日本芸術学園PTMC、初めての外部公演でオリジナル・ミュージカル『星の王子さま』とショーの二本立てを上演

2019.3.20
レポート
舞台

イープラス×日本芸術学園PTMC Presents ミュージカルライブ「星の王子さま」  (撮影:敷地沙織)

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日本芸術学園の在学生と卒業生から成り、3年前の発足から、ミュージカル界で活躍するスタッフ、クリエイターたちの力も借りて『hairspray JR.』『FAME JR.』『Disney High School Musical』といったブロードウェイ・ミュージカルを次々と上演してきた日本芸術学園PTMC(Precious Treasure Musical Company)。2018年10月11日には、学園を飛び出し、イープラスが渋谷で運営する「eplus LIVING ROOM CAFE & DINING」にて、初めての外部公演「イープラス×日本芸術学園PTMC Presentsミュージカルライブ『星の王子さま』」を上演。その昼公演を観劇した。

「LIVING ROOM」と名付けられているだけあって、会場は暖炉や本棚が設置され、絵画も飾られているなど、温かみのある、居心地のいい空間。今回は一部が『星の王子さま』、二部がミュージカル・ショーという形式になっており、ピアノの生演奏と録音の両方を使い分け、作品世界を盛り上げていく。

開幕、光電球を手にもった星たちと共に『星の王子さま』でおなじみのキャラクターたちが、会場のさまざまな場所から、フードやドリンクの並ぶゲストのテーブルの脇の客席通路をも通って登場。

王子さまは白のパンツルックに黄色いスカーフ、バラは赤いドレスに緑のロンググローブ、頭にバラの花、地理学者は学者帽にメガネといった風に、物語になじみのある人には「あ、あの登場人物だ!」と実に親しみやすく、そうでない人も視覚的にわかりやすいような衣裳の工夫が凝らされている。

舞台装置はないものの、飛行士の不時着やバラのトゲがピアノの音で表現されていったり、電球やボールといった小道具が効果的に用いられていたりして、観客の想像力、創造力に訴えかけてくる作り。きちんと芝居があり、そこに20曲ほどのナンバーが挟まってくるという趣向になっている。

栗山梢が手掛けたオリジナルの楽曲は、バラはオペラのコロラトゥーラ風、酔っぱらいは演歌風、実業家とヘビはラップ風など、バリエーション豊かだ。そして、王子さま役を務める森莉那が、作品を強力に牽引する。歌ってはソプラノもきれいに響き、あまりにも有名な「大事なものは目には見えない」を始めとする作品のポエティックで哲学的なセリフもいい。子供子どもしないながらも愛くるしい王子役の表現も印象的だった。

休憩を挟んで、今度はショーの開幕だ。オープニング、森を中心に、キャストたちが『ヘアスプレー』の「グッド・モーニング・ボルチモア」を、カラフルな衣装で歌い踊る。リフトされたりもしながら、表情のある歌声で陽気なナンバーを聴かせる森の歌唱力が光る。

『ウエスト・サイド・ストーリー』の「アメリカ」など、ふんだんにダンスが盛り込まれたナンバーも。『キャバレー』の表題曲、『ドリームガールズ』の「ワン・ナイト・オンリー」といったナンバーは、お酒もある空間の雰囲気を意識してのアダルトな選曲が心憎い。「シング・シング・シング」は合唱から大ダンス・ナンバーへと発展、客席に座って身体をスイングさせる女子キャストも。全員がステージ空間狭しとエネルギッシュに踊る姿が印象的だった。

ラストには、森を中心に、映画『グレーテスト・ショーマン』から「ディス・イズ・ミー」。小柄ながらもパワフルにエネルギーを炸裂させる森の歌唱がここでも光っていた。

ひのあらたと渋谷真紀子の演出からは、13名の若いキャストたち一人一人に愛情をもって作品作りにあたった様が感じられた。劇場やホールと違い、手を伸ばせば届く距離に観客がいるという空間での公演で、幕が開いて最初のうちはかなりの緊張感を感じさせるキャストもいたが、今回の経験から学んだことを生かし、舞台人としてさらに大きくステップアップしていく日が楽しみだ。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)  写真撮影=敷地沙織

公演記録

イープラス×日本芸術学園PTMC Presents
ミュージカルライブ「星の王子さま」(公演は終了)

 
■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING(東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F)
■日時:2018年10月11日(木)
<昼公演>open13:30 start14:30
<夜公演>open18:30 start19:30

 
■出演:
主演 王子さま:森 莉那
飛行士:岩﨑ルリ子
バラ:栗山絵美(特別出演)
キツネ:鯨井未呼斗
ヘビ:佐藤友泰
スネークス王様:佐藤みなみ
スネークス:泰道明日香
スネークス:古澤ユリエ
地理学者:吉田菜々
飛行士(少年)・実業家:荒川玲和
点灯夫:桐宮玲香
うぬぼれ:九城さくら
酔っ払い:鮫島由李亜

 
■スタッフ:
演出:ひのあらた 渋谷真紀子
作曲・音楽監督・演奏<夜公演>:栗山梢
演奏<昼公演>:くぼなつみ
歌唱指導:辛島小恵
振付:弓野梨佳(パシフィック・カンパニー)

 
■企画・制作:イープラス×日本芸術学園PTMC
■共催:イープラス・ライブ・ワークス
■協力:山王プロダクション