ピアニスト青木智哉が広げた、ディズニーメロディーの豊かな可能性

レポート
クラシック
2018.8.30
青木智哉

青木智哉

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サンデー・ブランチ・クラシック 2018.8.5ライブレポート

クラシック音楽をもっと身近に、気負わずに楽しもう! 小さい子供も大丈夫、お食事の音も気にしなくてOK! そんなコンセプトで続けられている、日曜日の渋谷のランチタイムコンサート「サンデー・ブランチ・クラシック」。8月5日に登場したのは、ピアニストの青木智哉だ。

東京音楽大学ピアノ演奏家コースを経て、東京音楽大学大学院ピアノ科を修了した青木智哉は、大学在学時から、国際音楽祭や日本各地での演奏を行い、2016年に高嶋音楽事務所よりピアノトリオ「ザ・フレッシュメン」としてデビュー。2017年には「艦これ」~クラシックスタイルオーケストラ~ において、関西フィルハーモニー管弦楽団、広島交響楽団のピアニストとして演奏。現在、毎月行われている「東京インテリア海浜幕張店」での定期演奏や、各種演奏会への出演、TVドラマでの手の吹き替え、音源提供など、幅広い演奏活動を続けている。

特に青木が力を入れているのが、クラシックの本格的な技法で自らアレンジしたディズニー音楽の演奏で、サンデー・ブランチ・クラシックにも昨年『美女と野獣』をテーマにしたコンサートで出演している。今回はその好評を受けての第二段企画で、盛夏に相応しくテーマは「海」。ステージサイドには、これぞインスタ映えと思えるディズニーが描く美しい海の世界にインスパイアされたオブジェも飾られて、リビングルームカフェ&ダイニングが期待感に包まれる中青木が登場。演劇の世界ではお馴染みの、「波かご」(※柳行李に和紙を貼ったものなどに、小豆を入れてゆっくり揺すり、波の音の効果音出す方法)を使った「波の音」を自ら創り出して聞かせたあと、演奏がはじまった。

青木智哉

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曲の世界観を表現した魅せる演奏

1曲目はサン=サーンスの組曲『動物の謝肉祭』より第7曲「水族館」。「序奏と獅子王の行進曲」「白鳥」等が特に親しまれている組曲だが、水の中の神秘性を美しいメロディーで表現したこの曲の、細かい分散和音を青木は音の粒を揃えて、水の反映を思せる音色で聴かせてくれる。光の中に泡が溶けていくような、幻想的な演奏になった。

青木智哉

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そのまま引き続いて2曲目は、ディズニー映画『モアナと伝説の海』の主題歌「どこまでも~How Far I’ll Go~」。16歳の少女モアナが、村長の娘として愛する村人を守る為、大海原へと航海に出るスペクタクル・アドベンチャーで、青木は静かな想いのメロディーを奏でたあと、華やかなグリッサンドを多用したダイナミックな演奏で、海の大きさを表現。迫力あるサウンドがリビングルームカフェ&ダイニングいっぱいに広がった。

ここで改めて青木が「鼻声に聞こえるかも知れませんが風邪はひいていません。午前中喋っていないとこんな声になります」と微笑ましい挨拶を。「海」をテーマに選んだのはズバリ暑いから! と語り「海が好きな人は」と客席に問いかけ、更に「海に入るよりも見る方が好きな人は?」と、海の見える場所にあるプールが人気を高めている、現代ならではの質問を重ねると、やはりたくさんの手が挙がる。「僕も同じです!」と自らも海は見る派だと宣言しての3曲目は『リトル・マーメイド』から「パート・オブ・ユア・ワールド」。アンデルセンの童話「人魚姫」をモチーフにしつつ、悲劇に終わる童話とは異なり、ハッピーエンドになるディズニー映画の人魚姫=アリエルはディズニー・プリンセスの中でも高い人気を誇るキャラクター。そんなアリエルがコレクションした陸にあるものの数々を「宝物」として誇らしく語る導入部分を、青木は弾むようなタッチで軽やかに聴かせ、効果的な間合いを取ってから、アリエルの陸への憧れを美しい音色と迫力の重音で響かせる。最後はまるでつぶやくようなアルペジオで帰結する音楽はまるで歌のようだ。そこからインターバルを取らずに、蟹のセバスチャンが海の世界の素晴らしさを歌う「アンダー・ザ・シー」が始まると、客席からは「待ってました!」とばかりの手拍子が入り、名曲の力を実感させる。ピアノのテクニックの華やかさが存分に盛り込まれたアレンジだけでなく、青木自身がこの曲の世界観を十分に楽しんでいるのが伝わり、客席の空気を完全に巻き込んだ魅せる演奏に大拍手が沸き起こった。

青木智哉

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ディズニー愛にあふれた迫力の演奏

ここで青木が東京ディズニー・シーのアトラクション「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ 」が、それまでの「シンドバッド・セブンヴォヤッジ」から07年にリニューアルされ、内容がとてもポジティブなものになった、と熱く語りはじめ「いつまででも話していられると思います」とディズニー愛を炸裂させたあと「出港の時間です」と静かに述べて弾き始めたのは、この「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ 」の為に、アラン・メンケンが書き下ろした「コンパス・オブ・ユア・ハート」。船乗りシンドバッドが「心のコンパス」を信じて、かけがえのない宝物を手に入れるため、未知なる海へと出港する物語に相応しく、後半に行くに従って堂々としたサウンドが展開される。華麗なアレンジでありながらも、メロディーが際立って聴こえてくる想いのこもった演奏になった。

そこからディズニーミュージックのコンサートはいよいよクライマックスへと突入して、海と言えば! の『パイレーツ・オブ・カリビアン』メドレー。青木は左足に打楽器の「ガン・グルー」をつけて、ピアノ演奏と同時に自らリズムセクションも鳴らすという、リズム感抜群の迫力のパフォーマンスを披露。何より演奏者がディズニーの世界をこよなく愛していることが雄大な演奏から伝わってくる。ガン・グルーの高い鈴のような音も実に効果的で「彼こそが海賊」のメロディーに特段の威厳があり、客席からブラボー! の歓声が響き渡った。

左足についているのは打楽器の「ガン・グルー」

左足についているのは打楽器の「ガン・グルー」

青木智哉

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その歓呼に応えた青木は「一生懸命アレンジした曲を皆さんに聴いてもらえて嬉しいです!」と語り、「是非ついてこられるところまで手拍子を!」との呼びかけてのアンコール曲は『美女と野獣』から「ビー・アワ・ゲスト」。華やかな前奏から「ついてこられるところまで」とはこういう意味かとばかりに、メロディーがどんどんテンポアップ! 途中柔らかく切ないパートも挟んで、たっぷり間を取ってから再び明るいメロディーに入る演奏も堂に入ったもの。自在なテンポでリビングルームカフェ&ダイニングを、青木サウンドに包んだコンサートは華麗にフィニッシュ。ディズニーメロディーの豊かさを示した盛夏ならではのコンサートとなった。

青木智哉

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クラシックとポップス双方に軸足を置いたディズニー音楽の世界を

ーーディズニーシリーズでの2回目のご登場ということでしたが、今日のリビングルームカフェ&ダイニングの雰囲気や、演奏されていての手応えはいかがでしたか?

カジュアルな雰囲気で演奏を聴いていただくのには本当にピッタリな場所だなと思いました。前回『美女と野獣』をテーマに演奏させて頂きましたが、更に以前にピアノトリオ「ザ・フレッシュメン」としても出演させて頂いていて。その時には昭和フォークとクラシックでプログラムを組んだんですが、「サンデー・ブランチ・クラシック」はクラシックをお聴きになりたいお客様が多いと感じていました。そこから昨年の『美女と野獣』を経て、今回「海」をテーマにしたディズニー音楽を演奏させて頂いて、クラシックとポップスの狭間と言いますか、どちらにも軸足を置きながら弾くことができるという手応えを感じました。

ーーディズニーの音楽には長い歴史がありますし、クラシック音楽をテーマにした作品もあって本当に美しい楽曲の宝庫ですが、今日の演奏はまた技巧的な表現もふんだんに入った素晴らしいアレンジでしたね。

ありがとうございます! そう言って頂けると本当に嬉しいです。

青木智哉

青木智哉

ーー何よりもディズニー愛にあふれているのが伝わってきましたが。

僕の中ではクラシックとディズニー音楽に全く垣根がないんです。双方素晴らしい音楽として愛していて、ディズニーの音楽はクラシック音楽同様に、映画の世界を離れても「音楽」として素晴らしいと思っています。でも、「ディズニー・オン・クラシック」など、ディズニー音楽を取り上げるオーケストラの演奏会は色々とありますが、クラシカルなピアノ演奏会でとなると、ほとんどなさる方がいらっしゃらないのが現状なので、自分がそれをやっていけるのであれば、是非ディズニー音楽を本格的なピアノ曲として聴いて頂きたいと思って、自分なりに工夫を凝らしてアレンジもしています。

ーー今日は盛夏のコンサートだったこともあって「海」をテーマにした選曲でしたが、やはりディズニー音楽で海となると、1番に思い出すのは『リトル・マーメイド』ですね。

名曲揃いの作品ですよね。アラン・メンケンさんの曲というのは、同じフレーズをかなり繰り返しているんです。だからこそ耳馴染みが良くて、音楽を勉強したことがない方でもすぐに覚えることができる。シンプルなんだけれども、とても奥深いものを感じます。

ーー同じフレーズを繰り返す楽曲というのは、歌詞があれば別ですが、ピアノのソロでとなると単調になる危険もあるかと思うのですが、そこはアレンジもかなり工夫を?

相当考えていますね。そのままだと同じリフレインになってしまうので、弾き方を変えたり、楽器が増えてくるイメージで音数を増やしたりできる限りアレンジしています。

青木智哉

青木智哉

ーー『パイレーツ・オブ・カリビアン』では、足で打楽器のリズムも加えられていましたが。

初めての挑戦だったんです! 『パイレーツ・オブ・カリビアン』には、どうしてもリズムセクションが欲しくて、打楽器が専門の友人に相談したら「ピアノと一緒に鳴らすんだったら、太鼓のような低い音よりも高音の方が聞こえるよ」と言って持ってきてくれたのがガン・グルーだったので、加えてみました。

ーーとても効果的でしたし、びっくりしました! すごいリズム感でいらっしゃるなと!

本当ですか? 結構自分でも必死だったのですが(笑)、良い効果になっていたのだったら嬉しいです!

ーー大変な盛り上がりでした! また波の効果音も入れていらしたり、自作のオブジェも飾られていたりと、工夫を凝らしたコンサートになっていましたが、こうしたディズニー愛に満ちたコンサート活動を、今後も積極的に展開していこうと?

僕はずっとクラシックを勉強してきて、特に音楽大学で学んでいる間は、周りもそうでしたが僕自身にも、クラシックよりもポップスをやや軽く見ていたところが確かにあったと思います。でもクラシックで学んだ技術を使って大好きなディズニー音楽を演奏することに取り組んでいった中で、ディズニーからポップスの素晴らしさも感じましたし、更にクラシックの要素もふんだんにある、クラシックとかポップスとかいうジャンルに分けて括れないものが、ディズニー音楽にはあると思っているんです。ですから、例えば「クラシック」「ポップス」「演歌」などというジャンルのひとつとして「ディズニー」が認知されていくことを目指しています。もちろん今でもたくさんの人に愛されている音楽ですが、それを更にクラシックとポップスが融合された世界として、その魅力も知って頂けるように活動していきたいと思っています。

ーー今日は「海」がテーマでしたが、季節によっても色々なテーマでコンサートができそうですよね!

今回「海」をテーマに楽曲を選んでみて、そういう可能性がいくらでもあると感じることができたので、また更に色々な形での演奏会をしていきたいです。

ーーまた、様々な季節に演奏を聴かせてください。今日はありがとうございました。

こちらこそ! またよろしくお願いします!

青木智哉

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取材・文=橘涼香 撮影=岩間辰徳

公演情報

サンデー・ブランチ・クラシック
 
9月2日(日)
土岐祐奈/ヴァイオリン
&平山麻美/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
 
9月9日(日)
石田成香/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円
 
■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html

コンサート情報

『ずばり!!クラシック名曲コンサート』

日程:9月15日(日)
場所:ティアラこうとう 大ホール
開演:14:00
出演者:加羽沢美濃(司会・ピアノ)、奥村愛(ヴァイオリン)、萩原貴子(フルート)、塚越慎子(マリンバ)、
小野弘晴(テノール)、米津真浩(ピアノ)、1966カルテット(ピアノ・カルテット)、
ザ・フレッシュメン(ピアノ・トリオ)
 
料金:2,000円(全席指定)

『青木と三浦のコンサート6』
 
日程:11月24日(土)
場所:門前仲町シンフォニーサロン
開演:14:00
出演者:青木智哉、三浦コウ
料金:2,000円(当日500増)
チケット・お問合せはこちら:atomoyan1027@gmail.com
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