CLØWD 3年8か月の活動に幕、ファイナルライブ『CLØWD NINE』オフィシャルレポート
CLØWD 撮影=Seka
5人組ヴィジュアル系バンド、CLØWDが8月25日(土)、渋谷CLUB QUATTROで『FINAL LIVE「CLØWD NINE」』を開催、3年8か月の活動に終止符を打った。当日の模様をオフィシャルレポートでお届けする。
常に全力で駆け抜けてきた3年8ヵ月――CLØWDがその時間に終止符を打つことを発表したのが、3月から行われていたTOUR「百戦錬磨」中、6月30日の柏ThumbUp公演でのことだった。
ただただ衝撃が走ったあの日からあっという間に時が経ち、迎えた8月25日 渋谷CLUB QUATTRO。もともと「誘惑」というタイトルを据えて、バンドが挑むべき次なる目標の1つであったこの日がFINAL LIVE「CLØWD NINE」となった。ただし、“解散”が決定してもなお、メンバーは最後の瞬間までCLØWDの最高の姿を追い求め続けていたはずだ。それは、これからお伝えする気迫のこもった約2時間半のラストランが何よりの証拠である。
CLØWD 撮影=Seka
5人が一斉に登場すると、KØUが噛みしめるようにひとつ大きく息をついた。幕開けを飾ったのは、『RUDENESS RESORT』。歌も演奏もまったく隙がなく、外しがない。彼らが誇る楽曲をもってのド直球勝負を見せつけるかのように「ワットインテンション」「ケミカルZOO」と間髪入れずに攻めていく。
「エルゴ領域」でも、増していく勢いにとても“ラスト”を感じる余裕などない。しかし、「狼煙」への前振りとしてKØUが叫んだ「俺たちの最後の“狼煙”をあげよう!」という言葉に、大好きなCLØWDの楽曲をダイレクトに受け止められるのは紛れもなくこの日が最後となるという現実を実感する……。
CLØWD 撮影=Seka
ドラムに向き合った5人の結託した思い――自分自身や目の前の壁と戦い続けてきた軌跡があるからこそ、“この戦争に終わりが来たら告白をしよう”というフレーズがとても印象的に響いてきた。かと思えば、「Drive for Dream」では晴れやかな気持ちにさせてくれたり、タオルが舞った「レッドホット・ディスコ」では常夏なハイテンションぶりを発揮したり、一層ラウドな表情を見せた「Marburg」と、やはり感傷的になる隙を与えてはくれない。
CLØWD 撮影=Seka
会場の暗転から、ひとたび空気がチェンジ。ここで披露されたのは、CLØWDをネクストレベルに押し上げた楽曲たちだった。まずは、繊細な旋律にのせてファンに寄り添う気持ちを届けた「One」をじっくりと聴かせ、次に樹が後方で指揮を振る仕草にピタリと息が合って突入した「NO BORDER」は、彼らが目指していた“世界”を意識した曲。2曲を通して抜群の壮大感を感じさせたのち、CLØWDが自らの“楽曲”に対する魅力へ視点をグッと定めるきっかけとなった「紅い意図」をKØUのアカペラからスタートさせた。曲中のブレイクでバンドの呼吸を感じさせると同時に冬真が時折ギターをアレンジするなどして、耳にする度に進化を重ねていくプレイだったが、もちろんこの日も最高の形で完成させていたように思う。
CLØWD 撮影=Seka
そして、一連の緊張感の中で朗らかなシーンを見られたのが「NEVER ENDING STORY」でのこと。次の曲をスタートさせるジャッジを任された猟平が観客に頭上で手拍子するように促すと、「見たことある!クアトロって感じがする!」と笑顔を誘い、メンバーが顔を見合わせる場面も多く生まれていく中で、「もう少し1つに」と、いつでも皆で歩んでいくような一体感を生んできた「Tomorrowland」へと続いた。
CLØWD 撮影=Seka
鋭い眼差しで「ANTITHESE」で後半戦へ突入。「BXXXes」でも庵が飛び道具感覚のコーラスを交える印象的なシーンもあり、会場中のテンションが一層高騰していく。「Phantom pain」は、文字通り「心の傷をえぐり合ってきた俺たちがすべてをもって音楽にして伝えてきた。そんな傷ついた俺たちがお前たちに挑戦してやるよ!」と告げ、力強く攻め立てていった。
CLØWD 撮影=Seka
そんなヒリヒリとした熱い気持ちをぶつけた後に、感謝の気持ちを「GIFT」に込め、「愛してるぞ、おまえら!!」と曲中に挟んで披露してしまうからニクい。さらに「セブンスセンス」を通し、「バタフライ・エフェクト」では「いつかこの5人でよかったなと思えるようなそんな未来にしたいと思います」と、今までリスナーの背中を押すように励ましてくれた楽曲が、どこか今はメンバーの背中をも押しているようにも思えてくる。
CLØWD 撮影=Seka
こうして、それぞれの未来へ歩んでいくためのスタートライン、つまりCLØWDとしてのゴールラインが見えてきた……。ただし、クライマックスに用意したのは「暴れるぞ!」と叫びあげた「Worry?」と、バンドと観客とが極限まで感情を吐き出せる「我武者羅」だった。最後まで、“攻める”ことを辞めなかった彼らの生き様を投影したような白熱した情景に、胸が晴れるような思いさえ感じられる。
CLØWD 撮影=Seka
「お前たちの音楽はお前たちの中で生き続けるからな! スゲー色々考えたんだけど、感謝しかないんだわ」(KØU)と、本編の締めくくりに用意したのが「Film of Life」。歌詞にもあるように、まさに柔らかい旋律が“最高のエンドロール”を飾る。「また会おうな!」という言葉を素直に受け取るのであれば、不思議と悲しさよりも、旅立ちの日のような強さを秘めたエンディングであった。
CLØWD 撮影=Seka
アンコールでは、全員がなんとスーツ姿で登場!
「この5人はめちゃくちゃクセがあって、個性が強くて、それでぶつかり合ったりすることも毎日のようにあったんですけど、それがCLØWDらしさなんじゃないかなと思うので。僕らはそれぞれの未来にむかって進んでいくんですけど、僕らの音楽は一生死なないんで。自分でも苦しいなとか悲しいなっていうときにCLØWDの曲聴くと元気になる……そこには自信があるので。そういう曲をたくさん作ってきたから、これからもそういう曲たちも皆さんの人生とともに歩んでほしいなと思います。俺たちの音楽を愛してくれてありがとう!」(KØU)
CLØWD 撮影=Seka
CLØWD 撮影=Seka
この5人で初めて作った曲である「WAKE UP」をおなじみの「目覚めようか!」という掛け声からスタートさせ、何度も何度も掛け合いでぶつかり合った「傷声」や、「#夏の微熱」と続く。「これが本当のラストだ! お前らのその雄姿、見せつけろ! 「どんなときも君たちと作りあげてきた曲――」と「キミトボクラ」もまた、笑顔でのフィナーレとなった。
CLØWD 撮影=Seka
CLØWD 撮影=Seka
「ありがとう」という言葉にすべての気持ちを込め、持ち前の明るさを振りまいた樹。声を詰まらせながら猟平は「君たちは僕らの誇りだから、生きて。これからもCLØWDを忘れないで時々聴いて。今まで本当にありがとうございました――またね!」と話した。「この5人で3年8ヵ月やってきたことを誇りに思います。死んだわけじゃないんで、悲しくはないです。またいつか会える機会があったら、俺だけじゃなくて他のメンバーも応援してあげてください。ありがとうございました!」とスッと前を向いて伝えた庵。「皆さんのおかげで幸せでした。ありがとうございました」と感謝を言葉にした冬真。
CLØWD 撮影=Seka
そして、KØUは「僕は、みんなと同じ人間なんです。悲しいこともあれば辛いこともあり……人間だからね、気持ちを伝えるってすごく難しくて。――でも、CLØWDで気持ちを人に伝えることができることができて、この5人でバンドやっててよかったなって思います。みんながいるから僕らは生きてこれたし、好きな音楽をメンバーとできて、たまにぶつかり合ったりふざけあったり笑いあったり、僕のこの人生の中ですごく幸せでした。(解散を)発表してから悩んで悩んで……あぁ俺も弱い人間なんだなと思って。メンバーの言葉だったり今まで作ってきた音楽、友達だったりがいろんな言葉をかけてくれて、愛されてたんだなって思って。本当に、感謝の言葉しかないです。ありがとうございます。メンバーそれぞれの未来に向かって歩んでいく姿をどうか、これからも応援よろしくお願いします!今日は本当にありがとうございました」と1人1人の言葉を残して、締めくくる……。
CLØWD 撮影=Seka
しかし、会場の明かりがついてもなお鳴りやまないアンコールに応えて、ダブルアンコールで披露した「Worry?」が、CLØWDの正真正銘のラストプレイとなった。演奏を終え、凛と前を向いてステージを5人が去ったとき、その空間に残ったものは涙よりも前を向く強い気持ちが勝っていたのではないだろうか。それはきっと、8月25日に目に焼き付けたCLØWDが“人生の最終更新日”のごとく最高潮な姿であったこと。そして、CLØWDの楽曲に秘められている人生につまずいたときにヒントとなるメッセージが、知らず知らずのうちにリスナーである我々に蓄積されていたことを実感したからだ。生き続けていくために、バンドとして強くなるために、必要なものに気づいては確実に自分たちの手で掴んできた、本当に人生を描いたようなバンドであったと思う。それを支えるようにして彼らの主軸にあり続けた、バンドに憧れた“夢”やかなえたいと強く願い続けた“夢”、たくさんの“夢”をエネルギーにずっと戦い続けて得てきた力は、間違いなく本物であり、失われることはない。だからCLØWDのメンバーも、CLØWDを愛した皆も、この先の未来へと強く生きていける。きっと、大丈夫だ。
取材・文=平井綾子(Cure編集部) 撮影=Seka