21世紀のダンスを切り拓くイスラエル・ガルバンが『LA EDAD DE ORO-黄金時代』で誘う至福のステージを体感せよ!
イスラエル・ガルバン (C)DublinDanceFestival
いま絶対に見逃せないダンサーは誰か? そう問われればバレエの名手やコンテンポラリーダンスの異才たちと共にイスラエル・ガルバンの名を挙げたい。“フラメンコ界のニジンスキー”と称されるガルバンは、現代フラメンコのカリスマとして知られるだけでなく、世界各地のダンスフェスティバルなどに招かれ脚光を浴びている。その大物が2018年10月27日(土)と28日(日)に彩の国さいたま芸術劇場、11月2日(金)と3日(土)に名古屋市芸術創造センターで『LA EDAD DE ORO-黄金時代』を披露するのは見逃せない。
「天才」「革命児」と呼ばれて
ガルバンは1973 年、スペイン・セビリアのフラメンコダンサーである両親のもとに生まれた。幼少からフラメンコに接し学び、1990年より踊り手としてのキャリアをスタートさせ、1998 年、25歳の時にデビュー作『¡Mira! / Los Zapatos Rojos(赤い靴)』を発表し一躍名が知れ渡った。同作は童話「赤い靴」に想を得ており、“ダンスシューズを脱ぐことができず踊り続ける、というまるでガルバン自身についての物語のようだが、当時はそのあまりに独創的な作風にフラメンコ界に激しい賛否両論を巻き起こす一方、「天才的な作品」「フラメンコの概念を大きく覆す革命」などと批評家から絶賛を浴びた”(『LA EDAD DE ORO-黄金時代』埼玉公演プレスリリースより引用・一部改訂)。その後も続々と話題作を世に問い、世界各地で上演し、英国ナショナル・ダンス・アワード特別賞を受賞するなどフラメンコ界にとどまらず幅広く支持されている。
イスラエル・ガルバン『LA EDAD DE ORO-黄金時代』(C)Félix Vázquez
尽きることのない挑戦心
ガルバンのどこが凄いのか。まずステップの切れ具合、しなやかな身のこなし、音感の鋭さが並外れている。寸分の狂いもない回転から滑らかな手の動きまで、全身を緩急自在に用いて生む独特な律動に満ちた世界に圧倒されざるを得ない。そして、シャープさと柔らかさ、激しさと穏やかさを兼ね備えた踊りから立ち上る情動に冷たさはなく温かみを感じさせる。踊りの基盤はあくまでもフラメンコだ。伝説的な巨匠マリオ・マヤのアンダルシア舞踊団で踊り、また数々のコンクールを制したうえで、フラメンコを新たな文脈で組みなおし自在な踊りのスタイルを追求してきたのである。そこに天与の才能があるのは確かで、若き日にセビリアのプロサッカーチームのオーディションを受けたエピソードを誇るくらいの高い運動神経の持ち主だ。と同時に音楽家やダンサーとの協同作業に積極的で、大野一雄などの日本の舞踏に影響を受けていると明かす。常に挑戦し、研鑽を重ね、独自の舞踊宇宙を生み出すに至った、真にクリエイティヴな偉才だ。
イスラエル・ガルバン『LA EDAD DE ORO-黄金時代』(C)Félix Vázquez
玄妙なリズム、至高のガルバン体験
『LA EDAD DE ORO-黄金時代』は、2005年の初演以降世界中で好評を博している代表作で、2012年に米・ニューヨークの権威あるダンス&パフォーマンスの賞として名高いベッシー賞を受賞した。歌(カンテ)、ギター、ダンス(バイレ)が相まみえるセッションの形態をとり、大方の構成はありつつフラメンコが本来持ち合わせていた即興性を大事にしている。初演以来組んでいるカンテのダビ・ラゴス&ギターのアルフレド・ラゴス兄弟と息もぴったりで、親密さと心地よい緊張感が漂うなかでスリリングな踊りを繰り出していく。玄妙なるリズム(コンパス)に身を委ねれば、至高の体験となるのは間違いなし。ガルバンを初めてご覧になる方にもおすすめの名作である。
イスラエル・ガルバン『LA EDAD DE ORO-黄金時代』(C)Félix Vázquez
ガルバンと同時代を生きる歓び
ガルバンは日本ではフラメンコ界の寵児として認知されていたが、2016年10月に国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2016」のパフォーミングアーツ部門に招聘され『SOLO』『FLA.CO.MEN』を披露し多方面から注目を浴びた。また同年5月、コンテンポラリーダンスの旗手であるアクラム・カーンと共演した『TOROBAKA-トロバカ』が埼玉で上演される予定だったが、ガルバンの怪我のために残念ながらキャンセルとなった経緯もある。それから2年、ガルバンは『LA EDAD DE ORO-黄金時代』をたずさえ、待ちに待った再来日を果たす。「初めてデュオを踊ったのは妊娠7ヶ月の母のお腹の中にいた時」(前記プレスリリースより)と自ら語るように、踊ること=生きることを宿命づけられ、フラメンコの枠や常識を超えてきたガルバン。ダンスの凄み、身体表現の大いなる可能性を体感させてくれる頼もしい傑物と同時代を生きていることを至福と呼ばず何と呼ぼうか。
イスラエル・ガルバン『LA EDAD DE ORO-黄金時代』トレイラー
文=高橋森彦