古川雄輝「村上さんの作品を目で楽しんで」 村上春樹原作の舞台『神の子どもたちはみな踊る after the quake』
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古川雄輝
7歳から11年間海外に在住し英語が堪能、2013年に主演したドラマ「イタズラなKiss~Love in Tokyo」が日本のみならずアジア圏でも大ヒット、昨年は日韓合作映画「風の色」に主演するなど、国際派俳優として活躍し注目を集めている古川雄輝が、約3年ぶりに舞台に出演する。
2019年7~8月に上演される舞台『神の子どもたちはみな踊る after the quake』は、村上春樹・原作×蜷川幸雄・演出で話題となった舞台『海辺のカフカ』同様、演出家・俳優・脚色家としてシカゴを拠点に活躍するフランク・ギャラティによる脚本で、演出を手掛けるのは、舞台の脚本・演出のほか、近年はテレビにも活躍の場を広げ、その手腕には定評のある倉持裕だ。
原作小説は2000年に刊行された短編集で、1995年に起きた阪神・淡路大震災直後、直接の被災者ではないが地震のニュースを見て心に変化が起きた人たちを描いている。今作では、収録された6作品のうち「かえるくん、東京を救う」と「蜂蜜パイ」の2作品を取り上げて舞台化している。
古川が演じる淳平は「蜂蜜パイ」の主人公で、シングルマザーとなった大学時代の同級生・小夜子(松井玲奈)と、その娘で地震以降「地震男」が登場する悪夢にうなされるようになった沙羅(横溝菜帆/竹内咲帆 ※Wキャスト)を見守り寄り添う小説家の青年だ。大学時代に思いを寄せていた小夜子との距離感や、やはり大学時代の同級生で小夜子の元夫・高槻(川口覚)への思いなど、各々に対する淳平の繊細な心の動きにも注目したい。また、今作では「かえるくん、東京を救う」は淳平が書いている小説という設定で、劇中劇のような形で2つの作品が同時に進行する。ベテラン俳優の木場勝己がかえるくんを演じるなど、話題性も十分だ。一体どのような作品になるのか、この舞台への意気込みを古川に聞いた。
古川雄輝
大変になるという覚悟を持って「楽しくやる」
ーーまずは、村上春樹さん原作の舞台に出演することになった今の感想をお聞かせください。
3年ぶりにまた主演舞台ができる、という喜びと、誰もが知っている世界的に有名な作家である村上さん原作の舞台に出られるという嬉しさ、そして舞台をやるときはいつも大変になるという覚悟を持ちつつ、挑戦して新しいものを学びたい、という思いがあります。ファンの人たちからも「舞台をやって欲しい」と言って頂いていたので、その声に応えられて嬉しいです。
ーー大変になるというのは、具体的にどういった部分でしょうか。
やはり稽古でどこまでいけるか挑戦していく、という部分でしょうか。身体の足から頭まで全部見られているわけですから誤魔化しがきかないですし、しっかり演出家が納得できるところまで持っていくという大変さがあります。今回のテーマは「楽しくやる」ことだと今は思っています。ですが楽しくやるためには成功したい、成功するためには苦しく感じることも多い稽古をしっかりやらないといけない、と結局は大変になりそうです(笑)
村上さんの作品はとらえ方が人それぞれ
ーー古川さんが演じる淳平という役について、どんな人物だと思いますか。
難しい質問ですね。僕がこう思う、と言っても、原作を読んでいる人の中には、全然違うことを思っている人も大勢いると思います。村上さんがどのように思ってどういう意味で書いたのか、ということを求めたい気持ちはありますが、村上さんの作品はとらえ方が人それぞれだと思うんです。今回初めて村上さんの小説を読みましたが、「これはどういうことだろう?」と考察したくなるような面白さがあって、深読みすればするほどハマるんだろうな、と思いました。脚本では二つのショートストーリーがミックスされているので、村上さんの世界観が舞台になったときにどうなるのか、そこは演出家の倉持さんと一緒にこれから創っていく部分だと思っていますが、舞台は舞台ならではの魅力を楽しんで頂けるんじゃないかな、と思っています。
ーー淳平と古川さんの間に、何か共通点はありますか。
淳平は文系で、僕は理系なのでそこは逆ですけど、好きな人に思いを伝えられない感じとか、積極性がないところとかは自分に近いかな、と思います。臆病なタイプで、周りに流されやすいというか、例えば「ごはん何食べたい?」って聞かれたら「なんでもいいよ」って答えて、相手に合わせちゃいます。
独特な台本で準備が難しい
ーー倉持さんの演出作品には今回初めての出演ですが、これまで作品をご覧になった印象はいかがですか。
ステージの使い方が非常に面白く、コミカルな印象があります。村上さんの原作の力が強い分、倉持さんがどう演出するかでいろいろ変わってくると思うので、二つの物語が混ざっている今作で、ステージをどう使うのか僕も楽しみにしています。
ーー今回は共演者も初めての方ばかりですね。やはり映像の現場と舞台の現場だと、心構えも違いますか。
映像と舞台は別物ですね、準備の仕方も、やり方も。今回は、準備がすごく難しいです。普通の会話劇じゃなくて、誰が誰に話しているかが難しい脚本なんです。どういう言い回しにしたらいいのかわからない、非常に独特な台本です。稽古が始まって本読みをやってみないとわからないことがとても多いです。
小説と違う感覚で「見る」ことができる
ーー今作のテーマとなっている阪神・淡路大震災から24年、その後も東日本大震災など、いくつか大きな震災がありました。この作品を上演することで、そうした震災の記憶が刺激され、呼び覚まされる方も多いと思いますが、そのあたりはどう意識されていますか。
それも難しい問題です。震災って、どう経験したかによって、とらえ方が人それぞれだと思うんです。村上さんの原作と一緒で、とらえ方は人それぞれなんです。この作品を見て感じ取ることは人によって違うんだろうな、と思っていますが、「震災の記憶を風化させちゃいけない」という共通認識のもと、それぞれの思いを持って行動したり、心の中で思っていたりすることではないかな、と思っています。
ーー最後にご覧になる方へのメッセージをお願いします。
村上さんのファンの方もたくさん来てくださると思いますが、脚本が小説と全然違うので、それを生の舞台で役者が演じると、小説を読むのとは違う感覚で村上さんの作品を「見る」ことができて楽しめると思います。僕のファンの皆さんは僕が舞台に出演することを待ち望んでくれていて、僕も「楽しむ」ということをテーマにやりたいと思っているので、観に来て、楽しんで頂けたら嬉しいです。劇場でお待ちしています。
古川雄輝
スタイリスト/五十嵐堂寿
ヘアメイク/藤井康弘
衣装/ベスト\21,000/ジョンブル(ジョンブルカスタマーセンター:050-3000-1038)、パンツ\22,000/ワングラヴィティ、靴\92,000/チャーチ(以上エストネーション:0120-503-971)、他私物
※金額はすべて税抜価格です
取材・文=久田絢子 撮影=ジョニー寺坂
公演情報
脚本:フランク・ギャラティ(Frank Galati)
演出:倉持裕
出演:古川雄輝、松井玲奈、川口覚、横溝菜帆・竹内咲帆(子役・Wキャスト)、木場勝己
日程:2019年7月31日(水)~8月16日(金)
会場:よみうり大手町ホール(東京)※ほか愛知公演、 神戸公演あり。
主催:ホリプロ/読売新聞社
企画制作:ホリプロ
お問い合わせ:ホリプロ
公式サイト:https://horipro-stage.jp/stage/kaminokodomo2019/