かれるんですよ。悔しいから絶対に言わないんですけど、俺らはお互い全然音楽の趣味は違ったんです。UKはヴィジュアル系バンドが好きで、俺はHIPHOPが好き。逆に俺はヴィジュアル系を全然好きじゃなくて、UKはHIPHOPを好きじゃなかった。インタビューでは「音楽性は全然違ってもいい。それよりも、何かを成し遂げたいモチベーションの高い奴と組んだ方が上手くいくと思ったから、UKと組むことにした」って、カッコつけて言うんです。……それも、もちろんあるんですけど、1つだけお互いに共通で好きだった音楽があったから一緒にやれると思ったんです。……それが野狐禅でした。

竹原:それ、すごい話だね。

アフロ:だから、俺たちの心の中に竹原ピストルはずっといるんですよ。それで今日、これを持ってきたんですよ。(バックの中からリストバンドを取り出す)

竹原:それは何?

アフロ:これ、ピストルさんと群馬で共演した時に「今度、duo(『duo MUSIC EXCHANGE』)でワンマンやるんだよ」って言われて。それで、俺、人生で二度と言わないと思うんですけど「オープニングアクトやらせてください」って言ったんです。そしたら「俺の一存では決められない。だったら、オープニングアクトじゃなくてフラットな2マンでやろうぜ」と言われて。その時に何かしら貰いたかったんでしょうね。「手にしてるリストバンドください」と言って。それでUKに「ピストルさんからもらったぜ」って自慢してました。

竹原:そんなことがあったのか。

アフロ:俺、今日はそれを言おうと思って。いつだって心の中にいますよ。

竹原:嬉しい……けど、なんか……。

アフロ:むず痒いですか?

竹原:もちろん、むず痒さもあるけど。

アフロ:本人の前ならもちろん良いんですけど、インタビュアーの方に「影響を受けた人は誰ですか?」って聞かれて、パッと答えるのはすごく悔しいんですよね。なんか、その人に白旗を上げているような気がするじゃないですか。だから、「お互いに野狐禅が好きで……」って言っちゃうと、なんかダメだなと思ったりします。

竹原:そんな風に思ってくれてたのは、正直ビックリしたけど。わかりやすく乱暴な言葉を使うなら、初めて共演した時からMOROHAはずっと同等だと思ってたんだよ。同じラインで頑張ってる俺たち、って仲間意識が強かったから「いやいや、そんな言われても」って気持ちになっちゃうな。

アフロ:初めて2マンした時に、俺は失礼なことをMCで言ってるんすよ。

竹原:どんなこと?

アフロ:「なんで野狐禅を解散したんだよ」って。

竹原:あぁ! なんか言ったかもしれないなぁ!

アフロ:そんな失礼なこと……今だったら鳥肌立ちますよ。

竹原:でも、そんなこんなをひっくるめて、そういう言葉だったと分かったら改めて嬉しいね。

アフロ:過去の思いが全部、繋がっていくというか。伏線が回収されていくのが嬉しくて。やってて良かったなぁ、と思います。こういう瞬間のために、俺は頑張っているのがあるんですよ。だから「今日はこれからピストルさんと、中目黒で! ‪しかも会社の金で飯食うぞぉ!‬」って、やっぱニヤニヤしましたし。

竹原:面白いなぁ。俺が知らないところで、勝手に因縁を持たれてたのか。

アフロ:本当にそうっすよ!

竹原:ね、俺は普通に仲間だと思ってたから。

アフロ:言っても、ちゃんとリスペクトは示してると思うんだけどなぁ。

竹原:そうじゃなきゃ、一緒に共演をさせてもらってないだろうしね。8月に俺とMOROHAとSIONさんで3マン(『- GURUxGURU 10th ANNIVERSARY 1st SPECIAL!! -』)やるじゃん。俺の中ではMOROHAの2人が近しすぎて、竹原ピストルMOROHAとSIONさんの対バンって認識なんだよね。MOROHAと2マンをやる時も、MOROHAより物すげえライブをやって「竹原ピストルって、すげえ」と言われたいモチベーションではなくて。お客さんが楽しめたら良いな、みたいな感じなんだよ。

アフロ:逆に「やってやる」みたいな人はいるんですか?

竹原:基本はそっちだよ。闘争心を露わにして攻撃的なことをやる、みたいなことは100%ないんだけど、「俺の方が良いライブをやってやる」というのは常にある。

アフロ:アコースティックのシーンを盛り上げたい、と思ったりしますか?

竹原:ないない。そんなシーン全体は見てない。執着してることと言えば、飲み屋で磨き上げた芸がどこまでも通用するところを見せてやりたい。だけど、弾き語り1本でどこまで行けるか、みたいな志はない。みんなで演奏するのも好きだしね。

●「ピストルさんに勇気をもらったよね」って言葉を聞いて、腹が立った●

アフロ:そういえば、いつやるんですか? 俺たちの“顔面ブロック”。この前、インタビューで読みましたよ。「MOROHAのアフロと一緒に作っている曲があるんですけど、一生世に出ることはないでしょうね」って。

竹原:アハハハハ!

アフロ:勝手に何を言ってるんすか! 

竹原:言ったのはちょっと覚えてるわ。だってさ、歌詞カードを見ちゃいけねえんだろ?

アフロ:それ聞きたかったんですけど、紅白で譜面台を置いてたじゃないですか。あれはピストルさんのリクエストだったんですか?

竹原:テレビで歌う時はだいたい譜面台を見てるね。

アフロ:それは譜面台を見て、歌いたいんですか?

竹原:単純に間違ったら嫌だなと思って(笑)。紅白とは別だけど、テレビは観覧のお客さんを入れて収録することがあるでしょ。もしも、こっちがしくじったとして同じ曲を2回も付き合わせるの嫌じゃん。だから絶対に(譜面台を)ガン見になっちゃうんだよね。

アフロ:収録のお客さんって独特の雰囲気を持ってますよね。

竹原:そうだね。

アフロ:テレビに出て、お客さんが変わってきた感じありますか?

竹原:それは変わんないなぁ。

アフロ:ちょっとね、最近のMOROHAは変わってきてるんですよ。

竹原:へえ! ちょっと聞かせて。

アフロ:それこそ、‪自分たちの音楽を聴く上での向き合い方をちゃんと心得てる人‬たちと国を作っていくというか。そんな客と一緒にグルーヴを作っていく考え方もあるじゃないですか。それとは違う音楽の放出を俺は、今、やってるっすね。そもそも、メジャーっていうのがそういう場所で。‪ライブハウスに来たことがないお客が観に来たりとか、変な話ミーハーな人が来たり。その人達にMOROHAのライブでの向き合い方を提示して、導いていかなければならない。‬そういう意味で、ライブハウスの空気感というのが変わってきてる感じがして。ピストルさんはないですか?

竹原:どうなんだろう。俺は、そんなに質の変化は感じてないかも。70年代フォークをリアルタイムで聴いていたんだろうなという大先輩みたいなお客さんはガッといるから、それは増えた気がするんだよね。それこそ(吉田)拓郎さんの「落陽」や、中島みゆきさんの「ファイト!」を歌わせいただいたのはあるかもしれないけど。それは嬉しいし光栄に思う。

アフロ:そっかぁ……それこそ「紅白に出て勇気もらいました」って同業者から言われることが多分あったと思うんです。

竹原:小屋の人もそうだし、旅芸人仲間がどこか痛快さを感じてくれてたね。セッティングをいつも飲み屋でやっているのと同じにしてるから「いつも通りのピストルだ」って。

アフロ:そこに対して「同業者が同業者に対して、勇気をもらってんじゃねえ」ってマインドは一切ないですか。

竹原:その考えはすげえなぁ。俺はない。

アフロ:それに俺はすごい腹が立っちゃったんですよ。周りのバンドマンが「ピストルさんに勇気をもらったよね」みたいな言葉を聞いて、「そんな顔で話せることじゃないだろ」って。悔しくて唇がなくなるくらい噛めよ、って。俺がそうだったから。

竹原:そっか。

アフロ:それを相手にもちろん言わないですけど。自分の歌を同業者が聴きに来て「僕も頑張ろうと思いました」って言われた時に、違うんじゃないかなと思ったんですよ。本当にすごいものを観た時は、走って帰るぐらいじゃないとダメなんじゃないかな、って。だから、最高の賛辞は帰り際に「音楽、辞めようと思いました」って言いながら帰ってもらうのが、俺の中での賛辞なんです。

竹原:なるほどな。分かるよ、すごく分かる。

アフロ:だから竹原ピストル祝福ムードに対して、「おめでとう」は言えなくて。

竹原:なるほどなぁ……。

アフロ:本当、常にピストルさんは俺の心に荒波を立てまくってる。情緒が良くないんですよ。

竹原:アハハハハ、勝手なこと言ってんなよ(笑)。

アフロ:次の目標はあるんですか? 年末に武道館でやるんですよね。

竹原:ぶっちゃけ、会場に執着がないんだよなぁ。もちろん、感慨深く思ったりはするけど。とにかく売れたいよね、一等賞をとりたい。

アフロ:……売れるって何ですか?

竹原:オリコンチャート1位になる。

アフロ:シンプルに結果を出す。

竹原:うん、そうだね。結果を出したい。

文=真貝聡 撮影=西槇太一
取材撮影協力=炭火焼 尋 (東京都目黒区上目黒3-14-5 ティグリス中目黒Ⅱ 3F)

ライブ情報

竹原ピストル
7月21日(土) カローラ福岡 Presents「NUMBER SHOT 2018」
7月22日(日) FM802 MEET THE WORLD BEAT 2018
7月25日(水) 住友生命 Vitality presents
竹原ピストル 全国弾き語りツアー“GOOD LUCK TRACK”
7月26日(木) 住友生命 Vitality presents
竹原ピストル 全国弾き語りツアー“GOOD LUCK TRACK”
富山/富山県教育文化会館
7月28日(土) 『戊辰150年記念事業~二本松少年隊の灯・きらめく霞ヶ城』
『奥羽越列藩グルメフェス』
7月29日(日) 住友生命 Vitality presents
竹原ピストル 全国弾き語りツアー“GOOD LUCK TRACK”
神奈川/横浜ランドマークホール
7月30日(月) red cloth 15th Anniversary

ライブ情報

『MOROHA BEST~十年再録~』単独ツアー
7/17(火)名古屋・CLUB ROCK'N'ROLL ※SOLD OUT
7/19(木)大阪・アメリカ村 CLAPPER 18:30/19:30 ※SOLD OUT
7/21(土)広島・ヲルガン座 18:00/19:00 ※SOLD OUT
7/26(木)高松・TOONICE 18:30/19:30 ※SOLD OUT
8/2(木)いわき・Music bar burrows 18:30/19:30 ※SOLD OUT
8/4(土)仙台・enn 2nd 18:00/19:00 ※SOLD OUT
8/5(日)八戸・ROXX 18:00/19:00 ※SOLD OUT
8/9(木)札幌・KLUB COUNTER ACTION 18:30/19:30 ※SOLD OUT
8/11(土)福岡・Queblick 18:00/19:00 ※SOLD OUT
8/14(火)長野・the Venue 18:30/19:30 ※SOLD OUT
8/16(木)熊谷・モルタルレコード2階 18:30/19:30 ※SOLD OUT
8/24(金)盛岡・the five morioka 18:30/19:30
8/26(日)新潟・CLUB RIVERST 18:00/19:00 
8/30(木)京都・Live House nano 18:30/19:30 ※SOLD OUT
9/5(水)沖縄・G-shelter 18:30/19:30
 
 
■MOROHA BEST ~十年再録~ FINAL SERIES
 
10/13(土) 名古屋 CLUB QUATTRO 17:00/18:00
MOROHA BEST ~十年再録~ FINAL SERIES × エリザベス宮地企画 Vol.3  「東海サバイバル」
w/ BiSH
10/14(日) 松本 ALECX 17:00/18:00
w/ TBA
10/20(土) 仙台 CLUB JUNK BOX 17:00/18:00
w/ TBA
10/27(土) 福岡 BEAT STATION 17:00/18:00
MOROHA BEST ~十年再録~ FINAL SERIES × 般若 「話半分」リリースツアー~武道館への道~
w/ 般若
11/3(土) 札幌 Bessie Hall 17:00/18:00
w/ TBA
11/10(土) 大阪 BIGCAT 17:00/18:00
w/ TBA
11/11(日) 広島 CLUB QUATTRO 17:00/18:00
w/ TBA
11/17(土) 松山 W studio RED 17:00/18:00
w/ TBA
11/25(日) 熊本 Django 17:00/18:00
w/ TBA
 
■MOROHA Zepp Tokyo 単独ライブ
2018年12月16日(日)Zepp Tokyo  16:00/17:00
 
  • イープラス
  • 竹原ピストル
  • MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』第六回ゲストは竹原ピストル “ピストルさんは、俺の心の中にずっといるんです”