村上春樹の阪神大震災をテーマにした短編小説集を舞台化 出演は古川雄輝、松井玲奈、川口覚、木場勝己など
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(左から)古川雄輝、松井玲奈、川口覚、木場勝己 提供:ホリプロ
村上春樹の名作を原作とした舞台『神の子どもたちはみな踊る after the quake』が2019年7月下旬、東京・よみうり大手町ホールにて、倉持裕演出、古川雄輝、松井玲奈、川口覚、木場勝己ら出演で、上演されることが決定した。
“ぼくのことは「かえるくん」と呼んでください。 ” 3 日後に東京を襲う地震を食い止めようとしているらしい―。
そんな不思議な描写で始まる 村上春樹原作の本舞台。原作は、2000年に新潮社から刊行された、短編小説集だ。阪神大震災をテーマにした作品ばかりを集めた短編集であるが、地震そのものを描写したものではなく、地震のニュースを見た人たちの心の中で何が起こったのかということをテーマにしている。村上春樹は、2019年2月10日に米雑誌 The New Yorker のウェブ版に掲載されたロングインタビュ ーの中で、本作について言及している。アメリカ在住時にTVで目にした、自身の故郷・神戸を襲った大地震。作家として、「自分には何ができるだろうか」と考え、この地震の只中で何がおこったか想像をめぐらせて書いたのが、この「神の子どもたちはみな踊る」(※英語タイトルは after the quake)だという。
本公演は、短編集のなかから「かえるくん、 東京を救う」「蜂蜜パイ」のふたつを取り上げ舞台化したフランク・ギャラティ版の脚本(2005年米国にて上演)を使用している。
実は本作、蜷川幸雄が演出した舞台『海辺のカフカ』に続く奇跡のコラボレーション「Ninagawa ×Murakami」の第2弾として構想されながら、蜷川の逝去で中断していた企画だった。2014年に蜷川が演出した舞台『わたしを離さないで』(原作:カズオ・イシグロ)の脚本を手がけ、厚い信頼を得た 倉持裕が演出を後任することとなり、遂に待望の企画が実現する。世界が注目する村上春樹の短編が、新しい光を放つ。 ベテラン俳優から若手女優に至るまで、数々の役者から絶大な信頼を得て、独自の視点で数々の話題作を 手がけてきた倉持が、世界中に熱狂的なファンを持つ村上春樹ワールドをどう舞台上に描き出すか。大きな注目が集まることは必至だ。
2015年上演『海辺のカフカ』舞台写真 右)木場勝己 撮影:渡部孝弘
キャストには、海外で育った背景を武器に、アジアを中心に国際的な活躍をみせる古川雄輝が主人公・淳平役を演じる。ヒロイン・小夜子役には 舞台と映像両方で女優として活躍し、現在は朝ドラ「まんぷく」でもさわやかな演技をみせている松井玲奈が決定。物語の鍵を握る「かえるくん」は、 同じく村上春樹の原作舞台『海辺のカフカ』のナカタ老人役で世界各国にて賞賛を浴びた木場勝己 が演じる。また実力派俳優・川口覚 が、片桐、高槻という二役を演じるなど、3名の若く瑞々しい感性と、日本演劇界が誇るベテランとがぶつかり合うことになった。
1995年に西日本を襲った阪神淡路大震災。激しい揺れを感じながら、人々の心の中で何が崩れ落ち、 失われたのか。地震のあとに、救いと再生はあるのか――。阪神間に育った作家・村上春樹の思いは深く複雑なものがあったという。世界が注目する小説家と、いま演劇界で最も勢いのある演出家とキャストがおくる一作だ。
■演出:倉持裕 コメント
倉持裕 提供:ホリプロ
村上春樹さんの小説は十代の頃から読み始め、新刊が出るのが最も待ち遠しい作家でした。俯瞰した視点、ふとしたきっかけに異世界に深く潜っていく展開など、作劇する上で多大なる影響を受けました。今回の芝居の原作『神の子どもたちはみな踊る』は、短編集の中で最も好きな作品です。戯曲は、 モノローグを駆使することによって、過去と現在、現実と虚構を行き来しながら展開します。それらの継ぎ目をなだらかにつなげて、一枚の絵として演出したいと考えています。キャストには素晴らしい俳優が揃いました。古川雄輝さんとは、主演された『イニシュマン島のビリー』を拝見して以来、いつかご一緒したいと思っていました。静かに、強い信念を崩さないムードが役に合っています。松井玲奈さんは非常に知的な印象で、インテリな役のイメージにぴったりです。何度もご一緒している川口覚さんは、誠実な男も軽薄な男もどちらも似合う俳優です。木場勝己さんは、シアターコクーン『8月の家族たち』が印象的でした。ファンタジックなキャラクター「かえるくん」を、毅然と、楽しんで演じて頂けたら、と期待しています。
■古川雄輝:淳平役 コメント
村上春樹さん原作の作品に主演させて頂き、大変光栄です。沢山いらっしゃる原作ファンの皆様の期待にも応えられるように努力したいと思います。台本をいただいた時に、村上春樹さんならではの世界観を持った物語だと感じました。 初めてご一緒させていただく倉持さんのもと稽古を通して、淳平の心情を繊細に表現できるように、役者として少しでも成長できるように頑張りたいと思います。また初共演の松井玲奈さんとのお芝居も楽しみです 淳平と小夜子の距離感をリアルに演じたいです。先輩の木場勝己さん川口覚さんからは、たくさんのことを吸収できるよう勉強させて頂きます。映像では味わえない、お客様の前で生でお芝居をするライブ感を楽しみにしながら、稽古に励みたいと思います。
■松井玲奈:小夜子役 コメント
村上さんの作品に深く触れていきたい、と思っていた時にこの舞台のお話があり、なんというタイミングだろうとびっくりしました。震災をテーマにした作品はいつだってやるべき時にあるのだなと、感じずにはいられない作品です。私が演じる小夜子という役には、原作には書かれていない、彼女の複雑な心情があるなと思っています。言葉にできない感覚的な思いというのは、女性が心の中に留めがちなものだと思うので、自分なりにどう表現できるのか挑戦だと感じています。今回始めて演出を受ける倉持さん自身もこの作品をどう表現するのか思考を巡らせていらっしゃったので、頭の中のプランがどんな風に形になっていくのかが今からとても楽しみです。初共演の古川雄輝さんも、小夜子と沙羅の二人に優しく寄り添い見守ってくださると思います。
■川口覚:片桐役、 高槻役 コメント
村上春樹さんの作品を役者として探究できる事に感謝と興奮しています。
倉持さんの演出を受けるのは 3 度目になります。
倉持さんとの作品作りは、楽しかったり苦悩したり、その都度、自分にとって必要な事を必ず気付かせてくれる贅沢な時間です。
細胞を鋭敏にし、倉持さんのイメージを体現できるよう、 共演者の方々、 全スタッフの皆様と共に邁進して参りたいと思います。
■木場勝己:かえる役、 語り手役 コメント
村上春樹さん原作の舞台、『海辺のカフカ』のパリ公演本番中になります。
その村上さんの作品、『神の子どもたちはみな踊る』に再び出演することになりました。私の役は、「ナカタさん」から「かえるくん」に変わります。この二つの役に共通しているのは、数奇な運命と成し遂げなければならない使命であります。もう何も考えません。今回初めてになる演出の倉持裕さんに、すべてをお任せしようと思っています。
信用金庫に勤めるさえないサラリーマンである片桐(川口覚)の元に、ある日突然巨大な蛙が現れる。地下で気持ちよく眠っていた「みみずくん」が神戸の地震で目を覚まされ、その怒りにまかせて東京に大地震を起こそうとしている、 それを阻止できるのは片桐だけだと、その「かえるくん」(木場勝己)は言うのだ。片桐が昏倒している間にみみずくんとの闘いは行われ、いつのまにか片桐は病院へ……。一方、 作家の淳平(古川雄輝)は、大学時代からの友人である小夜子(松井玲奈)と彼女の娘の沙羅に熊の話を語って聞かせ る。淳平は大学時代に小夜子に恋をしていたが、彼女は共通の友人である高槻と結婚した。高槻と小夜子はその後離婚し、淳平は高槻から小夜子と結婚するよう勧められているのだ。淳平は地震の後、はるか昔に捨てた故郷である神戸のことを思う。沙羅もまた地震以来悪夢を見るようになる。地震男が自分を狭い箱に閉じこめにくると言うのだ。眠りについた小夜子と沙羅を見守るうち、淳平は小夜子に求婚することを決意する。
公演情報
脚本:フランク・ギャラティ(Frank Galati)
演出:倉持裕
会場:よみうり大手町ホール(東京)※ほか愛知公演、 神戸公演あり。
企画制作:ホリプロ