男たちによるいびつな思慕の情を描く~ゴジゲン『君が君で君で君を君を君を』稽古場レポ!
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左から奥村徹也、松居大悟、本折最強さとし、目次立樹、東迎昂史郎、善雄善雄
ゴジゲン第15回公演『君が君で君で君を君を君を』が、10月3日から東京・下北沢の駅前劇場で上演される。2011年から2014年のあいだの活動休止期間を経て、10周年となる記念公演。近年は映画『アズミ・ハルコは行方不明』『アイスと雨音』やドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズなどの監督で映像分野での活躍めざましい松居大悟による、1年ぶりの舞台作品。その稽古場を訪れ、次なる劇団公演について話を聞いた。
◆「台本」でなく「構成」
都内某所。陽はとうに落ち、帰り道を急ぐ人たちに逆らいながら足を進める。とある日の暮れ、ゴジゲンの劇団公演『君が君で君で君を君を君を』の稽古場を訪れた。入るなり、圧倒された。フルパワーで演じる男たちが6人、早々に熱を帯びている。男6人がうごめくなか、そこには作・演出を務める松居大悟の姿もあった。
ゴジゲンの稽古を見るのは初めてのことだったが、のっけから、独特の雰囲気を醸していた。筆者が訪れたときは2場をキャスト全員で繰り返していたのだが、動きも変わるし、台詞もその都度に変化している。第一、事前に渡された台本からして、異質だった。横書きで、冒頭には【ゴジゲン『君が君で君で君を君を君を』構成】とある。頭のなかの「?」を払拭すべく、稽古の様子をただただ見つめるしかなかった。
ともあれ、途中で止めることもなく、整合性がつかなくてもとにかく演じ続ける稽古場だった。舞台の稽古というよりも、エチュードといったほうが明確にイメージできるかもしれない。
稽古の休憩時間のあいだ、松居に話を聞くことができた。なぜ、台本に「構成」と記したのだろうか。
「僕は台本に対して、そんなにこだわりがないんです。役者のたたずまいや雰囲気、流れがまず大切ですから。先に台本を作り込んでしまうと、みんなそこに向かってしまいます。なんというか、固める作業が好きではないんです」
台本は作り上げたものでなく、設計図のようなものだという。試して、そこからトライ&エラーを繰り返すことが彼らにとって実のある稽古なのだろう。それだけに、松居は「だるい台詞は言わなくていいから」と、稽古の途中で役者たちに伝えている。
「むしろ書いてあるものとは違う台詞を役者に言ってほしいくらいなんです。役者の言葉で僕にも気づくことがあるし、役者の身体から出た言葉が面白ければ、そのほうがいいと思います。あとは、板の上で役者の意志で生きてほしいという意味合いもありますね。固めず、試していくやり方は劇団公演でしかできません。今回は特に、出演者が劇団員だけなので、なおのことやりやすいですね。やっぱり、こういう共同作業が劇団の強みですし。ただ本番10日前くらいには、上演台本にしていく必要がありますけど……」
稽古場にて
◆自分なりの「愛」の描き方
『君が君で君で君を君を君を』は、ゴジゲン結成10周年を冠した公演だ。2011年に上演された『極めてやわらかい道』をリブート(再構築)しており、同作をモチーフとした映画『君が君で君だ』が松居の監督によって公開された。「愛」をテーマに、男たちによるいびつなその思慕の情を描く。映画の物語とはまったく違う、大学で出会った仲間たち6人の20年にもおよぶ、ひとりの女性への愛が垣間見える――。
「『極めてやわらかい道』は、劇団活動休止のきっかけにもなりましたし、僕にとってはいろいろと大変な作品でした。でも、愛というものについて、自分のなかではかなり掘り下げて作ることができました。あまりエチュードで作らず、台本もわりとしっかり書いたんですね。当時の自分なりの愛というものの描き方をとことんまでやり抜こうと思って作りました。賛否はいろいろあったのですが、時間が経って、あの舞台を映画にしないかと声をかけてもらったのがうれしかったですね」
稽古は2場から3場にかけておこなわれた。約2時間見学したが、部分的であれここに記載すれば、のちのち致命的なネタバレになりかねない。心苦しいが、ストーリーの詳細を書くのは自重しようと思う。もっとも、エチュードを繰り返し試していくスタンスを採用していれば、多少の設定変更があるかもしれないが……。
◆劇団ならではの実験精神
しかし、どうしても気になるところがあった。台本によると、舞台装置は女性の部屋のなかをイメージしているようだが【舞台上のお芝居は、女性の部屋とは関係なく進む。(美術が、物語を説明するものとして存在していない)】とある。ここに、本作におけるゴジゲンの試みがある気がしてならない。
「具象の装置で、事務所を設定するとしますよね。当然、それは事務所内のストーリーとして展開します。セットが抽象的ならば、効果や照明でいろんな場所を表現する。物語に美術が寄り添うのは、もちろんそうあるべきだと思うんですが、もっと逆らっていいんじゃないかと考えるようになったんです。物語に寄り添わない美術で、作品はどうなるのか。そこにすごく興味があります」
松居大悟
そんな挑戦的な実験も、俳優たちの総合力で形にしてくれるはずだ。きっとゴジゲンという劇団の柔軟さが、松居の実験精神を包み込んでしまうのだろう。
撮影・取材・文/田中大介
公演情報
■出演:奥村徹也、東迎昂史郎、松居大悟、目次立樹、本折最強さとし、善雄善雄
■日時&会場
2018年10月03日(水)~14日(日)◎<東京>下北沢 駅前劇場
2018年10月19日(金)~21日(日)◎<北九州>北九州芸術劇場 小劇場
[イベント]~本公演できないけど京都でイベント!全員集合~
2018年10月16日(火)◎京都 UrBANGUILD
<東京>
前売\3,500 当日\3,800/※初日割引 前売\3,000 当日\3,300(全席指定)
学生割引\2,500(前売のみ取り扱い/枚数限定/要学生証提示)
前売\3,000 当日\3,300(全席自由)
高校生〔的〕
<京都イベント>
前売\2,000 当日\2,300 +1drink(全席自由)