トム・プロジェクト プロデュース『男の純情』宇梶剛士にインタビュー 「僕にとって50歳は大きな存在でした」
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宇梶剛士
2018年10月25日(木)から、紀伊國屋ホールにて、トム・プロジェクト プロデュース『男の純情』が上演される。本作は演劇集団「星屑の会」の水谷龍二が脚本を務める三人芝居だ。男としてもうひと花咲かせたいと思う一方、もはやこれまで、そろそろ老後の心配でもしようかと思ったり……心の岐路に立つ50代の男性3人(宇梶剛士 山崎銀之丞 市川猿弥)が、心に思う愛しの女性を巡って虚々実々の攻防戦を繰り広げる物語。本作に出演する3人の男の一人、宇梶剛士に話を聞いた。
――本作で宇梶さんが演じる人物とは、どのようなキャラクターなんですか?
それが、この時点ではまだ台本が出来ていなくて、自分がどの役というのを聞いてないんです(笑)。まあ、愚かな男たちの中の一人であることは間違いなさそうですが(笑)。
――それはかなりドキドキものですね! 今回、共演する山崎銀之丞さんと市川猿弥さんとは、過去ご一緒したことはありますか?
銀之丞さんは京都で時代劇でお仕事をしたことがありますし、一応メアドも交換している関係です。ただ、時代劇ってその世界観の型の中で演じる訳ですから、いち役者として銀之丞さんがどのような演技をする方なのかはまだ分からない、と言った方が正解ですね。そして猿弥さんとは本当に初めてご一緒します。以前よりいろいろな方から「猿弥さんっていい役者だよー」って聞いていたんです。渡辺えりさんも「猿弥さんと舞台!? いいわねえ。すごく演技が達者で、いい役者さんよ」と褒めてましたね。……それにしても、僕も含め、この三人を揃えたかった真意はどこにあるんでしょうね。プロデューサーに聞いてみないと!(笑)
――今回『男の純情』を手掛ける水谷さんについて、宇梶さんが特別な思い入れがある、と耳にしたのですが。
僕は水谷さんをとても尊敬していて、彼の手掛ける作品が大好きなんです。水谷さんの作品に出演するのは、「あとは野となれ山となれ」「南阿佐ヶ谷の母」と続いて3作めになります。今回また、ご一緒できるとは思ってもいませんでした。舞台のお話を聞いて驚き、また小躍りするくらい嬉しかったんです。最初に水谷さんの舞台を体感したのは「星屑の町」シリーズでした。水谷さんが描く芝居は、それを観ている自分もまるでその世界にいるような心地よさを感じるんです。水谷さんがお持ちの「優しさの視点」が台詞におおいに反映されているんだろうなあ。
――本作のキーワードに「50代」「恋」があり気になっているんです。まずは「50代」についてお伺いします。宇梶さんが50代になった時、それまでと何か違う感覚を抱いたりしましたか?
僕は親とは小2、3年くらいまでしか一緒に過ごしておらず、それ以降は反目したり拒絶して生きてきたんです。でも数年前、僕が50歳になった時に思わず親に電話したんですよ。「おかげ様で50歳になりました」って。そのくらい僕にとっては50歳という存在は大きかったみたい。だって半世紀でしょ? 馬鹿でも愚かでも半世紀生きたんだ! それだけは自分の中で認めてやりたいと思ったんです。
あと、価値観も変わってきましたね。例えば、先日「諦(あきら)める」という言葉について考える事があったんです。「あきらめる」と聴くと、なんだか「負けた」とか「逃げる」というイメージがあると思うんですが、でもこの「諦」って言葉は仏教では「悟る」という意味も持っているんですよね。その事を自分の中に取り込んで、今、僕は逃げようとしているのか、敗北を認めようとしているのか、でもこれを受け入れる事で自分の懐がもっと広がるんじゃないか……そういう事を同時に思えるようになりました。
――そして本作のもう一つのキーワード「恋」ですが……。宇梶さんの心を揺らす女性のタイプは?
話が合うタイプかなあ。見てくれは全然気にならないの(笑)。これは若い頃から変わってないですね。個人的には、人間って完全に知り合ってから恋をすることってほぼないと思うんですよ。まだ余白があるうちに恋心を抱いて好きになっていく。で、その余白の部分が付き合っていくうちに徐々に明らかになっていき「話が違う!」って現実を知るんだけどね(笑)。
――銀之丞さんと猿弥さん、そして宇梶さんというまったく別のタイプの3人がこれから本作を作っていく事になります。どんなお芝居になっていきそうですか?
三人が知らないうちに同じ女性を好きになっていた、という設定だとしたら、その芝居を観るお客さんにとっても目の前の芝居に直接描かれていない部分で、あれこれと想像を膨らましてドキドキしたりしそうですね。目に見えないものが浮かんでくることこそが「演劇の力」だと思います。観に来てくださるお客さんに大いにうなずいていただくために、日々稽古に励みます。是非劇場にいらしてくださいね。
取材・文・撮影=こむらさき
公演情報
【東京公演】
2018年10月25日(木)~11月1日(木) 紀伊國屋ホール
【埼玉公演】
2018年11月2日(金) サンシティ越谷市民ホール
【福岡公演】
2018年11月4日(日) 小郡市文化会館
2018年11月5日(月) コスメイト行橋
【岡山公演】
2018年11月7日(水) 岡山シンフォニーホール
【茨城公演】
2018年11月11日(日) 東海文化センター
【岐阜公演】
2018年11月14日(水) 高山市民文化会館
【東京公演】
2018年11月16日(金) かめありリリオホール
【千葉公演】
2018年11月18日(日) 袖ヶ浦市民会館
【山梨公演】
2018年11月23日(金) 笛吹市スコレーセンター
2018年11月24日(土) 北杜市須玉ふれあい館
■演出:小笠原響
■出演:宇梶剛士 山崎銀之丞 市川猿弥