さとう。飛躍の1年の集大成となるセカンドアルバム、そしてさらなる高みへと駆ける彼女の想いを聞こう
さとう。
飛躍の1年を超えて、歌も言葉も音も明らかに強くなった。シンガーソングライター、さとう。のセカンドアルバム『窓越し、その目に触れて』は、人との出会いとライブという名の旅を通して、大きく成長した2025年を写し取った作品だ。「ネバーランドより」から始まった6か月連続リリースの楽曲を中心に、原点であるアコースティックギター弾き語りに加え、多彩なバンドアレンジを収めた全13曲(+ボーナストラック)。アーティスト写真で見せる「クラウチングスタイル」から次の目標へ、2026年も全力で駆け抜けるさとう。の言葉を聞こう。
――2025年を振り返ると、とても濃密な1年だったのかな、と思います。
あっという間すぎて、それって2025年だったっけ?ということが多いんですけどーー1月に初めてアニメの主題歌(TVアニメ『花は咲く、修羅の如く』エンディング主題歌「朗朗」)をやらせていただいて、3月にその曲を収録したミニアルバム(『とあるアイを綴って、』を出し、初のバンド編成ツアーを行ったり、カバーアルバム(二宮和也『〇〇と二宮と2』に「ピアス」が収録)に入れていただいたり。いろんな方がさとう。の音楽を広めてくれた2025年の上半期があって、秋冬には対バンツアーでまだ行ったことないところにも行けて、「二宮さんから知ったんです」という方もいれば、「アニメで知ったんです」とか、「YouTubeで、TikTokで」とか、しかも1曲じゃなくていろんな曲で、いろんな入り口から出会ってくれた方がたくさんいることが再確認できたので、たくさんの出会いがあった1年だったなと思いますね。
――ひとことで言えば、出会いの年。
本当にそうでした。毎年、干支にちなんで抱負を考えているんですけど、2025年はへび年だったので、「まきまきイヤー」にしていこうと思っていたんですよ。いろんな人を巻き込んでいきたいと言ってたのが、やっぱり言ってみるもんだなって、いろんな方を巻き込んでいけた1年になったのかなと思っていますね。
さとう。
――ちなみに、今年のテーマは?
うま年なので、「かけるかけるイヤー」です。駆け抜けていく意味もありますし、新しいことにもチャレンジしてみたくて、自分と新しいものを掛け合わせてみるということと、競馬のように自分自身に賭ける年にしようということで、「かけるかけるイヤー」です。
――うまい。うまだけに。そんな1年のスタートダッシュにふさわしいフルアルバム『窓越し、その目に触れて』が今ここにあります。どんな作品ですか。
前回のミニアルバムの時は、ライブで愛された曲が多かったんですけど、今回は新曲がすごく多いので。今までさとう。のライブを見ている人も、「この曲知らない」というものがけっこうあると思います。
さとう。- 通過する故郷【Music Video】
――リード曲は、先行配信された「通過する故郷(ふるさと)」。
秋冬のツアーを経て、完成された1曲だなと思っていて。今までさとう。が新幹線に乗ったり、車に乗ったり、長距離移動するのは大体実家に帰る時だったんですけど。
――実家、伊豆ですよね。
そうです。でもそれをさらに越えて大阪に行ったり、名古屋に行ったり、前回のツアーでは鹿児島まで行ったり、ふるさとを通り過ぎることがすごく多くなったんですね。そこで感じたことを書こうと思って、「帰る場所はあるけど今は帰っちゃいけない」みたいな、そういう気持ちは誰しも抱いたことがあると思うんですけども、(アルバムが出る)3月はふるさとから上京してきたり、逆にふるさとに帰る人を見送ったりする時期で、帰りたくても帰れない人たちの肩をそっと支えるような曲になったらいいなという祈りを込めて、さとう。自身のふるさとへの思いも込めて、この曲をこのアルバムのリードに置かせていただきました。
――伊豆って微妙な距離ですよね。帰ろうと思えば帰れちゃう。
そうなんです。だからよく帰っていた場所ではあるんですけども、ツアー中に途中下車はできないので。そしてさとう。はいつも、車の中でも電車の中でも、移動中に窓から外を見ることが多いんです。通り過ぎる町を見ながら、「ここも誰かのふるさとなのかもしれないな」と思ったり、自分だけじゃなくて誰かのふるさとにも思いを馳せて生まれた曲なのかな?と思います。
――その感覚、わかります。そういう曲って、アルバムの中でほかにもありますか。車窓から見た景色とか、旅先でアイディアが浮かんだとか。
13曲目に入っている「風の便り」という曲は、去年の3月11日にワンコーラスだけ書いていたんです。3.11というものを、自分が直接被害を受けたわけではないにしても、残したい気持ちがあったので、その曲をフルで作る機会をいただいて、5月に作った曲です。その頃には秋冬のツアーが決まっていたり、自分にとっていろんな別れがあった時期でもあったので、会えない人に向けて作ろうと思っていました。去年はそういう曲がすごく多かったなと思います。「ネバーランドより」もそうですし、すぐに会えない人だったり、もう会えない人だったりを思った曲が多かったかなと思います。
――それも、人との出会いが増えた2025年だからこそ、かもしれない。
そうですね。ツアーとかで出会った人に、ちゃんと届けたいなという気持がより強くなって、それを経てのアルバムかなと思います。
さとう。- 逃避行ハイウェイ【Music Video】
――そう考えると、「地平線」も旅先の風景を思わせるし、「逃避行ハイウェイ」も車から見える景色だし、「Saturday park friend」も、景色が浮かぶ曲。アルバム全体的に、外の風景っぽい曲が多いかもしれないと、今思いました。
確かにそうですね。ファーストアルバム『産声みたいで、』(2024年)の時は、部屋の中にいるような曲が多かったので。『窓越し、その目に触れて』というタイトルも、部屋の窓だったりもしますけど、車窓だったりもして、窓の外側をずっと見ていた時期に作ったアルバムなので、よりそれが濃くなっているのかもしれないです。
――二番目のリード曲「ライア」はどうですか。バンド全体でぐんぐん進んで行く、疾走感みなぎる曲。
言葉をなるべく減らそうと、常に意識はしているんですけど、この曲は思いつくままをつらつら書いた曲なので、書いているうちに嘘も混じっているような気持ちになっていたんですね。思ってもいないことを書いているな、という感じだったのが、添削していくうちにちゃんと自分の体温になっていって、歌っていくうちに本当の自分の言葉になっていくんだな、ということに気づかされた曲でもあるので。このアルバムの中でもちょっと特別な、また違った色味の曲かなと思います。
――自分の曲作りについて、自問自答するよう歌詞ですよね。すごく面白いです。一つ聞こうと思っていたのが、さとう。さんは、自分自身のことを歌うことはほとんどなくて、誰かの物語を想定して曲を作ると、以前にお話しした時に聞いたことがあって。
はい。そうですね。
――でもそうやって、書いているうちに自分になってしまうとか、そういうこともあるだろうし。フィクションと実話の割合というか、それって最近変わってきていますか。
今までは、ノンフィクションで自分のことを書こうとすると、すごい暗い曲になっちゃうことが多くて、あまり出さないようにはしていたんですけど、それこそ今回のアルバムの「決別」という曲は、まさに自分の曲です。すごく暗い曲だと思っていたんですけど、聴いてくれた方が、悲しい印象ももちろんあるけど、「未来にもちゃんと向けるような曲ですね」というふうに受け取ってくれたので、「決別」を書けたことはすごく大きいかもしれないです。さとう。が自分自身を出していくことに対して、ちゃんとポジティブに受け取ってくれる人もいるんだなって、自信を持てました。なので、今回のアルバムは、より自分の本音が強い曲が多いかな?と思います。ありのままをさらけ出すのが、まだ恥ずかしい部分もあるので、フィクションも織り混ぜつつ、常に自分以外の誰かを思い出しつつ書いた曲ばっかりなんですけども、どの曲にも自分の本音が入っているかなと思いますね。
さとう。- Saturday park friend【Music Video】
――「決別」には、何か具体的なきっかけがあったんですか。
この曲はコロナ禍の時に書いていて、自分は専門学校を卒業した直後で、友達の中でも音楽をやめる人がすごく多かったんです。でもそれを止めることもできずに、私はここからちゃんと歩いていかなきゃいけないんだという気持ちがあって、自分と誰かへの別れの歌でもあるし、今までの自分との別れの歌でもあるし、そういう決意が強い楽曲かなと思います。“後悔はないのかい?”と、何度も繰り返すところがあるんですけど。
――あそこは本当にすごい。ぐっと来ます。何回繰り返してましたっけ。
全部で9回です。この曲は、6か月連続リリースの5曲目になる前まで、1年に2回ぐらいしか歌っていなくて、歌うたびに苦しくなっちゃって、なかなか歌えなかった楽曲なんですけど。連続リリースを経て、ツアーも経て、いろんな場所で歌った時に、マイナスな気持ちだけじゃないものを、みんなが持って帰ってくれていることを間近で見れたので。そこで自分自身を歌にすることに抵抗がなくなったというか、もっと自分自身の歌も歌おうと思わせてくれた曲ではありますね。
――聴く人に伝わったんですね。別れの曲だけど、希望の曲だと。
まさにジャケットも、朝日をイメージした写真になっています。お別れだとしたら、普通は陽が落ちていくところだと思うんですけど、陽がのぼっていくところを見せたいと思っていて、それをカメラマンの方が汲み取ってくれたのかなと思います。
さとう。- 決別【Music Video】
――みんながさとう。の気持ちを共有している。素晴らしいです。
去年は本当に、それを痛感した1年だったので。スタッフの方も、ファンの方も、いい方ばっかりです。
――これもリード曲になっている、「ダイアログ」はどうですか。
「ダイアログ」は、ライブで何回か歌わせていただいた曲ではあるんですけども、終わった後に「あの曲はどこで聴けますか?」と聞かれることが多かった曲です。アルバムを作るにあたって、この曲を入れようとなった時に、直前までアレンジをするか否かで悩んだんですけど、仮歌を録った時に「この曲は弾き語りで行こう、クリックもなしで行こう」と思って、一発録りに近い環境で録らせていただきました。まさにさとう。のザ・恋愛曲という感じの曲で、こういう切ない恋愛曲がさとう。はすごく多いので、フルアルバムの中にもさとう。の今まで培ってきたものをちゃんと入れれたのは、本人も嬉しいですし、受け取ってくれた方も喜んでくれたらいいなと思います。
さとう。- ネバーランドより【Music Video】
――アルバムの1曲目を飾る「ネバーランドより」も、昨年の連続リリースの時に、大きな反響をもらった曲です。
自分が想像している以上に、みなさんが「あの曲が好き」と言ってくれて、すごく嬉しいです。
――ピーターパンがウェンディに呼び掛ける目線で作られた、ファンタジーだけどリアリティあふれる曲。どんなイメージがありましたか。
ピーターパンからウェンディに向けたお手紙、というイメージの曲ではあるんですけども、受け取ってくれた方の中では、地元にいる友達目線だったり、もう会えない人からのメッセージだったり、そういうふうに受け取ってもらえて、フィクションで書いても、さとう。の声で歌ったらちゃんとそのまま届いてくれるんだな、ということをすごく痛感した1曲になりました。14曲もあるので、アルバムの曲順にはすごく悩んだんですけど、結果的にこの曲を1曲目に置いて良かったなと思います。
――ピーターパンはウェンディに魔法をかけたけど、もしかしたら、魔法をかけられたのはピーターのほうだったのかもしれない。いい歌詞です。
物語では描かれていないところを、勝手に書いたというか(笑)。フィクションを妄想するのが大好きなので、それが1曲目にあるのが、新しくもあり、今まで通りのさとう。な感じもしています。
――以前の「ピアス」は、ライブハウスの企画で、お題をもらって書いた曲でしたよね。今回、そういう曲はありますか。
今回のアルバムだと、「明日」がそうです。「ピアス」と同じライブハウスの企画で、題名縛りのライブがあって、3日間で「昨日、今日、明日」というテーマがあって、私は「明日」の日に出たので、「明日」という曲を書きました。「明日」というテーマは、本当にたくさんの方が歌われているので、さとう。にとって明日ってなんだろう?ってすごく考えたんですけど、この楽曲は海というか、船をイメージした楽曲なんですね。明日と聞くと、誰しもが漠然と不安になってしまうものだなと思って、何も見えないしわからないし、それでもきっとこの船は、常に昨日の方角を見つめながら今を漂って、後ろ向きに漕いでいるけど、このオールを捨てなければ明日にちゃんとたどり着ける、というイメージがありました。「地平線」もある意味題名縛りで、去年の夏のツアー『地平線、そこで会えたら』のために書き下ろした楽曲です。そういうふうに、タイトルからテーマを決めた曲もいくつかあります。
さとう。-つよがり【Music Video】
――あらためて、アルバムタイトル『窓越し、その目に触れて』について。どんな思いを込めたタイトルですか。
今回も前作に続いて「、」が入っていて、ハッシュタグにしづらいタイトルですけども(笑)。リード曲の「通過する故郷」になぞらえたものでもあるんですけども、ツアーを経ていろんな人の目を見れたことと、去年のツアーのタイトルが『この芽の色を知る人へ』で、「種まきツアー」と呼んでいたんですけど、いろんなところに種を蒔いて、いつか芽が出て、その場所でワンマンができるように、という願いを込めて回ったツアーだったので。本当にたくさんの方がライブに足を運んでくださって、「芽」になるための種を渡せたなと思ったので、今度はその方たちの「目」に、このアルバムで触れたいなというイメージです。
――繋がっているんですね。
今回は、「どこかの誰かのノンフィクション」というイメージがすごく強く出たアルバムだなと思っていて、どの曲を切り取っても、誰かの生活だったり、誰かの話であるようで、でもきっとさとう。の話でもあるし、受け取ってくれたあなたの話でもあるし、1枚の「窓」を通して繋いでくれるような楽曲が多いかなと思っています。
――アルバム自体が窓。さとう。とリスナーとが繋がる場所。
窓って、ドアとは違って、踏み込まないけどちゃんと繋がれる場所でもあるのが、奥ゆかしくて、もどかしくて、好きなんですよね。それこそ移動中に、いろんな町の家の窓を見ている時も、悔しくなったりするんですよ。「あの部屋で暮らす人の生活に今飛び込みに行けない」というのが、すごくもどかしくなったりもするんですけど、この1枚がその部屋にあるだけで、その夢がちょっと叶うかもしれないというか、窓の向こうにある誰かの生活に触れれるというのが、このアルバムで叶えられるような気もして。そういうさとう。の夢がちょっと乗っかったような1枚かな、というふうに思っています。
――言葉の中に常にいろんな意味が含まれているのが、さとう。の歌の魅力だと思います。
「窓」と「目」は、すごく似ている部分があると思うんです。それが次のツアーのタイトル『その目を心の窓と呼ぶ』にも繋がるんですけど、窓が濡れたり閉じたり開いたり拭ったり、すごく目と似ているなと思って、じゃあ目は何の窓なんだろう?と思った時に、きっと心の窓なんだなと思ったので、それをなぞらえたツアータイトルを付けました。去年の秋冬のツアーと、アルバムと、次のライブがちゃんと繋がっているなと思っていて、3部作のような感じですね。
さとう。
――『その目を心の窓と呼ぶ』ツアーは6月から。どんなツアーになりそうですか。
去年の夏に、バンドで東名阪を回らせていただいたんですけども、よりボリュームアップした形で、バンドで行く場所は初めての場所が多いので、私もすごく楽しみにしています。
――どうですか、バンドで演奏する楽しみは。だんだん覚えてきましたか。
去年の夏のツアーと同じお二人なんですけど、ベースの出口(博之)さんはアルバムでも弾いてくださっていて、楽曲に対しての向き合い方が、さとう。にはすごくありがたいなというか、バンドアレンジに迷った時にいっぱいいろんな案を出してくれるので、頼りがいがある方です。ドラムの(渡辺)拓郎さんはとにかくパッション!という感じのドラムで、私がドラムに関する知識がなさすぎて、「そこはジャンジャン!って感じで」とか言っても、すぐにやってくださって、「さとう。が言いたいことはたぶんこうだと思う」ということを臨機応変にやってくださる方で。お二人ともライブでは心強いですし、ライブ以外のところでもすごく頼もしくて安心する方たちなので、またこのお二人と一緒に回れるのはすごくありがたいし、嬉しいです。
――「かけるかけるイヤー」らしく、ツアーを全力で。
はい。さとう。×お二人で、駆け抜けてこようと
取材・文=宮本英夫
さとう。- 胸ぐら【Music Video】
さとう。- 2nd ALBUM 『窓越し、その目に触れて』【全曲ティザー】
ツアー情報
リリース情報
3月4日(水)リリース
BZCS-1227 ¥3,300(tax in)
01.ネバーランドより
02.地平線
03.逃避行ハイウェイ
04.Saturday park friend
05.ドーナツホール
06.つよがり
07.明日
08.胸ぐら
09.ライア
10.ダイアログ
11.決別
12.通過する故郷 [リード曲]
13.風の便り
Bonus Track [CD Only]
14.ぺちゃんこ