「今が一番、いい状態」大阪公演を前に舞台『銀河鉄道999~GALAXY OPERA~』の魅力を中川晃教、凰稀かなめが語る
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凰稀かなめ 撮影=森好弘
松本零士作の名作『銀河鉄道999』の40周年を記念して上演される舞台『銀河鉄道999~GALAXY OPERA~』。6月23日に東京で幕を開け、松本零士の地元である福岡・北九州を経て、いよいよ大阪へ上陸する。大阪公演の開幕を直前に控えた中で、星野鉄郎役の中川晃教とクイーン・エメラルダス役の凰稀かなめが囲み取材に応じた。
凰稀かなめ 中川晃教 撮影=森好弘
開口一番、「東京、北九州とをめぐって、今、一番いい状態で大阪に来ることができました!」と声を弾ませる中川。凰稀も「初日から大きく成長してきたと思うので、大阪の皆さんに楽しんでいただけるよう、千秋楽まで出演者一同、勤めていきたいです」と気合を入れた。
ふたりともビジュアルイメージを見れば納得、“この人しかいない”と思えるほど役にぴったりだ。役作りはどのように取り組んだのか。「星野鉄郎は16歳くらいの設定なんですが、この役をいただいて飛び上がるほどうれしいという思いがありつつ、脚本を読みながら“本当にできるのかな”と自分に喝を入れるような気持ちから始まりました。子どもの頃に少年が描いた夢、その情熱、夢を信じる力、不可能なことはないのだと思える自信、子どもという純粋さから生まれる思いを鉄郎を演じる上で大切にしたいと思いました」と話す中川。母を殺した仇、機械伯爵(染谷俊之)を討つために旅に出る鉄郎には、憧れの人物が存在する。それが凰稀かなめ演じるクイーン・エメラルダスと、平方元基演じるキャプテン・ハーロックだ。この憧れのふたりに会うことも旅の目的。「今、自分が子どもの頃に憧れていた人に会った瞬間、何とも言えない喜びが込み上げてきます。その一方で、興奮しているのにそれを表現しきれない。大人になるってどういうことなんだろうということも含め、今の僕が演じることで自分自身も星野鉄郎に重ねています」と続けた。
凰稀かなめ 撮影=森好弘
東京の初日の時点では並行してミュージカル『1789 バスティーユの恋人たち』でマリー・アントワネット役を演じていた凰稀。稽古にもほとんど参加できなかったが、「逆にそれがよかった」と振り返る。「エメラルダスは“その姿を見た者は死ぬ”と言われるくらい冷酷な女性ですが、誰よりも優しい心を持っています。鉄郎に対してもそうですが、何か一つでも芯や情熱を持った男性に対してはすごく優しい。この作品の中で鉄郎が誰と出会って、どう変わっていくかと、普段から中川くんを観察して役作りの参考にしました」。加えて、原作や原作ファンが持っているイメージを壊さないように務めたとも。「エメラルダスは重力サーベルの使い手なので、こっそり練習をしたり。衣装もベルトの位置やスカートの長さ、ブーツのヒールの高さなど極力、アニメに近づけるようにしました。ただ、髪の色だけが誤算で。舞台上で照明が強く当たると思っていたのですが、意外と暗くて、髪の色を暗くし過ぎましたね」。
中川晃教 撮影=森好弘
衣装で最もこだわっているのは質感。宇宙空間で戦ってきたからこその傷も施されている。「舞台でどこまで見えるのかという問題もありますが、アニメをそのまま舞台にした、2.5次元のようなきれいなままではなくて、宇宙という場所で生きている過酷な部分、そういうものを含めて表現しています。その辺のこだわりはぜひ双眼鏡で見ていただけたら」と中川。黄色のベルボトムのラインがいかにも鉄郎らしい中川の衣装は「とにかく暑い」。「舞台上で大汗をかいているのですが、そんな中で寒いと訴えるシーンもあって。美山加恋ちゃん演じるクレアに厚手の毛布を5枚くらいかけてもらう場面では“僕がかいているのは冷や汗だよ”なんて言いながらやっています。暑さという意味ではかなり過酷ですが、その汗も含めてうまく役作りに生かせているなという感じはしています」と手ごたえを感じている様子だ。
凰稀かなめ 中川晃教 撮影=森好弘
「舞台だけではなく、日本の幅広いエンターテイメント作品の中で一緒に何かを作っていけたらいいなと思わせてくれる唯一の存在」と凰稀について語る中川。一方、凰稀も「ミュージカル『フランケンシュタイン』で初めて中川くんの舞台を拝見したのですが、1つ1つ、丁寧に演じられていいて、役も丁寧に作られる方だなと思って、どういうお稽古をなさっているのか見たかったんです。今回、ご一緒にさせてもらって、すごく細かく、いろんなことを追求していく方だと思いました」と中川の印象を語る。年齢も同い年、その親近感と、お互いのリスペクトが、絶妙なバランスで二人の間に存在する。「今、僕の中では深く通じ合っている仲だと思います!」と揚揚と話す中川だが、一方、凰稀は、舞台上、舞台袖、稽古場と、中川の様子を逐一観察してきたという。しかし、そんなこととは露知らずの中川。「遠くを見ながらチョコレートかじっているように見える時とかあって。何かを凝視しているイメージはありませんでした!」と、実は観察されていたことに新鮮な驚きを見せ、周囲を笑わせた。
「中川くんは毎回、舞台上で違うことをしてくるので、面白いですし、刺激をもらえます。今日はすごくつっこんでくれるなと思ったら、全く来ない日もある。中川くんの心の中と頭の中が毎回、不思議です。でも目の奥を見ると“あ、なるほどな”って分かるんです。鉄郎の奥に潜むものはトチローの信念に似ている。そういうところで鉄郎に対して見守ってあげるような優しさがエメラルダスに出てきたりします。中川くんの瞳を見ていても訴えてくるものがすごくあって、それが毎回違うから面白いですね」と凰稀。重ねて、「その違いこそが舞台の醍醐味」とも。「毎回違うからいいと思うし、決めても面白くないですよね。同じことをやっているなら、映画やアニメでいいじゃないってなってしまいます。失敗も含めて、良くも悪くも生身の人間がやっているから舞台はすごく面白いのだと思います。だからこそ、自由にやっていきたいです」。
それを受け中川も「瞳って実は作品のキーになっている」と話す。「鉄郎が目の奥に言葉以上の、その人間が生きてきた時間みたいなものを感じ取っていることは、子どもながらすごいなと思いますね。それを生み出している松本先生のメッセージって何だろうとも考えます。エメラルダスと旧知の仲のメーテルも長いまつ毛や瞳の奥に悲しさを感じる。それは、松本先生の思いなのかもしれませんが、人間同士が向き合って、目と目で見つめ合った瞬間に何かを感じる。そして出会った以上、この旅は共に進んでいくんだという強い思いを感じます」。
凰稀かなめ 中川晃教 撮影=森好弘
主演キャストは舞台俳優のみならず、声優、ミュージシャンなど、多彩なジャンルで活躍する錚々たる顔ぶれだ。そして、それぞれが“はまり役”と思えるほど、強烈な説得力を持って役に挑んでいる。「実際に幕が開いて、改めてキャスト一人一人を見ていくと、“この人じゃなければこうはならないな”と実感しました。出演が決まった当初は宣材写真やプロフィールしか分かりませんでしたが、舞台に立って、幕が開いて、お客様の反応を見た時に、ああ、こうやって舞台って生まれるんだって。キャストに選ばれたからには僕たちはそのカンパニーの中で切磋琢磨して作っていくわけですが、最高のメンバーと「『銀河鉄道999』~GALAXY OPERA~」を作らせていただいて、本当に幸せだなと思いました。最初はどうなるんだろうと思ったけど、ああ、出会うべくして出会ったんだなって、縁、運命を感じました」と中川、万感の思いを語る。
凰稀かなめ 中川晃教 撮影=森好弘
凰稀も「ハードスケジュールでしたが、どうしても出たい気持ちがありました。エメラルダスという役は、立ち廻りもありますし、おそらく宝塚の男役をやっていた“かっこいい女性”という視点で選ばれたのかなと思いましたが、お力になれるのであればぜひやらせていただきたいと。正直、SF作品の舞台化はすごく難しい。SFで成功した例はほとんどないと言われるくらい大変なのですが、映像も進化して、照明さんやいろんなスタッフに方々がすごくがんばってくださって、劇場全体が宇宙空間のようになっています。列車が空中に浮いているような見せ方も新しいなと思いますし、劇場全体が宇宙空間に見えるところも素敵だなと思います」と、舞台美術や仕掛けも楽しんでほしいと語った。
凰稀かなめ 撮影=森好弘
続いて、凰稀かなめへの単独インタビューも実施。エメラルダスは心の奥に人間らしいものを持っていると語る凰稀。そこには「当たり前のことを当たり前と感じたくない」という凰稀自身の信念も込められていた。「今、この世の中はすごく冷たいと感じるんです。私が子どもの頃は、自分の親じゃない人にも怒られたり、何か困っていたら助けてくれたり、手を差し伸べてくれる人、見守ってくれる人、怒ってくれる人がたくさんいました。そういう人がいなくなって、ネットの普及で実際に声に出してしゃべらなくても人と会話ができます。そうなると痛みも分からなければ、うれしさも伝わってこない。“ありがとう”“ごめんね”という言葉も少なくなった世の中だとずっと感じているんです。でもそれは、役者をする人間にとって絶対になくしてはいけない言葉だと思うんです」。
日々の生活も、“ありがとう”“ごめんね”を大切に、当たり前だと思わないように心がけている。「当たり前のことを当たり前だと思ったら本当に終わりだなと思ってしまいます。だから、一つ一つのことにありがたみを持って挑みたいですし、この作品で私自身も初心に戻りたいと思いました。それを表現できたらいいな」。この思いが、出演依頼を受けた際の「ぜひ出たい」という気持ちだった。
エメラルダスにも自らを重ねる。「私も見た目で怖いとか、冷たいとか思われることがあって。私にとってはすごくマイナスなことですがそれをみんなに分かってほしいとは思わない。誰かが分かってくれたらいいなって。だから、彼女に共感するところも多かったです。また、それだけにトチローという人間は人としてとてもかっこいいなと思いました」。
舞台は相手役と観客との三角関係が成立してこそ、思いが伝わり、劇場でしか感じ取れない空気が醸成されると話す。その点のおいて本作は、三角関係のバランスをとるのが難しかったと明かした。「基本的にエメラルダスは舞台の上の方にいて、下におりてくることがないので、あれだけ遠い場所で、人の目線より上にいて、どうやってお客様に伝えるか。お客様の空気を感じ取るのも困難でしたね」と、これまでの公演を振り返る。「緊張感なのか分かりませんが、意外に客席の空気が動かないことが多かった。その空気を動かす作業はすごく大変なことなんです。でも、そうしないとお客様に共感してもらえない。毎回が挑戦でした」。
凰稀かなめ 撮影=森好弘
劇場に集う観客が何を求めて芝居を観るか、それは人それぞれ。泣きたい人、悩みを抱えた人、打ち明けられない思いを心に溜め込んでいる人、いろんな人が劇場に来ると話す。「お客様は喜んだり、笑ったり、泣いたり、感動したり、いろんな感情を共有したいのだと思います。みんな普段は我慢して生活しているから、劇場にそういう感情を持て来られるのだと。そして、その感情を共有するために私たちも存在しているのではないかと思いますし、作品を観に来てくださる方の背中を押せたらいいなと思います」。
役を通じて心の支えになりたいと願う。だが、そうすることで自身が消耗をしてしまわないのだろうか。エネルギーを与える側も、相当なエネルギーが必要だ。「私は舞台上で発散しているから大丈夫です(笑)。基本的にしんどいと思わないように生活して、喜怒哀楽をすべて溜め込んでおいて舞台上で役を通じてすべて発散できるよう、1公演、1公演で出すようにしています。普段から発散してしまうとそれが当たり前になって小さなエネルギーしか出ないから、常に溜め込んでおくのです」。
最後に、このカンパニーについての印象を聞いた。「基本的に一人一人、ばらばらの状態で、中川くんがそれぞれの場所に行って関係性を築いているという感じです。それこそ、個々の星に行っているような。舞台上では、それぞれのフィールドで活躍する方たちが個性を発揮して、ぶつかり合って、いい化学反応が起こっていると感じます。そこは普通の舞台とは違いますね。カンパニー自体も役と重なり合って、それぞれが立ち上がっているような状態です。鉄郎が旅をする中で出会う人たちと関係性を築いていくように、稽古場から何か似たような感じで、それぞれの立ち位置が出来上がってきたように思います」
作品、出演者、スタッフをはじめ、まさに出会うべくして出会ったカンパニー。宇宙空間へと様変わりした劇場で、一期一会の奇跡を共に体感してほしい。
取材・文=岩本和子 撮影=森好弘
公演情報
脚本:坪田文
演出:児玉明子
映像演出:ムーチョ村松
公演日程:2018年7月25日(水)〜29日(日)
場所:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
※アフタートークショー
7月26日(木)13:00 中川晃教、入野自由、平方元基、雅原 慶
7月27日(金)13:00 染谷俊之、凰稀かなめ、小野妃香里、塚原大助
999シート(特典付):11,500円
公演情報
脚本:坪田文
演出:児玉明子
映像演出:ムーチョ村松
公演日程:2018年7月25日(水)〜29日(日)
場所:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
※アフタートークショー
7月26日(木)13:00 中川晃教、入野自由、平方元基、雅原 慶
7月27日(金)13:00 染谷俊之、凰稀かなめ、小野妃香里、塚原大助
999シート(特典付):11,500円
ライブ情報
The Beginning もついにファイナル!!
ファイナルにふさわしく華麗なダンスからコントまで凰稀かなめの魅力を一気に公開。
舞台『銀河鉄道999』機械伯爵役にて出演の”染谷俊之”他を新キャストに加え、2日間限定のイケメンホストに乞うご期待!!
『The Beginning Final「Club Phoenix~疲れたあなたにイケメンチャージ」』
◯公演日時:
9月14日(金) 15:00/18:00
9月15日(土) 13:00/17:00
◯会場:EX THEATER ROPPONGI
◯演出/出演:TETSU (Bugs Under Groove)
◯キャスト:凰稀かなめ、染谷俊之、愛原実花、日向野祥他
◯日替わりゲスト:
姿月あさと(9月14日のみ)
白華れみ(9月15日のみ)