柚希礼音×実咲凜音が新境地を開拓 A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』レコーディングレポート&インタビュー

インタビュー
舞台
2019.6.15
(左から)実咲凜音、柚希礼音

(左から)実咲凜音、柚希礼音

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2019年秋に開幕を控える、A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』(以下『FACTORY GIRLS』)。本作は19世紀半ばのアメリカ・ローウェルの工場を舞台に、自由を夢見て奮闘する女性たちの姿を描く期待の新作ロックミュージカルだ。製作には日米のクリエイティブスタッフが集い、日本版脚本・演出は板垣恭一が務める。キャストには柚希礼音ソニン実咲凜音清水くるみ石田ニコルをはじめとする個性豊かな女優陣が揃った。

そんな本作のスポット用のレコーディングが、2019年5月に都内某所にて行われた。当日スタジオに現れたのは主演の柚希礼音と、共演の実咲凜音。それぞれのレコーディングの模様と、仲睦まじい対談インタビューをお届けする。

スタジオに一歩足を踏み入れると、そこにはマイクに向かって真っ直ぐと立つ柚希の姿が見えた。高音から低音まで、実に力強い歌声が聴こえてくる。短いフレーズを何度も繰り返し、タイミングや音の長さを調節しているようだ。柚希はスタッフからの非常に細かい指示に応え、的確に歌い上げていく。

柚希礼音

柚希礼音

続く実咲のレコーディングの様子は、柚希とは対象的。曲のリズムに乗って体を揺らし、手振りを加えながらパワフルに歌う姿が印象に残っている。高音で美しい声を活かした曲を歌うイメージのある彼女だが、今回は普段あまり耳にしない地声を張りながら歌っており、そのギャップに驚かされた。

実咲凜音

実咲凜音

二人がレコーディングしていたのは、柚希演じる主人公のサラが初めて工場に出勤し、先輩工員たちから指導を受ける場面のナンバー「機械の様に / Think Like A Machine」。過酷な労働環境の中で、工員たちがそれぞれの想いを胸に秘めながら懸命に働く姿を描く。決して明るい曲調ではないのだが、ドラムのビートが効いたロックサウンドを聴いていると、思わずリズムに乗って体が動き出しそうになる程。舞台本番では柚希、実咲をはじめとするファクトリーガールズ達が一団となって歌うパワフルなシーンになりそうだ。

本作は“ロック”ミュージカルであるが故に、普段のミュージカルとは一味違った歌唱法が必要になってくるという。続く対談インタビューでは、歌唱指導を務める安倉さやかとの歌稽古のエピソードも含め、『FACTORY GIRLS』の魅力をたっぷり語ってもらった。

撮影時に「背中合わせとかしてみる?」とリードする柚希さんと、それに合わせて寄り添う実咲さん

撮影時に「背中合わせとかしてみる?」とリードする柚希さんと、それに合わせて寄り添う実咲さん

光が指した! 衝撃的な歌唱指導

ーーレコーディングお疲れ様でした! 早速ですが、先程歌っていらっしゃった楽曲「機械の様に / Think Like A Machine」の魅力を教えてください。

柚希:すごくロックでかっこいい曲です。ミュージカルは恋愛ものや男女で歌うナンバーが多く、女性みんなでそういった曲を歌うことってなかなかないんです。今の時代でも女性が働き方について意見をするのは勇気がいることだと思いますが、もっと前の時代だとなおさらそうだったのかな、と。『FACTORY GIRLS』の女性は、そんな状況でも立ち上がる意思を持つ人たちなんだと思います。歌い方もとっても芯のある感じ。今回の歌唱指導も、私たちにとっては衝撃的でした。

実咲:本当に衝撃的!

ーーどういったところが衝撃的だったのでしょうか?

実咲:今まで出会ったことがないような感覚でした。私はあんなにリズム感がある曲に触れたことがなかったんです。リズムを感じながら歌うということを改めて一から教えてくださって、それがもう衝撃で。ドヒャーって(笑)。

柚希:うん、私もめっちゃドヒャー(笑)。

実咲:頑張ったら新しい自分に出会えるんじゃないかという希望というか、光が射したような……。

柚希:本当、光が射したよね、あの歌唱指導! 宝塚を退団して女性の役を演じるようになってから、すごく深いところの声は使ってはいけないのかなと思っていました。でも先生から「人には声帯に合った歌い方がある。あなたは背が高くて声帯も絶対長いから、深い声で高音が出るようにするのが1番の魅力なのよ」と言ってもらって。自分の声帯を自分自身で認めることができたので、ここからまた練習していこうと思えました。

柚希礼音

柚希礼音

ーー実咲さんも、歌唱指導で特に印象に残っているお話はありますか?

実咲:今回の曲は地声でバーンと高音を張った方がかっこいいんだろうなという曲調だったので、それは自分の技術にないものだと思っていました。宝塚では高音を出す毎日でしたし、そっちの方が出しやすいんです。けれど先生のお話を聞きますと、「高音が出る人は地声も出るんだよ。出し方が違うだけ」と。高音と地声は全然違うものだと思っていたので、「ああいう風に歌えたらいいのになあ」が「できるかもしれない! できるんだ!」に変わりましたね。歌うことが楽しみになりました!

柚希:『FACTORY GIRLS』にはすごく素敵で素晴らしい曲がたくさんあります。これを機に、自分も新しい歌い方や気持ちのいい歌い方ができるようになったら嬉しいですね。

元宝塚トップ男役&トップ娘役の過去を持つ互いの印象

ーー今回が舞台作品としては初共演となるお二人ですが、本作のオファーがきたときはどんな気持ちでしたか?

実咲:私は柚希さんとご一緒させていただけるという喜びが大きかったです! 宝塚にいたときは組が違いましたし、一度だけ各組のトップスターをチェンジして組む機会があったのですが、共演はそこだけだったので。

実咲凜音

実咲凜音

柚希:しかも、私は宝塚を辞めてからトップさんとミュージカル作品で共演するのは初めて。元トップ男役の剣幸さんも今回が初共演ですし、まさか元トップ娘役のみりおんと!

ーー今“みりおん”とおっしゃいましたが、それぞれの名前の呼び方は?

柚希:みりおん!

実咲:ちえさん!

柚希:“みりおん”、あかんの?

実咲:いや、全然なんでも! 宝塚を退団してからも“みりおん”と呼んでくださる方も沢山いらっしゃいますし。でも、そういえば「“みりおん”って長いなあ」と言われることもあります。本名がくみなので。

柚希:じゃあ、“くみちゃん”とも呼ばれてる?

実咲:宝塚の同期生からはそうです。現役中は同じ名前の方がいらっしゃったので、“みりおん”で定着しつつあります。

柚希:“くみちゃん”に変えたほうがいいの?

実咲:えーーー!(みりおんで)いいですよ〜(笑)。

ーートップ娘役の方にとって、トップ男役の方はどんな存在なのでしょうか?

実咲:ただただ、スターさんです! 特にちえさんの場合は、特別なスターさんです。宝塚100周年のときにご一緒させていただきましたが、先頭に立って100周年という時期を盛り上げてくださった方ですし、辞められてからも……いや語りますと、ちえさんの舞台を拝見する度、圧倒されて。毎回、毎回前回の舞台を超えていくんです。そういうエネルギーって特別だなとすごく感じて……ちえさんはすごいんです!!

関西出身のお二人故に、盛り上がってくると関西弁が出てくる場面も

関西出身のお二人故に、盛り上がってくると関西弁が出てくる場面も

柚希:みりおん、偉いなあ〜。(感心した様子で実咲さんを見つめる)

実咲:ちえさんは本当にすごいんです! すごい人は自分ですごいって言わないんです。同期生や下級生でも、「ちえさんかっこいいな、素敵だな」と言う人が多いですし、憧れる人が多いということは、それだけ宝塚を背負ってやってこられた方ということ。そして退団されてからも、舞台のいろんな道を開いているイメージがあります。

柚希:すごーい。偉いね~みりおん。(再び感心した様子で実咲さんを見つめる)

ーー逆に、柚希さんから見た実咲さんの印象は?

柚希:トップ娘役のときは、いろいろ苦戦している姿も見ていました。みりおんはすごくできるんですけど、宝塚ってどうしても男役あっての娘役みたいなところがあるので。もちろん、私も娘役の皆さんにはたくさん言ってきましたし、そういうものなんです。みりおんはそれを前向きに受け止めて、ちゃんと明るく「はいっ!」と応える。だから「本当に心が折れない人なのかな」と一瞬思ったり(笑)。でも本当は心が折れて泣いていても、楽しそうに元気に振る舞う人なんだろうな、偉いな、と思っていました。今回、稽古を一緒にするのも初めてなので楽しみですね。

実咲:すごい方の近くにいれて嬉しいです。本当にすごいんですよ!!

――熱い……!(実咲さんの熱弁にたじろぐ取材陣)

刺激的な人ばかり! 共演者や演出家の印象

ーーお二人の共演も楽しみですが、先程お話に出た剣さんやソニンさんの印象も教えてください。

柚希:私は剣さんが出演されていた作品の再演に出ることもあったので、剣さんのDVDをよく観ていました。その方とご一緒する、しかも女同士で(笑)って、すごいことだと思います。剣さんは優しく面倒見が良い方だと聞きます。もちろんお芝居や舞台への取り組み方も素晴らしい方だと思うので、この機会にご一緒できて嬉しいです。

同じ事務所のソニンちゃんは、喉のことなどケア系のことにすごくストイックな方だろうなと思っていたら、まさしくそうで。会う度にいろんなことを教えてくれます。ソニンちゃんからたくさん刺激を受けながら学んで、自分も育っていければいいな、と。

柚希礼音

柚希礼音

実咲:本当に刺激的な皆様ばっかり。剣さんは同じく宝塚出身なので、まさかこんなところで! という驚き。これも宝塚を退団してからの醍醐味のひとつですね。私からしてみたら雲の上の存在と言いますか、一緒に舞台に立つイメージが湧かないくらいの方。今回は是非お近くでたくさん学ばせていただけたらと思います。

ソニンさんは、やっぱり力強い歌声のインパクトがあります。舞台上で観ていてわかる部分と、稽古場から入って理解できる部分は全然違うと思うので、ご一緒させていただくご縁があったことに感謝しています。成長できるように頑張りたいです。

ーー今回、日本版の脚本・演出を務める板垣さんとお仕事をするのはお二人とも初めてですよね?

柚希:そうですね。お芝居にすごく厳しく、深く追求していろいろ意見を言ってくださる方だと聞いています。そういう方が、私たちは慣れてるよね。

実咲:ふふふ(笑)。その方によりますけど、あまり意見をおっしゃられないタイプの方もいますね。

柚希:そうなると、自分で発見していかないといけないもんね。意見を言っていただけることは、とても嬉しいしありがたいこと。板垣さんの意見を聞きながら、役を知っていけたらなと思います。

ビジュアル撮影時点での役作り

ーーとても素敵なビジュアルが出来上がっていますね。ビジュアル撮影時にイメージされていたことはありますか?

柚希:このビジュアル、時代感が揃って統一感があるところがすごくおもしろいです。私の役どころとしては、知性を持って文章の力で世間と戦う女性。個人的には、戦うと言ったら拳を振りかざして「おー!」みたいなタイプなので(笑)、「そうじゃない、知的なんだ」と思い込んで撮影に臨みました。でも、なんだかどのポーズをとっても“ボス感”が強くなってしまって……。そういう意味で難しかったです(笑)。

実咲:宝塚のときに着ていたようなタイプの衣装だったので、懐かしさを感じながらの撮影でした。お役的には、ちえさん演じるサラの理解者で、彼女の助けになる優しい人だと聞いています。さらに聖母のようなイメージで、ということだったので、「え? 一番遠いぞ?」と思いつつも(笑)、キーワードの“優しさ”を意識しました。ただ今回の曲を聴いてみると、これは優しさだけでは歌えないなとも感じていて。これまでの私にはない役作りになる予感がしています。

実咲凜音

実咲凜音

ーーお稽古はこれからというところだと思いますが、役作りなど普段の稽古中はどんな様子なのでしょうか?

柚希:私はスタートダッシュが遅いんですけど、稽古が始まって2週間経った頃から初日に向かって急に焦りだします。焦っているからすごくストイック風になるんです。そんなときは、なるべく稽古場でできる限りのことをして、家に帰ったらオフになるように宝塚時代から心掛けてきました。家でもずっと仕事のことを考えているとよくないので、食事に行くなど息抜きするようにしています。

実咲:私も家には持ち帰らないですね。稽古では「あ、こんな感じかな」と役に入ったら、ハマりはいいんです。でもそのあとの伸びしろを頑張らないと、中身を開けたら空っぽという状態になってしまうのが舞台の怖いところ。稽古中に自分の頭で考えて、理解して、感じて、役を作っていく感じです。

ーーどんなお稽古になるのか楽しみですね。それでは最後に、改めて本作への意気込みを聞かせてください。

実咲:初演は特別なものですので、そういう作品に出会えたことはとても幸せです。また、ロックミュージカルということで、私があまり挑戦したことのない曲調になります。自分の新しい一面をお客様やファンの皆様に見てもらえるだろうという確信と、ワクワク感が今は大きいです。いろんなジャンルで活躍されている皆様と出会えるこんなご縁もなかなかないので、そこで実咲凜音というものをどう残せるか、私自身どう成長できるか。素敵な方々と一緒にいる喜びを噛み締め、頑張りたいと思います。

柚希:私は芸歴20周年という年でして、この1年は守りに入らずいろいろと挑戦をした1年でした。その締め括りが『FACTORY GIRLS』になります。最後にこのかっこいいミュージカル作品で締めることができるということがすごく嬉しいです。ただ、いつもやりなれているようなミュージカルとは違った作品でもあります。かっこいいロックの曲がたくさんあって、女性キャストが多くて、見え方としても新しいものになるでしょう。これも1つの挑戦になると思います。歌も踊りも芝居も全部好きで、やっぱりミュージカルが1番好きなのかもしれないと感じている20周年。新しい自分を見つける気持ちで頑張ります。

(左から)実咲凜音、柚希礼音

(左から)実咲凜音、柚希礼音

取材・文=松村 蘭 撮影=荒川 潤

公演情報

A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』​

音楽/詞:クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニー
日本版脚本・演出:板垣恭一
 
出演者:
柚希礼音 ソニン
実咲凜音 清水くるみ 石田ニコル
原田優一 平野 良 猪塚健太
青野紗穂 谷口ゆうな 能條愛未
戸井勝海 剣 幸 他

<日程・会場>
■東京公演
2019年9月25日(水)〜10月9日(水) TBS赤坂ACTシアター 

【東京公演・料金】
S席12,500円 / A席10,000円 / B席8,500円 (税込・全席指定)
※未就学児童の入場はご遠慮頂いております。
※車いすでご来場予定のお客様は、予めご購入公演日時・座席番号をイープラスへお知らせください。
 
先着先行受付】
受付期間:2019年6月16日(日)12:00~6月21日(金)18:00
https://eplus.jp/sf/detail/2891720001
 
【東京公演・一般発売】
2019年6月22日(土) 10:00~
 【東京公演・に関するお問合せ】
イープラス 0570-06-9919(10:00~18:00)
 
主催:アミューズ/イープラス
 
■大阪公演
2019年10月25日(金)~10月27日(日) 梅田芸術劇場メインホール

【大阪公演・料金】
S席12,500円 / A席10,000円 / B席8,500円 (税込・全席指定)
※未就学児童の入場はご遠慮頂いております。
※車いすでご来場予定のお客様は、予めご購入公演日時・座席番号をキョードーインフォメーションへお知らせください。
 
【大阪公演・一般発売日】
2019年7月20日(土) 10:00~
 【大阪公演・に関するお問合せ】
キョードーインフォメーション 0570-200-888(全日10:00~18:00)

企画・制作:アミューズ
 
■公演に関するお問い合わせ
アミューズ チアリングハウス03-5457-3476(祝日を除く月~金15:00~18:30)
■オフィシャルサイト
http://musical-fg.com
■オフィシャルツイッター
@factorygirlsjp
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