突撃！隣のヤバイ心霊精神病院　“親切設計”の臨場感あふれるホラー『コンジアム』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第六十三回

TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか？『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

 

昔はたくさんあった心霊映像系の番組も今では少なくなっしまった昨今。私はそんな中でも、タレントさんたちが自ら心霊スポットに突撃するコーナーがお気に入りだ。ともすれば何かが映っていそうなリアルさとワクワク感がたまらない。もしもあなたが私のようにあの突撃コーナーが好きな人だとしたら、今回取り上げる作品にも興味を惹かれるに違いない。普段怖いもの見たさでホラー映画を観る人にも強く推したい、最恐の心霊スポットを舞台にしたホラー『コンジアム』を紹介しよう。

YouTubeでホラー動画を配信している人気チャンネル“ホラータイムズ”が、スポンサー獲得のために一般参加者を募り、心霊スポットであるコンジアム精神病院への突撃を計画。主宰者であるハジュンを隊長に、男女７名がカメラやドローンなどを持ち込み、深夜0時に探索を開始した。ハジュンの目論見どおり、アクセス数は順調に伸びてゆくが、次第に想定外の心霊現象が起き始める。やがて隊員たちは、コンジアム精神病院の“402号室の呪い”を目の当たりにすることとなる。

 

現代にマッチした設定とあふれる臨場感

『コンジアム』はPOV（ポイント・オブ・ビュー）と呼ばれる、一人称視点で進むジャンルの作品だ。日本でもヒットしたホラー『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』（99）などが有名だろう。ブレア・ウィッチのように、ドキュメンタリー風のPOV作品が多い中、本作はYouTubeでの生配信にスポットを当てるというが新しい手法を取り入れている。SNSや動画サイトに慣れ親しんだ若い世代にも身近に感じる設定ではないだろうか。

人気YouTuberらしく、撮影機材や配信機器をばっちり揃えているという点も面白い。ホラータイムズのメンバーはコンジアム病院の近くでテントを張り、主宰のハジュンがリーダーとなって指令を下す体制を取っている。メンバーたちはチームごとに分かれ、各々がウェアラブルカメラを身に着けて病院に潜入。ハンズフリーであれば落とす心配はないし、メンバー同士の怖がる顔もしっかりばっちり収まる。自分までホラータイムズの一員となって探索しているかの臨場感が味わえるのだ。手持ちカメラであれば、心霊現象が起きて驚いた時に落としてしまうことがあるかもしれない。逆に、驚いているのにカメラだけは離さず構えていたら、「こいつ冷静だな……」とツッコミを入れたくもなりそうだ。さらに、病院内には定点カメラを設置し、カメラマン役のメンバーは手持ちカメラも用意して抜かりが無い。私たち観客が院内のちょっとした異変さえ見逃すことなく堪能できる親切設計には脱帽。もはやこれは“観るお化け屋敷”と言っていいだろう！

 

思わず背筋がゾッとする実在のスポット

舞台となったコンジアム（昆池岩）精神病院は、米CNNが「7 of the freakiest places on the planet」（世界で最も恐ろしい場所7選）として紹介した、実在のスポットだ。どこまでが実際のコンジアムで撮影された映像かは明言されてはいないものの、観ているとところどころゾクっ！と悪寒が走るので、「これはガチなのでは？」と思ってしまったのが印象深い。

また、病院内“だけ”で何かが起きるわけではないというのが本作の怖いところ。病院から離れた場所にいるリーダー・ハジュンにも、その怪異が襲いかかるのである。病院内の探索ももちろん怖いが、仲間と離れて独りの時に何かが起きるなんて、より恐ろしいではないか。しかし、ホラータイムズの面々は「どんと来い、超常現象」の勢いで果敢に挑んでゆく。はたして彼らは、無事に配信を終えることはできるのか。メンバーの一員になった気持ちで、コンジアムの呪いを体感してほしい。

『コンジアム』は3月23日（土）より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー。