ウィーン・フィルの「シェーンブルン 夏の夜のコンサート」と、「ザルツブルク音楽祭」のオペラ『アイーダ』でネトレプコを堪能!
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「シェーンブルン 夏の夜のコンサート」手前右が特設ステージ。夕刻から始まり、日没に伴って一帯がライティングされていく(c) WPH Belle&Sasse
ユネスコの世界遺産であるシェーンブルン宮殿の美しい庭園で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団恒例の「シェーンブルン 夏の夜のコンサート」が5月末に開催された。指揮はワレリー・ゲルギエフ、ゲストはソプラノ歌手のアンナ・ネトレプコという豪華な組み合わせである。2018年7月29日(日曜深夜)のNHK-BSプレミアム「プレミアムシアター」では、このコンサートと、昨年の「ザルツブルク音楽祭」でネトレプコが主演したオペラ『アイーダ』をまとめてお届けする。まさに、ネトレプコファン垂涎の深夜シアターだ。
ウィーン・フィルの「シェーンブルン 夏の夜のコンサート」は、2004年に始まって以来人気を呼び、今や正月の「ニューイヤー・コンサート」と並ぶ恒例の行事として定着。宮殿前の特設ステージで、クラシックや映画音楽など、年ごとに工夫を凝らしたプログラムを演奏する。入場無料で極上のひとときをカジュアルに堪能できるとあって、世界各地から観光を兼ねて訪れる熱心なファンもいるほどで、庭園の通路のイス席や宮殿に面した丘の斜面など、園内の観覧スペースを埋め尽くす観客は、毎年10万人を超える。また、60カ国を超える国や地域で放送もされている。
今回のコンサート・テーマは「イタリアン・ナイト」で、ロッシーニ、ヴェルディ、プッチーニら、イタリアの作曲家のオペラアリアや管弦楽曲を満喫できる。合間にゲルギエフとネトレプコの出身国、ロシアのバレエ音楽の名曲が盛り込まれているのも面白い。
カリスマ指揮者、ゲルギエフ (c) Terry Linke
ゲルギエフは、20代半ばからマリインスキー劇場(当時キーロフ劇場)の指揮者を務め、ソ連崩壊の激動期を芸術監督として乗り切り、ネトレプコらを発掘。エネルギッシュかつロマンチックな表現でスケールの大きな音楽を作り、世界中から支持されて「カリスマ」「スーパー・ダイナミック」などと呼ばれている。ウィーン・フィルとの共演はすでに20年に及び、演奏会としてはこの公演が150回目だそう。
ネトレプコは、サンクトペテルブルク音楽院で声楽を学び、2002年の「ザルツブルク音楽祭」でモーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』のドンナ・アンナを歌って成功を収めて以来、メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座など世界の主要な歌劇場で主役を務めるディーヴァ。今回は、チレーアの歌劇『アドリアーナ・ルクヴルール』やプッチーニの歌劇『トスカ』などのアリアを披露する。
「ウィーン・フィル×ゲルギエフ×ネトレプコ」と、際だった個性が反応し合う、濃厚で叙情豊かな初夏の一夜は、例年にも増して聴きごたえ、見ごたえたっぷり。
ネトレプコがアイーダ役に初挑戦した「ザルツブルク音楽祭2017」の歌劇『アイーダ』 (c)Salzburger Festspiele_Monika Rittershaus
次いで、ネトレプコが初のアイーダ役を務め高評を博した、昨夏の「ザルツブルク音楽祭」の歌劇『アイーダ』は、リッカルド・ムーティ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏。物語は、古代エジプトを舞台に繰り広げられる王と奴隷女(実は敵国の王女=ネトレプコ)の命がけの恋で、ネトレプコがコクのある歌唱、熱演で観衆を魅了する。
また、演出はニューヨークを拠点に世界で活躍のイラン人女性映像作家、シリン・ネシャット。ネシャットは、イスラム社会における女性の政治的、社会的、心理的に抑圧された状況を世界的問題として写真、ビデオ・インスタレーション、映画などで描写し、女性のあり方を模索し続けている。代表作は写真連作『アラーの女たち』(1993~97)、ビデオ・インスタレーション『荒れ狂う』(1998)、ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞映画『男のいない女たち』(監督賞、2009年)など。昨年、第29回高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)も受賞。
(文 原納暢子)
放送情報
◇ウィーン・フィル シェーンブルン 夏の夜のコンサート2018【5.1サラウンド】
◇ザルツブルク音楽祭2017 歌劇「アイーダ」【再放送】【5.1サラウンド】
ナレーション: 水落幸子(みずおち ゆきこ)
◇ウィーン・フィル シェーンブルン 夏の夜のコンサート2018(0:02:30~1:20:00)
<曲 目>
歌劇「ウィリアム・テル」序曲(ロッシーニ 作曲)
歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」から「私は神の卑しいしもべです」(チレーア 作曲)
歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から間奏曲(マスカーニ 作曲)
歌劇「アイーダ」から 「凱旋(がいせん)行進曲」とバレエ音楽(ヴェルディ 作曲)
「ロメオとジュリエット」第2組曲から「モンタギュー家とキャピュレット家」(プロコフィエフ 作曲)
歌劇「トスカ」から「歌に生き 愛に生き」(プッチーニ 作曲)
歌劇「マノン・レスコー」から間奏曲(プッチーニ 作曲)
歌劇「道化師」から鳥の歌「大空をはれやかに」(レオンカヴァルロ 作曲)
歌劇「ジャンニ・スキッキ」から「私のお父さん」(プッチーニ 作曲)他
<管弦楽>ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮>ワレリー・ゲルギエフ
収録:2018年5月31日 シェーンブルン宮殿の庭園(ウィーン)
歌劇「アイーダ」【再放送】(1:21:00~4:05:00)
<演 目>歌劇「アイーダ」(全4幕)作曲:ヴェルディ
<出 演>
エジプト王:ロベルト・タリアヴィーニ
アムネリス:エカテリーナ・セメンチュク
アイーダ:アンナ・ネトレプコ
ラダメス:フランチェスコ・メーリ
ランフィス:ドミートリ・ベロセルスキー
アモナズロ:ルカ・サルシ
エジプト王の使者:ブロール・マグヌス・テーデネス
巫女(みこ)の長:ベネデッタ・トーレ
<合 唱>ウィーン国立歌劇場合唱団
<合唱指揮>エルンスト・ラフェルスベルガー
<管弦楽>ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮>リッカルド・ムーティ
<演 出>シリン・ネシャット
収録:2017年8月9・12日 ザルツブルク祝祭大劇場(オーストリア)