『アルプススタンドのはしの方』小野莉奈×西本まりん×中村守里インタビュー~甲子園の応援席の片隅で「これが青春なのかなぁ」
左から、中村守里、西本まりん、小野莉奈
——夢見る頃が過ぎても、叫ばずにはいられないっ!
高校生しか踏み入れることのできない甲子園という“青春”の晴れ舞台。その応援席のすみっこ、アルプススタンド(甲子園球場の内野席と外野席の間にある大観客席)のはしの方にもまた、青春まっただなかの高校生たちがいた。「野球のルールを知らない演劇部員2名」×「ふてくされ補欠男子」×「成績優秀孤立女子」。甲子園ほど晴れやかでもなく、日も当たらず、青春片隅で起こる冴えない4人の会話。果たしてこれは青春なのか!?
第63回全国高等学校演劇大会・文部科学大臣賞(最優秀賞)に輝いた名作『アルプススタンドのはしの方』(脚本:藪博晶)が、劇団献身主宰・奥村徹也の演出で2019年6月5日(水)より浅草九劇で上演される(6月16日迄)。演劇部仲間の安田と田宮を小野莉奈、西本まりんが演じ、帰宅部&孤立女子の宮下を中村守里が演じる。映像を中心に活躍する3人の挑む舞台。そこに挑戦する思いを聞くインタビュー。
左から、中村守里、西本まりん、小野莉奈
■これが青春なのかも!?
——舞台出演が決まった時はどう思いましたか?
小野 舞台ってどんな感じなんだろう、という好奇心が強かったです。観劇する時は「すごい練習量なんだろうな」とかいろいろ想像していたんですけど、いざ自分が出るとなったら、未知。どうやってつくるのか全然わからなかった。わからないからすごく楽しみで、はやく舞台の稽古が始まらないかなって思っていました。
西本 映像のお仕事とは全然違う世界っていう感じ! 映像は現場に集まって撮影をしたら解散だから、みんな一緒にすべてのシーンを稽古することがなかった。ただ、映像と違って間違えてもやりなおしができないのはちょっと怖い(笑)不安もあるけど、協力してつくっていきたいなと思いました。
中村 私は、最初はちょっと不安で……私でいいのかな、って思っちゃいました。でも脚本を読んだら、演じる宮下という役と自分がちょっと似てるところがある。落ち着きがあるところとか、一人でいることが多いところとか。私も「年齢のわりに落ち着いてるね」って言われるし、人と一緒に過ごすこともあるけど一人の時間も好き。共通点を感じられたからちょっと安心して、お客さんに楽しんでもらえる作品になるように頑張ろうと思いました。
中村守里
——西本さんと小野さんは、役と似ているところはありますか?
西本 うーん、田宮は思ったことをすぐ言っちゃうところかなぁ……天真爛漫なのかも。でも、気は遣っているんだけど、周りには見せない。私は何も考えないでポロっと言って怒らせちゃうことがあるので、悪気がないところは似てるかな。
小野 私はまだわからないです……お芝居をしていてるところは同じだけど、性格はまだつかめてないかな。逆に、安田の責任感があるところや律儀なところは私にはないかも。お菓子を渡されてお金を払うシーンがあるんですけど、私だったらただもらっちゃってお金は払わないです(笑)見習わないとなって思います。
——作品の印象はどうでした?
中村 これが青春なのかなぁ……って。私は野球のルールは全然わからないんですよ。でも、勉強してみたいな、甲子園を観に行ってみたいなって思いました。
西本 最近、青春といえる青春を送ってないので「なにが青春だろう」と考えていたところだったんです。でもこの台本を読んで「あ、青春にもいろいろあるな」って思いました。頑張ってたり一生懸命やってたら、それが青春になるのかなぁなんて気がしています。
小野 私は今年の4月に高校を卒業したばかりなので、「ああ、もう学校が終わったんだなー」って思いました。台本を読みながら、「高校生らしい会話だよなぁ、これが青春なのかなぁ」とちょっと懐かしい。自分の高校3年間も振り返りつつ、その思い出を舞台に反映できたらいいな。それに、お芝居を通してもう一回高校時代がおくれると思うと嬉しいです。もう一度高校生を楽しみます!
中村守里、小野莉奈
——ほかの2人は現役高校生ですもんね。
小野 年齢はほぼ変わらないのに、オーラが違うんですよ!瑞々しいっていうか!
中村 えっ……(笑)。
小野 夕方に制服で稽古場に来るのを見ると、「あ、今日学校終わったあとに来たんだー。私は一日家で台本読んでたなー」って思う。前は同じだったのに今は違うんだなぁって実感して、ひとつ階段をのぼったようななにかをなくしたような、不思議な気分です。
西本 あははは(笑)。
——高校生の2人は、自分の高校生活と台本の高校生活と、違いを感じたりしますか?
中村 そんなに変わらないですよ。野球部の応援に行ったりはしないけど……。
西本 学校全体で試合の応援とかはないよね。行きたい人がいく。うちの高校はダンス部が強くて、大会の前はみんなが体育館に集まってダンス部の作品を観るんです。この舞台の“甲子園の応援”もそんな感じなのかも。
西本まりん
■稽古場は『みんなでつくっていく』場所
——楽しみと不安で始まった稽古。良い舞台になりそうですね。
小野 みんなが優しくて、落ち着いてお芝居に取り組めているので良かったよね。
西本 家で一人で台本を読んでいるだけだとよくわからないことも、みんなと合わせていくうちにテンポが掴めてくる。奥村さんもすごく丁寧にアドバイスしてくださるので、楽な気持ちで稽古が進められています。楽しい!
中村 稽古が始まる前は、台詞が多い役ではないんですけど、はやく覚えなきゃいけないかなと焦っていたんです……。でも奥村さんが最初に「最初に一度通してみてから、少しずつ固めていくからね」と稽古全体の進め方を教えてくださったので、今は安心して稽古しています。まだまだこれからだけど、もっと深く台本を読み込んで、ちゃんと理解してお客さんに届けたいな。
——稽古場の雰囲気はどんな感じでしょう。ずばりムードメーカーは?
中村 目次さんかな。
小野 目次さんは舞台経験が豊富なので、安定感があります。休憩中にもアドバイスしてくれます。舞台での発声の仕方とか、奥村さんの演出について補足してくれたりして、経験を感じます。でも稽古はスピードがはやくてどんどん進むので、みんなで話したりする時間がないんですよ。
西本 とにかく必死……!
小野 そう!ダメ出しされたらすぐに覚えないと!休憩時間も台本を読んでいますね。
——もう一人の出演者、石原さんはいかがですか?
小野 お兄ちゃん的。
西本 優しい。稽古場を準備する時に自分たちで床にテープを貼って空間をつくるんですけど、本番ではベンチがあるべきところにテープで「ベ」「ン」「チ」という文字を書いたんですよ。石原さんが「誰が一番うまく書けるか選手権をやろう」と言ってくれて、すごく楽しかった!まだお互いの関係ができてない現場なので、そうやって気を遣ってくれて優しいです。
——稽古場で印象的だったことはありますか?
中村 お芝居の稽古じゃないけど、目次さんの眉毛がなかった話が面白かったな。
西本 昔不良で、眉毛ないのがイケてるって思ってたらしいね!襟足も長かったとか。
小野 壮馬くんも面白い人だよね。みんなで「高校時代はどんな感じだった?」という話をした時、校則を守りつつどれくらいギリギリまで弾けられるかという戦いを勝手に始めてて、モヒカンにしたら彼女にフラれたとか……。
西本 あはははは!
小野 校則と戦うのも、そういう話を私たちにしてくれるのも面白いし優しいなって。あと、奥村さんが面白い!本人も楽しく明るく場を和ませてくれるし、演出でも「こうしてみて」とか「こう想像してみたらどうだろう」というアイデアが笑えるものばかりで、演技中も笑いを堪えるのに必死です(笑)。
西本 演出もそれぞれが理解しやすい例え話をつかって説明してくれて、わかりやすいし、緊張せずに楽しく稽古してるよね。
中村 始まる前は厳しい稽古だったらどうしようと思っていたけど、温かい稽古場で良かった……!
中村守里、小野莉奈
——楽しいメンバーが集まっていて、良い雰囲気ですね。舞台上では小野さんと西本さんの掛け合いが多いですが、共演経験のある2人は舞台で一緒に演じてみていかがですか?
西本 そうですね。莉奈とはドラマ『中学聖日記』で共演していたので、テンポ感がわかってるのは安心です。でも、たまに天然だから読めない。
小野 そうかなぁ〜(笑)私もまりんの性格を知ってるから、安心感あるよ。自分の意見をはっきり言うタイプだしね。演出をつけられても「でも自分はこう思います」って自分の意見をちゃんと伝える。曲げないから、すごいなって思う。
西本 言われたことは理解しても、うまくできないと「はい」って言いたくないんですよ。それが悪い方向にいったら申し訳ないけど……ご理解ください!(笑)
小野 まぁ、舞台はみんなでつくっていくから、一緒に考えていこう。守里ちゃんとはあまり話すシーンがないんだけど、実は、ちょっと自分と似てるなって思います。たとえばLINEをはやく既読すると返信しなきゃいけなくなるのが嫌だ、とか。
中村 そうですね(笑)既読がつくのが嫌、スマホ見れない……。LINEの通知が来た時にスマホ触ってたら間違って押しちゃって、届いた瞬間に通知になるのが苦手なんです。既読になったら相手も気づくからすぐに返信しなきゃいけないかなと思って返すと、相手からもすぐに返ってきて、またすぐに返さなきゃいけなくなって……ずっと終わらなくてどうしようと困る……。
小野 わかるわかる!
中村 かならず30分は待つ!
西本 そんなに(笑)。
中村 あと、洋画が好きなところも似てるなって話しました。
小野 そうだったね!守里ちゃんは話す前は落ち着いたイメージがあったから自分とは違うタイプなのかなと思ってたけど、話してみるといろいろ共通点があって面白い。作品の中でも「宮下の子って意外とこういう子なんだな」と気づいていくので人ってやっぱり話してみないとわからないなと……あれ、なんの質問でしたっけ?
西本 あははははは、天然だ(笑)。
西本まりん
——これからさらに稽古を重ねていくことと思います。本番に向けての思いや楽しみなことを聞かせてください!
西本 一番は、その場でお客さんの反応を感じられるのが楽しみです。映像だと放送が終わってからみなさんの感想がネットなどでわかるんですけど、舞台はナマなので。
中村 私も、みなさんの反応が楽しみだな。どんな感じなんだろう……。みなさんの反応も予想できないし、私自身もいつもと違うから、そういうところも見てもらいたいです。
小野 明るい稽古場で『みんなで作りあげていく感』っていう感じが強いです。これから稽古の日数を重ねて、団結力がもっと強くなっていけたらいいなー。これから大変なこともうまくいかないこともあるかもしれないけど、それも含めてぜんぶ楽しみです。良いものをつくってみなさんに届けたい。
西本 ぜひ観に来てください!
左から、中村守里、西本まりん、小野莉奈
■アフタートーク決定!
6月6日(木)19時公演
登壇者:石原壮馬、目次立樹、奥村徹也 ゲスト:土岐隼一
5月15日にソロアーティストデビューを果たした声優・土岐隼一をゲストに招く。デビュー曲は、現在放送中で自身もレギュラー出演するテレビアニメ「真夜中のオカルト公務員」のエンディングテーマにも抜擢され、現在、人気上昇中の声優である。現在新シリーズが放送中の高校野球を題材とした人気アニメ「ダイヤのA」では、部員を支えるトレーナーの工藤康役で出演。元野球部の男子高校生を演じる石原壮馬、熱血漢の英語教師役を務める目次立樹、演出・奥村徹也とクロストークを繰り広げる。
6月9日(日)18時公演
登壇者:奥村徹也、籔博晶
この回には作・籔博晶、演出・奥村徹也が登壇。大学時代の同級生でありながら、今回初めてタッグを組んだ二人が作品づくりの背景などを掘り下げる。
6月11日(火)14時公演
登壇者:小野莉奈、西本まりん、中村守里、奥村徹也 ゲスト:北澤ゆうほ(the peggies)
ガールズバンドthe peggiesのボーカル・ギターの北澤ゆうほが登壇。the peggiesは現在全国ツアーの真っ最中で5月29日には4thシングル「スタンドバイミー」リリース。今勢いに乗る注目のガールズバンドである。北澤は学生時代に軽音楽部の同級生を誘いthe peggiesを結成。『アルプススタンドのはしの方』に登場する演劇部員の女子に共感を覚える部分も多いだろう。出演者の小野莉奈、西本まりん、中村守里とのガールズトークに期待が高まる。
文=河野桃子 写真=村田麻由美
公演情報
■演出:奥村徹也
■出演:
小野莉奈
石原壮馬(劇団プレステージ)
西本まりん
中村守里
目次立樹(ゴジゲン)
■日程:2019年6月5日(水) - 2019年6月16日(日)
6月5日(水)19:00
6月6日(木)14:00/19:00
6月7日(金)19:00
6月8日(土)13:00/18:00
6月9日(日)13:00/18:00
6月10日(月)休演日
6月11日(火)14:00/19:00
6月12日(水)19:00
6月13日(木)14:00/19:00
6月14日(金)19:00
6月15日(土)13:00/18:00
6月16日(日)13:00/17:00
※受付開始は開演の45分前、開場は30分前
★アフタートーク
6月6日(木)19時公演 登壇:石原壮馬、目次立樹、奥村徹也 ゲスト:土岐隼一
6月9日(日)18時公演 登壇:奥村徹也、籔博晶
6月11日(火)14時公演 登壇:小野莉奈、西本まりん、中村守里、奥村徹也 ゲスト:北澤ゆうほ(the peggies)
■料金(全席指定・税込):
・前売 4,500円/当日 5,000円
・高校生以下 前売・当日共に 2,000円 [枚数限定/入場時要学生証提示]
観劇当日は開演の45分前より劇場の受付にて座席指定券との引換が可能。必ず『高校生以下』(整理券)と生年月日のわかる身分証明書を持参のこと。身分証明書提示のうえ、整理番号順に指定席券と引換え。
■公式サイト:http://spotted.jp/2019/02/alpsnohashi/