北海道の人気女優・脇田唯が野田麻衣と二人芝居『ワールドエンドスケッチ』で東京、札幌、大阪の3都市公演
脇田唯(右)と野田麻衣
札幌を拠点に女優、タレント、シンガー、MCなどなど多彩な活躍をしている脇田唯が、二人芝居『ワールドエンドスケッチ』で東京、大阪、札幌の3都市をツアーする。「死なぬ女」「姉と彼女」「作家と編集者」「キング・ニート」「結局死なぬ女」の5本からなるオムニバスで、今回は東京で女優だけではなく演劇制作としても活動している野田麻衣が相手役を務める。東京公演初日の2日前、稽古している二人をキャッチ。
脇田唯と野田麻衣の出会いは2016年の『キャンパスナイトスクープ×美しく燃える夜』という芝居だった。
「8名ずつのチームに分かれて同じ台本を違う演出で上演するという企画に呼んでいただいたんです。そのときの別班で同じ役を演じていたのが野田麻衣でした。同じ役をやっている人って気になるじゃないですか、怖い人だったらどうしようとかって(笑)。お芝居を見たら、客観的に私たちの役が一番アプローチの仕方が違っていた。それで仲良くなって、ご飯を食べに行ったんですよ。その後も、私が東京に行くときは彼女に連絡するし、彼女が札幌に来たときはアテンドするしという交流が続いて。そのうちやっぱりいつかお芝居をしたいよねという思いになって、その第一歩がこの作品です」(脇田)
野田は脇田を「音楽、ラジオ、イベントMC、モデル、写真となんでもできるし、どの表現であっても脇田唯を魅せられる。だから脇田が出ていなくても、脇田が企画したものなら見てみたいと思わせてくれるんです」といえば、脇田は野田を「一緒に飲みたくなる、ご飯食べたくなる、しゃべってみたいというハッピーオーラがある」と表す。
『ワールドエンドスケッチ』は、やはり札幌を拠点に活動しているクラアク芸術堂を率いる「こさべあきひろ」が手がけた脚本。「釧路に民間運営の小さな劇場を作りたい。文化が栄える場所にすることで、釧路市の文化を盛り上げたい」と活動している「ノードトゥアーク-Node to Ark-」から予算とともに脇田へ出演・企画の依頼が来たことから、こさべに白羽の矢を立てた。
「こさべさんにお願いするのに、稽古期間を凝縮することができる二人芝居で、女の子二人の会話劇で、演劇を初めて見る人でも楽しめて、おさべさんはいつもバッドエンドを書く方なのであえてハッピーエンドにしてほしいという条件でお願いしました」
クラアク芸術堂は脇田がもっとも客演しているカンパニーで、「こさべ脚本の脇田は面白い」「こさべ脚本と脇田は相性がいい」などの評価を得ている。
「自殺する、自殺する」と8度も友達を呼び出しておごらせる女の話、ブサイクな弟と別れた元恋人によりを戻してくれと懇願する姉の話、助手からアイデアを拝借して作品を書いていた小説家がふいに巻き込まれる事件の話……。“エンド”を共通テーマに、機関銃のようにしゃべる饒舌さと、それぞれのオチに向かう展開が秀逸だ。
野田曰く「こういう言い合い、友達とするよな。こういう人っているよなということが散りばめられているのでお芝居を見たことのない方にも楽しめる作品です」
今回、3都市で公演を行えることになった経緯を脇田はこう語る。
「こさべ脚本を紹介したいというのも私の目論見としてはあって。劇団ごと東京などで公演するのは準備も決断もいるかもしれないけど、おこがましいけれども脚本だけでも海を渡れればと思ったわけです。そして私自身、北海道でテレビのレギュラーを持たせていただくようになって、東京公演に誘われても1カ月しっかり稽古するということができなくなってしまったからお断りしなければいけないことが続いていたんです。この『ワールドエンドスケッチ』の初演を大阪から観に来てくださった方がぜひ大阪で見せたいとおっしゃってくれたことから公演が実現しています。このところ東京や関西から飛行機代をかけて私のお芝居を見に北海道まで来てくださる方が増えてきたので、お芝居を始めて8年くらいになるんですけど、ぼんやり今度は自分から出かけていかなければならないなぁと思っていました。それら全部のピースがハマり合って、野田麻衣のホームである東京、私のホームである札幌、そして大阪の3都市ツアーをしようと。なんの勝算もないけれど、一緒にやってくれない?と相談したら野田麻衣がやるやるって言ってくれたんで」
実は脇田は高校時代から演劇が好きでがんばってきたにもかかわらず、どうしてもタレント業の合間に演劇をやっていると見られがちなことを悩んでいた。それは、フリーランスゆえオファーを受けて演じる役がステレオタイプな女の子役ばかりになっていたことにもよる。けれども、そういう状況を徐々に覆し始めてくれているのが、こさべ脚本との出会いだった。札幌の演劇界より先にお客さんの見方が変わってきたのだ。もしかしたら『ワールドエンドスケッチ』は彼女のライフワークになるような財産演目になる可能性があるのではと思う。行く先々の女優とがっぷりと、なんて企画も面白いかもしれない。
札幌が大好き、演劇が大好きな彼女のブログのプロフィール欄には「札幌のカップルがデートに行くときに、『演劇を観に行く』が普通に選択肢の中に入ってくるようになればいいなーと思いながら、お芝居してます」と書かれていた。
取材・文:いまいこういち
公演情報
『ワールドエンドスケッチ』
■7月28日(土)・7月29日(日)
■会場:大塚ドリームシアター
■上演時間:28日13:00 / 18:00、29日13:00 / 17:00
■日程:8月3日(金)・8月4日(土)
■会場:wiz you
■上演時間:20:00
■会場:イロリムラ プチホール
■上演時間:10日19:00、11日12:00
■出演:脇田唯 野田麻衣
■料金:2,500円 ※東京・札幌は1ドリンクオーダー(+500円)
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