Rei 2018年の全てを注ぎ込んだ初めてのセルフタイトルアルバム『REI』を語る
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Rei 撮影=渡邉一生
今年2月にリリースされた「FLY」の時にインタビューしたが、その時にミニやフルといったアルバムの呼び名について話したのを覚えてる。何曲収録されようとも、そこにはフルの想いが込められているわけだが、個人的には好きなミュージシャンの楽曲を1曲でも多く聴けるのは、本当に幸せである。そういう意味では、今回の1st Album『REI』は12曲収録で幸せなのだが、当たり前だが、多く楽曲が入っていたら良いわけではない。何よりも大切なのは質であり、その質が12曲収録された事により、より良さを発揮している。曲数が増えたことで、色々な曲調の楽曲を聴く事が出来るし、歌詞が今まで以上に寄り添った言葉になっている。救われたり、癒されたり、落ち着いたり……、我々が生きていく上で絶対的に必要な1枚に仕上がった。自分には音楽しか無いと本気で想ってる人が作った音楽だからこそ、強く強く聴く側に響くのだろう。
Rei 撮影=渡邉一生
――今回、遂に1st Albumがリリースです。以前、インタビューでミニアルバムと謳っても、想いはフルに入れてるという話をしたのが、印象的だったんです。だから、今回、曲数的にはフルアルバムの数なんですけど、敢えて、フルアルバムとうたわずに、シンプルに1st Albumと謳ってるのが本当に良いなと。
その頃からの想いを貫いているので、この呼び名になりました。
――アルバム名も『REI』とセルフタイトルになりましたね。
初めてのセルフタイトルアルバムです。2018年の全てを注ぎ込めましたしね。光線という意味もあるんです。
――あっ、RAYという意味合いも込められているんですね。
暗闇の中に差し込む一筋の光の様な、そして、みんなの未来を照らすようなアルバムにしたくて。
――今年2月に「FLY」という音源を出したばかりなのに、もう新しい音源を聴けるのが嬉しかったです。
すぐ次を作るスタイルなんです。でも、今までに漏れた楽曲も入ってますね。今回だと「Clara」は1st Mini Album『BLU』(2015年2月リリース)の頃からあった曲ですが、改めて今の自分とフィットするところがありました。少ない中から選ぶより、たくさんの中から選びたいですしね。「Clara」は純粋な自分を忘れたくないとか、本能で生きてる少女を思い返した曲で、ファーストにふさわしいなと思いました。でも、3、4年前の曲だったりすると今の言葉に書き換えたりもしますし、アップデートした上で収録します。
――後、楽曲単位だと「BZ BZ」も、まさしくオープニングナンバー1曲目にふさわしい楽曲だなと思って、ワクワクしました。打ち込み感のあるメロディーなので、よりワクワク感がありましたね。
確かに、「BZ BZ」は1曲目だなと思いながら作りました。打ち込みとか、アナログシンセとかの掛けあわせは、これまでもトライしてきたんですけど、ずっと自分の中にある大切な曲調ですね。YMOとかクラフトワークとか、テクノも好きで育ってきましたから。中学生の頃に初めて聴いて、凄く新鮮に感じましたし、アナログシンセに興味を持ちました。3枚目のMini Album『ORB』の1曲目もアナログシンセから始まっているんですけど、大切なツールになっていると思います。裏テーマで万華鏡の様なサウンドにしたいというのもあったので、新しい色が出てくる驚きを出したいなとは思ってました。ただ、最初に枠組みを決めすぎると、そこから外れる方が怖くなるので、好奇心に任せて書いて、核が出来たら形づけていく感じですね。
Rei 撮影=渡邉一生
――今回、個人的には、いつも以上に穏やかな曲の存在を感じていて、何だか寄り添ってもらっている様に思えたんです。
特に「Silver Shoes」は、アルバム全体のムードと共通していると思うんですね。やはり、日々忙殺される時や見失う時もあったりするので、今回は幸せについて考えたかったんです。
――「Dreamin’」から「Silver Shoes」の流れが凄く好きで、アルバムって良いなと思えるんです。
音楽の聴き方も多様化してきていて、曲単位で聴く方も多いと思うんですけど、アルバムとして聴いて欲しい気持ちもあるので。この流れは、そういう気持ちを象徴しているなと。
――それと12曲も聴けるというのは嬉しかったです。12曲という曲数でのアルバムは初めてですが、そこは御自身的にはいかがでしたか?
意識していなかったですね。必要以上でも必要以下でも無かったですし、この12曲というピースがはまったんだなと。
――「Arabic Yamato」から「before sunrise」というラスト2曲の流れが、これまた沁みるんですよね。「Arabic Yamato」の「難しいことはおいといて」、「ややこしいことはおいといて」という歌詞に救われるというか、癒されるというか、とても落ち着くんです。「before sunrise」はインストですしね。
シンプルに生きようというメッセージを込めた曲なんですけど、私は頭でっかちで妄想や想像がどんどん膨らんでしまうし、考えたら色々止まらなくなるので……、何かを大切にしたい想いをシンプルに貫けられたらいいな、と。「before sunrise」は私の音楽のスタートがクラシックギターだったので、原点に戻りつつ、最後はナイロン弦でインストで〆るのがふさわしいかなと思いました。
Rei 撮影=渡邉一生
――先程、頭でっかちで妄想想像が膨らむお話をしてくださいましたが、それは小さい頃からですか?
そうですね。遊具無い公園にほっぽり出されても、楽しんでいられる子供だったのかなと。渡米していた事も大きいですけど、人とのコミュニケーションの取り方がわからなかったので、ギターと出逢った事で自分の世界が広がった実感がありました。ある程度、順応はしていたと思うんですけど、心の中にしこりのような違和感がありました。でも、ギターでミュージシャンとセッションをした時は会話が出来てる実感があったんです。学校のビッグバンドで初めてセッションした時も、孤立していた心がアンサンブルになれたんじゃないかなって思えました。
――後、セルフライナーでの「凸凹で、いとしい作品ができました。」という表現も凄く良いなと思いました。
作っている時に凄く気付かされたんです。欠けてる事が美しいなって。ピッチとかテクノロジーで制御する事が出来ますけど、制御せずに生々しい人間らしいところを伝えた無いなと。弱いとこを見つめるのは大変な作業ですけど、そういう欠けてる部分に対して気負いとか愛せない部分もあるんですけど、補いながら共存したくて。
――さっき言いましたけど、寄り添ってもらえる、救われる、癒される、落ち着ける、そんな感覚が、このアルバムは今までよりあるんですよね。
明日生きてるのがしんどい瞬間があった時に、小説や音楽で前を向くための糸口があれば、少しは生きてる事が簡単になったりするんです。だから、私も救うとかは大袈裟ですけど、聴いた人が顔をあげてくれたらいいなと。今回たくさんの音楽仲間にお声掛けして関わっていく中で、人間の感情って、いくつもの顔があるなって思ったんです。好きだとか、怒ってるとか、愛してるとか、いくせんもの感情の機微というか……、そういう、それぞれの色を丁寧に描きたかったんです。聴いた時に、押し付けがましかったり、考え方を矯正されているような気持ちにだけはさせたくないので「感じ方は、それぞれだよ」という余白は残したくて。美術館で絵画を観たりする時も30分くらい想像を膨らます事が好きなんで、アルバムも1回聴いて「わかりました」じゃなくて、何回も散々聴くんです。で、ふと思い出した時に聴くような長いこと愛してもらえるような作品になって欲しいです。
――それと今回のアーティスト写真とジャケット写真が凄く好きなんですよね。Reiさんの顔がアップなんだけど、とてもインパクトあるし、今のReiさんがしっかり切り取られてる感じもしますし。
今回の(アーティスト)写真はジャケットに合わせて作ったんですけど、シンボリックなものになりました。ポートレートのジャケットは1作目から貫いてきて、今回は光の存在が感じられる写真がいいなと。ここ2、3年で凄い顔が成長してきてるんです。1作目は、20歳そこそことかでしたし。女性としても変化してきているので、その姿を切り取りたいなって。後、どアップにするとコンプレックスに思ってるとこも慰められるので、そういう思いきりの良さを見せて、伝えたかったですね。
――コンプレックスと見つめ合うのって、絶対的にしんどい事なので、凄いなって思いますね。
誰にも負けないとこって、ひとつも無いのかも知れないですけど、音楽に対しての決意は負けないぞって思っているんです。その決意はより深まっているので、ジャケットとかのビジュアルから伝わればいいですね。
――音楽に対しての決意は負けないぞというのは、胸に迫ってきます……。
他の誰よりも音楽を愛してるというよりも、自分の大切なものとして絶対守り抜くぞみたいな……。汚さないように大切に守り抜くぞという思いですね。音楽以外の選択肢も考えた事ないですから。転職しようとかも思った事が無いですし。っていうか、音楽をやってる人は、そうあるべきだなと。でも、続ける事が一番難しいんです。スピード早い、この世の中で商業的に消費されない様にマイペースを守るのは、本当に難しいことだと痛感しています。
――そして、今回はメジャーレーベルからのリリースです。Reiさんの音楽を支えてくれるスタッフが、今まで以上に増えていくというのは、とても嬉しかったです。
仲間を変えていくんじゃなくて、仲間が増えていくのが健康的だという考え方なので、自分のアイデアを支持してくれる人が増えて、波紋の様に広がっていけたらなと思っています。
取材・文=鈴木淳史 撮影=渡邉一生
ツアー情報
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リリース情報
01.BZ BZ
02.LAZY LOSER
03.My Name is Rei
04.Follow the Big Wave
05.PLANETS
06.Dreamin’
07.Silver Shoes
08.Clara
09.MELODY MAKER
10.The Reflection
11.Arabic Yamato