驚かずにはいられないアートな人形たちの佇まい
ミュージシャンと人形のコラボライブも多数
僕は、実は、人形劇が好きだったりする。決してフィギュアが好きなわけではない。そのことに気づいたのは、「かわせみ座」と出会ったからではないかと思う。それを世の中では魅せられたというのだろう。
日本の場合、人形劇は、幼稚園や小学校であったり、親子劇場であったりを回る公演活動を行っているのが多くの現状だったりするので、どうしても“子供向け”という思い込みを見てもいないうちから持ちがちだ。というか、そもそも人形劇がどこに行ったら見られるのか、なかなかわからないという事情もある。そんな中にあって、果敢に劇場公演を打ち、時にはスタジオジブリの高畑勲監督を演出に迎えたり、いまはなき青山円形劇場の企画で花組芝居の植本潤と共演したりといった挑戦をしてきたのが、かわせみ座だ。
長い歴史を誇る結城座、テレビなどで活躍するプークなども僕は好きで見にでかけるけど、かわせみ座の素晴らしさは、物語を考え、その展開に合わせたキャラクターと動きを想定し、ビジュアルや構造力学にそって、木・皮・布・プラスチック・金属など、あらゆる素材を使い分け、融合させて、主宰の山本由也がそれこそゼロから試行錯誤して作り上げるオリジナルに人形たちだ。素晴らしさより、凄みさえある。
1982年に人形劇団を旗揚げして以来、すでに150体にも及ぶ人形たちは、だからこそ見た目も構造も動きもバラエティーに富んでいる。陳腐な表現になってしまうが、僕はその制作や操演のための技術、こだわりについては世界一だと思っている。なにせ、手をひらりと動かしたり、首をひねって顔をこちらに向けただけで、見るものを架空の世界へ引き込んでいく力があるから。恐るべき表現力なのだ。
さて、今回の展示は、山本いわく「独創的な構造と操作法を持つ人形たちを、動かない状態で、造形物として見てもらいたいと企画しました。ステージ上でご覧いただくのとは別の人形たちが見えてくるのではないでしょうか?」と企画したもの。リュウを中心に約30点を展示されるという。なかなか近くで見るチャンスは少ないだけに、ぜひ人形の素晴らしさを確認してほしい。
と、同時に、連日連夜というくらい、さまざまなミュージシャンと山本が繰り広げるコラボ・ライブも楽しみだ。谷川賢作(ピアノ、作編曲)を皮切りに、シャルキィロマ、夏秋文彦(鍵盤ハーモニカ、ピアノ、口琴、コンツォフカ、etc.)、寺尾紗穂(ピアノ弾き語り)、じぶこん(ディジュリドゥ、インディアンドラム、歌、フラメンコギター)、海沼正利(パーカッション)、梅津和時(サックス、クラリネット)、chie(チェロ&ヴォイス)+蔡怜雄(トンバク、ダフ、フレームドラム)、星衛(チェロ・和笛)+小川紀美代(バンドネオン)、三輪福(舞踊家、振動性音響アーティスト)、藤野由佳(アコーディオン)+立岩潤三(パーカッション)、土井啓輔(尺八・作編曲)、BUN(カリンバ、ネイティブアメリカンフルート)、松本雅隆(中世ルネサンス古楽器、作曲)+上野哲生(サントゥール、リュート、サズ等の古楽系弦楽器)、ホッピー神山(ピアノ、作編曲、音楽プロデューサー)という、ある意味すごい、幅広すぎ、めちゃくめちゃな顔ぶれ。なんかすごいネットワークだ。それぞれの出演日は、ポレポレ坐のホームページ()で確認してほしい。山本本人も「体力の限界に挑戦」と語っているが、本当にそれが心配だったりもする。
■会期:2015年11月17日(火)~12月6日(日) 11月30日(月)休
■問合せ:ポレポレ坐 Tel.03-3227-1405
【COLLABORATION LIVE EVERY LIVE】