ゆず、通算75回目の横浜アリーナから届けた特大の“エール”

レポート
音楽
2018.9.5
ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

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YUZU ARENA TOUR 2018 BIG YELL Ⅱ~Great Voyage~  2018.8.7  横浜アリーナ

「今日ここには1万3,042人が来てくれています」。お客さんの人数を1の位まで正確に伝える言葉が北川らしかった。ゆずにとって75回目の横浜アリーナでのワンマンライブだ。横浜アリーナの歴史上もっとも多い公演回数を更新したこの日は、ゆずが渾身のちからで届けた特大のビッグエールが、会場に集まった1万3,042人をひとり残らず笑顔にするライブだった。

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

「僕たちの歌をエールに変えて、この大きな船で全国を大航海するツアーをまわっています」
そんなふうに伝えた今回のアリーナツアーは、ゆずが4月にリリースしたアルバム『BIG YELL』を携えて、『YUZU ARENA TOUR 2018 BIG YELL』と題した本編と、『YUZU ARENA TOUR 2018 BIG YELL Ⅱ~Great Voyage~』と題した追加公演を合わせて、全10カ所31公演で開催、約33万人を動員した大規模なツアーだった。会場での写真撮影OKということもあり、ステージ上に用意された巨大な船=BIG YELL号がSNS上でも話題を呼んだ今回のツアーの中から、ここでは追加公演の3本目となった8月7日、横浜アリーナの模様をレポートする。

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

バンドメンバーの生演奏による恒例のラジオ体操でしっかり体を温めたあと、オープニングのアニメーション映像が流れ、BIG YELL号の船上に北川悠仁と岩沢厚治のふたりが姿を現すと、華やかなホーン隊の音色が高らかに旅立ちを告げる「TETOTE」からライブは幕を開けた。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の世界を彷彿とさせる雄大な音楽にのせて、BIG YELL号が真っ二つにわれて船室の様子が露わになると、アリーナの中央に伸びた長いセンターステージへの花道に向かってダンサーたちが一斉に踊り出す。大胆でありながら細部までこだわりぬいた演出は、いちアーティストのコンサートと言うよりも、まるで数々のアトラクションが用意されたテーマパークに迷い込んだような感覚だ。

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ド派手な冒頭の演出のあと、その中心にいる「ゆずのふたり」に焦点を当てたのが、今年リリースされたばかりの新曲「公園通り」だった。およそ20年前に横浜・伊勢佐木町の路上ライブから活動をスタートしたゆずだが、初めて有料でワンマンライブを行なったのが、渋谷公園通りに面した渋谷公園通り劇場だったという。当時の風景を温かな口笛にのせて歌うセンチメンタルな楽曲を聴くと、この壮大な夢のような空間を作り出したのが、どこにでもいるような横浜の素朴で音楽好きな青年たちだったことを、ふと思い出させる。

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=井ノ口喬央

ゆず 撮影=井ノ口喬央

タイプの違うふたりの声のハーモニーが美しく溶け合った「境界線」や、岩沢がパーカッシブに弾いたエモーショナルな楽曲「カナリア」のあと、ライブ中盤からは楽しいエンターテインメントタイムが始まった。お互いを「リーダー」「サブリーダー」と呼び合う、北川から岩沢へのビデオレターでは、75回目の横アリ公演に触れて、「何度も地元・横浜でライブができて幸せですね」という会話が交わされる。続く「ガイコクジンノトモダチ」では、アリーナに置かれた樽の中から北川扮する外国人の“ユージーン”が登場。動くワゴンに乗ったユージーンがお客さんに直撃インタビューすると、なかには親子や連れ、元気な80歳のおばあちゃんもいて、「国民的アーティスト」といわれるゆずのファン層の広さを実感した。

ゆず 撮影=立脇卓

ゆず 撮影=立脇卓

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ピアノの伴奏がミドルテンポのメロディに寄り添った岩沢のソロ曲「風のイタズラ」から、北川がパーカーのフードをかぶったバッドボーイ的な風貌でラップを炸裂させた「通りゃんせ」のあとは、「青白歌合戦」と題したメドレーへと突入。ダンサーたちと一緒におしりフリフリのダンスで踊る「LOVE & PEACH」、アリーナを二分したタオル回し対決を繰り広げた「T.W.L」、サブステージにお客さんを呼んでにらめっこ対決を展開してから届けた「スマイル」や、旗揚げ運動で盛り上がった「少年」。いくつかの対決を経て、「青の勝利!」と宣言するが、「歌で争うのはどうなの?」という流れで結局は引き分けに。メドレーの最後を「栄光の架橋」で締めくくると、アニメ『クレヨンしんちゃん』の主題歌になった最新シングル「マスカット」では、スペシャルゲストの野原しんのすけとコラボしながら、会場が一斉に振り付けで踊る楽しい空間に包まれる。こういうエンタメ企画のときには、北川が主導でお客さんとコミュニケーションをとっていくが、そんな時、言葉数こそ少ない岩沢も穏やかに笑顔を浮かべている。この絶妙のバランスもゆずの素敵なところだ。

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

いよいよライブはクライマックスへ。「恋」と書かれた風船がポンポンと弾んだポップソング「恋、弾けました。」から、お客さんもタンバリンを叩いて演奏に参加した「夏色」では、サビを「もう1回!」とおねだりするお約束の展開で、この日最大の盛り上がりを見せてライブは幕を閉じた。さらにアンコールでは、ライブの冒頭で真っ二つにわれた船が元のかたちへと戻り、再び船上に姿を表したふたり。マーチングドラムの軽快なリズムにのせた「聞こエール」のあと、北川が語りかけた。「最初は伊勢佐木(町)で歌って、その時はお客さんなんてほとんどいなくて。どっちかと言うと、自分たちのため、自分たちがここに存在してるんだっていうことが消えないように叫んでいた気がします。ある日、僕たちの歌を聴いてくれる人ができて、初めて自分たちの歌を聴いてくれる喜びを知りました。それから、僕たちは自分たちのために歌うことができなくなって、待ってる人がいるから歌ってるんじゃないか?って思うことがある」と。そんな言葉から、北川らしい誠実な言葉で集まったお客さんに感謝の気持ちを伝えたあと、「うたエール」へとつないだ。横アリを包むラララの大きなシンガロングのなかで、<惜しみない拍手を 頑張るあなたに>と優しく歌うエールソングは、デビュー20年を経た今のゆずだからこそ歌うことのできる楽曲だ。「ビッグエール」なんて大それたものを掲げて歌うなんて予想もしていなかったゆずの歌は、今は紛れもなく、リスナー一人ひとりの人生に寄り添う「みんなのうた」になっていた。

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=立脇卓

ゆず 撮影=立脇卓

大きな感動に包まれた「うたエール」で終演かと思われたライブだったが、最後にふたりだけの演奏で、地元・横浜だからこそ「地下街」が最後に披露された。1997年にリリースのミニアルバム『ゆずの素』に収録されている楽曲だ。その素朴なハーモニーに耳を傾けていると、大がかりなセットがぼんやりと霞み、北川と岩沢という声も個性も全く違うふたりが出会ったこと、共に20年という時間を積み重ねてきたことそのものが、大きな奇跡だと思えた。北川は「これからも俺たちは歌い続けます」と言っていた。この言葉を現実のものに変えて、10年後も20年後も、ゆずゆずのままでいてくれることを願っている。


取材・文=秦理絵 撮影=太田好治、立脇卓、井ノ口喬央

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=太田好治

ゆず 撮影=井ノ口喬央

ゆず 撮影=井ノ口喬央

ライブ情報

YUZU SPECIAL LIVE 2018 BIG YELL×FUTARI in 広島
■2018年10月10日(水)広島サンプラザホール
開場18:00/開演19:00
■2018年10月11日(木)広島サンプラザホール
開場18:00/開演19:00
料金:指定席
¥8,100(税込)
※3 歳以上有料、3 歳未満は膝上鑑賞可
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