サンドクロック 普遍的なポップスの魅力を瑞々しく描き出す二人にインタビュー
サンドクロック
性格も音楽性も異なる二人のシンガーソングライター、滝田周と永田佳之からなるサンドクロック。水と油のような二人だからこそ生まれるハーモニーとメロディは可能性に満ち、普遍的なポップスの魅力を瑞々しく描き出す。厳格な家庭に育ち就職目前のところで音楽の道を選んだ滝田と、ギター1本を持ちヒッチハイクで日本を2周した経験を持つ永田。二人の出会いから新作ミニアルバム『LIFE IS FANTASY』に至る歩みを辿りながら、彼らの魅力に触れていただきたい。
「本質の歌と言葉でお金を稼いでるんじゃない。真ん中の部分をおろそかにしてやっていても未来はないし、続けられへんなって思った」(永田)
――それぞれソロで活動していたお二人が、2010年12月に行なった都内のライブハウスでの対バンをきっかけに出会ったそうですね。
滝田周(Pia&Vo):お互いのライブは見たけど、そこでユニットを結成しようという話しにはまったくならず。
――年齢も一緒だし、誕生日も近いし、初対面での会話のネタはありつつ。
永田佳之(G&Vo):身長も一緒だし、そのときに使ってた手帳も一緒で。
滝田:そういうのもあって、けっこうお互いのライブを見に行って。自分にないものを持ってる感覚でいいなと思い、たまにご飯に行ったり、いろいろ話しているなかで、永田の方から「二人でやろうか」って。それで、最初はソロ同士で2マンライブをやろうと、集客のためにストリートライブを二人でやり始めて。そうしたら、二人でやったときの方が足を止めてくれる人が多くて、だったら二人でやった方がいいじゃん、と。
永田:二人で動いた方が聴いてもらえる機会とか増えるやろうし、自分たちが音楽をやりやすい環境を作るのも早いと思ったので。でも楽曲としては、自分のパーソナルなものを削りたくなかったので「ルームシェアしようぜ」みたいな誘い方をしましたね。サンドクロックとはこういう音だ、というのを作るんじゃなくて、それぞれが単体として独立していて成立するユニットを作りたいと思って始めました。
――「ルームシェアしようぜ」というお誘いに何と答えたんですか?
滝田:最初は断ったんですよ(笑)。そもそも、性格もぜんぜん合わないなと思ったんですよね(笑)。お互い我が強いし、二人組でやるって想像つかなかったんです。でも冷静になって考えていくうちに、逆にそれが面白いのかなって思いだして。音楽的にも幅が広がるだろうし。すごく大変なんだろうなと思いながらも、何か新しいものを生み出せそうだなって。
永田:直感というか、カーンッと画がはまったんですよ。で、ゴールの画がある程度見えたというか。どっしりと構えてる人と、トリッキーな人がいた方が、バランスがいいというか。僕は滝田と出会う前に、ギター1本持って日本1周してるんですけど、滝田は勉強をすごいやっていて大学もいいところを出ていて。そういう自分と違うところもはまったのかな。
滝田:僕、音楽を始めたのが遅いんですよ、24歳からなので。曲を作ったりピアノを弾き始めたのもその頃からで。みんな子供のときからピアノやってましたとか、中学高校からバンドやってましたとか、そういうなかでやっていかなきゃいけないってなったとき、やっぱり人と同じようなことをしてちゃダメだなと思って。人よりも何倍も早く成長しないと追いつけないなという焦りもありましたし。それで、一人でやっているよりも二人で、しかもまったく違う人が近くに相方としていると、嫌でも吸収するし、嫌でも自分の回転スピードは上がるので。
――24歳で音楽を始めようと思ったきっかけは何だったんですか?
滝田:もともと好きだったんですけど、聴くのも歌うのも。親にばれないように布団をかぶってカラオケを流して練習したり。でも、歌手になりたいとかミュージシャンになりたいとは、どうせ無理でしょっていわれるのが怖くていえなくて。大学でバンドサークルに入ってみたりした時期もあるんですけど、それもあんまり続かなくて。で、結局、就職活動になっちゃって。いざ就職目前で、このまま会社に入って60歳まで働くのか? って思ったときに、今しかないと思って始めました。
永田:今でしょ!
滝田:そう(笑)。そう思ってからが早かったですね。「就職やめます」っていったときの親の顔は未だに焼き付いてますね。
永田:滝田の家がすごく厳しい家庭で。3年以内に結果を出さないと解散しないといけなかったんです。
滝田:わりと安定志向というか。ずっと、公務員になれとかいわれ続けていたので。だから、メジャーデビューが決まったときはすごく喜んでましたね。
――永田さんはどうしてヒッチハイクの旅をしようと?
永田:なんか面白いことをしたかったんです。出発の前の日に友達が集まって、僕の財布を空にする会みたいなのを開いてくれて。みんなで僕のお金を全部使って、そこから出発しました。で、10ヵ月かけて1周して、1回帰ってきて、2ヵ月くらい家にいて、面白かったからまた行こうと思って2周目に行きました。
――それは何歳のときですか?
永田:22~23歳くらいかな。
――旅をして変わったことはありましたか?
永田:旅自体を後悔する自分がいました。いろいろ面白いことをして掴めることがあると思っていたし、人と違う経験をすることで人と違う要素を手に入れられるとか、こんなんもできる、あんなんもできるっていう想像は広がってたんですけど。終わったときに、何もあんまり残ってなくて。なんかその……お金の稼ぎ方が本質的じゃなかったというか。たとえば、スナックに行ってこういうふうに喋ってこうすればお金が入るとかはわかっているけど、本質の歌と言葉でお金を稼いでるんじゃない。真ん中の部分をおろそかにしてやっていても未来はないし、続けられへんなって思ったり。あとは、“日本一周が終わったらワンマンライブをする”っていってずっと廻っていて、そうしたらみんな来てくれるじゃないですか、ヒッチハイクで乗せてくれた運転手の人とか、泊めてくれた人とか、旅で出逢った人たちが。でも、そのお客さんたちはすぐにおらんようになっちゃって。
――記念のライブには来てくれたけど、それ以降のライブには来なくなったと。
永田:そう。コツコツ積み上げたものじゃない、狙ったものや派手なアクションで集めた人って、ちゃんと根っこのところを捕まえてないから、すぐにおらんくなっちゃって。そういう旅を総評して、失敗と思ったんですよ。それを知ったことが、経験になっています、いまは。
――それはいつ頃から感じていたんですか?
永田:1周目のときに、その日に歌った時間と稼いだお金と、そこでもらった社長の名刺とか歌えるスナックとか、全部ノートにつけてたんですよ。で、2周目はそこを辿ればいいだけじゃないですか。でも、そんなことをしてても意味ないぞって、若いうちに気付けたのがよかったですね。そういう経験があったらから、滝田周っていう人と組んだんだと思います。旅が終わったときに、誠実にコツコツ時間を積み重ねるということがすごく大事なんやと思って、「1+1」という曲を書いて。“1+1でしか進めないぞ”っていう気持ちでいるときに会ったのが滝田だったから。“この人は1+1やな”って。僕は1+1じゃない人間だから。
滝田:その通りですね(笑)。僕は奇をてらったこととか、常識やルールから外れたようなことができない自分がいて、形式にはまってしまう傾向があるんです。いままでもそういう人生を歩んで、無難な道を選んできたっていうのもあって。だから、すごくそういうのが輝いて見えたんですよね。サンドクロックというユニット名は砂時計という意味ですけど、滝田と永田という二人の個性を持ちながら、時にはひっくり返ったり砂が混ざったりするようにやっていこうっていう意味で名付けたんです。
「僕は音楽を始めたのが遅いというのもあって、とりあえずいまは吸収したいんです。“自分はこうだからこうしたい”というのはまだ早い」(滝田)
――そうした二人の個性や魅力を発揮するためにも、曲作りなどの役割分担はあるんですか?
永田:僕は作りたいものしか作ってないです。1個のお弁当だとしたら、僕はミートボールを作りたいと思ったらミートボールしか作れないので。滝田はそれを見て、野菜とかご飯とか、バランスよくやってくれているのかもしれないですね。
滝田:基本的には自由にやってますね。その都度その都度、“こういう曲があったらいいよね”っていう、必要とされている曲がありますけど、そこにはあまりとらわれずにやるようにしています。
――今回のミニアルバム『LIFE IS FANTASY』に関しては、どんなものが求められていたんですか?
永田:広く大勢の人に聴いてもらえるものを書いてほしいというリクエストはありました。
滝田:サンドクロックを知らない人はまだまだ大勢いるわけで。ラジオで流してもらえたり、初めて聴いてくれる人にも残るイヤーキャッチのある曲を作ろうと。
――リード曲でもある1曲目の「君はファンタジー」は、まさに1回聴いただけで口ずさめるくらい本当にキャッチーな曲ですよね。
滝田:でも最初はぜんぜん違うアレンジだったんですよ。歌詞もぜんぜん違う、自己啓発系のテーマの曲で。それを今回のアルバムに入れるために、アレンジャーさんやディレクターさんと話しながらアレンジを固めていって、それに合わせてもう1回歌詞を書き直して、いまの形になりました。
――そういうときに“俺が伝えたいのはそれじゃないんだ”みたいな反抗はしないんですか?
滝田:僕は音楽を始めたのが遅いっていうのもあって、とりあえずいまは吸収したいんですよね。“自分はこうだからこうしたい”というのはまだ早い。このアレンジになったときに、最初はちょっとビックリはしましたけど、それをどう消化していこうかっていう。このアレンジと自分がリンクするところはどこなんだろう? っていうのを探す作業をしました。そうしたら面白かったですよ、大変でしたけど。
――自分の中に無かったものに歩み寄っていくわけですからね。
滝田:一から全部ね。でもいい経験でした。
――2曲目の「あの娘は今日もホントB型」は永田さんの曲で。歌詞がすごく面白いですけど、モデルがいたんですか?
永田:元は2年くらい前に作っていた曲で、そのときに好きやったコがB型だったっていう(笑)。最初はB型をディスりまくってる曲だったんですけど、メジャー盤に入るっていうことで、B型が好きっていう曲になりました(笑)。
――ちなみに、滝田さんはB型ですが、この歌詞について思うところは?
滝田:最初は僕のことかと思ってました。
永田:なんかねぇ、滝田は僕が書く曲を全部自分のことやと思うんですよ。昔「S」っていう曲を書いたんですけど、その“S”は“周のS”やと思って塞ぎ込んでしまったり(笑)。
滝田:塞ぎ込んではいないけど(笑)。
永田:滝田はそんなにB型っぽくないんですよね。気分屋でもないし天邪鬼でもないし。
――このインタビュー中の小一時間の間でも、B型っぽさはあまり感じられないです。
滝田:永田の方がB型っぽく見えるかもしれないですね。
永田:意外と俺の方が素直で、滝田の方が頑固ですよ。
滝田:譲れるところと譲れないところははっきりしてますね。
永田:部屋には入れてくれるけど、上のロフトには入れさせてくれないとか(笑)。
滝田:永田はマメで、さっきのヒッチハイクの話でもいってた、1周目のデータをすべてメモしているとか、なかなかそこまでやらないですよね。
永田:ファイリングするのが好きなんですよ。歌詞も、書いた時期とかテーマごとに全部ファイリングしていて、恋愛の曲を書こうと思ったらそのフォルダを開けばそれ系の歌詞がいっぱい出てくる。
――几帳面なA型らしい一面ですね。
永田:自分の興味のあることにしかマメじゃないですけどね。
――では、アルバムの最後に入っている「ウサギもカメも」について。対照的でありながら実は表裏一体でもあるという曲だと感じたのですが、お二人はそれぞれ、ご自身はウサギとカメどちらだと思いますか?
永田:それ考えたんですけど、今回の歌では僕がカメで滝田がウサギですけど、べつに僕がウサギで滝田がカメでもありやし。カメの要素もウサギの要素もみんな持ってるのかなって。どっちも経験したことあるし。バイト先でだったり、部活の1年生のときだったり。ウサギ的な気分で、自分が一番強くてもみんながついて来てくれへんとか、勝ってるけど虚無感、みたいなものを味わったこともあるし。やりきったのにうれしくない、とか。だから、どっちがとかはないかもしれないですね。
滝田:誰もがどちらの立場にもなりえるから、そのときの心情で置き換えて聴ける曲だなと。
――12月のワンマンライブでは、今回のアルバムの曲はみんな聴けそうですか?
滝田:全部やります。
永田:ちゃんと緩急のある、テンションが下から上まであるライブにしたいですね。
滝田:新しいサンドクロックを見せつつ、いままでやってきたこともちゃんとブレずに見せたいですね。
インタビュー=望木綾子
サンドクロック『LIFE IS FANTASY』
2015年11月4日発売
CRCP-40433 ¥1,667+税
<収録曲>
1.君はファンタジー
2.あの娘は今日もホントB型
3.コバルトブルーの空の下
4.ドラセナ −Dying and rising
5.Blue!
6.ウサギもカメも
『LIFE IS FANTSY』リリースイベント
11/23(月・祝) 16:00 タワーレコード仙台パルコ店 店内イベントスペース
11/28(土)13:00~、15:00~(2回公演)イオンモール名古屋ドーム前
11/29(日)12:00 タワーレコード福岡パルコ店 店内イベントスペース ※『内藤聡の「今この人に会いたい!」おもてなしトークショー』ゲスト出演
11/29(日)16:00 新星堂キャナルシティ店 店内イベントスペース
『サンドクロック Release One-Man Live「LIFE IS FANTASY」』
12/10(木)渋谷duo MUSIC EXCHANGE
12/11(金)大阪Janus dining
12/13(日)福岡Gate’s7 ≪SOLD OUT≫
『サンドクロックSpecial LUNCH Live』
12/13(日)福岡Gate’s7