『未来のミライ展』レポート 子どもも大人も楽しめる網羅的な展示を通じて、細田監督の作品世界にタイムリープ!

2018.7.25
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映画

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2018年9月17日(月・祝)まで、東京ドームシティ 「GalleryAaMo(ギャラリー アーモ)」にて、『未来のミライ展~時を越える細田守の世界』が開催中だ。本展では、現在劇場公開中の映画『未来のミライ』を中心に、『時をかける少女』や『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』、『バケモノの子』といった細田守監督作品の絵コンテや原画、背景美術などを紹介する。細田作品ファンはもちろんのこと、映画やアニメ好きにとっても目白押しの展示が多数集まる本展の見どころを紹介しよう。

多種多様な展示で、細田守監督作品をひもとく

まず本展の大きな特徴として、“展覧会”という映画とは異なる手法でのアプローチでありながら、専門のキュレーターのみならず、アニメーション制作に携わったスタッフらも展示構成に参加しているという点が挙げられる。また、映画『未来のミライ』では、建築家や絵本作家といったアニメーション以外の業界で活躍する人々が、「プロダクションデザイン」という形でコラボレーションしている。そのため、本展ではそうしたプロダクションデザインも含めて、原画展などの一般的な作品展示とは一味も二味も違う、網羅的な展示が繰り広げられているのだ。

さらに、多くの映画は通常「3幕構成」を取っているのに対し、映画『未来のミライ』は「5幕構成」となっていることから、本展もA〜Eの5つのエリアで構成されている。

不思議な庭

会場に足を踏み入れると、プロジェクションマッピングによる「不思議な庭」がお出迎え。続いて、劇中で“おとうさん”が設計したという設定の、「くんちゃんの家」のキッチンスペースが広がる。こちらの家には、ちょうどくんちゃんの身長に近い1メートルほどの段差が多く取り入れられており、子ども目線では部屋を移動するたびにまったく違う世界が広がるような工夫がなされているそうだ。

くんちゃんの家

そして「A PART:ミライちゃんとの出会い」では、絵本作家・tupera tuperaによる劇中絵本『オニババ対ヒゲ』の巨大展示がどっしりと鎮座。ここでは、まるで絵本の中に入ったかのような体験ができる。こちらの展示を含め、会場内には撮影OKのフォトスポットが多数用意されているので、複数名で訪れた際にはみんなでワイワイ楽しめるだろう(※一部撮影できないゾーンあり)。

巨大絵本『オニババ対ヒゲ』

絵コンテや背景美術、アニメーション制作の工程に触れる

各パートには、映画の進行に合わせて絵コンテやレイアウト、原画などが展示されている。それぞれの工程でどのような作業がなされているかについての細かい説明もあるため、アニメーション制作に関する知識がない方でも……むしろ知識がない人こそ、作品が完成するまでの段階をわかりやすく追うことができるだろう。

個人的には、そうした制作過程の中でも背景美術の展示がとりわけ印象的だった。近年ではCGを使った背景が増えているが、細田監督はいまだに“筆で描くこと”にこだわっているという。水彩絵の具のリアルな筆致が伝わる背景はどれも本当に美しく、単体で見ていても十二分に引き込まれてしまうほどだ。こうした背景にももちろん細かな仕掛けが組み込まれており、たとえば、過去の回想シーンなどでは、全体的に白っぽい色合いにすることで、現実シーンとの差をつけているそうだ。リアリティがありながらも、実写ではないアニメーションだからこそ可能なこうした表現にも、ぜひ注目してほしい。

空が白っぽく描かれた背景美術

歴代ヒロインたち

「C PART:幼き母との出会い」では、これまでの細田作品に登場するヒロインらが集結。『時をかける少女』の紺野真琴や『サマーウォーズ』の篠原夏希、『おおかみこどもの雨と雪』の花らは、ヒロインとして作品に彩りを与えるだけでなく、しっかりと物語を牽引してきた。たくましい彼女たちに混じって、『サマーウォーズ』のおばあちゃん(陣内栄)も“ヒロイン”として顔を並べているのがとても微笑ましかった。

『サマーウォーズ』のおばあちゃんも……!

細田守監督もお気に入りの「黒い新幹線」

遺失物係と駅長

そして、本展の大目玉ともいえるのが、「E PART:空想の東京駅と黒い新幹線」だろう。薄暗い照明の中に展示物が浮かびあがり、どこか現実離れしたような雰囲気が漂うこのエリア。3Dホログラムで再現された遺失物係と駅長は、まさにインパクト大! さらに「黒い新幹線」では、車両内部に入って実際に座席にすわることもできる。この「黒い新幹線」の展示は細田監督も特にお気に入りのようで、監督自身も実際にこちらにすわったとのことだ。

黒い新幹線内部

空想の東京駅と黒い新幹線

終盤では、スマートフォンを使って楽しめる『サマーウォーズ』ラブマシーンの巨大フィギュアや、過去作品の名場面をインタラクティブに体験できる「細田作品インデックス」など、デジタル空間が広がる。

ラブマシーン


細田作品インデックス

絵コンテや背景といった平面のアナログな展示から、等身大フィギュアなどの立体展示、さらにはテクノロジーを駆使したインタラクティブ展示まで、幅広い手法で細田作品の世界観が展開されている本展。子どもでも大人でも楽しめるだけでなく、どの展示作品に焦点を当てて鑑賞するかも、人によってかなり違いが出ることだろう。

展示会場出口付近には、間宮千昭とツーショットが撮れるフィギュアも……!

また、本展では、以前開催された『バケモノの子』展では取り扱いのなかった展覧会図録も販売されている。その他のオリジナルグッズと併せて、こちらもぜひ手に取ってみてほしい。

イベント情報

未来のミライ展~時を越える細田守の世界
『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』
日程:2018年7月25日(水)~9月17日(月・祝)
※開催期間中無休
時間:10:00~18:00
※最終入館は閉館の30分前まで
場所:GalleryAaMo(ギャラリー アーモ)
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