ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2019年5月編】~トニー賞ノミネーション発表
日本列島が令和へのカウントダウンに湧いた2019年4月30日、海の向こうのブロードウェイでは年に一度のビッグイベント、トニー賞のノミネート作が発表された。そこで今回の「ワッツ・オン・ブロードウェイ」は賞レース特集として、トニー賞およびその“前哨戦”とも言われるニューヨーク各演劇賞の動向をお届け。日本でも生中継される6月9日(日本時間では10日朝)のトニー賞授賞式に向け、気分を高めていただきたい。
Q.今年のトニー賞は何が受賞すると思う?
(ノミネート作品一覧は本文下方に記載)
ミュージカル部門の作品賞にノミネートされたのは、新作が『Ain’t Too Proud』『ビートルジュース』『Hadestown』『The Prom』『トッツィー』、リバイバルが『キス・ミー・ケイト』『オクラホマ!』(今シーズンのリバイバル作品はそもそもこの2作のみ)の計7作。脚本賞には新作5作がそのまま入り、楽曲賞はジュークボックスもののためオリジナル曲のない『Ain’t~』が外れて『Be More Chill』などが入る形となった。演出賞は作品賞の7作から『ビートルジュース』と『キス・ミー・ケイト』を除いた5作で、振付賞は『Ain’t~』『Hadestown』『トッツィー』『キス・ミー・ケイト』にプレイ部門からの刺客(『Choir Boy』)を加えた5作。と、ここまでが何となく、いわゆる“主要”カテゴリー。
予想するのはおこがましいのであくまで希望になるのだが、今年は観逃がした『オクラホマ!』とよく分からなかった『ビートルジュース』を除いてどれも良かったので、ここはひとつ、どれかが独占するのではなくみんなで分け合っていただきたい。脚本賞が『The Prom』か『トッツィー』、楽曲賞が『Hadestown』、演出賞が『Hadestown』か『トッツィー』(ここは『オクラホマ!』が強そうではあるが…)、振付賞が『Ain’t~』もしくは『キス・ミー・ケイト』、そして作品賞が『The Prom』というのが筆者の理想なのだが、どうだろうか。
俳優部門に目を移すと、勝手に大混戦なのが主演男優賞。『トッツィー』のサンティノ・フォンタナにも、『The Prom』のブルックス・アシュマンスカスにも、『Ain’t~』のデリック・バスキンにも獲ってほしくて困ってしまう。個人的には、ここに超ステキだった『プリティ・ウーマン』のアンディ・カールと、好きではないがインパクト十分だった『Be More Chill』のウィル・ローランドを加えた戦いを予想していたのだが、残念ながらノミネートすらされなかった(代わりに入ったのは『ビートルジュース』と『オクラホマ!』の二人)。主演女優賞と助演男優賞は逆に、個人的には『キス・ミー・ケイト』のケリー・オハラと『Hadestown』のアンドレ・ド・シールズ一択なのだが、どうだろうか。どうだろうか!
<ミュージカル部門>
『エイント・トゥー・プラウド』
『ビートルジュース』
『ハデスタウン』
『ザ・プロム』
『トッツィー』
『キス・ミー・ケイト』
『オクラホマ!』
ブルックス・アシュマンスカス(『ザ・プロム』)
デリック・バスキン(『エイント・トゥー・プラウド』)
アレックス・ブライトマン(『ビートルジュース』)
デイモン・ドーノ(『オクラホマ!』)
サンティーノ・フォンタナ(『トッツィー』)
ステファ二ー・J・ブロック(『ザ・シェール・ショー』)
ケイトリン・キナナン(『ザ・プロム』)
ベル・リーヴェル(『ザ・プロム』)
エヴァ・ノブルザダ(『ハデスタウン』)
ケリー・オハラ(『キス・ミー・ケイト』)
アンドレ・デ・シールズ(『ハデスタウン』)
アンディ・グロテルーション(『トッツィー』)
パトリック・ペイジ(『ハデスタウン』)
ジェレミー・ポープ(『エイント・トゥー・プラウド』)
イフライム・サイクス(『エイント・トゥー・プラウド』)
リリー・クーパー(『トッツィー』)
アンバー・グレイ(『ハデスタウン』)
サラ・スタイルズ(『トッツィー』)
アリ・ストローカー(『オクラホマ!』)
メアリー・テスタ(『オクラホマ!』)
レイチェル・チャフキン(『ハデスタウン』)
スコット・エリス(『トッツィー』)
ダニエル・フィッシュ(『オクラホマ!』)
デス・マカナフ(『エイント・トゥー・プラウド』)
ケイシー・ニコロウ(『ザ・プロム』)
ドミニク・モリッソー(『エイント・トゥー・プラウド』)
スコット・ブラウン、アンソニー・キング(『ビートルジュース』)
アナイス・ミッチェル(『ハデスタウン』)
ボブ・マーティン、チャド・ベグリン(『ザ・プロム』)
ロバート・ホーン(『トッツィー』)
ロバート・ブリル、ピーター・ニグリーニ(『エイント・トゥー・プラウド』)
ピーター・イングランド(『キング・コング』)
レイチェル・ホーク(『ハデスタウン』)
ローラ・ジェリネック(『オクラホマ!』)
デヴィッド・コリンズ(『ビートルジュース』)
マイケル・クラス(『ハデスタウン』)
ウィリアム・アイヴィ・ロング(『ビートルジュース』)
ウィリアム・アイヴィ・ロング(『トッツィー』)
ボブ・マッキー(『ザ・シェール・ショー』)
ポール・タズウェル(『エイント・トゥー・プラウド』)
ケヴィン・アダムズ(『ザ・シェール・ショー』)
ハウエル・ビンクリー(『エイント・トゥー・プラウド』)
ブラッドリー・キング(『ハデスタウン』)
ピーター・マムフォード(『キング・コング』)
ケネス・ポズナー、ピーター・ニグリーニ(『ビートルジュース』)
ピーター・ハイレンスキ(『ビートルジュース』)
ピーター・ハイレンスキ(『キング・コング』)
スティーヴ・キャニオン・ケネディ(『エイント・トゥー・プラウド』)
ドリュー・レヴィ(『オクラホマ!』)
ネヴィン・スタインバーグ、ジェシカ・パズ(『ハデスタウン』)
『クワイヤ・ボーイ』
『ザ・フェリーマン』
『ゲイリー:ア・シークエル・トゥ・タイタス・アンドロニカス』
『インク』
『ホワット・ザ・コンスティテューション・ミーンズ・トゥ・ミー』
『みんな我が子』
『真夜中のパーティー』
『BURN THIS 焼却処分』
『トーチソング』
『ザ・ウェイヴァリー・ギャラリー』
ジェレミー・ポープ(『クワイヤ・ボーイ』)
パディ・コンシダイン(『ザ・フェリーマン』)
ジェフ・ダニエルズ(『アラバマ物語』)
アダム・ドライヴァー(『BURN THIS 焼却処分』)
ブライアン・クランストン(『ネットワーク』)
エレイン・メイ(『ザ・ウェイヴァリー・ギャラリー』)
ローリー・メトカーフ(『ヒラリー・アンド・クリントン』)
アネット・べニング(『みんな我が子』)
ハイジ・シュレック(『ホワット・ザ・コンスティテューション・ミーンズ・トゥ・ミー』)
ジャネット・マクティア(『ベルナール/ハムレット』)
ブランドン・ウラノヴィッツ(『BURN THIS 焼却処分』)
バーティ・カーヴェル(『インク』)
ベンジャミン・ウォーカー(『みんな我が子』)
ロビン・デ・ヘスース(『真夜中のパーティー』)
ギデオン・グリック(『アラバマ物語』)
フィオヌラ・フラナガン(『ザ・フェリーマン』)
シーリア・キーナン・ボルジャー(『アラバマ物語』)
ルース・ウィルソン(『リア王』)
クリスティン・ニールセン(『ゲイリー:ア・シークエル・トゥ・タイタス・アンドロニカス』)
ジュリー・ホワイト(『ゲイリー:ア・シークエル・トゥ・タイタス・アンドロニカス』)
ルパート・グールド(『インク』)
サム・メンデス(『ザ・フェリーマン』)
ジョージ・C・ウルフ(『ゲイリー:ア・シークエル・トゥ・タイタス・アンドロニカス』)
イヴォ・ヴァン・ホーヴェ(『ネットワーク』)
バートレット・シャー(『アラバマ物語』)
ミリアム・ビューサー(『アラバマ物語』)
バニー・クリスティー(『インク』)
ロブ・ハウエル(『ザ・フェリーマン』)
サント・ロカスト(『ゲイリー:ア・シークエル・トゥ・タイタス・アンドロニカス』)
ヤン・ファーシュウェイフェルド(『ネットワーク』)
ロブ・ハウエル(『ザ・フェリーマン』)
トニ=レスリー・ジェームズ(『ベルナール/ハムレット』)
クリント・ラモス(『トーチソング』)
アン・ロス(『ゲイリー:ア・シークエル・トゥ・タイタス・アンドロニカス』)
アン・ロス(『アラバマ物語』)
ニール・オースティン(『インク』)
ジュールス・フィッシャー + ペギー・アイゼンハワー(『ゲイリー:ア・シークエル・トゥ・タイタス・アンドロニカス』)
ピーター・マムフォード(『ザ・フェリーマン』)
ジェニファー・ティプトン(『アラバマ物語』)
ヤン・ファーシュウェイフェルド、タル・ヤーデン(『ネットワーク)
アダム・コーク(『インク』)
スコット・レーラー(『アラバマ物語』)
フィッツ・パットン(『クワイヤ・ボーイ』)
ニック・パウエル(『ザ・フェリーマン』)
エリック・スレイヒム(『ネットワーク』)
作詞作曲:ジョー・アイコニス(『ビー・モア・チル』)
作詞作曲:エディ・パーフェクト(『ビートルジュース』)
作詞作曲:アナイス・ミッチェル(『ハデスタウン』
作詞:チャド・べグリン、作曲:マシュー・スクラー(『ザ・プロム』)
作曲:アダム・ゲッテル(『アラバマ物語』)
作詞作曲:デヴィッド・ヤズベック(『トッツィー』)
カミール・A・ブラウン(『クワイヤ・ボーイ』)
ウォーレン・カーライル(『キス・ミー・ケイト』)
デニス・ジョーンズ(『トッツィー』)
デヴィッド・ニューマン(『ハデスタウン』)
セルジオ・トルヒーヨ(『エイント・トゥー・プラウド』)
マイケル・チャオニー、トッド・シッカフース(『ハデスタウン』)
サイモン・ヘイル(『トッツィー』)
ラリー・ホックマン(『キス・ミー・ケイト』)
ダニエル・クルーガー(『オクラホマ!』)
ハロルド・ウィーラー(『エイント・トゥー・プラウド』)
ローズマリー・ハリス
テレンス・マクナリー
ハロルド・ホイーラー
マリン・メージー
ソニー・ティルダース&クリーチャー・テクノロジー・カンパニー
ジェイソン・マイケル・ウェッブ
シアターワークス・シリコンバレー
ジュディス・ライト
ブロードウェイ・インスピレーショナル・ボイス- マイケル・マッケルロイ(創設者)
ピーター・エンティン
ニューヨーク市消防局 第54消火班/第4はしご車班/第9大隊 ※ブロードウェイが所轄の消防署
ジョゼフ・ブレイクリー・フォーブス
【今シーズンの新作】
■5月に始まる作品
2か月連続の「なし!」。春に次ぐ開幕ラッシュ期、秋の到来を待とう。以下、作品名の横の数字はトニー賞ノミネート数。劇場写真付きの3作が個人的オススメ。
■既に上演中の作品
『Ain’t Too Proud』12nominations
『ジャージー・ボーイズ』チームが描くテンプテーションズの軌跡。振付とキャストが最高。
https://www.ainttooproudmusical.com/
『Be More Chill』1nomination
音楽、振付、演出から若さがあふれる、オフ発信の話題作。日本人的には微妙な描写も…。
https://bemorechillmusical.com/
『ビートルジュース』8nominations
ティム・バートン監督映画の舞台化。原作を知らないとノリについていけない可能性高し。https://beetlejuicebroadway.com/
『The Cher Show』3nominations
米歌手シェールの半生を彼女自身の楽曲で綴る系。劇評も入場率もイマイチの様子。
https://thechershowbroadway.com/
『Hadestown』14nominations
ギリシャ神話が題材だが表現は現代的。いかにも『グレート・コメット』の演出家らしい舞台。
https://www.hadestown.com/
『キングコング』3nominations
あの、キングコング。ミュージカルというよりショーだと思えば意外と楽しめる。
https://kingkongbroadway.com/
『キス・ミー・ケイト』4nominations
今夏『王様と私』で来日するケリー・オハラ主演のコメディ。6月30日までなので急げ!
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2018-2019-season/kiss-me-kate
『オクラホマ!』8nominations
1943年初演の名作を21世紀の解釈でリバイバル。来年1月19日までの延長が決定。
https://oklahomabroadway.com/
『プリティ・ウーマン』0nomination
名作映画をジェリー・ミッチェルが舞台化。ノミネート0につきクローズは早そう。
https://prettywomanthemusical.com/
『The Prom』7nominations
プロム=高校生ものかと思いきやバックステージものでもあり超面白い。応援!
https://theprommusical.com/
『トッツィー』11nominations
主演俳優を筆頭に大変チャーミングな舞台。日本企業出資中につき、日本版妄想も進む。
https://tootsiemusical.com/
【ロングラン作品】
以下、作品名の横の数字はトニー賞作品賞(新作/リバイバル問わず)受賞年。
■日本で既に上演された/されている作品
『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯もスゴイ。
https://www.aladdinthemusical.com/
『ビューティフル』
キャロル・キングの半生を彼女自身の楽曲で綴る系。ロングラン5年目、そろそろ下火か。
https://beautifulonbroadway.com/
『シカゴ』1997~
オペラ座の怪人に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/
『ライオンキング』1998~
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/
『マイ・フェア・レディ』
1956年初演の名作を、渡辺謙の『王様と私』を手がけた演出家がリバイバル。上質。
http://www.myfairladybway.com/
『オペラ座の怪人』1988~
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/
『ウィキッド』
開幕から15年が経ち、ようやくに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。
https://wickedthemusical.com/
■日本未上演の作品
『ブック・オブ・モルモン』2011~
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/
『カム・フロム・アウェイ』
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/
『ディア・エヴァン・ハンセン』2017~
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。絶対日本でやると思う。
https://dearevanhansen.com/
『アナと雪の女王』
舞台ならではの表現が見当たらない残念作だが、満足感は保証する。生レリゴー最高。
https://frozenthemusical.com/
『ハミルトン』2016~
開幕4年目にして未だ超入手困難なモンスター級ヒット作。文句なしに革新的。観るべし。
https://hamiltonmusical.com/
『ミーン・ガールズ』
同名映画の舞台化。なぜか人気。アメリカ的なノリについていける自信があればどうぞ。
https://meangirlsonbroadway.com/
『ウェイトレス』
同名映画の舞台化。完全に女子向け。観るとスイーツが食べたくなります。
https://waitressthemusical.com
【5月のミュージカルイベント】
ニューヨークにはトニー賞以外にも様々な演劇賞があり、大体がトニー賞と同じく毎年4~5月にノミネート作を発表し、5~6月に受賞作を決定する。既にノミネート作が発表されている今年の各賞から、ここでは「作品賞(新作部門/リバイバル部門)」に名を連ねている「(オン・)ブロードウェイ」の「ミュージカル」のみを、受賞作決定の早い順にご紹介。ちなみに、NYドラマ・クリティックス・サークル賞とシアターワールド賞にはノミネート制度がなく、それぞれ5月6日と5月13日にいきなり受賞作が発表される予定だ。
●5月13日:アウター・クリティックス・サークル賞
新作→『Be More Chill』『Hadestown』『Head Over Heels』『The Prom』『トッツィー』
リバイバル→『キス・ミー・ケイト』『オクラホマ!』
●5月17日:ドラマリーグ賞
新作→『Ain’t Too Proud』『ビートルジュース』『Be More Chill』『The Cher Show』『Hadestown』『Head Over Heels』『キングコング』『The Prom』『トッツィー』
リバイバル→『キス・ミー・ケイト』『オクラホマ!』
●5月19日:チタ・リヴェラ賞
(ダンスに特化した賞のため、以下は振付家がノミネートされている作品名)
『キス・ミー・ケイト』『トッツィー』『Hadestown』『The Prom』『Ain’t Too Proud』
●6月2日:ドラマデスク賞
新作→『Be More Chill』『The Prom』『トッツィー』
リバイバル→『キス・ミー・ケイト』『オクラホマ!』
放送情報
2018年の「第72回トニー賞授賞式」より
■放送チャンネル: WOWOWプライム
■放送日時:
2019年6月10日(月)午前8:00(同時通訳版)
2019年6月15日(土)放送(字幕版)
■収録日:2019年6月9日(現地時間)
■収録場所:アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク ラジオシティ・ミュージックホール
■ナビゲーター: 井上芳雄
■番組公式サイト: http://www.wowow.co.jp/stage/tony/
第72回トニー賞授賞式 字幕版 2019年4月9日(火)深夜2:15(字幕版)
トニー賞への招待(全2回)2019年4月24日(水)夜10:45ほか