祝!クイーン+アダム・ランバート来日でクイーンのライブの歴史を振り返る(1)/クイーン+アダム・ランバート編
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クイーン+アダム・ランバートの来日公演が発表された。前回の来日は2016年9月の日本武道館3公演だから、実に4年ぶりの来日だ。
映画「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットで第3次クイーン・ブームが到来。第1次ブームは1975年の初来日時、第2次は人気ドラマの主題歌に起用されベスト盤CDが200万枚近くのセールスを記録した2004年。今回の第3次ブームはクイーンが活躍した時代には、まだ生まれてなかった新しい世代までも巻き込んでいる。クイーンの魅力は、リリースから30年以上の時を経ても色あせない、楽曲の素晴らしさには違いないが、もうひとつの魅力はライブ・パフォーマンスだ。映画のラストで見せたライブ・エイドのパフォーマンスは多くの人を惹きつけた。あのシーンは1985年が舞台なので、彼らのライブを観ることなど叶わないと思っている若いファンもいるだろうが、そんな心配は杞憂だ。クイーンは1973年のデビュー以来、いちども解散はしていない。2月24日に行われた第91回アカデミー賞授賞式は、クイーンのパフォーマンスで開幕した。フレディ・マーキュリー亡き後、一時ライブ活動は休止するが、2005年には元バッド・カンパニーのポール・ロジャースをボーカルに迎え19年ぶりにツアー活動を再開。2012年からはアダム・ランバートがボーカリストに据えて、今なお、ワールド・ツアーで第一線を駈け廻っている現役バンドなのだ。
現在のクイーンのボーカリストを担うアダム・ランバートは37歳。メンバーのブライアン・メイ(71歳)、ロジャー・テイラー(69歳)から見れば息子世代だ。ブライアン、ロジャーとの出会いは2009年まで遡る。アメリカで人気のTVオーディション番組「アメリカン・アイドル シーズン8」での決勝大会に出場していたアダム・ランバートが歌う「伝説のチャンピオン」で二人がサポートで演奏した。この日の共演でアダムのボーカルと将来性に二人はすっかり惚れ込み、まだ一般人であった彼にクイーンへのボーカリスト加入を打診する。折しもポール・ロジャースとのコラボレーションが前年(2008)に終了しており新しいボーカリストを探していた時期でもあった。とはいえ同番組で準優勝を果たした彼には全米でデビューの機会も控えており、この時点ではクイーン加入の実現には至らなかった。
両者の初共演は2011年11月。アイルランドのベルファストで行われたMTVヨーロッパ・アワードの受賞式でアダム・ランバートがクイーンの演奏で「ショウ・マスト・ゴー・オン」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「伝説のチャンピオン」の3曲を歌う。これはあくまでも試験的に行われたパフォーマンスであったが、両者の初コラボレーションは受賞式会場にいた聴衆から絶賛を浴びる。この共演の成功により、クイーンは改めてオファーし、アダムもこれを受け、新しいプロジェクト、クイーン+アダム・ランバート(以下Q+AL)が誕生した。
翌2012年6月にはウクライナ、ロシア、ポーランド、イギリスの4都市で6回のショウが行われる。もっとも、この頃はアダム・ランバートの米国内の活動が優先。Q+ALの本格始動は2014年まで待たなければいけなかった。同年6月から全24公演の北米ツアーを敢行。そして8月には「SUMMER SONIC 2014」のヘッドライナーとして東京、大阪での来日公演も実現。続く2016年9月には、クイーンとしては1985年以来となる日本武道館で単独公演を行った。
フレディがいなければクイーンじゃないというファンも中にはいる。だが、それは望んでも叶わない願いだ。何よりもブライアンとロジャーの二人が惚れ込んだ男だ。低域から高音域まで伸びやかに、かつ艷やかに歌うアダム・ランバートのボーカルは、最盛期のフレディ・マーキュリーを彷彿させる。また、自身がゲイであることもカミング・アウトしており、ステージで時折みせる中性的で妖艶なパフォーマンスは、フレディ在籍時のクイーンにはなかった新しい魅力だ。2014年のサマソニ来日時での彼は、大先輩ふたりの前で少々畏まっている印象があったが、2016年の日本武道館ではバンドのフロント・マンとして堂々たるパフォーマンスを見せつけた。
2020年1月の4年ぶりの来日公演の前には、7月から全35公演のUSAツアーが行われ、(まだ日程は発表されてないが)おそらく秋にはクイーンの地元イギリスを始めとした欧州ツアーも組まれるであろう。世界各地を転戦して気力と熱量が満たされたパフォーマンスが、日本で見られる事は間違いない。北米ツアーのタイトルには「ラプソディ・ツアー」と名付けられているだけに、映画で使われた数々のクイーン楽曲が披露される事であろう。もしかしたらクイーンの前身バンド、SMILEの「ドゥーイング・オール・ライト」なんかも演奏されるかもしれない。映画の応援上映で体感した、あの感動を本物のパフォーマンスで再体験出来るのだ。従来のファンはもちろん、映画で知った新しいファンの方にも、是非Q+ALを観て欲しい。
本稿ではクイーン+アダム・ランバートの来日公演に際し、これまでのクイーンのライブ・パフォーマンスの歴史と素晴らしさを連載で綴っていきます。
石角隆行(クイーン研究家)