『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』レポート 原画総数200枚以上、空前絶後のジョジョの祭典!
(C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
1987年より「週刊少年ジャンプ」にて連載がスタートし、2017年に誕生30周年を迎えた『ジョジョの奇妙な冒険』。今年10月からは第5部「黄金の風」のTVアニメ放送を控え、今現在も多くのファンに支持されている。そんな国民的人気作品の展覧会『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』(2018年8月24日〜10月1日)が、国立新美術館にて開幕した。
展覧会描きおろしキービジュアル(左:東京会場、右:大阪会場) (C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
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本展は、荒木飛呂彦氏が特別に描きおろした新作大型原画12枚を含む豊富な原画を中心に、ジョジョの世界観を忠実に再現。展示空間や関係資料を通して、作品の歴史と歩みを紐解く。さらに、彫刻・ファッション・映像分野の第一線で活躍するアーティストたちとのコラボ作品も併せて楽しむことができる。ジョジョ特有のヴィヴィッドな色彩が溢れる会場より、展覧会の見どころをお伝えしよう。
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JOJO Roadは来場者向けの撮影可能スポット (C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
漫画家・荒木飛呂彦氏
歴代ジョジョと宿敵の信念がぶつかり合う展示空間
第1部から第8部までの各主人公と敵の名ゼリフが、白黒の垂れ幕で対比されている「宿命の星 因縁の血」展示室内では、多数のモノクロ原画・カラー原画と共にジョジョの壮大な物語を振り返ることができる。
会場風景 (C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
歴代ジョジョたちの初登場シーンや決めゼリフ、印象的なポージング、悪役たちの必殺技など、見どころ満載の名場面が一挙に展示されている。
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力強い線画の迫力もさることながら、原色の鮮やかさが際立つカラー原画も見逃せない。単行本コミックスの表紙を飾った美麗なイラスト原画を間近に見られる貴重な機会になっている。
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すべてのスタンド&スタンド使いが集う圧倒的濃度!
「スタンド使いはひかれ合う」では、作中に登場する150体以上のスタンド(超能力が視覚化されたもの)とスタンド使いが全員集結した密度の濃い空間になっている。
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こちらのゾーンでは、彫刻家・小谷元彦氏によるコラボ作品も展示されている。タイトル《Morph(モルフ)》とは「異形態」を意味し、作品の人物像は作者の顔と他者とを融合させ、変形させたものになっている。
作品解説をする小谷元彦氏 (C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社 (C) Motohiko Odani, Courtesy of YAMAMOTO GENDAI
小谷氏は、ジョジョ作品における肉体の欠損表現へのアプローチに着目し、「ジョジョには、切る、溶かす、歪む、穴があくなどの動作が肉体表現に過剰に応用されている。これらは彫刻と共通する作業であり、それを利用しながら作品作りができないかと考えた」と解説した。また、小谷氏は瀕死の状態からスタンドが出現する設定に興味を抱き、《Morph》は、スタンドが出現している瞬間を、目に見えるような形で実体化させた作品になっているとのこと。
(C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社 (C) Motohiko Odani, Courtesy of YAMAMOTO GENDAI
ポージングから独特のファッションセンスまで ジョジョの世界観に浸る
「JOJO’S Design」では、ジョジョのカラフルな世界と、アーティスティックな洋服を着こなすキャラクターたちを、豊富なカラーイラストでたっぷりと堪能できる。ここでは、目の覚めるような配色や、性差を超えて色気を放つ登場人物たちの魅力を存分に味わいたい。
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また、ファッションデザイナー・森永邦彦氏によるインスタレーション展示では、一見真っ白に見えるマネキンたちに不思議な仕掛けが施されている。
作品解説をする森永邦彦氏 (C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社 (C) ANREALAGE
関節の可動域を超越しているポージングをするマネキンについて、森永氏は以下のように説明する。
「通常の洋服というのは、まっすぐ直立した形で作られていますが、これらのマネキンから洋服を脱がしても、服の形そのものがポージングをした状態の洋服になっています。ですので、この洋服を完璧に着るには、完璧なポージングを強いられます」
(C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社 (C) ANREALAGE
さらに、マネキンに紫外線が当たると、それぞれのキャラクター達のスタンドがプリントされた柄が浮かび上がるようになっている。これは、人の目では捉えられない不可視領域(光の波長域で人が見えない波長域)に柄がプリントされているため、肉眼で見たときには白にしか見えないが、光が当たった瞬間のみ、人の目に見えるように変換されているそうだ。
手に汗握る迫力満点のバトルシーンも一挙展示!
「ハイ・ヴォルテージ」では、第7部までの主人公と、因縁のライバルたちとの最終決戦を描いた場面が紹介されている。生原画を通して見る最高潮のバトルシーンでは、物語がクライマックスに向かう緊張感がひしひしと伝わってくるようだ。
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また、映像展示《AURA》のゾーンでは、ビジュアルデザインスタジオWOWが手がけた映像作品(約3分間)を鑑賞することができる。《AURA》について、WOWの田崎祐樹氏は以下のように解説した。
作品解説をするWOWの田崎佑樹氏
「アウラという作品は、スタンドが実際にスタンドになる前に、波紋と同じような生命の力、源泉があるという仮定をして、そこから生まれ現れたものが形になったという仮説を立てることからはじめました。その仮説に基づいて、波紋の源泉である『生命の泉』からエネルギーが生まれてスタンドになり、そのスタンドがその後、物語の中でライバルたちと戦っていくという一連の流れを映像にした作品です」
ロマンホラーの魅力も持ち合わせた神秘的な映像作品は、ぜひ会場でチェックしてほしい。
荒木飛呂彦「美術館でキャラクターと皆さんが一体化する目的で描きました」
荒木氏による描きおろしの新作大型原画《裏切り者は常にいる》は、本展覧会でしか見られない注目作品だ。
新作大型原画と荒木飛呂彦氏 (C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
内覧会後のトークショーに登壇した荒木飛呂彦氏は、新作を描いた目的について、「絵を見ている私たちの世界と、キャラクターの世界を一体化させて、同じ空間に存在させたいという理由で等身大に描いています」と説明した。
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キャラクターの選抜基準については、読者の人気を反映したということは一切ないと断言した上で、「単純にキャラクターのシルエットで選びました。髪型とか、女性・男性、帽子をかぶっているなど……ファッションが被らないキャラクターになるように構成しています。でも、承太郎とDIOはジョジョの象徴的な人物なので、このふたりは一番に選びました」と語った。また、「カーズ(第2部のラスボス)の半分ヌードっていうのが、自分で描いてて結構良かったです」と、嬉しそうに感想を述べた。
(C) 荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
生まれてはじめて大画面に絵を描いたという荒木氏。本作のこだわりは「消失点を自分の目線に合わせて描くことで、現実との一体感を出した」と話す一方で、
「DIOの絵がちょっと濃すぎたかな。この素晴らしい国立新美術館の照明が美しすぎるのか、昨日見たときに、色が濃いな……って思いました」と、失敗談を披露する場面も。等身大のキャラクターたちに囲まれるような空間で、ジョジョたちの存在感を体感してほしい。
『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』は2018年10月1日まで。荒木氏の創作秘話に迫るインタビュー映像や、作者自らが参加した音声ガイドなど、他にも見どころが満載の本展に、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。