【Saucy Dog・RUSH BALL 2018 クイックレポ】喜びと興奮を分かち合ったSaucy Dogの堂々たるオープニングアクト

RUSH BALL 2018　Saucy Dog

朝から激しい雷雨に襲われたものの『RUSH BALL』3日目も無事開催。すっかり雨も上がり、先週に比べると涼しくむしろ過ごしやすい天候の会場に、オープニングアクトを務めるSaucy Dogが登場。

メンバーが円陣を組み、拳を突き合わせると「グッバイ」でライブをスタート。そのまま「真昼の月」が歌われると、自然とクラップが巻き起こる。《悩んでも 痛みをこらえて／明日へ旅立つのさ》と歌われた言葉が、このバンドが今日のステージにたどり着くまでのドラマを物語っているようで、まっすぐ胸を打つ。昨年のATMC、この春の『RUSH BALL☆R』の大トリを経て、晴れて大舞台でオープニングアクトを務める喜びと、同じくらいに込み上げてくる緊張感が冒頭からとにかくヒシヒシと伝わってきた。どこか初々しいMCからも十二分に感じられたし、最初の円陣もそう。もう少しさかのぼれば、朝一番にメンバーが「ビショビショになってもやります」、「ライブの中でぶちのめしてやろうぜ」と悪天候をも恐れぬ意気込みをSNSでつぶやいていたぐらい、このステージに懸ける思いと並々ならぬ気合いが、音に、そして声に込められていた。

せとゆいか(Dr)が、「朝から早起きしてよかったなと、そう思ってもらえるような感謝を詰め込んだライブをしたい」と思いを伝え、今度は石原慎也（Vo/Gt）が「大人げなくて別れてしまった後に、気づいたことを曲にしました」と過去の恋愛を綴った「煙」へ。伸びやかな歌声がより熱を帯びていき、秋澤和貴（Ba）と、せとのリズムも石原の感情をいっそう加速させるように力強く打ち鳴らしていく。そして、どこか緊張を振り切ったように、走り出した衝動のままに「バンドワゴンに乗って」をぶつけていった。

ラストは、せとのコーラスが情景の浮かぶ歌詞に奥行きを与え、自分の物語かのように聴こえてくる「いつか」。拳をあげ熱唱する観客も続出し、それに応えるかのようにして「またいつか！ またいつか！ あなたに会えますように！」と高らかに石原が手を振り、ステージを後にした。いの一番に、観客と共に開催の喜びと興奮を分かち合った、堂々たるステージ。短い時間ながら全てを出し切ったようなメンバーの清々しい表情が、観ているこちらも気持ちいい。そんな幕開けとなった。

文＝大西健斗　撮影＝瀧本JON...行秀