崎山つばさ「カンパニーのなかでも佐平次のような存在になれたら」 舞台『幕末太陽傳 外伝』
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崎山つばさ
2019年4月18日(木)より、東京・三越劇場にて上演される舞台『幕末太陽傳 外伝』。「川島雄三監督生誕100周年プロジェクト」の一環として、1957年公開の映画『幕末太陽傳』のストーリーを軸に描かれる。
古典落語の『居残り佐平次』を基に、遊郭「相模屋」に居座った無一文の男・居残り佐平次の周りで巻き起こる騒動を描いたコメディー。居残り佐平次を演じる崎山つばさは、今作が舞台初主演となる。日本映画史上に残る不朽の名作への思いと、役柄とは相反する穏やかな素顔に迫った。
ーー出演が決まったときのお気持ちは?
漫画やアニメ原作を舞台化する経験はありましたが、映像作品の原作は初めてなんです。映像で表現していたものを舞台で表現することへの想像の駆り立てられ方が半端じゃなくて。「これをどうやって舞台でやるんだろう?」と思いながら映画を観ました。伝説の映画と呼ばれている理由がはっきりとわかる、純粋に面白くて見応えのある作品でした。描かれている時代は幕末、セリフの言い回しも特徴的ではあるんですけど、今の時代に演じるからこそ新しいものに感じるのではないでしょうか。板の上で表現するにあたって気合を入れないとな、と。いろいろ研究しなければならないと感じました。
崎山つばさ
ーー映像から舞台へ表現が変換される上で、具体的にどういう部分が特に気になっていますか?
例えば、映画では遊郭の女郎ふたりが取っ組み合いをするシーン。庭で喧嘩してたかと思えば、今度は屋根で転げ落ちそうなくらいにやり合うんですけど、その映像ならではの場面転換や臨場感は、舞台だと一つの空間で繰り広げられることになる。この映像を見たときの面白さを、舞台でも同じように感じてもらえるよう演じられたらと思っているので、どう変化するのか楽しみです。
ーーそして崎山さんにとって本作が初主演となります。
そうなんです。でも、あんまり気にしすぎても、頑張りすぎてもよくないなと思っています。いい意味で適度に頑張って、適度に抜く……ということを大切にしながら、僕らしさを出していきたいです。今までいろんな座長さんを見てきて感じたのは、その人の持っている雰囲気で作品の印象が変わりますし、色が出てくるということ。“僕が”というよりは、劇中の佐平次のような色の座長になれたらなと思います。
崎山つばさ
ーー演じる居残り佐平次についての印象は?
「こういう風に生きられたら楽だなぁ」って憧れる部分があります。飄々としていて、お調子者で……最初は「なんだこの人は!」って思われるところを、いつの間にかその場に必要なくらい馴染めるところがあって。佐平次は病気を思わせるような良くない咳をしているんですけど、そんな自分の現状に対していい意味で諦めていて、一方で生きるというところについては諦めていない。自分が演じるなら、カンパニーのなかで、稽古の中から佐平次のような存在になれたらいいなという思いはすごくありました。
ーーここまで破天荒なキャラクターを演じるのは珍しいですよね。
今まではどちらかというと落ち着いているキャラクターを演じることが多かったかもしれないですね。喜劇というジャンルも初挑戦ですし、楽しみです。
ーー先ほどおっしゃっていた佐平次の“色”は、崎山さんにとってどんなカラーに感じていますか?
オレンジ色の照明の灯りのような。白の蛍光灯じゃなくって、もっと落とした光。「はい、照らします!」って感じではなくて、そっと点いてるけどそれがないと見えないな、っていう明るさですね。
崎山つばさ
ーーそしてほかのキャストのみなさんとは初共演とのこと。初対面の方ばかりの中でも緊張しないタイプ?
ご一緒できることがすごく楽しみですし、(脚本・演出の)なるせゆうせいさんとご一緒するのも初めて。稽古が始まるのが待ち遠しいです! 人見知りはしないタイプなので、コミュニケーションは取るほうだと思います。……でも、猫は被ります(笑)。
ーー(笑)。それはどのタイミングで止めるのでしょうか?
ふふっ、最後まで出さないんじゃないんですか(笑)? 僕、どこでもそうなんですよ。隠しているわけでもないし、素を出すことに恥ずかしさがあるわけではないんですけど……今までこういう風に生きてきたので、逆にこのスタイルが僕にとって包み隠さずある状態というか。誰にでも、家にいるときの自分にしか見せていない姿ってあるじゃないですか。そこは自分の中で留めておきたいし、大切にしておきたいなって。ただ、みなさんと初共演だからこそ、今回の座組ではいつも以上に自分を出していきたいです。時間はどうしたって限られてくるので、たくさんコミュニケーションは取りたいなと思います。
ーーいつもは出していない部分というと?
こだわりの強い部分ですかね。全然刺々しいものではないんですけど。あくまでも作品に沿った自分でいられるようにしたいです。
崎山つばさ
ーー作品の舞台が幕末ということもあり、所作が大変そうなイメージがあります。
そうなんですよ! 映画の(佐平次を演じた)フランキー堺さんが袴を着る特徴的なシーンがあるんです。粋な所作というか。それは真似したいなと思ってます。
ーー演じる佐平次の性格にちなんで、今まで生きてきた中でいちばん型破りだった崎山さんの行動を教えてください。
え、なんだろう……? 昔から平和主義なんです。あんまり喧嘩とかもしてこなかったですし、反抗期もなかったくらいですし。型破りか~……あ、高校生の頃、自転車で県外に出たことはあります! 3時間くらいこぎ続けて、完全に友達とノリで(笑)。地元の千葉から東京との県境まで来て、「もうこれ以降は無理!」って言って引き返しました。
ーー(笑)。では最後に、作品を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
シンプルではありますが、物語を見て、たくさん笑ってもらえたらうれしいです。佐平次は自分のイメージにない役でもありますし、僕の中の“喜劇”な部分を新たに生み出せればいいなと思っています。今回の舞台を通して初めて「幕末太陽傳」という作品を知る方も、昔から映画を観ていて大好きという方も劇場に集まって、それぞれ「映画もみてみようかな」「舞台もいいな」と感じていただけるような作品にできたらいいなと思います。
崎山つばさ
取材・文=潮田茗、撮影=山本れお
公演情報
(C)日活/ADKクリエイティブ・ワン
監督/川島雄三 脚本/田中啓一、川島雄三、今村昌平
■会場:三越劇場(日本橋)
崎山つばさ/入江甚儀 愛原実花 武藤十夢 中野あいみ 小松準弥
林明寛 磯貝龍虎 丸山優子 久下恵美 向野章太郎
蒼木陣 小坂涼太郎 鐘ヶ江洸 三浦海里
あまりかなり 南米仁 千葉一磨 井上果歩 仲野泰平 杉本真子 山口翼 沼田楓愛
津田英佑 野添義弘
柳亭小痴楽(Wキャスト) 春風亭昇々(Wキャスト)
■監修:日活
■主催:日活・ADKクリエイティブ・ワン
■公式 Twitter:@taiyouden_stage
川島雄三監督生誕100周年プロジェクト公式特設ページ:http://www.nikkatsu.com/news/201806/002959.html